いせ九条の会

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どちらが現実を直視していないか/山崎孝

2007-07-23 | ご投稿
朝日新聞7月22日付記事は次のように伝えています。

小泉前首相は7月21日、大阪府高槻市での演鋭会で、自衛隊が戦力にあたらないとする考え方について「めくらになっちゃってる」と発言した。その直後に「差別用語だから、撤回しないといけない」と述べ、「現実を直視していない」と言い換えた。

 小泉氏は「総理は何でも批判される。(自分が首相だった時に) 『自衛隊は外国から見たら軍隊じゃないか。戦力あるんじゃないか』と言って批判された」と語った。そのうえで、憲法9条2項について「常識に合わない。だからそこを変え、自衛軍を保持するとする方が自然だ」と自民党の憲法改正草案をアピール。「戦力ない自衝隊なんて意味がない。これを戦力ないんだって(言うのは)、もう(現実を)見ない、めくらになっちゃってる」と述べた。(以上)

小泉前首相は在任中に近代憲法の常識である立憲主義に反する、憲法を現実に合わすと述べていましたから、この考えに基づく演説と思います。

自衛隊には戦力があります。しかし、日本が攻撃された場合のみに用いられる戦力です。自民党の改憲は、米軍と肩を並べて共に戦う時に(安倍首相の表現)戦力を使うようにすることです。従って自衛隊に戦力があるか、ないかが改憲の論争点ではありません。

小泉前首相は《憲法9条2項について「常識に合わない」》と言っていますが、小泉前首相の在任中に始めた在日米軍の再編で、自衛隊の司令部が米軍の司令部と同居(一体化)することこそ世界の常識に合いません。自衛隊のある幹部は、自衛隊と在日米軍の一体化が進めば、進むほど日本独自の政策が困難になると述べています。

米軍のグアムへの移転費は日本の負担は3兆円と言われています。外国の軍隊の移転費を負担することも他国には例を見ないことだと言われています。これも世界の常識と合いません。

イラクに派遣した陸上自衛隊員の命を守った現実があります。海外で武力行使をしてはならない憲法規定により、イラクで自衛隊は宿泊地を何回も攻撃を受けましたが、戦闘行動を任務としなかったため、強固なシェルターに避難することが出来ました。武力組織が海外で戦わなくても、日本国民には通用します。自衛隊などのあり方を常識論で論ずるならば、小泉政権の政策の方が世界の常識に合わないこと方が多いのです。

憲法9条2項は日本の戦争の歴史の所産です。憲法9条2項は、憲法前文と9条1項とワンセットになった条文で、日本が軍隊を持とうとしなかったのは、戦前の日本が中国に派遣した軍隊は暴走する、軍部が政治に介入をして気に入らない内閣を倒したり、政治家を殺して戦争への道に引っ張っていった教訓を踏まえたものです。憲法の規定はこのことを理解しないといけないのです。だから当時の日本国民の多数は軍隊を持たないとする現在の憲法を歓迎しました。自衛隊が発足したときには、「海外に派遣しない」とした国会決議をしています。

小泉前首相が、現実・事実を直視しなかったことを挙げれば、国際世論がイラク戦争に反対し、当時の国連事務総長から国際法違反といわれたイラク戦争を支持し、イラク特措法の規定が自衛隊の活動するのは非戦闘地域だとすることに関連した質問に、自衛隊の派遣するサマワが戦闘地域か非戦闘地域かわからない(小泉前首相の国会答弁)所に自衛隊を派遣したことです。国連決議1441ではイラク攻撃は出来ないとする国連安全保障理事会の多数意見や国際法学者の見解を無視して、小泉前首相はこの決議を根拠にして何回もイラク戦争支持を正当化しています。

小泉政権より始めて安倍政権が引き継いだ航空自衛隊のイラクでの空輸の実態について中日新聞の情報を参考にして述べると、現場が常識としていることを、空自関係者は「(輸送する)米兵がイラクで何をしているかは正直、分からない。(任務は)聞かないのが現場の常識であり、暗黙のルールだ」と言い切ります。

そして活動現場の現実は、2007年7月に入り、開戦以来の米兵の死者数は3600人を突破。死が日常化している戦場で「戦闘地域か非戦闘地域か」運ぶ人員が「戦闘員か非戦闘員か」の問いかけ自体が、現実を無視した「ナンセンスな議論だ」という。政府見解で「非戦闘地域」となっているバグダッド空港も、実態は戦場に近い。

隊員の耳にも日々、確認情報が届く。「離陸前の待機中、機体のすぐ上を複数の迫撃砲弾が飛んだ」「飛行してきたばかりのルートを着陸直後、ミサイルが通過した」。いずれも数分の差で被弾していた可能性が高い。中堅の隊員は「飛ぶ日には必ず自室に遺書を置いていく隊員もいる」と明かします。この現実は自らが制定した法にも違反しています。このイラク派遣空自の活動の現実を直視して、日本国民(自衛隊員)の命を守るために政策を改めなければならないのは、小泉前首相や安倍首相なのです。このことを含めて有権者は参院選で意思を表明しなければならないと思います。

小泉前首相は「総理は何でも批判される。(自分が首相だった時に)とのべていますが、そうではありません。小泉前首相が北朝鮮に行き、「日朝平壌宣言」をしたときは、小泉政権の政策を批判していた人たちは賛成をしています。政権党の政策が国民にとって良いか悪いかで判断します。