語りかける花たち

角島 泉(かどしまいずみ) 花日記
 ~石川の四季、花の旅、花のアトリエ こすもす日々のこと


越後妻有の夏 Ⅱ 志ある宿

2014年08月16日 | 旅日記
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美しい志ある宿に導かれた。

「里山十帖(さとやまじゅうじょう)」

雑誌「自遊人」が、経営、

もともと湯治場だった宿を引き継ぎ、

豪雪地帯の太古の知恵に 現代の心地さを合わせた

すばらしい宿。

何と言っても、この地の自然に敬意をもって

潜在する力を活かそうという清い心が

静かに伝わってくる宿だった。





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館内を通る清々しい風

重厚な雪国の梁や柱

どこかから降ってくる美しい音楽

そこはかとなく漂う、芳香








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この宿に、導かれたきっかけは、お料理だった。

今年春の開業とともに、

金沢の日本料理屋からここの厨房に移ってきた、

北崎 裕 料理長の料理を求めて来たのだ。

北崎さんの美味しいお出汁、

素材への敬意と工夫に満ちた調理とその美しさ

器、花、音楽 . . .

芸術へのあふれる好奇心 あわせもった料理人。


人気だったご自身のお店を閉めてまで選んだ新天地

突然のお誘いに即決した、というからには

それほどの魅力に満ちたところなのだろう、と。

北崎さんが抱いた好奇心に、私が強い好奇心を持ってしまったのだ。


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そのお料理は、本当に素晴らしくて、

筆舌に尽くしがたいものだった。





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ほんのり甘い、ふきのとうのソルベ







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季節は7月。

名残りの山菜からはじまって、

地の夏野菜づくし





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なんと大胆な、4種の茄子料理

この地は、たくさんの種類の茄子が採れるのだそうだ。

すべて個性のある味とかたち、

豊かな土地で育つ茄子の滋味を堪能。







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サプライズは、この一品。

北崎料理長が大事にしている工藤和彦さんの深鉢で、

自家野菜の炊き寄せ。


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シンプルに見えて、実に細やかな心を感じとれるお料理。

そして、素材のレパートリーを増やそうと

無理に遠方のものや旬でないものを使わない姿勢。

身近にあるものの中から、力のあるものを探し出す感性。

時間が空けば、敷地内の畑でみずから野菜作りをしたり、

まわりの野山に入って、素材を探し求めるのだとか。

その努力の結晶ともいえるこのお料理、

越後名産、もち豚の杉の葉スモーク

杉の新芽のピクルス添え








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杉の高貴な香り、

ほんのり苦くて甘い、逸品。

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朝にいただいた、具だくさんのお味噌汁。

熟成された濃厚な自家製味噌。




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体の細胞に優しく染みこんでいくような

おいしくて繊細なお料理の数々だった。

自力で、安心できる美味しい素材を求める、

という料理人としての究極の道を選ばれたのだなと思った。

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そして特筆すべきは、和洋のハーブとの取り合わせだった。

もう一人、厨房に立つハーブ研究家と、タッグを組んで

新しいお料理の世界を創りだしている。

茄子の煮浸しに、ミントの葉。

忘れられない一皿だった。

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一番の贅沢は、感じること。

それを実感した宿だった。

大自然との間には、言葉はいらない。

感じることがあるのみだから。

自然の力を活かす、ということは

簡単そうでそうたやすいことではない。

現代文明にひたっている者たちに

どう伝えるか、どんな場を、ものを、用意すればよいのか、

工夫に工夫を重ねて、心を尽くして、

この宿が営まれているのだと思う。

ただ、その意図をも気にさせず、

自然の中に気持よく身をゆだねられる場所だった。














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先にも書いたが、もと湯治場だっただけに、

泉質が極上であること。

自分の体が、とけてなくなりそうなほど

やわらかな温泉だった。





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里山十帖

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