戦前の日本映画に登場する女性は、概して、封建的家族制度のなかで控えめでおとなしく描かれていました。良妻賢母型の耐える女性です。戦後になって、この女性像を破壊したのが京マチ子です。
この作品のストーリーは、次のようです。謹厳実直な保険の経理部長・堀江亘(志村喬)は、部下の使い込みを調べるために浅草のレビューに出かけ、そこで踊り子エミー(京マチ子)にあいます。堀江はエミーの肉体に溺れ、会社のカネを横領し、家族から逃避、隠匿し、港町にキャバレーを開くまでになります。その店が雇ったトランペット吹の青年(根上淳)にエミーが心をよせると、堀江は嫉妬で逆上し、狂います。そして・・・。
京マチ子が体当たり演技です。男に何度、突き飛ばされても、突っかかり、ついには籠絡し、破滅させます。
戦前の女性像を完全に破壊した彼女の演技に、当時の観客はおどろいたことでしょう。