いせ九条の会

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戦争と外傷性ストレス障害/山崎孝

2008-03-11 | ご投稿
【アフガン・イラク戦争/米兵の心むしばむ/発病率、派遣回数に比例】(2008年3月10日付「しんぶん赤旗」)

 イラク、アフガニスタンに派遣された米陸軍兵士について、派遣回数が増えるほど精神疾患にかかる割合が高くなっていることが分かりました。陸軍が七日、調査結果を明らかにしました。

 調査は陸軍の「精神衛生諮問チーム」によるもので今回が五回目。イラク、アフガニスタンに派遣された約三千人の兵士が対象となりました。

 その結果、派遣回数が三、四回で、精神的な問題を抱えていた兵士は27・2%。これは一回の派遣(11・9%)、二回の派遣(18・5%)を大きく上回っています。

 その理由について、同チームの責任者ポール・ブリーズ中佐は「兵士らが完全に回復する前に戦場に戻っている」からだと説明。帰還してから次の派遣までの期間が短すぎると指摘しています。

 陸軍は現在、イラク、アフガニスタンへの派遣期間を通常の十二カ月から十五カ月に延長。ところが帰還してから次の派遣までの「在郷」期間は十二カ月のままです。ブリーズ氏は「もし十五カ月間派遣されるのであれば、十五カ月の『在郷』が必要と感じるのは当然だ」と指摘しています。

 また二〇〇七年に派遣された兵士のうち、精神疾患にかかっていたのは17・9%。これは前年の19・1%を下回ったものの、依然高い数字だといいます。

 今回の調査結果にも、イラク、アフガニスタンへの派兵長期化が兵士の心をむしばんでいることが示されています。(山崎伸治)(以上)

イラクに派遣された自衛隊員は、戦闘行為はせずに済みましたが、それでも外傷性ストレス障害に悩み、酒におぼれたり、睡眠不足が続き仕事につけなくなったり、自殺する人まで出ています。

しかし、自民党政府はそんなことはおかまいなしに、自衛隊員の任務を拡大する自衛隊海外派遣恒久法の制定を今秋の臨時国会に法案の提出を目指して作業を進めています。

自衛隊海外派遣恒久法は、武器使用の基準を拡大して、警護活動(駆けつけ警護も想定)や与えられた任務を妨害された場合に排除をする活動が盛り込まれていると言います。これらは海外での武力行使を容認することに繋がります。

自衛隊を海外に派遣する要件は、国連決議があるなしにかかわらず、”国連加盟国の要請”でも可能にすることが考えられています。

【参考】外傷性ストレス障害

外傷的体験とは、人の対処能力を超えた圧倒的な体験で、その人の心に強い衝撃を与え、その心の働きに永続的、不可逆的な変化を起こすような体験を意味します。そのような圧倒的な衝撃は、普通の記憶とは違って、単に心理的影響を残すだけではなく、脳に「外傷記憶」を形成し、脳の生理学的な変化を引きおこすことが近年の研究で明らかにされています。PTSD患者の神経生理学的徴候は、神経画像的研究、神経化学的研究、神経生理学的研究、電気生理学的研究などで証明されつつあります。外傷記憶は時がたっても薄れることがなく、その人が意識するしないにかかわらず、一生その人の心と行動を直接間接的に支配するのです。

外傷記憶を形成するような体験とは、戦争、家庭内の暴力、性的虐待、産業事故、自然災害、犯罪、交通事故など、その人自身や身近な人の生命と身体に脅威となるような出来事です。PTSDでは、その種の出来事に対して、恐怖、無力感、戦慄などの強い感情的反応を伴い、長い年月を経た後にも、このようなストレスに対応するような特徴的な症状が見られます。たとえば、患者はその外傷的体験を反復的、侵入的に再体験(フラッシュバック)したり、外傷的体験が再演される悪夢を見たり、実際にその出来事を今現在体験しているかのように行動したりします。あるいはそのような出来事を思い出させるような活動、状況、人物を避けたり、その結果として孤立化したり、感情麻痺や集中困難、不眠に悩まされたり、いつも過剰な警戒状態を続けていたりします。