一風斎の趣味的生活/もっと活字を!

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今日のことば(99) ― A. ブロサ

2006-02-21 10:59:04 | Quotation
自分がしたことを条件反射的に相対化する論理を、ブロサ氏はミメティスムと指摘する。「わが国だけが悪いのではない。他国もやっている」といった論理だ。「仕返し主義」「模倣の論理」などの訳語が研究者の間で候補にあがっている。フランス語の「mimer(模倣する)」から派生、元来は生物学の「擬態」という意味だ。学校を例にブロサ氏は説明する。校庭で子どもがけんかをしていた。「どっちが先にやったんだ」と先生が2人に尋ねる。「あっちです、先生」――双方から同じ答えが。植民地支配、アジアや太平洋での戦争などをめぐり公然と繰り返される日本の政治家の問題発言などは、そうした「校庭シンドローム」ともいうべきレベルの議論だとブロサ氏は指摘する。「アジアの植民地支配を先に始めたのは、ぼくたち日本人ではないのに、何でいつもぼくらだけが悪者にされるんだ」とか「確かに殴ったかもしれないが、ぼくらがやった以上に、ぼくらだって殴り返されたじゃないか」とか。
(「仕返し主義」今も死なず」'06年2月20日「朝日新聞」夕刊)

A. ブロサ (Alain Brossat, 1946 - ) 
パリ第8大学教授。専門は政治哲学。スターリン主義やジェノサイド、監獄制度などについて領域を横断する研究を展開。
フランス語の著作に『災厄の試練』('96)、『刑務所と訣別するために』('01) など。

名前がつけられたことで、実態がはっきりすることがある(言語による「分節化」)。
この「ミメティスム」などは、その1例。

小生は、「ミメティスム」ということばを知る前は、「先生言いつけ主義」とでもいうようなイメージを持っていた(上記引用の「校庭シンドローム」に近いもの)。

いずれにしても、「ミメティスム」の何と無責任なこと!
また、「校庭シンドローム」ということばに見られるように、子どもじみたこと!
まともな大人のする「言い訳」じゃあないね。