一風斎の趣味的生活/もっと活字を!

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ナショナリズムの応用問題 その10

2006-02-18 11:22:38 | Opinion
林櫻園の攘夷戦争論について語ってきたわけであるが、ここで問題になるのが、天皇制である。

弟子たちの起こした〈神風の乱〉でも分るように、櫻園は本居宣長の孫弟子にあたる国学者でもあった。
「(国学者たちがもっとも信頼すべき古典として『萬葉集』と『古事記』とは)ともに古代天皇制確立期に、支配者の手によって編集されたものであるから、国学思想はいきおい天皇中心主義を絶対的なものとして、宗教化する結果となっていった。国学が幕末明治維新にあたって、天皇制絶対主義を形成するうえに、有力なイデオロギー的支柱となったのは、そのことによるものである。」(藤谷俊雄『神道信仰と民衆・天皇制』)

しかし、櫻園は、
「古道を実行する方法は古典のうちに明記されているのに、宣長はそれに気づかなかった」(渡辺京二『神風連とその時代』)
と批判し、自らは、
「神との交通能力を回復してこの〈奇(く)し霊(び)なる道〉を復興することに集中した」(渡辺、前掲書)
のである。

その中から「審神者(さにわ)」や「宇気比(うけい)」といった呪術的な方法が出てくるわけだが、そこに立ち入るつもりはない(〈神風の乱〉の際に、弟子の太田黒伴雄が、〈宇気比〉によって行動を決したという事実を指摘するだけでいいだろう)。

問題は、前述したように天皇制である。

藤谷俊雄
『神道信仰と民衆・天皇制』
法律文化社
定価:本体3,800円(税別)
1980年初版発行