▲『占領期年表』2017年創元社 『朝鮮戦争はなぜ終わらないのか』2017年 創元社など
戦後占領期日本、『朝鮮戦争はなぜ終わらないのか』
戦後占領期日本、『朝鮮戦争はなぜ終わらないのか』
▲戦後史再発見双書7 五味洋治 『朝鮮戦争はなぜ終わらないのか』 2017年 創元社
定価1500円+税 316頁
▲五味洋治 『朝鮮戦争はなぜ終わらないのか』目次
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まえがきにあたる、「はじめに」で、いきなり、論の中心的問題に入っていく。
「ソウルには朝鮮戦争を戦った「国連軍」が存在し、日本はその「後方基地」になっている。」
「国連軍の中枢である「国連軍司令部」はいまも韓国にあって、現実に機能している。」
そして東京にある米軍横田基地には、国連軍後方司令部と呼ばれる部署があり、日本国内にある七つの米軍基地が国連軍基地に指定されている。」
「外務省によれば、現在国連軍基地に指定されているのは、
横田基地 東京都
キャンプ座間 神奈川県
横須賀基地 神奈川県
佐世保基地 長崎県
嘉手納基地 沖縄県
普天間基地 沖縄県
ホワイトビーチ 沖縄県
の七つ
以前はキャンプ座間にあった国連軍後方司令部は、2007年に横田基地に移転」
(『朝鮮戦争はなぜ終わらないのか』14-16頁)
「「国連軍司令部」があることで、アメリカはいつでも戦争を始めることができます」
朝鮮半島で、アメリカが開戦に踏み切る場合は、安保理決議などを気にかける必要は全くありません。なぜなら朝鮮戦争開戦直後の1950年6月27日(米国時間)に、
「北朝鮮による韓国への武力攻撃を撃退し、この地域における国際の平和と安全を回復するという内容の強力な安保理決議が、すでに採択されているからです(決議第83号)」
「朝鮮戦争は休戦しただけで、まだ終わっていませんから、この安保決議も生きています。」
ですから、休戦協定に違反していると考えられる北朝鮮からの侵略行為があれば、アメリカは北朝鮮に対して「国連軍」として応戦できる国際法上の権利を持っているのです。」
(『朝鮮戦争はなぜ終わらないのか』16-17頁)
「もし朝鮮半島で戦争が起きれば「国連軍地位協定」という日本政府がアメリカなどの11ヵ国と結んだ協定によって、日本の米軍基地はすべて、その戦争の後方基地として使用されてしまうことになっているのです。」
(『朝鮮戦争はなぜ終わらないのか』19-20頁)
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この本の第3章 朝鮮戦争の歴史 の中で、朝鮮戦争初期、韓国が一気に北朝鮮に攻められたとき、山口県に、亡命政権をつくる計画があったことが記されている。山口県の公式歴史記録にあるという。
私には、このあたりの事実の詳細は知らなかったので、大変興味深かった。韓国政府にとっては(特に保守政権にとっては)秘密裡にしておきたい事項であったためか、このことに関しては、メディアへの情報露出が大変少なかったようだ。
「朝鮮戦争勃発後、日本の外務省が、山口県知事に、『韓国政府が6万人規模の亡命政権を山口県に樹立したいとしている』
と知らせ、可能かどうかをたずねていましたが、当時の田中知事は、
『日本国民にも配給が不足している現状では難しい』
という返事をしている。
けれどもしばらくすると田中知事は、五万人の韓国人を受け入れるという非常措置の計画書を米軍に提出しています。」
(『朝鮮戦争はなぜ終わらないのか』第3章 朝鮮戦争の歴史 115-20頁)
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「すべての加盟国は、その国際紛争を平和的手段によって、国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決しなければならない」(国連憲章 二条)
(『朝鮮戦争はなぜ終わらないのか』第5章 韓国軍の指揮権は、なぜ米軍がもっているのか 239頁)
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すでに形骸化してしまっている国連軍が、なぜ現在もあるのか!?
2007年3月7日、ベル在韓米軍司令官が、アメリカ上院国防予算聴聞会で語ったことば。
「国連司令部を恒久的な多国籍連合軍機構として発展させていく」
(『朝鮮戦争はなぜ終わらないのか』第5章 韓国軍の指揮権は、なぜ米軍がもっているのか244頁)
NATOのアジア版を目論んでいるということではないかということだ。ヨーロッパのNATOを介して、米国の軍事的覇権を北大西洋にもたらしているように、アジアでの同様な組織体を作ろうとしている。のはないだろうか。自衛隊の軍装備・命令系統のシステムがNATOと同一規格になってきているのもその兆候だろうか。やがては、超・帝国の軍事態勢として、国連軍というものを再編するというのは私の杞憂・妄想でなければよいのだが・・・・
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▲戦後再発見双書 資料編 『占領期年表』2017年 創元社 1300円+税
この年表、上記の朝鮮戦争はなぜ終わらないのか』の傍らに置いて読むと、大いに力を発揮する。
また、思想の科学研究会の共同研究でまとめた戦後占領史の研究が徳間書店から刊行されている。
戦後日本占領史をリードした多くの研究者が執筆していること、年表・事項解説・辞典・事典的機能も充実しているので、古書店で見たら即刻買いを薦めたい。
共同研究 『日本占領』 1972年 徳間書店
共同研究『日本占領軍 その光と影』 上巻 1978年 徳間書店
共同研究『日本占領軍 その光と影』 下巻 1978年 徳間書店
つづく