付け焼き刃の覚え書き

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「レーベンスラウム~共栄圏」 ホビーデータ

2017-06-14 | 架空戦記・仮想戦史
 PBM運営会社「ホビーデータ」の末期は、多数のゲームを同時並行して開催していました。資金確保のための自転車操業と言えなくもありませんが、なにより遊演体の『ネットゲーム'88』の頃より試行錯誤が続いていた、プレイヤー同士の交渉や駆け引き、推理といったゲーム性と、誰もがその世界の一員としてキャラクターの描写を楽しむ物語性の両立は、少なくとも商業ベースでは無理だと見切りをつけたのでしょう。さまざまな嗜好のプレイヤーを満足させるために、さまざまなタイプのゲームが世に送り出されていきます。
 その最右翼が、この『レーベンスラウム~共栄圏』、「第二次大戦で日独が勝利した世界での、第三次世界大戦」をテーマにした日独米ソが四つどもえという仮想戦記PBMです。今までのゲームのようにプレイしたがる人間がそんなに多いとは思えませんが、逆にやりたがる者なら2倍や3倍の会費は平気でつぎ込むジャンルです。
 申し込んで到着した資料はきれいなオフセット印刷とはかけ離れたコピー用紙の束に、ぎっちとりと印刷された各種設定やリストにルール。
 みんなそれを必死に読み解き、兵器の性能を比較するだけでなく、背景となる世界の分析にまで及びます。たとえば、日本の初期設定の師団編成を調べてみると、予想される人口に比べて多すぎるので、理詰めで分析するなら成人男性の大半が軍務に服しているということで、つまり軍隊としては充実しているけれど、それを支える経済構造が貧弱ではないか……というような感じで。
 そして、普通のゲームなら誰が何処に所属してどんな職業を選択しても誰も気にしませんが、これは戦争。重要なポジションには、できるだけ連絡のとりやすい人間がいた方が勝ち目が出てくる……と根回し開始。あいつは口が巧いから外交に回して、こっちは末期戦好きだから激戦区に……と。
 そして、実際にゲームが始まるとプレイヤー間での情報戦が一気に白熱化します。
 『ネットゲーム'88』からそうでしたが、陣営でプレイヤーが対立するゲームというのは、いかに相手方に偽情報を流し、こちらは正しい情報をいち早くつかむかが勝負となります。
 機密保持のため、当初はオープンなインターネット上の交流用掲示板でおこなわれていた交流が、アッという間に国ごとの会員制掲示板に移行し、さらにはメーリングリストへと移ります。その中でも裏切り者やダブルスパイがいることを前提に複数のシステムが動き、1つの情報は複数ルートに少しずつ内容を変えて流されるのが当然で、それが敵陣営にどう漏洩するかを判断してスパイを突き止めるという、分単位のオペレーションが繰り広げられました。
 いわゆるにこやかに握手しながら、反対側の手にはナイフを握っているマキャベリストというのが正しいプレイスタイルです。親しき仲にも礼儀あり、同盟者にも監視あり。
 そして、各ターン毎の結果が出ても、それは全陣営の状況が一覧できる様にはなっていませんから、プレイヤーが自作で戦況推移できるマップやチャートを作成して作戦会議です。
 続く『レーベンスラウム2』でも同じでしたが、週末になると我が家でも近県から人が集まり、巨大マップを広げて書き込み、電話が鳴り響き、パソコンでの情報戦が繰り広げられる作戦本部と化しておりました。
 それは久々の得がたいゲーム体験だったのです。

【レーベンスラウム~共栄圏】【ホビーデータ】【仮想戦記PBM】

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