泉区生活支援ネットワーク

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再起への道 宮城・被災障害者施設の今(3)

2014年06月15日 | 施設情報
(「河北新報」2014年06月13日金曜日付け記事より委員用)

漂流
さくらんぼ(多賀城)~安住の地、確保が難航~

 多賀城市の障害者就労支援施設「さくらんぼ」(定員20人)は、ソニー仙台テクノロジーセンターの一角にある。工場正門で受け付けを行い、さくらんぼが入る「みやぎ復興パーク」まで徒歩で5分ほどかかる。
 東日本大震災の前は近隣住民と交流があった。古紙回収に協力してくれていたお年寄りの男性はいつも「ご苦労さん!」と声を掛けてくれた。「ちょっとした触れ合いが励みだったのに」。さくらんぼの施設長山崎雅博さん(41)が嘆く。

<賃貸は支援なし>
 元の施設は海から1キロの場所を借りていて、津波で全壊した。他の施設を借りた後、2011年12月、被災事業所を受け入れていた復興パークに入居した。「ここに入れなかったら解散だった」と感謝している。ただ、地域とつながりが弱い上、管理料や駐車場代計約15万円がのしかかる。
 もともと住宅がひしめいている多賀城市は、津波で3分の1が浸水した。利用者のためにと工場外での再建を目指すが、施設に適した賃貸物件はなかなか見つからない。
 さくらんぼを運営する社会福祉法人「嶋福祉会」は、建設したばかりだった特別養護老人ホームが津波で全壊し、1億5000万円の借入金が残っている。さくらんぼに適した土地があったとしても、施設を建設する資金調達は難しい。
 自前の施設が被災した場合は、施設建設に自己負担が6分の1で済む「災害復旧費国庫補助金」が使えるが、さくらんぼのように賃貸だったケースは適用外だ。
 被災した障害者の支援をしている日本障害フォーラム宮城の株木孝尚さん(71)は「石巻市にも、賃貸物件だったので資金を調達できず、仮住まいのままの施設がある。本当に必要な所にお金が届いていない。経営基盤が弱い所もしっかり支援するべきだ」と行政の支援に疑問を投げ掛ける。
 震災後、行政関係者がさくらんぼのスタッフに「解散して、利用者を他の施設に振り分けたら?」と提案したことがあった。山崎さんは「通い慣れた施設はかけがえのない場所。利用者の視点に立てば、そんなことは言えないはずだ」と言う。

<看板商品に育つ>
 さくらんぼは震災後、銅線をリサイクルしてト音記号形にしたクリップやストラップを作り始めた。知的障害などがある利用者には難しい作業だったが、根気よく訓練を受け、看板商品に育った。
 毎月受け取る平均工賃は、震災前より5000円高い2万5000円にまでなった。ただ、立地が悪いことなどから利用者は震災前と比べて5人ほど減った。利用者が減れば、収支とんとんの経営はじり貧となる。
 施設利用者の伊藤貴志さん(34)は「ト音記号は始まりの記号。職員さんが、再スタートの意味を込めて考えてくれた」と話す。「がんばって作れば、おうちが建つんだよね」というメンバーもいる。そんな願いとは裏腹に、施設は安住の地を見つけられないでいる。

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