いせ九条の会

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人は容姿から判断するべからず/山崎孝

2007-07-05 | ご投稿
【普天間移設の修正応じず 小池防衛相が就任会見】(2007年7月5日付中日新聞)

防衛相に内定していた小池百合子氏は四日午後、皇居での認証式を経て正式に就任し、女性初の防衛閣僚が誕生した。

小池氏は防衛省で就任会見を行い、在日米軍再編の焦点である普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題で、沖縄県や移設先の名護市が求めている日米合意案の修正には応じない姿勢を示した。

小池氏は「それ(修正)を始めると時間との関係もある。日米合意に基づいた理解を地元に求める」と述べた。

米国による原爆投下については「人道的に認められないのは明らか」と指摘。久間章生前防衛相の「しょうがない」発言については「日本が核廃絶の旗振りをする上で、『しょうがない』と言ってしまったら、そこで終わってしまうのではないか」と述べた。

小池氏はこれに先立つ防衛省での着任式で、北朝鮮の核問題などに触れ「わが国周辺の安全保障環境は厳しいものがある。安全を保つため、多機能で弾力的な実効性のある防衛力を構築する」と強調した。(以上)

小池防衛大臣はテレビで美人キャスターとして名前を売って政界入りした人で、容姿はスマートに見えますが、その思想は、改憲・右翼団体「日本会議国会議員懇談会」の副幹事長を務めたこともあり強面の人物です。優しくはありません。

7月5日の朝日新聞は小池防衛大臣の就任記者会見の模様を伝えています。小池氏の防衛相就任会見は約1時間にも及び、久間前防衛大臣が辞任に追い込まれた原爆投下や核に関する質問が相次いだ。小池氏は米国の原爆投下を「人類への挑戦」と批判したが、唯一の被爆国として核廃絶を訴える立場と米国の核抑止力に依存する現実の中で、答えは明快さを欠いた。

「人道上の観点から問題があると思っている」。核兵器の使用が国際法上違法かどうかを聞かれた途端、小池氏の歯切れは悪くなった。米国の原爆投下を「人類への挑戦」と答えたことと対照的だった。改めて問われると、「準備してくれているので」と事務方が用意した想定問答を見ながら「法律的なこと、これまでの国際的な推移など研究したい」と答えるのが精一杯だった。

核兵器の使用について日本政府の公式見解は「国際法の基盤にある人道主義の精神に合致しない」で、違法性を明言しない姿勢をとり続けているからだ。

会見ではジョセフ核不拡散問題特使の発言、や米国の原爆投下への歴史的評価についても質間が出た。小池氏はジョセフ氏の見解を「(日本とは)異なる;説明したものの「アクション? 今のところありません」と具体的な米国側への働きかけは否定した。(以下略)

ジョセフ核不拡散問題特使の7月3日の発言は、「原爆の使用が終戦をもたらし、連合軍側の万単位の人命だけでなく、文字通り、何百万人もの日本人の命を救ったという点では、ほとんどの歴史家の見解は一致する」と述べた。このような仮定の話で原爆の投下を合理化することはできません。日本降伏の条件であるポツダム宣言が出来る前にすでに米大統領が原爆投下命令を下していました。

小池防衛大臣は北朝鮮の核問題などで「わが国周辺の安全保障環境は厳しいものがある」との情勢認識ですが、この情勢認識と対照的な情勢認識を述べた人物がいます。7月5日付朝日新聞紙上で、5月までホワイトハウス国家安全保障会議のアジア部長を務めていたビクター・チャ氏が述べていることを抜粋して紹介します。

(前略)「非核化の『次の段階の措置』を今年中に終えるというのは各国共通の理解だ。2月合意の草稿には『年内』という文言が入っていた。北朝鮮が明記に反対したため削除されたが、理解はできている」

「ベルリン協議の時点では、BDA資金の全額返還という道筋はできていなかった。4月10日、米財務省は返還を受け入れるという非常に難しい決断をした。一連の過程で北朝鮮に問題の深刻さを理解させることができたので、今後は核施設の停止に焦点を当てようと決断した」(中略)

「1年前と違うのは、国連決議を得たことだ。北朝鮮との交渉で大事なのは、北朝鮮とはやる気を出させる誘因と説得力。圧力という言葉を使いたくない。国連決議を手にしたことで、我々はいつでも強い行動をとることが出来る」(以下略)

ビクター・チャ氏は「北朝鮮にやる気を出させる誘因と説得」をポイントにおいて北朝鮮と交渉したことを明らかにしています。日本政府の圧力一点張りでは成功をしないのです。6者合意の第2段階は、北朝鮮が第2段階の措置(核施設の無能力化)を取れば5カ国は共同して重油95万トン相当を北朝鮮に提供することになっています。

自民党政権は拉致問題は1980年代に起きた人権侵害なのに、現在の北朝鮮の脅威を煽る政治材料として利用しました。国民を煽ったツケが回ってきて合理的な対話が出来ず、米国から問題の着地点を聞かれても答えられず、6者協議で苦しい立場に立たされます。「北朝鮮にやる気を出させる誘因と説得」というポイントをおいて、国交正常化の課題とともに拉致問題解決に取り組まなければなりません。