付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「マージナル・オペレーション改07」 芝村裕吏

2019-06-10 | 架空戦記・仮想戦史
「自分を人でなしじゃないと思うから、人は悩むのだろう。良い勉強になった。自分が最低の人間だと自覚することは大切だ」
 中国軍の爆撃で子供が3人死んだ。

 ミャンマーでの戦いから中国は手を引く様子を見せない。アラタたちの戦いはいまや米中の全面対決となり、戦火は沖縄から朝鮮半島にまで拡大しつつあった。
 もはや東アジア大戦争となった戦いの中、アラタたちの援軍として期待以上の活躍をするまめたんの戦果は、日本にとっても米軍にとっても信じられないものであった……。

 ツンするジニとジブリールがかわいい。
 子供たちのまめたんの馴染み方が予想以上。あくまで機械的に淡々と作業として戦争を繰り広げるまめたんの怖さと、その行動に仲間意識やペット感覚を持って感情移入する人間の面白さ。本当に仲間として扱い、壊れたら包帯巻いたりと親身になる子供たちと、単なる道具にしか考えていないアラタが感じる違和感の対比が面白いのです。 
 まめたん研究分室を読み返そうっと。

【マージナル・オペレーション改07】【芝村裕吏】【しずまよしのり】【星海社FICTIONS】【ドローン】【まめたん】【戦車は車じゃない】【学校は大切だ】【海兵隊】
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「売国機関1」 品佳直

2019-05-10 | 架空戦記・仮想戦史
「恋と戦争で『本心』を読まれるのは死活的。だから、いかなる手段も正当化される」
 独立大隊「オペラ座」隊長、ヨランダ・ロフスキ少佐の言葉。

【売国機関1】【品佳直】【カルロ・ゼン】【バンチコミックス】【塹壕貴族】【愛国者】【新品少尉】【傷痍軍人】




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「幼女戦記11」 カルロ・ゼン

2019-03-22 | 架空戦記・仮想戦史
「心と頭を切り離せ!」
 動く必要がない時に飛び出す愚か者になるなとゼートゥーア大将。

 現場と後方の認識の齟齬は広がるばかり。
 それは単に軍と政府や市民という関係ばかりでなく、最前線に立ったゼートゥーア大将と後方で計画を練るルーデルドルフ大将の間にも生まれていた。戦場で見えることは、後ろでは分からない。通じない。
 より良き、少しでもマシな結末を迎えるためには、盟友であっても排除しなくてはいけない段階に達していた……。

 何が正義か不正義か、何が正解で不正解か、分からぬままくるくる二転三転する状況で、レルゲンの涙目外交は悲喜劇で、スジ屋が奮戦する総力戦。
 戦争をするより、その分の手間暇と予算を外交につぎ込めば、ずっとお得にそれ以上の成果が得られるという姿勢の賢いイルドアには、総力戦に突入している帝国が日和見主義で信用できないかつての同盟国をどう見ているか想像もできないのでした。
 イラストは途中で平野耕太に交替したかと目を疑いましたが、やはり篠月しのぶのままでした。つまりそんな戦況。

【幼女戦記11】【Alea iacta est】【カルロ・ゼン】【篠月しのぶ】【エンターブレイン】【人的資源の浪費】【常在戦場】【外交】
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「マージナル・オペレーション改06」 芝村裕吏

2019-01-05 | 架空戦記・仮想戦史
「色恋を教えるのは親の務めです」
 イブンの言うとおりなら、アラタは出来の悪い父親ということになる。

 自分の幸せを押し殺すことで正気を保っているというアラタのもとに、日本から陸戦型ドローンが届けられた。まずは10機。役に立ちそうなら100機。求められればそれ以上でも。
 政治家や官僚にも、子供を捨てきれずに密林に残ったアラタを笑わず、いろいろ計算した上ではあっても、できるだけのことはしたいと考える者はいたのだ。それでも、もらえるならお金の方が良かったと思わないでもないアラタだったが、送られてきた20式自動歩兵は中国で見たドローンより遙かに小さくて、しかも歌って踊れる「まめたん」だった……。

 人命救助システムが最初から搭載されているのは、さすが自衛隊、富士学校まめたん研究分室謹製。製品版でもホイッスルで行進する仕様は健在です。
 とはいえ、前線にちょっかいをかけてきたミャンマーは軍どころか地方政府まで崩壊しつつあり、国境線ではタイが動き出し、この機を逃さずと中共軍も大規模進攻を開始。アラタはレインボー会議の身勝手さに呆れ気味だけれど、この状況をなんとかしようというのは彼が思ったほど高みの見物ではないように思えます。

【マージナル・オペレーション改06】【芝村裕吏】【しずまよしのり】【星海社FICTIONS】【ドローン】【まめたん】
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「幼女戦記10」 カルロ・ゼン

2018-10-29 | 架空戦記・仮想戦史
「戦争の本質は弱いものいじめだぞ」
 ターニャ・デグレチャフは副官のセレブリャコーフ中尉を咎めた。

 東部戦線ではゼートゥーア中将にこき使われ、野戦軍殲滅に東西奔走して崩壊しそうな戦線を支え、一息つくまもなくターニャは西部戦線に送り込まれ、ロメール将軍の指揮下に入る。この苦境を脱する為の積極的防御策として、王国への侵攻を計画していたロメール将軍にとって、ターニャとその部隊である第二〇三の到着は願ってもない好材料だった。
 しかし、帝国軍の暗号情報は、既に敵方に筒抜けだったのだ……。

 まだまだ末期戦は続きます。

【幼女戦記10】【Viribus Unitis】【カルロ・ゼン】【篠月しのぶ】【エンターブレイン】【予備計画】
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「マージナル・オペレーション改05」 芝村裕吏

2018-10-10 | 架空戦記・仮想戦史
「先送りしている間に問題を解決すれば良いのです。実に日本的な対応だと思いますけど」
 イトウさんの言葉。「今は真面目に言ってますからね」ということは、普段は真面目じゃないんだ……。

 予約して発売日に届いたものの、白インクらしい立体的にこんもりした染みが表紙から背表紙まで点々と付いていて、さすがにこれはないと返品したら交換分が到着せず待ちぼうけ。待ちぼうけ。
 しかし、こんな大胆な印刷ミスが検品通って流通しちゃったんだ。それはそれで手元に残しておいても良かった気がします。

 数で圧倒的に勝る中国人民解放軍を完膚なきまでに撃破したアラタたちだったが、戦場に残された2000超の遺体は腐敗していく。遺体の処理の交渉の場に姿を現したのは、かつてクラスメイトとしてドローン運用を学んだ董顕光だったが、それで戦いが終わるはずもなく、ミャンマー軍も相手とする二方面作戦が始まる……。

 戦闘ドローンが投入される一方、無線妨害で覆い尽くされる未来の戦場を舞台にした、ぎりぎりの物語。「まめたん」とかの裏側の話が続いてます。
 同じ状況なら誰でもそうするというけれど、戦場全体を見渡し把握する能力は希有なものなのです。果たしてアラタ王国の誕生なるか……。

【マージナル・オペレーション改05】【芝村裕吏】【しずまよしのり】【星海社FICTIONS】【ドローン】【まめたん】【迫撃砲】
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「マージナル・オペレーション改04」 芝村裕吏

2018-05-23 | 架空戦記・仮想戦史
「戦争に冗談はないよ。暴力は人を正直にする。もちろんよくない意味で」

 イトウさんとともに中国を脱出したアラタとジブリールは、ラオス経由でミャンマーに帰国。キャンプを放棄した子供達と合流すると、中国軍やミャンマー軍への抵抗を開始した。しかし、彼は自分が周囲に与える影響を過小に見積もりすぎている。
 その間も、韓国へのアメリカによる武力攻撃は早期決着という当初の計画が破綻して内戦状態に陥らせ、それを非難する中国は北朝鮮への侵攻を開始していた。つまり、半島は燃えさかっていたのだ……。

 いろいろ手抜かりの多いアメリカですが、結局は物量で押し切り始め、それに呑み込まれないようアラタは舵取りに腐心することになります。そして、政治面ではホリーさん無双。日本はあいかわらず動きが遅いし、あまり信頼もできませんが、とりあえずイトウさん経由で情報やら資金やらの流入が始まります。
 今回の発見。以前、ベトナム料理を食べに行ったとき、フォーがやたら甘くて閉口したものだけれど、読むとフォーに砂糖とか入れるのは普通なのね? 調理ミスとか怒らなくて良かったけれど、イトウさんと同じで麺類は甘くない方がいいなーと思いました。

【マージナル・オペレーション改04】【芝村裕吏】【しずまよしのり】【星海社FICTIONS】【陣地戦】【対空狙撃】
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「幼女戦記9」 カルロ・ゼン

2018-03-12 | 架空戦記・仮想戦史
「やるしかないが、やるしかないという現実が辛い」
 流石のターニャ・デグレチャフ中佐も愚痴が出る。

 東部戦線で損耗したレルゲン戦闘団は後方で再編されるが、そもそも補充すべき航空魔道兵がいない。人材が払底して、どこをどうこねくり回しても出てこないのだ。前線も後方も、人材も資材もすべてが枯渇していた。それでも戦争はやめられない。やめどきが見失われ、勝利という見果てぬ幻影を追い続けるだけの帝国となっている。
 そんな中、ターニャに出撃命令が下った。南方大陸から撤退するロメール将軍の部隊を支援するためだ。
 既に制海権は失われ、同盟国であるはずのイルドアは厳正中立を言い出して、撤退の支援どころか障害にしかならなくなっていた……。

 表紙のターニャがまるでクルミ割り人形のようですが、これは帝都のレストランで食事したときなのかな。
 配給以下の帝都の食事風景とイルドアの美食が対比され、いよいよ末期戦だという現実が突きつけられます。

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「マージナル・オペレーション改03」 芝村裕吏

2018-01-19 | 架空戦記・仮想戦史
「君の現実を揺るがす力に期待する」
 ランソンはこの言い回しが好き。

 朝鮮半島の扱いを巡ってクライアントであるはずのシベリア共和国と中国が対立し、アラタは窮地に追い込まれてしまう。やむなく日本の大使館へと駆け込むが、何者かの襲撃で大使館の通信機と発電機は破壊され、インフラ施設にも工作が行われたらしく、周辺地域でも停電と通信不能が始まった。
 事実上、厳重な包囲下にある大使館に孤立したアラタとジブリールだが、手元に武器はなく、味方の兵士も武器も遙か南のミャンマーの森林地帯に展開したままだった……。

 世界が間違っているのなら、それに抗わないといけない。
 さすがにシリーズも1ダースほど続きますと(作中時間が経過していることもあって)キャラの顔が変わってきますが、今回の表紙のアラタは変わりすぎで、どこかでキシタニと入れ替わった可能性を検討すべきレベル。

【マージナル・オペレーション改03】【芝村裕吏】【しずまよしのり】【星海社FICTIONS】【民間軍事会社】【大使館突入】【セーフハウス】【ポニーテイル】【モールス信号】【夜逃げ】
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「幼女戦記07」 東條チカ

2017-12-31 | 架空戦記・仮想戦史
『規律なき自由は単なる破壊であり、自由なき規律は圧政となる。そのアンビバレンツを解消する道具が「ルール」に他ならないのだ』

 危険な任務を嫌って冬季進軍を阻止しようとしていたターニャだが、なぜだか冬季進軍が決まっていて、彼女とその部隊は敵陣後方へと空挺降下することになっていた……。

 ものすごいペースで進むコミック版。もう書籍版を追いこして、ウェブ版のエピローグまでぶっ飛ばしてくれても良いと思います。

【幼女戦記07】【東條チカ】【カルロ・ゼン】【篠月しのぶ 】【角川コミックス・エース】【仁川上陸作戦】
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「幼女戦記8」 カルロ・ゼン

2017-09-22 | 架空戦記・仮想戦史
「勇者というやつは、必ず死ぬのだ」
 それが勇者の定めだとターニャ・デグレチャフ中佐。

 参謀本部は戦争を終結するつもりだったが、戦勝に浮かれる政府と国民は徹底的勝利を望み、常識も良識も押し切られた。ゼートゥーア中将は査察を名目に前線へと送られ、連邦資源地帯への大規模攻勢作戦『アンドロメダ』が発動する。
 しかし、連絡線は先細り、兵站網は破たん寸前。ここで無様に負けて国を滅ぼすわけにはいかないと、ゼートゥーア中将はターニャが指揮するレルゲン戦闘団へ退却の許されない篭城戦を命じた。
 人材、食糧、砲弾、すべてが不足したままであったが、囮となって敵を引きつけろというのだ……。

 自分のいない、知らないところでどんどん実績が積み上げられていくレルゲン大佐です。
 かなり端折って語られたウェブ版に対して、しっかり書き込まれる書籍版ですが、書けば書くほど敵は強大に味方は脆弱になり、読んでいて「辛いねえ」と親子の感想です。
 この大戦争における台風の目であり、要であり、敵対する勢力すべてにとって憎悪と恐怖の対象でありながら、ターニャ・デグレチャフという主人公はあくまでトリックスターに過ぎないのです。

【幼女戦記8】【In omnia paratus】【カルロ・ゼン】【篠月しのぶ】【エンターブレイン】【世界大戦】【督戦】【王党派】
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「マージナル・オペレーション改02」 芝村裕吏

2017-09-03 | 架空戦記・仮想戦史
「素朴な愛国心だけで物事を判断していい者もいる。国民はそうだ。だが支配者はそうではいかん。理性だけで判断しろ。支配者とは国の機械部品だ」
 シベリア共和国の使者、コサックのパウローの言葉。
 その理性だけで判断するにしても、敵味方をシロクロに分けたがるシベリアや中共と、互いの妥協点を探して歩み寄ろうとする灰色のアラタの間に齟齬が生じていくことになります。

 シベリア共和国の依頼で朝鮮半島にまで出稼ぎすることになったアラタとジブリールだが、研修先の中国でロボット兵器の運用について学ぶことになった。どうやら日本が無人の豆タンクを導入し始めているらしく、その数は中共の情報によれば2万台、シベリアの試算では5万台とも言われている。
 無人ロボットなど使い道がないと考えるアラタだったが……。

 ジブリールの可愛さも重さもますますアップしている改2です。急転直下のマージナル・オペレーションですが、あの昆虫食に泣いて帰った(違う)斉藤さんの再登場はあるのでしょうか?
 妻が『富士学校まめたん研究分室』を再読して、あー、しっかり伏線でつながってるねーとあらためて感動してました。合わせてマメタンもどうぞ。

【マージナル・オペレーション改02】【芝村裕吏】【しずまよしのり】【星海社FICTIONS】【民間軍事会社】【ぽかぽかモンスター】【ドローン】【ウォッカ】
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「猟犬の旗」 芝村裕吏

2017-08-19 | 架空戦記・仮想戦史
「お前たちのためじゃない。俺の仕事のためだ」

 名前も定められていない日本の諜報機関、仮称「イトウ家」が好んで猟犬(スパイ)として使うのは外人。ある者は望んで、ある者は脅され、その身を機関に捧げている。
 ペルー出身の男が休暇を取ったその日から、日本の各所でテロが勃発した。日本の主要都市で爆弾テロや銃撃テロが起きるが、警察や公安当局も動くがイトウさん家の動きが鈍い。内部に裏切り者がいるらしく、現場から上層部までぐちゃぐちゃで、誰が敵か味方か判別できなくなっているのだ。
 “外国人の反乱”だった……。

 タイトルどおり「ショー・ザ・フラッグ(show the flag)」な話で、今回は幸恵さんの出番なし。死んでないといいけどなあ……というか、前作の前日譚らしいです。
 そして、幸恵さん同様、次巻の登場がなさそうなのがアースラ。いや、この話に長居するとたいてい死ぬから、出番はない方が良いんだけどね。

【猟犬の旗】【芝村裕吏】【角川書店】【スパイ小説】【スパイ小説の新潮流】【ハウス・イトウ】【リンゴ】【シリア難民】【優秀なハッカー】【殺人者】【二重帳簿】
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「レーベンスラウム~共栄圏」 ホビーデータ

2017-06-14 | 架空戦記・仮想戦史
 PBM運営会社「ホビーデータ」の末期は、多数のゲームを同時並行して開催していました。資金確保のための自転車操業と言えなくもありませんが、なにより遊演体の『ネットゲーム'88』の頃より試行錯誤が続いていた、プレイヤー同士の交渉や駆け引き、推理といったゲーム性と、誰もがその世界の一員としてキャラクターの描写を楽しむ物語性の両立は、少なくとも商業ベースでは無理だと見切りをつけたのでしょう。さまざまな嗜好のプレイヤーを満足させるために、さまざまなタイプのゲームが世に送り出されていきます。
 その最右翼が、この『レーベンスラウム~共栄圏』、「第二次大戦で日独が勝利した世界での、第三次世界大戦」をテーマにした日独米ソが四つどもえという仮想戦記PBMです。今までのゲームのようにプレイしたがる人間がそんなに多いとは思えませんが、逆にやりたがる者なら2倍や3倍の会費は平気でつぎ込むジャンルです。
 申し込んで到着した資料はきれいなオフセット印刷とはかけ離れたコピー用紙の束に、ぎっちとりと印刷された各種設定やリストにルール。
 みんなそれを必死に読み解き、兵器の性能を比較するだけでなく、背景となる世界の分析にまで及びます。たとえば、日本の初期設定の師団編成を調べてみると、予想される人口に比べて多すぎるので、理詰めで分析するなら成人男性の大半が軍務に服しているということで、つまり軍隊としては充実しているけれど、それを支える経済構造が貧弱ではないか……というような感じで。
 そして、普通のゲームなら誰が何処に所属してどんな職業を選択しても誰も気にしませんが、これは戦争。重要なポジションには、できるだけ連絡のとりやすい人間がいた方が勝ち目が出てくる……と根回し開始。あいつは口が巧いから外交に回して、こっちは末期戦好きだから激戦区に……と。
 そして、実際にゲームが始まるとプレイヤー間での情報戦が一気に白熱化します。
 『ネットゲーム'88』からそうでしたが、陣営でプレイヤーが対立するゲームというのは、いかに相手方に偽情報を流し、こちらは正しい情報をいち早くつかむかが勝負となります。
 機密保持のため、当初はオープンなインターネット上の交流用掲示板でおこなわれていた交流が、アッという間に国ごとの会員制掲示板に移行し、さらにはメーリングリストへと移ります。その中でも裏切り者やダブルスパイがいることを前提に複数のシステムが動き、1つの情報は複数ルートに少しずつ内容を変えて流されるのが当然で、それが敵陣営にどう漏洩するかを判断してスパイを突き止めるという、分単位のオペレーションが繰り広げられました。
 いわゆるにこやかに握手しながら、反対側の手にはナイフを握っているマキャベリストというのが正しいプレイスタイルです。親しき仲にも礼儀あり、同盟者にも監視あり。
 そして、各ターン毎の結果が出ても、それは全陣営の状況が一覧できる様にはなっていませんから、プレイヤーが自作で戦況推移できるマップやチャートを作成して作戦会議です。
 続く『レーベンスラウム2』でも同じでしたが、週末になると我が家でも近県から人が集まり、巨大マップを広げて書き込み、電話が鳴り響き、パソコンでの情報戦が繰り広げられる作戦本部と化しておりました。
 それは久々の得がたいゲーム体験だったのです。

【レーベンスラウム~共栄圏】【ホビーデータ】【仮想戦記PBM】
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「ねいばるインスティテュート」 宮永忠将

2017-05-01 | 架空戦記・仮想戦史
 『萌えよ!戦車学校』から始まる、萌えキャラによるコミックと文章でミリタリー系知識を初歩から上級編までたたき込む学習本の海軍バージョン。

「私たちは将来提督になる! これは運命よ!!」
 生徒会長エリザベス・エアフィックの言葉。

 貞徳学園に入学した富士見日向は、かつての名提督たちの英霊である「ねこむし」に選ばれ、ガレー戦の戦いから戦列艦の死闘を経て、近現代の海戦までを追体験していく……。

 ペルシア戦争から戦艦の時代の終わりまで。

【ねいばるインスティテュート】【世界の戦艦と海軍史】【宮永忠将】【栗橋伸祐】【イカロス出版】
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