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私的読書年表小史 60年代後半~70年代 雑誌篇 その3の1 総会屋系雑誌

2015年07月23日 | 私的読書年表小史

▲ 60年代後半~70年代前半を中心にした異議申し立て・叛乱の時代の雑誌

 

私的読書年表小史 60年代後半~70年代 雑誌篇 その3の1

いわゆる総会屋系雑誌と言われていた雑誌のいくつか ほか

 

 ▲今回の雑誌めぐりは、見出し画像にある本棚の左半分の本、上の画像にある雑誌を中心に

左端2冊は『構造』 総会屋系左翼雑誌。発行は経済構造社。70年代前半に現れ、あっという間に消えた。それまでは、総会屋雑誌らしい『経済構造』という名の雑誌が10年ほどあったようだ。新左翼の各党派の闘争方針などが、載っていたのだが、学生運動が一部過激化し、運動が全体として下火になると、本屋の店頭からは消えていた。総合雑誌的性格は薄かったので、学生運動の退潮をもろにうけたのだろう。ただし左翼の情報を収集するためにも、自ずと人脈や活動形態が雑誌論考の掲載内容から分かるので、為政者側からすると情報収集を兼ねて一石二鳥の雑誌であったのかも知れない。マークする人物やネットワークがつかみやすいからね。家に散在している『構造』をあちこち探してみると、1971年6月号というのが、構造という名の雑誌の最後の号らしい。おそらく1971年6月号掲載の文章が過激すぎると問題となり、回収に追い込まれたのか。編集後記を見ると「この総会雑誌のしめくくりを書いている」とあった。今考えると廃刊予告だったようだ。1970年1月から1971年6月までの18冊が『構造』で、その後は休刊ののち『創』としてノンフィクション誌として変化をとげたようだ。

『構造』の右の4冊は『現代の眼』 4冊、手元にあるもので一番古いものは1970年8月号。11巻8号とあるから。創刊は1960年安保直前頃のようだ。総会屋雑誌といわれるように、雑誌の文章の隙間に住友銀行だとか、新日鐵、三井銀行、富士フィルム、三菱銀行、大正海上火災、大成建設、三和銀行、コロムビア、第一銀行などの広告が掲載されている。この雑誌は、メディア問題、思想史、近代史・文学・芸術まで、総合雑誌様相があり。1970年代はよく読まれたのではないだろうか。岩波書店の『世界』のような学者さんが書く品行方正な論調が物足りなくなると、論争調の元気な「現代の眼」を読みたくなる。玉石混淆で、時評的な、史料に依拠しないものもたまにあるが、新人批評家の発掘といおうか、登竜門といおうか、ここでの執筆から、のちの優れた批評家になった人も多い。批評家修行の動力にもなったのじゃないだろうか。1972年3月号に「特集言語とは何か」で加藤典洋が「言葉の蕩尽ロートレアモン覚え書き」という評論を書いている。確か彼は、東大仏文出身、文芸批評家として大成する前の初期の頃の作品だろう。『犯罪』という1970年に発行していた文芸同人誌に、「水蝋樹」という短編小説が掲載してあるのだが、執筆者は加藤典洋となっている。若い頃彼は、小説も書いていたのかもしれない?手元にある一番新しい『現代の眼』は1983年4月号で、特集は「マルクス死後百年ー昔マルクスがいた!?」である。その直後に廃刊になったようだ。いわゆる、1981年の商法改正により、会社の広告収入が、発行基盤であったためか、それ以後、総会屋系総合雑誌は経済的基盤を失い、ほぼ消えていくようだ。

 

▲『現代の眼』 1972年3月号 現代評論社 当時定価200円

 ▲ 『現代の眼』 1972年3月号 目次

 

月刊『新評』も総会屋系総合雑誌だったようだが、月刊『新評』は、買いたい内容の雑誌ではなく、現在私の手元にあるのは、『別冊 新評』で、これは特集主義で、作家特集などに面白いものがあった。

 

『別冊新評』 花田清輝の世界 1976年 新評社 定価当時680円

久保覚の編集協力でできた特集号。これは、執筆者・内容とも花田清輝を知る上の情報が充実していてお買い得感あり。花田ファンには、この上ない。とはいえ2015年の時点では、亡くなって久しいので花田清輝を知る若い人は少なく、どうも文学での対話がなりたたない時代になってきた。

 ▲ 『別冊新評』 花田清輝の世界 目次

 

『流動』も広告は超一流企業、雑誌内容と企業との関連はうすく、これも総会屋雑誌ということになる。

1970年代初頭の頃の『流動』は読んだ記憶がないが、1976年の手元の雑誌を見ると第8巻とあるので、1960年代末が創刊のようだ。 私が手持ちの1970年代後半の『流動』は特集が多かったように記憶する。

 

 ▲ 『流動』 1979年2月号 映画ー戦後的なるものをめぐって 流動出版 定価450円

 ▲『流動』 1979年2月 映画特集号 目次

 

『無限』という大判の豪華な詩の雑誌があった。発行所は政治公論社、創刊号は編集責任が、北川冬彦、村野四郎、草野心平、慶光院芙沙子。政治公論社は、総合雑誌を出していた会社で、この『無限』の広告頁などをみると、三井銀行、八幡製鉄、淀川製鋼、伊藤忠商事など超一流会社が協賛している。詩の中身にイデオロギー色はない。総会屋雑誌ではないが、雑誌の経済基盤は会社の協賛にあり、自ずと、詩の内容にも独特の「無限」色があるのかも知れない。創刊号は、「アンリ・ミショー」、下の5号は「エズラ・パウンド」特集。

安保の年で揺れた1960年の夏の号の特集は「エズラ・パウンド」

 

 

『無限』 1960年7月 政治公論社 定価250円

 

つづく



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