一風斎の趣味的生活/もっと活字を!

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今日のことば(98) ― アントニー・D・スミス

2006-02-17 10:25:11 | Quotation
「民族主義は、専制的な体制が変革され民主化された数多くの事例の原因ではないかもしれないが、そうしたことに度々つきまとう動機であり、打ちのめされた人々の誇りの源泉であり、〈民主主義〉と〈文明〉に仲間入りないし再び仲間入りするための承認された方式である。それは今日また、民衆の同意をかち取り民衆の熱意を引き出すような政治的連帯をめぐる唯一のヴィジョンと論拠をもたらしている。」
( 『ナショナリズムの生命力』 )

アントニー・D・スミス (Anthony D. Smith)
「イギリスの社会学者。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス教授。オックスフォード大学を卒業し、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで博士号取得。ナショナリズム研究を専門とし、国民(ネイション)およびナショナリズムを近代特有の産物とみるエリック・ホブズボームやアーネスト・ゲルナーの議論に対して、それ以前から存在する文化的共同体(エトニ)との連続性を重視する立場をとる。」
(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より)

今回、この文章を引用したのは、「ナショナリズムの応用問題」の参考資料としてである。

「ナショナリズムの応用問題」では、何回かに分けて、林櫻園の思想に関して紹介してきた。
櫻園にとって、ナショナリズムの核心を〈攘夷〉(=外夷に対する国民戦争)と言い表していることはお分かりになったと思う。
そして、それが民族の「誇りの源泉」であったことも。
また、櫻園の立場から見た〈近代化〉が、実際に明治政府によって行なわれた〈近代化〉とは、かなり違ったものになった可能性も。

その機序を示すのに、このアントニー・D・スミスのことばは、多少の参考になると思う。

参考資料 アントニー・D・スミス、巣山靖司監訳『20世紀のナショナリズム』(法律文化社)
     アントニー・D・スミス高柳先男訳『ナショナリズムの生命力』(晶文社)

関曠野
『民族とは何か』
講談社現代新書
定価:本体756円(税込)
ISBN4061495798