いせ九条の会

「いせ九条の会」の投稿用ブログです(原稿募集中)。
会の趣旨に賛同される方、メールでご投稿ください。

国民には思いやりがないが、米軍にはおもいやりの豪華住宅/山崎孝

2008-03-19 | ご投稿
【米軍住宅建設零1戸4800億円/30年間で5459億円/外相「支出は妥当」】(2008年3月19日付朝日新聞)

 在日米軍患留経費負担(思いやり予算)で、約30年間に米軍の家族住宅1万1295戸(建設中も含む)を5459億円(予算額)で建設していたことが18日の衆院本会議で明らかになった。基地内のため土地代は含まれていないが、単純計算すると建設費だはで1戸当たり平均約4800万円かかったことになる。

 近藤昭一(民主)、照屋寛徳(社民)両氏の質問に、高村外相と石破防衛相が答えた。

政府の資料によると、建設費が特に割高なのは神奈川県逗子市の「池子住宅地区及び海軍補助施設」で、79年~07年に854戸を666億円(予算額)で建設。1戸当たり約7800万円になる。家族住宅の標準間取りは床面積約137~157平方㍍だという。

 こうした「豪華住宅」の妥当性を問われた高村氏は「日米地位協定の範囲内で米側の希望を聴取するとともに、日米安全保障条約の目的達成との関係、財政負担との関係などを総合的に勘案のうえ、わが国の自主的判断により適切に措置しており、支出は妥当」と答えた。(丹内敦子)(以上)

高村外相は「日米安全保障条約の目的達成との関係」と主張していますが、日米安全保障条約が果たした大きな役割は、米国の世界戦略に基づく米軍の遠征を日本が助けてきたという役割です。

朝鮮戦争、ベトナム戦争、アフガニスタン戦争、イラク戦争で、日本は米軍の発進基地、兵站基地になっています。このような役割に加えて、米兵住宅の提供や水道光熱費、米軍基地で働く日本人労働者の給料などの面倒も見ています。

中国のチベット自治区で起きた暴動事件に対する私見/山崎孝

2008-03-18 | ご投稿
今回の中国のチベット自治区で起きた暴動は、チベットの分離独立派が自分たちの主張を世界に注目させるため、中国でのオリンピックの機会を捉えて起こした側面(漢民族の商店を破壊しているテレビ報道のシーンにチベット独立を叫ぶ僧侶の映像があった)や、チベット自治区は北京とチベットを結ぶ青海鉄道が開通し、それに伴う漢民族の自治区への進出が拡大したことによる反発などの側面があると言われています。鉄道の開通により世界からの観光客が飛躍的に増えましたが、チベット人にはその恩恵が少ないと言われています。またチベット人と漢民族の文化的な軋轢もあると言われています。

私は今回の暴動に対するドイツ政府の声明は的を射たものと考えます。

【直接対話を独首相訴え】(2008年3月17日付朝日新聞)

 【ベルリン=金井和之】中国チベット自治区の騒乱をめぐり、メルケル独首相は15日、政府報道官を通じ「チベット問題を解決するには平和的な直接対話しかない」と、中国政府とダライ・ラマ14世との直接対話を呼びかけた。

 また、シユタインマイヤー独外相が16日、楊潔簾(ヤンチェンチー)外相と約1時間にわたり電話会談した。チベット情勢への憂慮を伝えた上で、「最大限の透明性を確保して、事態を収束させて欲しい」との見解を伝えた。(以上)

透明性の確保の一つは、中国政府が次の報道のようなことをしないことだと思います。

【中国政府が取材妨害と批判 外国人記者クラブが声明】(2008年3月17日付中日新聞)

【北京17日共同】北京の「中国外国人記者クラブ」(メリンダ・リュウ会長)は17日声明を出し、中国政府がチベット自治区をはじめとするチベット民族居住区で外国人記者らの取材を妨害していると批判、現場での取材を直ちに認めるよう求めた。

声明は、同自治区や甘粛省などで外国人記者らが強制的に退去させられたケースが20数件に上ると指摘。「取材活動の妨害は中国の国益に反し、五輪開催国への国際社会の期待に背く」と述べた。インターネットや国際放送への検閲も取材活動を妨げていると指摘した。

また、同自治区の暴動を取材するためラサに滞在していた香港メディアの記者10数人が17日、退去処分を受け、香港記者協会が抗議声明を出した。

香港のTVBなどによると、17日未明、記者の滞在先のホテルに当局者が訪れ「ラサでの取材は違法だ」として、同日午前の飛行機で退去するよう命令。映像や写真は消去され、当局が用意した航空券を渡され、飛行機に乗せられたという。(以上)

★ 私たちが注意を払うこととして、改憲を主張する人たちの中には、今までも中国の脅威を煽る題材にチベット問題(チベットの農奴制を解放する時に起こった旧支配層との衝突により犠牲者が出た)を盛んに使ってきました。しかし、非人道性を糾弾しながらかつて日本が行った非人道的な行為は否定する主張をしています。人道に対する首尾一貫性がありません。

私は中国の国内問題と中国の対外政策は別々に捉える必要があると思います。現在の中国は民主主義の到達度は低い国ですが、日本との関係は戦略的互恵関係を進めています。

米国は民主主義を誇る国ですが、その理念が今までの米国の対外政策に堅持されているとは言えません。いくつもの独裁政権を支持し、それを打倒した政権をその国の反動勢力と結託して転覆させています。典型的なのはチリのアジェンデ政権の打倒です。イラクを民主主義に国にすると言いながらイラクの民衆を犠牲にしたテロとの戦いを進めています。民主主義は個人の尊厳と生存権を守る制度です。

イラク戦争は3月20日で開始から5年に/山崎孝

2008-03-17 | ご投稿
【イラク 侵略戦争5年/外国軍は即時撤退を/世界各地で行動開始】(2008年3月16日「しんぶん赤旗」)

 米、英連合軍などのイラク侵略戦争開始から五年となる二十日を前に十五日、世界各地で反戦行動が始まりました。

 オーストラリア東部シドニー南方ウランゴングのショッピングモール内では十五日、約二百人の市民が集会を開きイラク、アフガニスタンからの米英両国軍、豪州軍などすべての外国軍隊の即時全面撤退を要求しました。

 集会には老若男女が参加し、女子高校生が「オーストラリア政府はイラクから軍隊を全面的に引き揚げるべきだ。戦争のない世界をつくるために若者の間で草の根からの反戦運動を広げていきたい」と発言。参加者の共感と激励の拍手に包まれました。

 フィリピンでは十五日、マニラ首都圏ケソン市はじめ全国各地でストップ戦争連合のよびかけで、「米国のイラク、アフガニスタンでの戦争ノー」、「米比合同軍事演習反対」を訴える反戦行動が始まりました。

 英国でも十五日にロンドン、グラスゴーで反戦集会とデモがおこなわれます。

【市民の殺害日常化 証言集会 米帰還兵が謝罪】

 【ワシントン=鎌塚由美】帰還兵たちによる証言集会「ウィンター・ソルジャー」二日目の十四日、ジュネーブ条約などに基づいて米軍が定めている「交戦規則」が戦場で徐々に緩和され、イラク市民の殺害が日常化していった経験が口々に語られました。十六人の帰還兵が証言し、「イラクの人々に謝罪する」と語りました。

 イラクに三度派兵されたジェイソン・ウォッシュボーンさん(元陸軍)は、侵攻直後には「標的が戦闘員であることを確認」するなどの「交戦規則」が強調されていたが、戦争の長期化と「負傷兵の増加に伴い、目にしたものすべてに発砲することが許可されるようになった」と証言。海兵隊員(三等軍曹)だったジェイソン・ラミューさんも「侵攻後、交戦規則は徐々に消滅した」と述べ、上官から「警戒を感じる場合は誰でも撃ってもよい」と聞かされたと語りました。二〇〇四年二月からの二度目の派兵で、司令官が「殺す必要のあるものは殺害する」と説明したといいます。

 ジョン・ターナーさん(元海兵隊)は、銃撃で顔面が破裂し上半身が判別できなくなっている運転手の姿や、自らが初めて殺害した一般市民の青年の写真を「戦利品」のように撮影したと証言。「罪のない市民を殺害してしまったことを謝罪する」と語りました。

 クリフトン・ヒックスさん(元陸軍)は、屋根からの銃撃音を聞いて攻撃した住宅が、結婚披露宴の最中だったことが判明した「事件」に言及。殺害した三人の中には小さな女の子がいたと語り、「十代の米軍兵士がイラクで六歳児を射殺する。イラクでは日常のように起こっている」と語りました。

 司会を務めたジャバール・マックルーダーさん(現役州兵)は、市民殺害は「腐ったみかん(不良米兵)による特別な事例でも、非公式な政策や指導力の欠落でもない。占領の帰結だ」と指摘。「今こそイラクから撤退させるべきだ」と結びました。(以上)

【イラク駐留多国籍軍の経緯】

 二〇〇三年三月二十日に始まったイラク侵略戦争に直接参加したのは米英両国とポーランド、オーストラリアの四カ国。最大三十九カ国が参加した多国籍軍は現在二十一カ国に参加が半減し、駐留継続国の中でも撤退・削減を予定・計画している国が多数です。「多国籍」とはいえ、いまや兵力の約93%は米兵で、実態は米軍そのものです。

撤退には、スペイン、イタリアなどはイラク戦争を主要な争点とした選挙で与党が敗北して政権が交代して撤退が行なわれたケースがあります。

 侵攻に直接参加した国のオーストラリアでも昨年十二月の総選挙で労働党政権が誕生。ラッド首相は今年六月までに戦闘部隊を撤退させると表明しました。英国ではブッシュ米大統領の「盟友」ブレア首相もイラク問題などを大きな理由の一つとして退陣を余儀なくされました。後継のブラウン首相は今年春までに駐留軍を半減させるとしています。戦争に参加した政治指導者たちは国民から大義を否定されました。

 国連憲章の平和の秩序を真っ向から踏みにじったこの戦争を国連は当初、容認しませんでした。米国は「有志連合」として戦争を開始し、その後、安保理は〇四年六月、決議一五四六で「有志連合」を多国籍軍として「お墨付き」を与えました。

 国連安保理は昨年十二月、イラク政府の要請を受けて、多国籍軍の駐留を今年末までとする決議を採択しました。これは〇四年の決議一五四六に、国際世論の圧力で多国籍軍の駐留にはイラク政府の同意が必要であるとの項目が盛り込まれたからでした。

 米国はイラク政府との間で、今年夏以降の米軍のイラク駐留継続についての協定を結ぶ構えです。米軍の長期駐留を狙うものですが、有志連合の崩壊もイラクとの協議の背景の一つです。(2008年3月1日の「しんぶん赤旗」の情報をベースにして書きました)

【日本がイラク型の戦争に即応できる体制作り】

自民党が検討中の自衛隊海外派遣恒久法案の海外に派遣する要件は、国連決議や国連加盟国の要請です。国連加盟国の要請は米国に追従する自民党政府にとってはとても都合のよい仕組みです。そして自衛隊の海外での任務は、駆けつけ警護や任務遂行を妨げられた場合、抵抗勢力の排除活動が想定されています。

自衛隊の中央即応集団(陸自)・艦隊・航空総隊の司令部が米軍基地内に入ります。日米の共同司令部とも言える「戦闘指揮訓練センター」と「共同統合運用調整所」が設けられ、日米軍事組織の一体化・臨戦化の状況が生まれています。

芸術家は作品で、戦争に反対し、平和をたたえることが務め/山崎孝

2008-03-15 | ご投稿
世界P.E.N.フォーラム『災害と文化』報告(1)──海外の出演者は語る

 日本ペンクラブが主催する世界P.E.N.フォーラム『災害と文学』が、2月22日から4日間、スペース・ゼロ(東京・渋谷区)で開催されました。

同フォーラムを日本ペンクラブから配信されたメールマガジンを抜粋して紹介します。

●中国の劉震雲(リュウ・チャンウン)さん 

 1942年の中国では、劉の故郷の河南省で3000万人のうち、300万人が大干ばつのため餓死した。そのうえ翌年にイナゴが大発生した。農民をいっそう飢餓の状態、生命の淵に追いつめたのだ。

 そこに日本軍が侵略してきた。そして、戦略的、意図的に米を放出した。

「中国の農民は、侵略者の日本軍を支持し、一方で猟銃をとり、青竜刀や鉄の鍬(くわ)をもって、困窮の原点となった蒋介石打倒に動いた」という、スケールの大きい餓死、戦争、歴史という問題と取り組み、『温故一九四二』を発表したのだ。

 劉震雲さんは、現在、北京で暮らす。インターナショナル・スピークアウトの壇上では、「災害には自然災害、人的災害、それに自分の心からくる災害もあります。数日前、私の友人が地下鉄で飛び込み自殺しました。友人は心の災害に打ち勝つことができなかったのでしょう。心の災害は、文化と芸術に携わるものが注目すべきひとつです。女性が男性にもたらす災害も、大きな災害のひとつだと思います」と話す(笑)。

●アルバート・ウェントさん

 サモアから来たアルバート・ウェントさんは、小説『サラブレッドに乗った小悪魔』を発表した。サモアは火山の上に乗っている小さな島国。自然災害は、真実とちがう偶像崇拝(ヒーロー)の歌を作り出した。小悪人がヒーローになる、ユーモアがたっぷりの小説だ。

「アルバートさんは、個人的に体験された災害はありますか?」という吉岡さんの質問に答えて、彼は子どものころに二度、ひどい疫病を経験したと話す。それは水疱瘡と、麻疹(はしか)だった。

「疫病も大変な災害です。人々はこれを忘れがちです」。アルバートさんが20年かかって書きあげた作品『マンゴーのキス』は、1918年に2500万人を犠牲にしたインフルエンザの流行について書いたもの。「この疫病の災害では、サモアの島民は5分の2が死亡しました」と補足した。

 壇上のアルバートさんは、サモアの神話を引用しながら、「発明の能力、創造の能力は神からの贈り物です。サモアにはそういう言い伝えがあります。人類はこの贈り物で、たくさんの物を創造してきました。科学的な液剤、機械、核兵器も。しかし、人類は神からの偉大な贈り物を誤った使い方をしてきました。いままさに人類最大の災害の脅威に直面しています。それは地球温暖化です」と、今後はさらに大きくなるだろう問題を提起した。

「太平洋という広大な海原で、サモアの先祖は5000年かけて探索を行い、居住をしてきました。しかし、この海原を汚染するには数百年しかかかっていません。多くの島々は(地球温暖化で)海抜が上がるにつれて、海に埋もれてしまう状況にあります。偉大なる神からの贈り物(発明の能力、創造の能力)をもちいて、地球を救うことを祈っています」と訴えた。

●スーザン・カウシル&ラス・ブルーサードさん

 2005年8月末に、巨大ハリケーン・カトリーナが、アメリカ南部の大都市であるニューオーリンズを襲った。堤防が数か所で破壊され、市域の8割が水を被った。死者は約1500人、使用不能の家屋は20万棟以上に及んだ。

 ニューオーリンズは歴史のある都市である。河川、運河、港湾を活用とした貿易港として栄えてきた。全米の3割をまかなう石油産出でも発展した。他方で、ジャズやブルースが生まれ、世界的にも有名な「音楽の都」となった。

 しかし、市域の拡大から、街の大半が海抜より低いところにあった。ニューオーリンズの街を守るはずの堤防が、地下岩盤に固定されておらず、泥の層にただ埋めていた。つまり、手抜き工事だったのだ。

 巨大なハリケーンで、堤防が破壊された。それはまさに人災だった。

 スーザン・カウシル&ラス・ブルーサードは、ニューオーリンズに住むミュージシャンである。巨大ハリケーン・カトリーナが襲ってきたとき、スーザンさん(ギター)は公演旅行中だった。旅先から連絡を取った、夫のラスさん(ドラマー)から、「危険だから、ニューオーリンズに戻ってきちゃいけない」と言われた。スーザンさんの兄は行方不明だった。

 テレビは濁流に飲まれた街の様子を伝えていた。彼女は数日間、そんなニュースばかり見ていた。食欲も、気力もないし、重い気分が募るばかり。突然、一人のミュージシャンが部屋に飛び込んできて、「みんなテレビなんか消そうぜ、楽器を持って外に出よう」と叫んだ。スーザンさんはそれで、災害地で果たすミュージシャンの役割に目覚めたのだという。

 吉岡さんは壇上のふたりに、「アパートが流された。そのことをどのように感じられましたか」と質問した。

 ニューオーリンズの市街地は軍隊と警察によって封鎖されていた。スーザンさんは特別許可をもらい街に入った。「家に帰ってきて、アパートのドアを開けたとき、人生が真っ逆さまにひっくり返ったような気がしました。椅子がキャビネットの上だったり、いろいろな物が一緒くたになっていたり、部屋全体がひとつのメチャクチャな塊になっていました。本当に泣きたい気持ちになりました」。

 行方不明の実兄から、携帯電話の留守電にメッセージが入っているとわかった。「状況はひどい、怖いよ。食べ物も、飲み水もない。誰かきて、助けて」と悲鳴のような声が残されていた。兄の家に出向いてみた。2階建ての1階はいまなお水没していた。兄の遺体が見つかったのは、それから4か月後だった。

「私の心のなかには、亡くなった兄がいます。生前の兄はいつも『自分が死んだら、300歳まで生きるように、また戻ってくるよ』と話していました。となると、生き返ってきた兄が、今度は私の死を見取る。兄は、私が兄を失った悲しみを、今度は自分で経験しなければならないのです」と話す。

 ラス・ブルーサードさんは、巨大なカトリーナが街に大変な荒廃をもたらした状況を語る。「街の人々は生活を失い、家を失い、持ち物を失い、さらには愛するものを失った。しかし、痛みとか、悲しみとか、恐怖とかは徐々に霧のかなたに行くものだと知りました。この災害を通して、失ったもの以上に得たものがありました。それは英知と大きな愛情でした」と話す。「人々が心を開いて、互いに愛し、互いに理解しあう。それは奇跡です」。

 大災害を受けたニューオーリンズで、見ず知らずの被災者たちが互いに助け合ってきた、それらを語っているのだろう。

●デイビットさん

 デイビット&ロゼリンは、ニューオーリンズからきた、もう一組のミュージシャンである。デイビット&ロゼリンは、ベトナム戦争の反戦派として、ニューオーリンズの街頭でジャズを演奏し、フォークソングやブルースを歌ってきた。

「ミュージシャンも政治的に戦わなければならないときがある。黒人が公民権を獲得したとき、ベトナム戦争のとき、街頭の演奏を制限されたときも、当局を告発して戦ってきた。今度もそう。イラク戦争の4か月分の戦費をまわせば、ニューオーリンズの堤防を作り変えられる」と訴える。音楽を通して戦争に夢中のブッシュ政権と戦っているのだ。ふたりは歌う。「堤防を作ろう。戦争なんかしていないで」と。

 インターナショナル・スピークアウトの進行役である吉岡さんが、「デイビットさん、ハリケーンで、どういう体験をしましたか?」と聞いた。

 デイビットさんは、ハリケーンが襲ってくる前にニューオーリンズを逃げ出していた。「実際にハリケーンが襲ったさなかは、テレビを見て、洪水で街が失われていくのを、恐怖を持ってみていました。災害地域の人々には、数日間、何の助けも来ない。テレビが映し出すのは、人々が死んでいく、苦しんでいる場面ばかり」と話す。

 10日後、ニューオーリンズに帰ってきた。「軍の車とか、逃げていく人々の車とか、沿岸警備隊などとすれ違って、すごい経験だという気がしました」。

 友人たちとツアーに出かけ、06年1月初旬にニューオーリンズに戻ってきた。全国から集まった若者たちの支援組織ができていた。「私たちは演奏することも許された」。

 離れ離れになっていた、夫や妻たちが再開できた。いまだに会うことができない。さまざまな光景があった。体験談も数多く聞いた。「ハリケーンの間、屋根の上に取り残された。救出されたが、フリーウェーのコンクリートの上に置き去りにされた。2、3日は真夏の灼熱の太陽の下にさらされた」そんな経験を語り合っていた。

 破壊された街はいま徐々に修復されている。連邦の資金と労力がつぎ込まれているが、道路も水道管もまだ多くが不十分だという。「人々は必死になって、元

の状態に戻そうとしている。みないい人たちで、みんな努力をしています」と結んだ。

●莫言さん(モー・イェン)

 中国からノーベル文学賞が出るとすれば、最初は莫言さんだろう、といわれている。莫言さんの短編『秋の水』は、彼の名を世界的なものにした。

『秋の水』のストーリーは、「ノアの箱舟」の中国版ともいえる。広大な大湿原のなかに小高く目立つ丘があった。そこに男と女が駆け落ちでやってきて、掘っ立て小屋を作って暮らす。兵隊も役人もやってこない、隔絶された社会だ。

 大洪水が起こり、妖しげな人物が一人ひとりとたどり着く。ひとつの村が形成されていく。荒唐無稽な話しの連続に思えるのだが、「人間社会が形成される最初のストーリー」として、しっかり伝わってくる。

★閉会式で、莫言さんは挨拶に立った。

「地震、台風、干ばつ、洪水、火災、イナゴ、疾病。それらがもたらす飢えと寒さがたえず人類を痛めつけてきました。自然災害では、魂と肉体が過酷な試練を受けます。災害で、人間の心はより美しくも、非常に醜くなることもあります。そういう状態を見つめて表現することが、文学と芸術の神聖なつとめです」と話す。

「自然災害は恐ろしい。もっと恐ろしいのは人類がみずから編みだす災害です。

人類は邪な知恵で、戦争を発動し、核兵器を含む、殺人兵器を製造してきました。きっと戦争で死んだ人の数は、自然災害で死んだ人の数をはるかに上回るものと思っています」。

 世界各国の芸術家はみずからの作品のなかで、戦争に反対し、平和をたたえることが務めだと強調した。

「今日は天災も、人災も混在となっています。一人ひとりが災害の被害者となり、ときには災害の製造者になります。地球温暖化で氷が解け、海水が上昇し、環境が汚染されています。これは大自然が人類に対する報復です。『地球はみんなの家』であり、美しく青い地球は宇宙の奇跡でもあります。人間がもし自分たちの狂った欲望を抑えることができなければ、きっと大自然の厳しい報復を受けるでしょう」と予見するのだ。

「文学、芸術に携わる者は、みずからの責任を認識し、人類社会が美しい方向に発展していくように、力を尽くすべきです」と莫言さんは結んだ。(以上)

★ コメント 莫言さんは《人類は邪な知恵で、戦争を発動し、核兵器を含む、殺人兵器を製造してきました。きっと戦争で死んだ人の数は、自然災害で死んだ人の数をはるかに上回るものと思っています》と述べています。客観的に見れば、軍事抑止力を安全保障の柱に据える限り、このような世界を打開するのではなく続けていくことになります。

莫言さん《「地震、台風、干ばつ、洪水、火災、イナゴ、疾病。それらがもたらす飢えと寒さがたえず人類を痛めつけてきました」と述べています。このような事態にはデイビットさんの主張「堤防を作ろう。戦争なんかしていないで」こそ、必要な考え方です。日本の国際貢献も改憲してまでして軍事力の行使に力点を置くのではなく、その事態に必要な資金と非軍事的な人的派遣が大切だと思います。

映画「靖国 YASUKUNl」の試写会の経緯/山崎孝

2008-03-13 | ご投稿
靖国神社を題材にした「靖国 YASUKUNl」の試写会が、与野党の国会議員約80名を集めて3月12日の夜に開かれました。この映画は当初は自民党の一部議員のみで試写会を催すことを文化庁を通じて要求していました。配給会社のアルゴは「問題ある作品という風評が独り歩きするよりは、より多くの立場の人に見てもらった方がよい」と判断し、文化庁と相談のうえで全議員に案内を送ったという経緯があります。

以下はこの経緯を伝えた朝日新聞の記事です。

靖国神社を題材にしたドキュメンタリー映画の国会議員向け試写会が、3月12日に開かれる。この映画は4月公開予定だが、内容を「反日的」と聞いた一部の自民党議員が、文化庁を通じて試写を求めた。配給会社側は「特定議員のみを対象にした不自然な試写には応じられない」として、全国会議員を対象とした異例の試写会を開くことを決めた。映画に政府出資の基金から助成金が出ていることが週刊誌報道などで問題視されており、試写を求めた議員は「一種の国政調査権で、上映を制限するつもりはない」と話している。

 映画は、89年から日本に在住する中国人監督、李櫻さんの「靖国 YASUKUNl」。4月12日から都内4館と大阪1館でのロードショー公開が決まっている。

 李監督の事務所と配給・宣伝会社の「アルゴ・ピクチャーズ」(東京)によると、先月12日、文化庁から「ある議員が内容を問題視している。事前に見られないか」と問い合わせがあった。マスコミ向け試写会の日程を伝えたが、議員側の都合がつかないとして、同庁からは「試写会場を手配するのでDVDかフィルムを貸して欲しい。貸し出し代も払う」と持ちかけられたという。

 同社が議員名を問うと、同庁は22日、自民党の稲田朋美衆院議員と、同議員が会長を務める同党若手議員の勉強会「伝統と創造の会」(41人)の要請、と説明したという。同庁の清水明・芸術文化課長は「公開前の作品を無理やり見せろとは言えないので、要請を仲介、お手伝いした」といい、一方で「こうした要請を受けたことは過去にない」とも話す。

朝日新聞の取材に稲田議員は、「客観性が問題となっている。議員として見るのは、一つの国政調査権」と話す。同じく同党議員でつくる「平和靖国議連」と合同で試写会を開き、試写後に同庁職員と意見交換する予定だったという。

 「靖国」は、李監督が97年から撮影を開始。一般の戦没遺族のほか、軍服を着て自らの歴史観を絶叫する著者や星条旗を掲げて小泉元首相の参拝を支持する米国人など、終戦記念日の境内の様々な光景をナレーションなしで映し続ける。先月のベルリン国際映画祭などにも正式招待された。アルゴの宣伝担当者は「イデオロギーや政治色はない」と話すが、南京事件の写真で一部で論争になっているものも登場することなどから、マスコミ向けの試写を見た神社新報や週刊誌が昨年12月以降、「客観性を欠く」「反日映画」と報道。文化庁が指導する独立行政法人が管理する芸術文化振興基金から06年度に助成金750万円が出ていたことも問題視した。同基金は政府出資と民間寄付を原資とし、運用益で文化支援している。

 稲田議員は「表現の自由や上映を制限する意図はまったくない。でも、助成金の支払われ方がおかしいと取り上げられている問題を議員として検証することはできる」。

 アルゴ側は「事実上の検閲だ」と反発していたが、「問題ある作品という風評が独り歩きするよりは、より多くの立場の人に見てもらった方がよい」と判断し、文化庁と相談のうえで全議員に案内を送った。会場は、同庁が稲田議員らのために既におさえていた都内のホールを使う。

 李監督は「『反日』と決めつけるのは狭い反応。賛否を超えた表現をしたつもりで、作品をもとに議論すべきだ」と話す。(石川智也)

★稲田朋美衆院議員は一つの国政調査権の述べていますが、国政調査権の発動は衆議院や参議院が行ないます。国会議員40人以上の要求による予備的調査制度もあるが、稲田議員の言い分はこの範疇にも属さず、該当しません。

同映画の配給会社は「事実上の検閲だ」と反発しました。公開前の映画試写会を要求し、試写後にイデオロギー集団の「伝統と創造の会」や「平和靖国議連」に加盟する国会議員と文化庁職員の会談設定を考えれば、検閲の意図がふんぷんと匂う計画でありました。

同映画で南京事件の写真で一部で論争になっているものが登場することが問題だとするが、南京事件は映画に登場する写真の真偽如何で客観性が疑われ、非人道的性格を失う事件ではありません。

事件が起きた当初から外国特派員により世界に報道されて、南京に居た外国人牧師による実写フイルムもあります。日本軍幹部の日記にも記されています。自民党の若手議員の勉強会「伝統と創造の会」は、どのような資料で勉強しているのでしょうか。

私たちは表現の自由を脅かす企図には十分な警戒感が必要だと思います。

田中孝彦氏の述べる世界秩序の変化/山崎孝

2008-03-12 | ご投稿
2008年3月10日付朝日新聞「月曜日コラム」抜粋、筆者早稲田大教授(国際政治史)田中孝彦氏

(抜粋)

冷戦が終わって20年近くたつが、新しい世界政治の秩序の姿は、はっきりしない。さまざまな亀裂や衝突に彩られた現在の状況を「無秩序」とか、「混沌」と呼ぶ者もいる。なぜこんなことになっているのか。

冷戦までの近代の歴史を振り返ると、世界秩序は大戦争の後に大きく変化したことがわかる。第1次世界大戦や第2次世界大戦のような大戦争は、戦争前の秩序を破壊してしまう。戦争前に優勢だった勢力は、戦争によって力を失う。その一方で、戦争後、新たに優位に立った勢力がその軍事力や経済力を背景に、自分の理念や利益を反映した秩序を作り上げる。世界秩序は大戦争後の力関係の変化を反映して転換する、という歴史のパターンがここにある。

 冷戦の秩序は大戦争を経ずに終わった。しかし、力関係は劇的に変化した。ソ連は消滅し、米国は唯一無比の超大国になった。これまでの秩序転換の歴史パターンに従えば、米国による米国のための世界秩序ができあがってもおかしくない。だが、それとは逆の事実が、5年前のイラク戦争を境に明らかになってきた。

 イラク戦争の前、米国よりもはるかに力の弱い多くの国々が、戦争反対の立場を貫いた。戦後も米国は世界秩序どころかイラク国内の秩序すら築けず、国際社会の信頼を失ってしまう。力が大きいだけでは、新しい秩序を形成できないことが明らかになったといえる。従来の歴史のパターンをこわすような重要な変化が、現在、起こっているのだ。

その変化の一つは、冷戦期の中ごろから西側先進国の間で顕著になった「相互依存」が、冷戦終焉とともに地球大に広がったことだ。経済・社会面での国家間の交流が進んだことで、自国の存続は交流の相手の存在に大きく依存するようになった。

相互依存は軍事力や経済力の意味を変えた。この関係の中では、各国は自分に足りないものを他者に依存して補っている。もし関係を断絶したり攻撃をしかけたりすれば、その結果は自らにはね返り、相当な損失を強いられることになる。それゆえ、軍事的脅しや禁輸のような経済的脅しによって相手を思うように動かすことも難しくなる。

 つまり、冷戦後の世界政治では、軍事力や経済力の大小が、そのままそれぞれの国の影響力(=相手を実際に動かす力)の大小には反映しない。逆にいえば、軍事力や経済力が相対的に小さな国家でも、大国に対して異議申し立てをしたり不服従の立場をとったりしやすくなったことになる。先にのべたイラク戦争前の動向は、この頗著な事例だ。

 いま一つの重要な変化は、ヒト・カネ・モノ・情報の、国境を超えた交流が、歴史上前例がないほどに深まっていることだ。この変化によって、市民や私的な組織は、大国に対する抵抗や異議申し立ての国境を超えた連帯を作りやすくなった。

イラク戦争の直前1万人もの市民を動員した反戦運動は、インターネットを通じて形成された。最近ではサミットなどの先進主要国による国際会議が開催されるたびに、多くの人々が国境を超えて開催地に集まり、反グローバリズムなどの立場から異議申し立てを行っている。「国際テロ」は、より暴力的な事例であろう。テロ集団は国境を超えて自在に移動し、インターネットを利用して連絡をとりあうことで「9・11テロ」が実行されたことは、よく知られている。(以下略)

★ 田中孝彦氏は《戦後も米国は世界秩序どころかイラク国内の秩序すら築けず、国際社会の信頼を失ってしまう。力が大きいだけでは、新しい秩序を形成できないことが明らかになったといえる。従来の歴史のパターンをこわすような重要な変化が、現在、起こっているのだ。》と述べています。

このような国際状況の中で、国の最高法規の憲法を変えてまでも、日米軍事同盟を一層強化するための集団的自衛権行使を可能にすることはないのです。

戦争と外傷性ストレス障害/山崎孝

2008-03-11 | ご投稿
【アフガン・イラク戦争/米兵の心むしばむ/発病率、派遣回数に比例】(2008年3月10日付「しんぶん赤旗」)

 イラク、アフガニスタンに派遣された米陸軍兵士について、派遣回数が増えるほど精神疾患にかかる割合が高くなっていることが分かりました。陸軍が七日、調査結果を明らかにしました。

 調査は陸軍の「精神衛生諮問チーム」によるもので今回が五回目。イラク、アフガニスタンに派遣された約三千人の兵士が対象となりました。

 その結果、派遣回数が三、四回で、精神的な問題を抱えていた兵士は27・2%。これは一回の派遣(11・9%)、二回の派遣(18・5%)を大きく上回っています。

 その理由について、同チームの責任者ポール・ブリーズ中佐は「兵士らが完全に回復する前に戦場に戻っている」からだと説明。帰還してから次の派遣までの期間が短すぎると指摘しています。

 陸軍は現在、イラク、アフガニスタンへの派遣期間を通常の十二カ月から十五カ月に延長。ところが帰還してから次の派遣までの「在郷」期間は十二カ月のままです。ブリーズ氏は「もし十五カ月間派遣されるのであれば、十五カ月の『在郷』が必要と感じるのは当然だ」と指摘しています。

 また二〇〇七年に派遣された兵士のうち、精神疾患にかかっていたのは17・9%。これは前年の19・1%を下回ったものの、依然高い数字だといいます。

 今回の調査結果にも、イラク、アフガニスタンへの派兵長期化が兵士の心をむしばんでいることが示されています。(山崎伸治)(以上)

イラクに派遣された自衛隊員は、戦闘行為はせずに済みましたが、それでも外傷性ストレス障害に悩み、酒におぼれたり、睡眠不足が続き仕事につけなくなったり、自殺する人まで出ています。

しかし、自民党政府はそんなことはおかまいなしに、自衛隊員の任務を拡大する自衛隊海外派遣恒久法の制定を今秋の臨時国会に法案の提出を目指して作業を進めています。

自衛隊海外派遣恒久法は、武器使用の基準を拡大して、警護活動(駆けつけ警護も想定)や与えられた任務を妨害された場合に排除をする活動が盛り込まれていると言います。これらは海外での武力行使を容認することに繋がります。

自衛隊を海外に派遣する要件は、国連決議があるなしにかかわらず、”国連加盟国の要請”でも可能にすることが考えられています。

【参考】外傷性ストレス障害

外傷的体験とは、人の対処能力を超えた圧倒的な体験で、その人の心に強い衝撃を与え、その心の働きに永続的、不可逆的な変化を起こすような体験を意味します。そのような圧倒的な衝撃は、普通の記憶とは違って、単に心理的影響を残すだけではなく、脳に「外傷記憶」を形成し、脳の生理学的な変化を引きおこすことが近年の研究で明らかにされています。PTSD患者の神経生理学的徴候は、神経画像的研究、神経化学的研究、神経生理学的研究、電気生理学的研究などで証明されつつあります。外傷記憶は時がたっても薄れることがなく、その人が意識するしないにかかわらず、一生その人の心と行動を直接間接的に支配するのです。

外傷記憶を形成するような体験とは、戦争、家庭内の暴力、性的虐待、産業事故、自然災害、犯罪、交通事故など、その人自身や身近な人の生命と身体に脅威となるような出来事です。PTSDでは、その種の出来事に対して、恐怖、無力感、戦慄などの強い感情的反応を伴い、長い年月を経た後にも、このようなストレスに対応するような特徴的な症状が見られます。たとえば、患者はその外傷的体験を反復的、侵入的に再体験(フラッシュバック)したり、外傷的体験が再演される悪夢を見たり、実際にその出来事を今現在体験しているかのように行動したりします。あるいはそのような出来事を思い出させるような活動、状況、人物を避けたり、その結果として孤立化したり、感情麻痺や集中困難、不眠に悩まされたり、いつも過剰な警戒状態を続けていたりします。

年収200万円未満の人が全体の77%に上る/山崎孝

2008-03-10 | ご投稿
3月9日のNHKニュースより

国が毎月行っている労働力調査によりますと、15歳以上で働いている人の数は、去年1年間の平均で、前の年より86万人増えて5174万人となりました。このうち、パートや派遣など正社員ではない非正規雇用の労働者の数は、前の年より55万人増えて1732万人に上り、過去最高になりました。

また、非正規雇用の労働者が働く人全体に占める割合も過去最高の33.5%となり、働く人の3分の1を超えました。非正規雇用の労働者のうち、最も多かったのが「パート・アルバイト」の1164万人で、次いで契約社員の298万人、派遣社員の133万人となっています。

非正規労働者の割合は、30歳代後半から40歳代前半を除くすべての年代で増えていて、収入は、いわゆるワーキングプアの基準とされる年収200万円未満の人が全体の77%に上っています。日本総合研究所の小林英夫研究員は「企業が人件費を抑えようと非正規雇用を増やし続けていることの表れだと思う。企業の姿勢が変わらないかぎり、非正規化の流れは続くだろう」と話しています。(以上)

現在の日本は憲法9条の理念を生かし、憲法13条と25条の理念を生かすことが切実に求められています。

憲法は9条を守るという国民多数の声との現実と乖離はしていない/山崎孝

2008-03-07 | ご投稿
【新憲法議員同盟 まずは憲法審査会の始動だ】(3月5日付・読売社説)

憲法論議の前進へ、重要な意義を持つ新たな動きである。

鳩山幹事長や前原誠司前代表ら民主党幹部が、超党派の国会議員らで作る新憲法制定議員同盟(会長・中曽根康弘元首相)の顧問や副会長の役職に就いた。民主党議員の役員就任は初めてだ。

内外の変化が激しさを増し、憲法と現実との乖離(かいり)がますます進んでいる。民主党内でも、新たな時代の指針となる新憲法制定に正面から取り組まねばならない、との認識が強まっているのだろう。

鳩山幹事長は、民主党幹部の議員同盟役職就任を機に、「通常国会中に憲法審査会の立ち上げが動きだす可能性がある」と言う。

当面、急ぐべきは、衆参の憲法審査会の始動だ。衆参ねじれの下での与野党対決の現状から、民主党はこれまで、「冷静に憲法を論議する環境にない」として消極姿勢に終始してきた。

これは疑問だ。国民投票法に規定されている審査会を動かさないというのは、政治の怠慢だ。立法府の構成員として、国会で成立した法律を無視するようなことは、あってはならない。

何よりも、憲法審査会の場で、政治として取り上げるべき重要な課題がある。

一つは、国際平和活動の問題だ。新テロ対策特別措置法によって、インド洋での給油活動を再開したものの、1年だけの時限立法だ。いずれ、問題が再燃する。その際、いわゆる恒久法の制定問題も論議の俎上に上るだろう。

憲法抜きで、あるべき国際平和活動を論じることはできない。

国民投票法の付則は、選挙権年齢も20歳から18歳に引き下げ、民法の成年年齢についても法制上の措置を講じるよう求めている。

法制審議会は民法の成年年齢を18歳に引き下げるかどうかの審議を始めた。国民の責任・義務のあり方にとどまらず、人口減社会の将来像をどう考えるのか。

憲法審査会としても、こうした課題に関する多角的な議論を通じて、国、社会のあるべき姿を国民に示すべきではないか。

憲法論議を進めることに対し、民主党内には、慎重論が根強くある。旧社会党系の議員は、憲法改正には反対だ。次期衆院選に向けて野党共闘を維持するために、「護憲」を掲げる社民党や共産党への配慮もうかがえる。

だが、政略的思惑で憲法論議をゆがめたり、停滞させたりすべきではあるまい。鳩山幹事長らに期待するところである。(以上)

★ 読売新聞社の社説は《内外の変化が激しさを増し、憲法と現実との乖離がますます進んでいる》と述べていますが、憲法理念を無視した米国追従の自民党の安全保障政策によって「憲法と現実」との乖離が生まれたのであって、改憲の狙いである集団的自衛権行使可能にするは、国際情勢、特に日本の周辺地域が日米同盟を強化し集団的自衛権行使の必要性という情勢・現実から生まれているのではありません。

自衛隊発足当時の政府説明、国を防衛するための最低限の軍事力と専守防衛という目的を逸脱して、世界有数の自衛隊を持っている現実と、軍事志向の政治家の集団的自衛権行使の願望から見た「現実」との乖離です。国民の多数が望む 9条を守り、専守防衛の自衛隊という考えとの乖離ではありません。

★読売新聞社の社説で述べる《新たな時代の指針》とは、二国間の軍事同盟の強化ではなく、アジアが志向する多国間による安全保障体制の構築に対応・促進するアジア政策であるべきです。そして現実に東アジアで取り組まれているのは6カ国協議による平和と安定の環境構築です。

★ 経済について言えば、改憲勢力が脅威と考える中国とは、相互扶助の体制になっており、日本の最大の貿易相手国なのです。その中国とは「戦略的互恵関係」の構築が政府間で約束されています。福田首相が北京大学での講演で述べた「日中戦略的互恵関係に三つの柱」についての考え方からは改憲する必要性は見出せません。

★読売新聞社の社説は《憲法抜きで、あるべき国際平和活動を論じることはできない》と述べていますが、社説の文脈から推察すれば、「あるべき国際平和活動」とは、憲法9条に縛られない活動をさすのでしょう。米国流の武力に偏るテロとの戦いは成功を納めていない現実を見ていないようです。

★ 読売新聞社の社説は、法制審議会は《国民の責任・義務のあり方》をどう考えるのかと問いかけ、《憲法審査会としても、こうした課題に関する多角的な議論を通じて、国、社会のあるべき姿を国民に示すべきではないか》と述べています。近代憲法は個人の尊重と権利を保障し、権力への制限を示すのが正統的系譜だとされます。この読売新聞社の社説は逆の発想をしています。

【参考資料】福田首相、北京大学での講演で述べた「日中戦略的互恵関係に三つの柱」について

2007年12月28日午後、北京大学で行われた講演会で福田首相は、「日中両国の将来は、協力か対立か」といったものではなく、「いかに効果的に責任ある形で協力するか」が問われていると語り、その意味で「戦略的互恵関係の構築」という考えは、時代が求めているものだと述べた。そのうえで、戦略的互恵関係構築における三つの柱「互恵協力」、「国際貢献」、「相互理解・相互信頼」について講演した。講演の要約は以下の通り。

「互恵協力」について 改革開放30周年を迎える08年を前に、日本として、改革開放支援から“和諧社会”実現のための協力に軸足を移していきたい。

具体的には環境・省エネ分野で日本の失敗の経験を参考にしてほしい。

この日の首脳会談で「日中環境情報プラザ」や「省エネ・環境協力相談センター」の中国国内設置を提案した。また、3年間で1万人規模の環境・省エネ研修を行う考えである。

さらに互恵協力の発展には知的財産権保護の強化が必要。経済の健全な発展、市民の安全・安心確保の観点から日中間の効果的協力が必要だ。

「国際貢献」について ボーダレスの時代にあたり、両国政府は手を携えてチャンスを拡大し、リスクを抑制する必要がある。そのために日中関係だけに埋没することなく、世界の潮流に沿ってアジア、ひいては世界の安定と発展のために協力していく必要がある。

具体的な例を挙げると、気候変動の問題だ。これは国際社会が直面する最も重要な課題である。日中両国が責任ある主要国として協力しつつ、解決に向けて最大限の努力を払っていくことが重要。中国が気候変動の国際的枠組みに積極的に参加することが問題解決のために不可欠であることを強調したい。

北東アジアの平和と安全については、六者会合の議長国として問題解決に向けて重要な役割を果たしている中国と、より緊密に連携・協力していく。

国際社会の平和と安全にかかわる問題として、国連改革の面でも対話を緊密にし、日中が協力して改革を進めたい。

厳しい現実に直面するアフリカについては、日中がアフリカの持続的成長を助け、貧困から救うという共通の目標に向けともに行動し協力することができれば、と考えている。

「相互理解・相互信頼」について 相互理解を進めるには活発な交流が必要。その意味で3つの交流、すなわち①青少年交流、②知的交流、③安全保障分野での交流を強化していくことが、対話・理解・信頼という好循環を生み出す最善策である。

将来にわたり安定した日中関係を築いていくためには、今後50年、100年先といった長期的観点に立って互いに理解を深め、互いの違いを尊重し、ともに学び合っていく「人」の育成が日中双方にとって大切だ。

さらに日中の若手研究者同士が、日中関係だけでなく国際情勢について議論することにも意義がある。

安全保障分野の交流については、08年は日本の防衛大臣、海上自衛隊の艦艇が訪中する。双方の防衛関係者が相手国の有識者、民間人とも接する機会を設けることが重要だ。(以上)(「北京週報日本語版」 2007年12月28日より)

現在、中国との関係は中国製ギョーザ問題で、国民の間に中国に対する不信が高まっていますが、この不信は永久に続くものではありません。両国の相互依存の経済という現実を見据えた方向にそって解決すべき問題です。中国の温家宝首相は全国人民代表大会の冒頭で「人民大衆が安心できる食品を提供し、信用ある輸出品を作るようにしなければならない」と演説し、食品や医薬品など7700品目について安全基準を明確にし、生産や販売のハードルを引き上げる意志を表明しました。これに期待したいと思います。

日本は歴史の事実を踏まえなければならないと同じで、中国政府はギョーザ問題での客観的で科学的な事実を踏まえなければならないと思います。

「九条の会」に対抗する「新憲法制定議員同盟」が総会/山崎孝

2008-03-06 | ご投稿
【改憲同盟 自・民で新体制/役員に両党幹事長ら/“政府を代表して” 官房長官が発言】(2008年3月5日付「しんぶん赤旗」)

 自民、民主、公明、国民新各党などの改憲派議員でつくる「新憲法制定議員同盟」(会長・中曽根康弘元首相)は四日、国会内で総会を開きました。民主党幹部を新たに役員に加え、改憲策動を推進する新体制を発足させました。

 自民党からは安倍晋三前首相、伊吹文明幹事長、谷垣禎一政調会長らが新たに顧問に就任、民主党からも鳩山由紀夫幹事長が顧問、前原誠司副代表が副会長に就きました。二〇〇八年度予算案の衆院強行通過をめぐって「対立」姿勢をみせる自民、民主両党が、九条改憲という国のあり方の根本問題で基本的に同方向であることを示すものです。

 あいさつで中曽根会長は「憲法問題がいま冷えている最中に、なお国会議員の中には根強い憲法改正への意欲が充満している」とし、「超党派で最大公約数を求めながら国家像を決めていく大事業だ」と強調しました。これまでなかった民主党幹部の参加で、改憲機運を盛り上げる狙いを示しました。

 閣僚では町村信孝官房長官が参加し、「(中曽根氏から)内閣を代表して出てこいというご命令をいただき、これは天の声だとして私は喜んで参加した」などと発言。憲法改定を目標とする議員同盟の副会長に名を連ね、改憲の呼びかけの先頭に立つ立場を鮮明にし、憲法尊重擁護義務(憲法九九条)に公然と違反する行動に出ました。

 また、鳩山邦夫法相、高村正彦外相、額賀福志郎財務相らが役員に名を連ねています。

 総会では当面の活動方針として(1)衆参両院の憲法審査会始動へ働きかけをさらに強める(2)民主、公明両党の議員を中心に会員の増強を進める(3)「九条の会」に対抗していくため地方の拠点づくりを進める、ことを確認。五月一日には「新憲法制定推進大会」(仮称)を憲政記念館で開催することを決めました。(以上)

★自民党も民主党の議員も一番重要な憲法問題では同じ穴の狢です。米国の軍事力に依存する安全保障体制です。アジアと共生して行く視点が弱いのです。

「しんぶん赤旗」は「新憲法制定議員同盟」の解説を掲載しています。以下の通りです。

 新憲法制定議員同盟の新役員体制の発足は、これまで参加のなかった民主党幹部を組み込むことで、参院選で挫折した改憲策動を盛り上げることに狙いがあります。議員同盟幹部は、「政局の中で民主党との対立はいろいろあるが改憲は党派を超えた課題であり、政界再編を狙っているわけではないが、客観的には大きく動かす軸になるだろう」と語りました。

 それは憲法守れの国民世論に追い込まれた改憲派の危機感のあらわれでもあります。

 四日の新憲法制定議員同盟の総会では「拠点となる地方組織づくり」を方針として確認しました。

 愛知和男議員同盟幹事長は活動方針の説明の中で「われわれと正反対の勢力、『九条の会』と称する勢力が、全国に細かく組織作りができておりまして、それに対抗していくにはよほどこちらも地方に拠点を作っていかねばなりません。そこが今後の活動の大きな焦点となる」と強調。「各党支部や青年会議所などに頼んで拠点になってもらうことも一つかと思う」と提起しました。

 中曽根康弘会長も「各党の府県支部に憲法改正の委員会をつくり、全国的な網を張っていくことが私たちの次の目標。そしてできれば超党派の全国的な国会議員、地方議員の連合の会をできるだけ早期につくりたい」と発言しました。

 「九条の会」を名指しして「対抗」意識をむき出しにした発言は、焦りの表れです。

 自民党は〇五年の「新憲法草案」の発表後から全国的なタウンミーティングの開催や国民運動の展開を繰り返し提起してきました。しかし、現実には改憲促進の “国民運動”の広がりは見られませんでした。「戦後レジームからの脱却」を掲げた安倍内閣の下で改憲手続き法が強行されましたが、国民世論は「九条改定反対」の方向に大きく動いています。

 昨年の「新憲法制定議員同盟」の発足に当たっても「九条の会」に対抗した国民運動の展開を提唱していましたが、実現せずにいます。九条改定の主張そのものが国民的に受け入れられていないことの反映です。(中祖寅一)