いせ九条の会

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憲法は9条を守るという国民多数の声との現実と乖離はしていない/山崎孝

2008-03-07 | ご投稿
【新憲法議員同盟 まずは憲法審査会の始動だ】(3月5日付・読売社説)

憲法論議の前進へ、重要な意義を持つ新たな動きである。

鳩山幹事長や前原誠司前代表ら民主党幹部が、超党派の国会議員らで作る新憲法制定議員同盟(会長・中曽根康弘元首相)の顧問や副会長の役職に就いた。民主党議員の役員就任は初めてだ。

内外の変化が激しさを増し、憲法と現実との乖離(かいり)がますます進んでいる。民主党内でも、新たな時代の指針となる新憲法制定に正面から取り組まねばならない、との認識が強まっているのだろう。

鳩山幹事長は、民主党幹部の議員同盟役職就任を機に、「通常国会中に憲法審査会の立ち上げが動きだす可能性がある」と言う。

当面、急ぐべきは、衆参の憲法審査会の始動だ。衆参ねじれの下での与野党対決の現状から、民主党はこれまで、「冷静に憲法を論議する環境にない」として消極姿勢に終始してきた。

これは疑問だ。国民投票法に規定されている審査会を動かさないというのは、政治の怠慢だ。立法府の構成員として、国会で成立した法律を無視するようなことは、あってはならない。

何よりも、憲法審査会の場で、政治として取り上げるべき重要な課題がある。

一つは、国際平和活動の問題だ。新テロ対策特別措置法によって、インド洋での給油活動を再開したものの、1年だけの時限立法だ。いずれ、問題が再燃する。その際、いわゆる恒久法の制定問題も論議の俎上に上るだろう。

憲法抜きで、あるべき国際平和活動を論じることはできない。

国民投票法の付則は、選挙権年齢も20歳から18歳に引き下げ、民法の成年年齢についても法制上の措置を講じるよう求めている。

法制審議会は民法の成年年齢を18歳に引き下げるかどうかの審議を始めた。国民の責任・義務のあり方にとどまらず、人口減社会の将来像をどう考えるのか。

憲法審査会としても、こうした課題に関する多角的な議論を通じて、国、社会のあるべき姿を国民に示すべきではないか。

憲法論議を進めることに対し、民主党内には、慎重論が根強くある。旧社会党系の議員は、憲法改正には反対だ。次期衆院選に向けて野党共闘を維持するために、「護憲」を掲げる社民党や共産党への配慮もうかがえる。

だが、政略的思惑で憲法論議をゆがめたり、停滞させたりすべきではあるまい。鳩山幹事長らに期待するところである。(以上)

★ 読売新聞社の社説は《内外の変化が激しさを増し、憲法と現実との乖離がますます進んでいる》と述べていますが、憲法理念を無視した米国追従の自民党の安全保障政策によって「憲法と現実」との乖離が生まれたのであって、改憲の狙いである集団的自衛権行使可能にするは、国際情勢、特に日本の周辺地域が日米同盟を強化し集団的自衛権行使の必要性という情勢・現実から生まれているのではありません。

自衛隊発足当時の政府説明、国を防衛するための最低限の軍事力と専守防衛という目的を逸脱して、世界有数の自衛隊を持っている現実と、軍事志向の政治家の集団的自衛権行使の願望から見た「現実」との乖離です。国民の多数が望む 9条を守り、専守防衛の自衛隊という考えとの乖離ではありません。

★読売新聞社の社説で述べる《新たな時代の指針》とは、二国間の軍事同盟の強化ではなく、アジアが志向する多国間による安全保障体制の構築に対応・促進するアジア政策であるべきです。そして現実に東アジアで取り組まれているのは6カ国協議による平和と安定の環境構築です。

★ 経済について言えば、改憲勢力が脅威と考える中国とは、相互扶助の体制になっており、日本の最大の貿易相手国なのです。その中国とは「戦略的互恵関係」の構築が政府間で約束されています。福田首相が北京大学での講演で述べた「日中戦略的互恵関係に三つの柱」についての考え方からは改憲する必要性は見出せません。

★読売新聞社の社説は《憲法抜きで、あるべき国際平和活動を論じることはできない》と述べていますが、社説の文脈から推察すれば、「あるべき国際平和活動」とは、憲法9条に縛られない活動をさすのでしょう。米国流の武力に偏るテロとの戦いは成功を納めていない現実を見ていないようです。

★ 読売新聞社の社説は、法制審議会は《国民の責任・義務のあり方》をどう考えるのかと問いかけ、《憲法審査会としても、こうした課題に関する多角的な議論を通じて、国、社会のあるべき姿を国民に示すべきではないか》と述べています。近代憲法は個人の尊重と権利を保障し、権力への制限を示すのが正統的系譜だとされます。この読売新聞社の社説は逆の発想をしています。

【参考資料】福田首相、北京大学での講演で述べた「日中戦略的互恵関係に三つの柱」について

2007年12月28日午後、北京大学で行われた講演会で福田首相は、「日中両国の将来は、協力か対立か」といったものではなく、「いかに効果的に責任ある形で協力するか」が問われていると語り、その意味で「戦略的互恵関係の構築」という考えは、時代が求めているものだと述べた。そのうえで、戦略的互恵関係構築における三つの柱「互恵協力」、「国際貢献」、「相互理解・相互信頼」について講演した。講演の要約は以下の通り。

「互恵協力」について 改革開放30周年を迎える08年を前に、日本として、改革開放支援から“和諧社会”実現のための協力に軸足を移していきたい。

具体的には環境・省エネ分野で日本の失敗の経験を参考にしてほしい。

この日の首脳会談で「日中環境情報プラザ」や「省エネ・環境協力相談センター」の中国国内設置を提案した。また、3年間で1万人規模の環境・省エネ研修を行う考えである。

さらに互恵協力の発展には知的財産権保護の強化が必要。経済の健全な発展、市民の安全・安心確保の観点から日中間の効果的協力が必要だ。

「国際貢献」について ボーダレスの時代にあたり、両国政府は手を携えてチャンスを拡大し、リスクを抑制する必要がある。そのために日中関係だけに埋没することなく、世界の潮流に沿ってアジア、ひいては世界の安定と発展のために協力していく必要がある。

具体的な例を挙げると、気候変動の問題だ。これは国際社会が直面する最も重要な課題である。日中両国が責任ある主要国として協力しつつ、解決に向けて最大限の努力を払っていくことが重要。中国が気候変動の国際的枠組みに積極的に参加することが問題解決のために不可欠であることを強調したい。

北東アジアの平和と安全については、六者会合の議長国として問題解決に向けて重要な役割を果たしている中国と、より緊密に連携・協力していく。

国際社会の平和と安全にかかわる問題として、国連改革の面でも対話を緊密にし、日中が協力して改革を進めたい。

厳しい現実に直面するアフリカについては、日中がアフリカの持続的成長を助け、貧困から救うという共通の目標に向けともに行動し協力することができれば、と考えている。

「相互理解・相互信頼」について 相互理解を進めるには活発な交流が必要。その意味で3つの交流、すなわち①青少年交流、②知的交流、③安全保障分野での交流を強化していくことが、対話・理解・信頼という好循環を生み出す最善策である。

将来にわたり安定した日中関係を築いていくためには、今後50年、100年先といった長期的観点に立って互いに理解を深め、互いの違いを尊重し、ともに学び合っていく「人」の育成が日中双方にとって大切だ。

さらに日中の若手研究者同士が、日中関係だけでなく国際情勢について議論することにも意義がある。

安全保障分野の交流については、08年は日本の防衛大臣、海上自衛隊の艦艇が訪中する。双方の防衛関係者が相手国の有識者、民間人とも接する機会を設けることが重要だ。(以上)(「北京週報日本語版」 2007年12月28日より)

現在、中国との関係は中国製ギョーザ問題で、国民の間に中国に対する不信が高まっていますが、この不信は永久に続くものではありません。両国の相互依存の経済という現実を見据えた方向にそって解決すべき問題です。中国の温家宝首相は全国人民代表大会の冒頭で「人民大衆が安心できる食品を提供し、信用ある輸出品を作るようにしなければならない」と演説し、食品や医薬品など7700品目について安全基準を明確にし、生産や販売のハードルを引き上げる意志を表明しました。これに期待したいと思います。

日本は歴史の事実を踏まえなければならないと同じで、中国政府はギョーザ問題での客観的で科学的な事実を踏まえなければならないと思います。