2日目 午前10時 ~絶海のコトー~
日本最西端の石碑と展望台で3~40分ほど旅情に浸っていたが、K岡さんやN村さんは現れなかった。
追いつかれるかなと思っていたのだが、いったいどこに居るのだろうか。
最果ての風景に満足したので、相変わらずのマイペースで島一周を再開する。
西崎から坂を下って一周道路へ戻ると、すぐにレンタサイクル屋のおじさんが言っていた「テキサスゲート」が現れた。
この辺りは南牧場線という名の通り、島の固有種の「ヨナグニウマ」が放牧されているエリアで、敷地の外へ脱走しないように道路に深い溝が掘られているのだ。
おじさんに言われた通りに自転車を押して通過すると、確かに道路一面に馬のものと思しきフンがそこらじゅうに落ちている。
しばらくはその姿が全く見当たらず、天気が悪くなるからどこか屋内で過ごしているのかな?と思ったが、そんな事は無かった。
車通りのほとんど無い路上を歩く数頭の群れが見えてきた。
与那国町指定の天然記念物となっているヨナグニウマは日本在来馬の1種。
西の最果ての与那国島という場所柄、外来の馬との交雑が少なく在来馬としての純度はかなり高いという。
体長は120センチほどと小柄である。
現在の生息数は110~120頭ほどなのだそうだ。
道路から目を凝らすと、海に迫る岩肌のあちこちにも草を食む姿が。すごい光景だ。
立ち入りが禁止されている訳ではなさそうなので、草原に足を踏みさせてもらい近づいてみる(馬糞に注意)。
ヨナグニウマはかなり温厚だという話は聞いていたが、どの馬も近づく私には全く動じず逃げもしない。
その性格から、かつては農耕や移動の足、荷物の運搬などの役目で島民に重宝されていたという。
なかなかに足のすくむ絶壁が迫る。
まるで絵葉書のような光景だ。
牧場の中を15分ほど走ってゆくと、自転車で走るのが楽しみだったポイントが現れた。
フジテレビのドラマ「Dr.コトー診療所」で、吉岡秀隆演じるコトー先生が自転車で快走する海沿いの道だ。
名作と名高い「Dr.コトー診療所」のドラマは「志木那島」という架空の島が舞台だが、実はロケ地は与那国島。
残念ながら私はリアルタイムでドラマは見ていなかったのだが、この旅に出る直前、2022年公開の劇場版が本当にたまたまテレビで放送されていたので、予習とばかりに視聴した。
完全なるニワカだが、コトー先生の人柄や小さな島ならではの人間模様はもちろん、へき地診療の現状や課題もテーマとなった見応えある作品であった。
作中に映し出される与那国島の絶景が、今回の旅を強行する後押しにもなったかもしれない。
午前10時45分、南牧場を抜け、宿泊している祖納のほぼ反対側の南に位置する「比川(ひがわ)」の集落に到着した。
これで島の西側をほぼ半周したことになる。案内板にはコンクリ製のヨナグニサン。
土産物を扱う共同売店やあちこちに飲食店があるなど、比較的観光に力を入れているなという印象。
それもそのはず、大きな案内看板を頼りに集落の端まで進むと、そこには「Dr.コトー診療所」の「志木那島診療所」が建っていた。
こちらはまさにドラマと映画に使われた建物そのもので、2003年にフジテレビが撮影用セットとして建てたもの。
台風にも耐えうる頑丈設計で造られ、撮影後も観光地として活用されているのだ。
無人だが、入館料300円を払い内部が見学できる。
島民が集い団らんしていた待合室や受付など、画面の向こうに名優たちがいた光景が目の前に広がる。
2003年のシーズン1から追っていたらもっと感動していただろうな。
下駄箱にはコトー先生の草鞋もあった。この草鞋のエピソードがまた感動ものらしいので、帰ってから履修しようか。
コトー先生が診察を行う事務室。白衣を着て記念撮影もできる。
建物は当時新築で建てられたが、美術スタッフの手によって年季の入ったような塗装や汚れが施された。
棚に並ぶ薬品などの備品は昭和の実物を集めたのだろうか、色あせ具合などリアルで目を見張る。
コトー先生の自転車(初代)と2006年版の特大ポスターもあった。吉岡秀隆が若い!
事務机の上には小道具のヤシガニラーメンもあった。劇場版では高橋海人くん演じる新人看護師が食べていたね。
病室の窓からは、これまた作中によく登場する「なあた浜(比川浜)」がよく見える。なんと写真映えする場所だこと。
難破船が印象的だったが、撤去されてしまったのだろうか?見当たらず。
見学中、ちょうど観光バスで年配の団体さんが入ってきた。
ゆっくり見物したかったのにタイミングが悪かったな……と思ったが、小さな診療所内で老人たちがにぎやかに笑いあう光景は、まさに志木那島診療所のそれであった。
少しだけ撮影時の雰囲気が味わえたので、これはこれで良かったか。
午前11時、少し早いが、朝から何も食べていなかったので集落内で昼食。
診療所からすぐ近くの「お食事処さとや」で八重山そば(1000円)を注文した。
分厚い豚肉の角煮と与那国産のカマボコが乗っている。これは美味しかった。
1000円以上で1枚使える、空港でもらったクーポン券のおかげで半額の500円で頂くことができ嬉しい。
さて、島を半周し、私が見たかった場所はほぼ行くことが出来た。
ここから島を縦断して祖納の集落に戻ることもできるが、まだお昼前だし天候も大丈夫そうなので、このまま東側の半分も周ることにした。
地図上ではこの先、ゴールの祖納まで集落は無さそう。ここで昼食をとって正解だったかもしれない。
次回、島の天気は変わりやすい。
続く。
日本最西端の石碑と展望台で3~40分ほど旅情に浸っていたが、K岡さんやN村さんは現れなかった。
追いつかれるかなと思っていたのだが、いったいどこに居るのだろうか。
最果ての風景に満足したので、相変わらずのマイペースで島一周を再開する。
西崎から坂を下って一周道路へ戻ると、すぐにレンタサイクル屋のおじさんが言っていた「テキサスゲート」が現れた。
この辺りは南牧場線という名の通り、島の固有種の「ヨナグニウマ」が放牧されているエリアで、敷地の外へ脱走しないように道路に深い溝が掘られているのだ。
おじさんに言われた通りに自転車を押して通過すると、確かに道路一面に馬のものと思しきフンがそこらじゅうに落ちている。
しばらくはその姿が全く見当たらず、天気が悪くなるからどこか屋内で過ごしているのかな?と思ったが、そんな事は無かった。
車通りのほとんど無い路上を歩く数頭の群れが見えてきた。
与那国町指定の天然記念物となっているヨナグニウマは日本在来馬の1種。
西の最果ての与那国島という場所柄、外来の馬との交雑が少なく在来馬としての純度はかなり高いという。
体長は120センチほどと小柄である。
現在の生息数は110~120頭ほどなのだそうだ。
道路から目を凝らすと、海に迫る岩肌のあちこちにも草を食む姿が。すごい光景だ。
立ち入りが禁止されている訳ではなさそうなので、草原に足を踏みさせてもらい近づいてみる(馬糞に注意)。
ヨナグニウマはかなり温厚だという話は聞いていたが、どの馬も近づく私には全く動じず逃げもしない。
その性格から、かつては農耕や移動の足、荷物の運搬などの役目で島民に重宝されていたという。
なかなかに足のすくむ絶壁が迫る。
まるで絵葉書のような光景だ。
牧場の中を15分ほど走ってゆくと、自転車で走るのが楽しみだったポイントが現れた。
フジテレビのドラマ「Dr.コトー診療所」で、吉岡秀隆演じるコトー先生が自転車で快走する海沿いの道だ。
名作と名高い「Dr.コトー診療所」のドラマは「志木那島」という架空の島が舞台だが、実はロケ地は与那国島。
残念ながら私はリアルタイムでドラマは見ていなかったのだが、この旅に出る直前、2022年公開の劇場版が本当にたまたまテレビで放送されていたので、予習とばかりに視聴した。
完全なるニワカだが、コトー先生の人柄や小さな島ならではの人間模様はもちろん、へき地診療の現状や課題もテーマとなった見応えある作品であった。
作中に映し出される与那国島の絶景が、今回の旅を強行する後押しにもなったかもしれない。
午前10時45分、南牧場を抜け、宿泊している祖納のほぼ反対側の南に位置する「比川(ひがわ)」の集落に到着した。
これで島の西側をほぼ半周したことになる。案内板にはコンクリ製のヨナグニサン。
土産物を扱う共同売店やあちこちに飲食店があるなど、比較的観光に力を入れているなという印象。
それもそのはず、大きな案内看板を頼りに集落の端まで進むと、そこには「Dr.コトー診療所」の「志木那島診療所」が建っていた。
こちらはまさにドラマと映画に使われた建物そのもので、2003年にフジテレビが撮影用セットとして建てたもの。
台風にも耐えうる頑丈設計で造られ、撮影後も観光地として活用されているのだ。
無人だが、入館料300円を払い内部が見学できる。
島民が集い団らんしていた待合室や受付など、画面の向こうに名優たちがいた光景が目の前に広がる。
2003年のシーズン1から追っていたらもっと感動していただろうな。
下駄箱にはコトー先生の草鞋もあった。この草鞋のエピソードがまた感動ものらしいので、帰ってから履修しようか。
コトー先生が診察を行う事務室。白衣を着て記念撮影もできる。
建物は当時新築で建てられたが、美術スタッフの手によって年季の入ったような塗装や汚れが施された。
棚に並ぶ薬品などの備品は昭和の実物を集めたのだろうか、色あせ具合などリアルで目を見張る。
コトー先生の自転車(初代)と2006年版の特大ポスターもあった。吉岡秀隆が若い!
事務机の上には小道具のヤシガニラーメンもあった。劇場版では高橋海人くん演じる新人看護師が食べていたね。
病室の窓からは、これまた作中によく登場する「なあた浜(比川浜)」がよく見える。なんと写真映えする場所だこと。
難破船が印象的だったが、撤去されてしまったのだろうか?見当たらず。
見学中、ちょうど観光バスで年配の団体さんが入ってきた。
ゆっくり見物したかったのにタイミングが悪かったな……と思ったが、小さな診療所内で老人たちがにぎやかに笑いあう光景は、まさに志木那島診療所のそれであった。
少しだけ撮影時の雰囲気が味わえたので、これはこれで良かったか。
午前11時、少し早いが、朝から何も食べていなかったので集落内で昼食。
診療所からすぐ近くの「お食事処さとや」で八重山そば(1000円)を注文した。
分厚い豚肉の角煮と与那国産のカマボコが乗っている。これは美味しかった。
1000円以上で1枚使える、空港でもらったクーポン券のおかげで半額の500円で頂くことができ嬉しい。
さて、島を半周し、私が見たかった場所はほぼ行くことが出来た。
ここから島を縦断して祖納の集落に戻ることもできるが、まだお昼前だし天候も大丈夫そうなので、このまま東側の半分も周ることにした。
地図上ではこの先、ゴールの祖納まで集落は無さそう。ここで昼食をとって正解だったかもしれない。
次回、島の天気は変わりやすい。
続く。