いせ九条の会

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『自民党 新憲法草案のポイント』を国連の広報文章で検証する/山崎孝

2007-07-07 | ご投稿
【参院選へ自民が改憲パンフ 海外派兵のため「自衛軍」化】(2007年7月6日付「しんぶん赤旗」より)

 自民党が参院選で本格的な憲法論議をするよう改憲問題の解説パンフレット『自由民主党 新憲法草案のポイント』を発行していたことが五日分かりました。その中で改憲手続き法による調査専念期間(三年間)の解除直後に「憲法改正の発議」ができる、自衛隊を「自衛軍」とするのは海外派兵のため、などの本音を盛り込んでいます。

 問題のパンフレットは中山太郎・同党憲法審議会会長が主導して作製したものです。三十三ページにわたり二十三の項目について問答形式で解説。巻頭で中山氏は「我が党のすべての候補者のみなさんに正確にご理解いただくために、取り急ぎ、作成した」とその意図を述べています。

 また冒頭では、今回参院選での選出議員の六年の任期内に改憲発議が可能になるとして、選挙中に本格的な憲法論議をかわす必要を強調しています。

 改憲手続き法では、改憲のための国民投票制度が施行されるのは三年間の「調査専念期間」(いわゆる凍結期間)を経た二〇一〇年五月以後。仮に改憲日程が具体的に進むとしても改憲原案の審議は、その後から始まる、というのが一般的な解釈です。

 ところがパンフレットでは「3年間は、漠然とした憲法論議しかできない期間などでは全くなくて…『改憲の是非とその具体的な項目の抽出』を行う調査期間であり、この『調査専念期間』の解除後は、直ちに憲法改正原案の審査・起草、そして衆参両院の3分の2の議決を経ての『憲法改正の発議』に直結することとなるものなのです」と明記。凍結期間明け即改憲発議へ直結だと宣言しています。

 現行九条の二項を削除し、自衛隊を「自衛軍」と変えた点については「自衛隊は、海外に出ると、世界の常識に照らし合わせて、軍として扱われます」「自衛隊が国際社会の要請に応じて世界でさまざまな活動に従事するようになった現在、この(自衛軍でないこととの)矛盾が、大きな支障となっています」と記述。自衛隊の海外派兵先にありきの九条改悪というねらいが明らかにされています。(以上)

『自由民主党 新憲法草案のポイント』に書かれた「自衛隊が国際社会の要請に応じて世界でさまざまな活動に従事するようになった現在、この(自衛軍でないこととの)矛盾が、大きな支障となっています」という主張を、国連の広報センターの文章で検証してみます。

「国連の平和維持活動とは何ですか」(1998年6月作製)の部分からの抜粋です。

国連の平和維持活動には、軍人要員だけでなく文民警察官、選挙監視団、人権監視団、その他の民間人が参加します。

国連平和維持軍は、これまでに、武装解除や軍隊の解散、文民警察官の訓練と監視、選挙の組織や監視などのほか、各種の国連機関やその他の人道的組織と協力しながら、難民の帰還を助け、人権の尊重を監視し、地雷を撤去し、復興を開始させてきました。

国連は独自の軍隊や文民警察をもっていないため、その派遣団に参加するかどうか、参加するときにはどのような人員と軍備を提供するかは各加盟国が決定します。

平和維持活動を成功させるためには、明確で実践的な権限、本部と現地における効果的な指令、加盟国による政治・財政面での持続的な支援、そしておそらく最も重要な要素だと思われる紛争当事者の協力が必要です。平和維持活動には、配置される国の政府、および通常その他の当事者の同意が必要であり、いかなる形であれ、どちらかの当事者に味方する形でその活動が利用されてはなりません。平和維持軍の最も強力な「武器」は、国際社会全体を代表しているという事実に基づく不偏性と合法性なのです。

国連平和維持活動に参加する部隊は、小火器を携行し、自己防衛のため、または正式に権限を授与された業務の実行を武装した人が妨げた場合に、最低限の武力を用いることが認められています。監視団と文民警察は、通常、非武装です。

平和の「実施」(enforcement)活動を含め、国連の平和維持活動は、他の形態による多国籍軍の介入と混同されてはなりません。安全保障理事会は、武力衝突または平和の脅威に対処するために、軍事力を含む「必要なあらゆる手段」の使用を加盟国に認めることがあります。加盟国は、1950年には朝鮮戦争の際に、1990年代にはイラクのクウェート侵攻に対応して、安全保障理事会から与えられたそのような権限に基づき、連合部隊を形成しました。またソマリア、ルワンダ、ハイチ、ボスニア・ヘルツェゴビナでも、国連の活動に加えて多国籍軍が配備されました。1997年には、アルバニアの状況に対処するために、安全保障理事会が「意思の連合」による行動を承認しました。中央アフリカ共和国では多国籍平和維持軍の配置を承認しましたが、これは、1998年3月、国連中央アフリカ・ミッション(MINURCA)に引き継がれました。

1948年以来、48の国連平和維持活動が実行されました。そのうち35は、1988年から1998年の間に安全保障理事会によって創設されたものです。1998年6月現在、約1万4,000人の平和維持隊員が参加し、16の活動が行われています。これまでに、75万人を超える軍人および文民警察官と、数千に及ぶその他の民間人が国連平和維持活動に携わってきました。こうした任務の遂行中に1,500人以上が死亡しています。

どのくらいの費用がかかっていますか 国連は、1997年7月から1998年6月の平和維持予算を約10億ドルと推定しています。旧ユーゴスラビアでの国連平和維持活動の費用が反映された1995年の約30億ドルよりかなり低くなっています。すべての加盟国が、自分たちで定めて合意された方式で、平和維持活動の費用を負担します。しかし、1998年2月時点で、現在および過去の平和維持活動に関する約16億ドルが未納になっています。 (抜粋以上)

平和維持活動で肝心なことを《加盟国による政治・財政面での持続的な支援、そしておそらく最も重要な要素だと思われる紛争当事者の協力が必要です》と述べています。紛争当事者の協力が必要なのに、安倍首相の主張するような、他国の軍隊が攻撃されたからといって応援に駆けつけて、その紛争当事者と戦闘行動をして衝突の規模を拡大させることは平和維持活動の目的に反します。

武器の使用は《国連平和維持活動に参加する部隊は、小火器を携行し、自己防衛のため、または正式に権限を授与された業務の実行を武装した人が妨げた場合に、最低限の武力を用いることが認められています。監視団と文民警察は、通常、非武装です》と規定しています。どこにもこれ以外の行動を認めていません。

イスラエルとヒスボラの軍事衝突に国連は停戦を勧告し、停戦合意が成立し、国際部隊の受け入れを容認した段階で、レバノン紛争の平和維持活動を行なった国際部隊は国連憲章第42条の武力制裁を適用しない形で行なわれています。イスラエル軍に国際部隊は攻撃を受け死者が出ましたが、制裁するために追撃まではしていません。平和維持活動のほとんどは加盟国の侵略に対処したものではありません。

《参加するときにはどのような人員と軍備を提供するかは各加盟国が決定します》

これらを見ればどうしても日本は自衛隊を軍隊にして、集団的自衛権行使が出来る軍隊でなければならない理由はありません。平和主義の現行憲法の下で、自衛隊、警察官、消防士、医療関係の民間人などで平和維持活動の出来る分野の活動に参加すればよいのです。平和維持活動を効果的に出来る組織を作れば、その組織の中で平和維持活動に適した要員の訓練が出来ると思います。