一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

2014年・年末麺紀行1

2015-12-08 12:43:06 | 旅行記・その他の地域
2014年12月、長崎を旅行した際に「青春18きっぷ」を購入したため、それを消費すべく、再び旅行に出る必要に迫られた。
行きのANAで機内誌を読んだ時、山形県のラーメンが紹介されており、むしょうに食べたくなった。山形のあたりは蕎麦も有名で、蕎麦街道なるものもある。私は食に重きを置かないほうだが、年末の旅行先はここにしようと思った。
2014年は12月28日で仕事納め。翌29日から2泊3日で東北方面への旅に出た。

29日(月)朝。飛行機なら時間が決まっているから動かねばならないが、今回はオール「青春18きっぷ」利用なので、いつ出掛けてもよい。これが私の腰を重くする。
テレビでは「暴れん坊将軍」の再放送をやっていて、これがなかなか面白い。しばらく見ていたら、かなりヤバイ時間になってしまった。いくら時間に融通が利くといっても、今日泊まる宿は決まっている。逆算するとそれほど余裕もなく、さすがに焦って、11時過ぎに、私は家を出た。
最寄り駅の改札で青春18きっぷにスタンプを捺してもらおうとしたが、前のカップルが忘れ物をしたとかで窓口にへばりつき、数分待たされた。人生、どこでタイムロスを食らうか分からない。
田端から京浜東北線に乗り、赤羽で新宿湘南ライン・特別快速に乗り換える。赤羽発11時32分。車内はそこそこ人が多く、浦和までは立って行った。
大宮で宇都宮線に乗り換える。鈍行列車の旅に乗り換えはつきもので、これを億劫がっていては、旅はできない。もっとも大宮で乗り換えるなら、赤羽からこの宇都宮線に乗るべきだった。我が「時刻表」はスマホの鉄道アプリなので、ダイヤを俯瞰的に見ることができず、多少ムダ足をすることがある。
12時37分、古河着。ここがこの電車の終着である。次の待ち時間まで30分。私はとりあえず駅を出た。
古河といえば、本田小百合女流三段の出身地だ(というのは誤りで、実際は熊倉紫野女流初段の出身地。旅行当時は勘違いしていた)。ちょうど昼の時間なので、このあたりで食事を摂りたい。駅に隣接して中華料理屋があるが、ちょっと混んでいる。五目ヤキソバ842円や、ラーメン・半チャーハンのセット830円などは大いに食欲をそそられるが、ほかの店も見てみたい。
駅から少し歩いたところに、やはり中華料理屋があった。ここも美味そうだが、やはり客が多そうだ。
駅前に戻ると、満席になっていた。グズグズしていて、入りそびれた。これが私の人生である。どちらも本田女流三段(熊倉女流初段)が入ったことがあると思うと名残惜しいが、持ち時間が少なくなったこともあり、駅に戻った。
駅構内に立ち食いそば屋があったので、入る。今回は麺紀行なのだ。かけそば290円。こういう店のそばは例外なくうまい。ここもそうだった。
13時07分発の快速に乗る。車内はまだ人が多く、小山まで立つ。13時45分、宇都宮着。下車して餃子を食べたいが、どうも時間がないようだ。朝に余裕を持ちすぎて、今日は列車に乗りっ放しになるようであった。
タイム5分で黒磯行きに乗り換える。車内ではロングシートの向かいに座っていた小学生が、クリアファイルに入った路線図を熱心に見ていた。一人旅だろうか、どうも私より準備がいい。
14時42分、黒磯着。この駅で直流と交流に分かれるので、大抵の列車が乗り換えを余儀なくされる。次の発車まで50分。これが今日唯一の観光となる。
駅前にはすでに門松が飾られていた。こういう年末年始の光景が私は好きである。黒磯からは以前、那須温泉にお邪魔する時に路線バスを利用したことがある。しかし今回は時間がない。
市内をぶらぶらすると、古い建物が多く、なかなか味わい深い。駅前の突き当りを左折すると、郵便局が見えてきた。今日は平日なので、貯金ができる。「黒磯中央町郵便局・1,229円」。局内ではキャラクターグッズが売られており、私はキティちゃんステーショナリーポーチ(830円)と、アンパンマンぽち袋(108円)を買った。これはめいとおいへのお土産となる。
観光、といってももう時間がない。駅前に戻り、蕎麦屋に入って昼食である。蕎麦の基本は具がないものと心得ているので、もちろんもりそばを頼む(530円)。
蕎麦はツルツルしていて、美味かった。しかし蕎麦の風味は欠けたかもしれない。
店を出ると、道路を隔てた反対側に、石造りの和菓子屋があった。明治屋、とあった。
こういう店は、外観で得をしている。いかにも歴史が古そうで、名品を売っていそうではないか。
羊羹がウリのようで、私は「本練大納言(塩味)」(1,080円)と、大福(130円)を買った。初日からお土産を買うのは味が悪いが、この程度なら荷物にならない。
黒磯から東北本線に乗る。いままでも東北本線に乗っていたのだが、黒磯までは「宇都宮線」のほうが通りがいいようだ。
ここまで来ると、さすがに乗客も少なく、余裕で座れるようになってきた。空は早くもたそがれている。
約2時間列車に揺られて、17時31分、福島着。タイム4分の待ち合わせで、仙台行きに乗った。
18時59分、定刻を1分遅れて、仙台着。ここでの持ち時間は約40分である。もちろん仙台でも蕎麦を食べたいが、駅周辺にあるだろうか。
空はすっかり暗くなっていた。仙台駅前は広く、その喧騒は東京に勝るとも劣らない。シャレた建物も多く、やはりシャレたショップが入っている。私には縁のない世界である。
しかしこの調子では蕎麦屋はないな…と思ったら、立ち食い蕎麦屋風の食堂を見つけた。
(10日につづく)
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2013年12月の北陸旅行・8

2014-07-09 00:08:53 | 旅行記・その他の地域
最近は部屋に入ると、まずスマホの充電を行う。この習慣が我ながらイヤだが、そのスマホの充電ケーブルが、なくなっていた。
どこで落としたのか…。今朝はもちろんあった。ホテルからの出発間際、ぎりぎりまで充電しようと、ケーブルを使ったのだから…。いま思えば、それがマズかった。こんなもん、早くリュックの底深くに沈めておけばよかったのだ。
私はきょうの行動を思い出す。朝の立ち寄り温泉、郵便局、食堂、駅の待合室、列車内、永平寺…。そのどこかで落としたに違いない。一刻も早くそちらに問い合わせしたいが、時刻は午後10時にならんとしている。もうきょうの「捜索」は無理である。
最後に重大な難題を抱え、北陸旅行最後の夜は終わった。

翌31日(火)。北陸旅行と2013年、最後の日である。
朝、昨晩コンビニで買った菓子パンで朝食とし、ホテルをチェックアウトする。
ここ大垣駅は、鉄道マニアには切っても切れない駅である。東京駅から出発した、古くは普通夜行列車345M、新しくは「快速ムーンライトながら」の終着駅が、大垣だったからだ。「青春18きっぷ」利用の旅人はさらに西を目指し、安い料金で旅行を楽しんだのだ。しかしその「ムーンライトながら」も、いまは季節列車になってしまった。
大垣からは樽見鉄道(旧国鉄樽見線)も出ていて、これは乗車したいが、きょうは「NHK紅白歌合戦」を観なければならず、とても足を伸ばす時間がない。どこかで観光はできたとしても、それは途中下車駅の周辺に限られるだろう。
改札で「青春18きっぷ」に今旅行3個目のスタンプを捺してもらい、08時09分発の豊橋行き・特別快速に乗った。豊橋までは快速がビュンビュン走っていて、爽快である。大晦日の午前だから乗客もあまりいない。豊橋の近くになったころは、ガラガラになっていた。09時36分、豊橋着。
豊橋からは浜松行きに乗る。浜松10時25分着。4分の待ち合わせで、興津行きに乗り換える。しかし、さっき客がいない、と考えたのは誤りで、こちらは多くの客が乗っていた。浜松と静岡を結んでいるのだから当然か。私は立つよりなかった。
静岡へは定刻1分遅れの11時43分に着いた。ここで熱海行きに乗り換える。興津まで乗っても、どっちみち後続の列車に乗らねばならぬから、静岡からの始発列車に乗ったほうが得策である。
熱海には、定刻を2分遅れの13時09分に着いた。ここで昼食を摂るために途中下車する。なお、郵便局は、大晦日は休みである。
昨晩は自分が訪れた場所を前もって調べておいたので、この時間を利用して、ほうぼうへ連絡をする。しかしどこも、充電ケーブルはない、とのことだった。
もっとも、仮に見つかったところで、それを東京まで着払いで送ってもらったら、結構な額になってしまう。もう、代わりを買うのが賢明なのだ。ただ、2年余り使った充電ケーブルと「突然のお別れ」になってしまったのがつらかった。
大晦日ながら、熱海はものすごい人出だった。もうおせち料理はできているだろうに、みなはこれ以上何を買うのだろう。生魚でも買って、おせち料理をより豪勢にするということだろうか。
それよりも食事である。が、お店はどこも満杯だ。私はアーケードの商店街を抜け、右手に降りる。規模の大きな回転寿司屋があったので入るが、店内は満員である。しかも私は裏手から入ったようで、従業員が私に気づかない。こりゃダメだと、私は店を出た。
道の反対側に出ると、和定食屋があった。ランチ天丼が1,200円はちょっとアレだが、思い切って入ってみた。
ところが、天丼は売り切れとのこと。虫の居所が悪いときなら、「ご縁がありませんでしたネ」と店を出るところだが、ちょっと腹が減りすぎている。
海鮮丼が同額であったのでこちらを頼む。きょうは生物を食べる気分ではないが、やむを得ない。
ただ、あまり期待はできなかった。何というかこう、カウンターに立つ大将の覇気がなかったからである。
出された海鮮丼は果たして、白身魚とマグロとしらすが乗っているだけという、貧相なものだった(失礼)。シャリも少なく、1,200円でこの内容は、期待外れと言わざるを得なかった。
どうにも消化不良だったので、近くの蕎麦屋に入って口直しである。しかし、せいろ700円および店の応対は、これも期待外れと言わざるを得なかった。
もうよい、ここからは家に帰るのみである。14時35分の東京行きに乗る。青春18きっぷでは、グリーン料金の額だけでグリーン車に乗れるが、昼食でつまらぬ出費をしたので、今回は控える。
小田原で特別快速の連絡があったので、こちらに乗り換えた。ところがこれは、横浜で左に岐れ、高崎まで行く列車だった。
私は横浜で降り、後続の列車(東京行き)を待つ。ところがこれが、さっき私が乗った14時35分熱海発の列車で、クサッタ。こんなことなら、最初から熱海でグリーン車に乗り、優雅な旅をやればよかったのだ。
それもこれも、スマホで列車検索をしている弊害である。複数の列車を比較できないからこうなる。やはり俯瞰的に見る時刻表が分かりやすいが、荷物になるので、どうしても携行をためらってしまう。
16時16分、新橋着。最終ランナーの京浜東北線に乗り換え、これで北陸旅行は終了である。顧みて、旅行前は漠然とした行程しか描いていなかったが、まあまあおもしろい旅だったと思う。
ああもうひとつ、充電ケーブルを買わなければならない。しかし大晦日に、ケータイショップが開いているだろうか。しかし我がスマホには電池もほとんど残ってないし、もし店が閉まっていたら、正月はスマホなしで過ごすことになってしまう。それはやや困る。
最寄駅を降り、私はショップに向かう。
…あ、あああっ!!
(おわり)
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2013年12月の北陸旅行・7

2014-07-08 00:03:53 | 旅行記・その他の地域
行きにいっしょだった、さっきの女性4人組がいた。慌てて駆け出したりして、なんだか私が彼女らをストーカーしているように見える。…考え過ぎか。
永平寺口には、定刻より2分早い15時43分に着いた。数分の待ち合わせで、15時50分の上り列車に乗る。ここにもアテンダントさんがいた。日中はすべての列車に乗車しているようで、改めてうれしいサービスである。
乗客のひとりが、アテンダントさんから切符を購入している。アテンダントさんが車内補充券にパンチしてくれるやつだ。記念用に持ち帰るつもりだろう。私はその真似はしなかった。
16時09分、本日2度目の福井口で下車。これで3人目のアテンダントさんともお別れである。アテンダントさん、ありがとう。皆さまの乗車は大いに癒しになりました。
5分の待ち合わせで三たび三国芦原線に乗り、2つ先の田原町で下車した。ここは福井鉄道の乗り換え駅なのである。大都市以外で私鉄電車同士の乗り換えがあるのは珍しいと思う。
福井鉄道は福武線だが、かつては鯖浦線、南越線という路線もあった。しかしモータリゼーションのあおりを受け、どちらも30年以上前に廃止になっている。
4分の待ち合わせの16時22分、福井鉄道に乗車。処女地を行くのは気分がいい。
ところで今回の乗り継ぎは、事前に調べていたとはいえ、いずれも数分の待ち合わせで済み、神懸かり的だった。しかも、どれも1分の遅れもないのが凄い。改めて私は、バスや鉄道のダイヤの正確さに舌を巻く。世界に誇れるこの「神業」が、日本の鉄道ミステリーを支えているのだ。
さて福井鉄道福武線は、田原町~越前武生間21.7kmを1時間余りで結んでいる。私の乗った列車は斬新なデザインで、たとえば車両の継ぎ目にあるドアの形が円くなっていた。さらにその上部には、テレビモニターまで設置されていた。福井鉄道だってほかの中小私鉄と同様赤字のはずだが、こうして新造車両を投入しているのは頼もしい。
鉄道から車窓を眺めるのは楽しいが、冬の陽が落ちるのは早い。まだ午後4時台だが、早くも黄昏時である。
列車は専用軌道から併用軌道に移る。ここでひとつ問題がある。福井鉄道の路線図を見ると、田原町から2つ先の市役所前から、線路は福井駅前駅にチョロッと分岐しているのだが、この列車は福井駅前を通るのかという問題である。そのまま真っ直ぐ行かれたら、全線乗車が叶わない。
と、列車は市役所前に着いたあと、軌道を変えて福井駅前に乗り入れ、今度はバックして元の軌道に戻った。ちょっと、福井駅前に顔を出しました、という感じだった。なかなかおもしろい動きで、これで全線乗車は時間の問題となった。
列車は大道路を走ったかと思うと、人家の塀すれすれを縫うように走ったりして、なかなか愉快だ。遊園地の豆汽車に乗っている趣もあり、これで400円は安いと思った。
定刻を1分遅れの17時29分、列車は越前武生に着いた。これで福井鉄道も全線完乗となった。
福井~越前武生間は、北陸鉄道が並行して走っている。次は北陸本線に乗り換え、今夜宿泊予定の大垣までJRを乗り継ぐ予定だ。
しかしその前に夕食である。JR武生駅前に食堂があったので、入る。
席に着くと、ポスターが目に入った。「武生に来たらボルガライス」のコピーとともに、幕末の志士を思わせるオールバックの男性が描かれていた。よく見ると、このタッチは漫画家の池上遼一である。なぜに池上遼一!? と思うが、氏が武生の出身なのだろうか。
メニューを見るが、ボルガライスとは、ライスの上にオムレツが乗り、その上にトンカツが乗り、その上にお店特製のソースがかかっているものを云うらしい。
まさに「秘密のケンミンショー」に取り上げられてもおかしくない名物だが、北陸最後の食事は、さすがに生魚を食べたいところ。さんざん迷ったが、私は中にぎり寿司(1,500円)と、サーモンの押し寿司(500円)を頼んだ。ボルガライスはまたの機会である。
にぎりは、鮑?、カニ、マグロ、サーモン、イクラ、甘えび、カンパチなど8貫。味は平均的というか、もちろん美味しかったのだが、特筆すべきはサーモンの押し寿司で、トロのようにとろけるようで、美味かった。6貫で500円は本当に安かった。
店を出て、私は武生駅で、大垣までの乗車券を買う。今回の旅行では「青春18きっぷ」を利用しているが、1日あたりの料金は2,300円である。ところがここから大垣までは1,890円にしかならない。まあ多少の損を承知で1日ぶんを使用しても構わないのだが、正月に佐野厄除け大師へ日帰り旅行をする手もあるし、ここは1日ぶんを温存することにしたのである。
18時36分の北陸本線に乗る。車内は適当に乗客がおり、乗り換えの敦賀までは30分余りだったので、私はそのまま立って行った。
敦賀着19時09分。次の長浜行きは43分の待ち合わせである。
ところでここまでの道中、いくつかの店で目に付いた名称があった。「水ようかん」である。あるメーカーが作っているもので、福井ではこれが有名らしい。私は改札口外のキオスクでそれを探すが、なかった。
こうなると意地でも欲しくなる。私は駅前の商店街で水ようかんを求めるが、扱ってないとか売り切れたとか、そんなのばかりだ。
半分諦めて駅に戻り、もう一度キオスクで探すと、あった。私はありがたく2折(600円×2)を求め、ついでに「あん入り羽二重餅」(12枚入り・890円)も買った。
ここからは大垣に一直線である。敦賀からは内陸部に入り、ついに帰路の雰囲気である。が、周りは漆黒の闇で、よく分からない。
終点長浜着は20時35分。長浜駅の近くには、日本最古の駅舎「旧長浜駅」があり、鉄道ファンなら一度は訪れたいところだが、今回は素通りせざるを得ない。
8分の待ち合わせで、米原行きに乗る。米原にはわずか10分で着いた。ここで東海道本線上りに乗り換える。これがきょうのラストランナーとなる。
21時02分米原発、21時34分大垣着。きょうの宿は「Best inn大垣」である。これも例のアンケート記入作業により、いくらか安い宿泊料金(3,800円)になっている。
408号室に入ると、けっこうオシャレな内装だった。最近は部屋に入ると、やることが決まっている。私はリュックの中を探す。…うん? ない。私は中の荷物をぶちまけた。
…あれ? …ない…。…ない!! やっぱり、ない!! どこかに、落としたか!?
(つづく)
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2013年12月の北陸旅行・6

2014-07-07 00:51:24 | 旅行記・その他の地域
(6月25日のつづき)
有人切符売り場の窓口を見ると、「えちてつサポーターズクラブ」の案内があった。年会費1,000円で、購入すると普通切符が1割引になり、提携飲食店での割引が受けられる。LPSAファンクラブMinervaみたいなものだ。
年中利用している人にはありがたい特典だが、私は1日乗車券を利用しているし、もうここら辺で食事を摂ることもないから、恩恵は受けない。寄付するようなものだ。
しかも有効期限を見ると、いつ入会しても3月31日までとなっていた。これではいま買っても、3か月しか有効期間がない。余談ながらMinervaは、入会後丸1年、有効期間を保証してくれる。
しかし私は、早急に千円札を入手する必要に迫られている。私は、「えちてつを応援するんだ…」と自分に言い聞かせ、入会することにした。
壱万円札を差し出して、待望のお釣りをもらう。あれは20代のころ、旅先で同じような状況になり、私はキオスクのような土産物屋で両替を求めた。
店のおばちゃんは「今回だけだよ」と不愉快そうに替えてくれたが、本来は手数料を取られるところ。そのときのツケが、20年以上の時を経て回ってきたのだ。
さっきの4人組が待合室に入ってきた。彼女らはさっきから挙動不審の私を見て、どう思っているだろう。鉄道マニアは怖い、ぐらい感じているかもしれない。
隅のテレビでは「あまちゃん」の総集編が放映されていた。私も彼女らといっしょに、何とはなしに観る。
晴子が上京するためにタクシーに乗るのだが、この運ちゃんは彼女を有名人と認識したようである。彼がこの後の展開の鍵を握る感じだ…。
総集編は面白いところの詰め合わせだから面白いのは当たり前だが、これは最後まで観たくなるツクリだ。なるほど視聴率がいいわけだと思った。
余談ながら、「あまちゃん」でブレイクしたのは能年玲奈ではなく、有村架純だと思う。あれだけかわいらしい芸能人は、10年にひとりしか出ない。
私のほうは、バスの乗車時間が来た。私(たち)は後ろ髪を引かれる思いで、永平寺行きのバスに乗った。
と、バスが定刻より1分早く発車してしまった。乗客は私たちしかいないとフンでのものだが、珍しいことではある。
タイム12分で永平寺門前着。私は千円札を使い、410円を払う。まったく、これからいくらでも小銭が入るのに、あの旅行貯金は返すがえすも重大な手順前後だった。
さて、永平寺である。日本のお寺では、清水寺と並んで知名度がある古刹だと思う。時々テレビで特集が組まれるが、とにかく修行が厳しい。朝4時に起きるとか、食事中は私語厳禁とか、入浴は週に○回とか、煩悩の塊の私には、別世界の話である。
修行体験もあるが、私にはあり得ない話である。譬えが卑近で恐縮だが、刑務所のほうが、よほどラクだと思う。
正門参道を歩き、通用門をくぐる。まず、入口にて御朱印をお願いする。御朱印帳を預け、受け取りは帰りのときだ。続いて入場券を買う。500円は、まあそのくらい取るであろう。
廊下を右に曲がると、傘松閣がある。その手前で、お坊様から拝観の際の諸注意を受ける。外の気温のように、気分が引き締まる。傘松閣は畳が150枚以上敷かれている大広間で、天井には何枚もの絵が描かれていた。
ここから順路に従って観光である。先に進んで、右手にある東司(とうす)は御手洗いのこと。さらに進んで左手にあるのは僧堂。文字通り、修行僧の道場である。さらに階段を上るが、目を瞠るのは寺の「造り」だ。日本建築の粋を集めており、釘も極力使っていないと思われる。梁の太さもすごい。古木が醸し出す薫りが心地いい。これを鑑賞するだけで、数時間は経ってしまう感じだ。が、私には時間がない。きょうはこのあと、福井鉄道の乗りつぶしが控えている。結果論だが、2社の1日乗車券を購入したのは余計だった。せめてえちぜん鉄道だけにしておけば、さっきだって手許に400円が残っていたのだが…。
階段を上りきって左折すると、承陽殿(じょうようでん)。永平寺の御開山道元禅師の御真廟(お墓)である。
引き返して、左手にあるのは法堂(はっとう)。寺院の建物のことを伽藍(がらん)といい、永平寺では山門・仏殿・僧堂・庫院(くいん)・東司・浴室・法堂の七つのお堂を「七堂伽藍」と呼んでいる。法堂は七堂伽藍の一番奥にあり、各種法要が行われる。中央には本尊「聖観世音菩薩」を祀っている。その周囲は金細工できらびやかだ。
年の瀬であるが、ふつうに参拝客がいる。さすがに永平寺の知名度は高い。
ここから引き返し、右手に仏殿、左手に庫院を見る。そこは台所だ。そしてその突きあたりには、浴室がある。入浴も修行のひとつで、無言の中で行われるのは言うまでもない。
山門がある廊下を通る。ここは表からその威容を眺めたいところだが、敵わない。
東司を左折すると、祠堂殿がある。ここには全国の信者から収められた位牌などが安置されている。
そのまま直進すると、売店に出た。ここはいくらか納めたいところである。「道元禅師からのメッセージ」という、屏風状の小冊子が500円で売られていたので、いただく。
中を見ると、「無常ならざるもの」「どう生きるか」「人生に定年はない」「ひとの価値」など、道元禅師のメッセージが草花の綺麗な写真とともに紹介されている。これは一読の価値がある。
帰りに御朱印帳をいただいた。

「奉拝 平成二十五年十二月三十日 承陽殿 吉祥山永平寺」

大山康晴十五世名人の書を思わせる、丸みのあるやわらかな字で、まさに墨痕鮮やかな御朱印であった。
かなり駆け足の参拝だったが、すっかり心が洗われて、私は永平寺を出る。
ところが帰りのバス停がはっきりしない。行きと帰りでは、バス停が違うのだ。土産物屋のご主人に聞くと、坂を下りたところにあると言われた。
と、ちょうどバスがやってきた。15時33分発の永平寺口行きである。私は慌て気味にバスに駆け寄った。
…あああっ!!
(つづく)
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2013年12月の北陸旅行・5

2014-06-25 00:14:50 | 旅行記・その他の地域
列車の中に、制服姿の女性が見えた。彼女はえちぜん鉄道が擁する「アテンダント」である。えちぜん鉄道発足と同時に誕生したもので、車内での車掌業務に従事する。以前何かのテレビで特集されたのを観て、一度拝見したいと思っていた。今朝の下り列車に彼女らが乗車していなかったのは、朝が早かったせいだろう。
乗車してシートに座ると、アテンダントさんが会釈してくれた。クリーム色の制服に、黒のハットが愛らしい。これは心ときめく旅になりそうである。
10時39分発車。いま来た道を戻るのは味が悪いが、乗りつぶしでは仕方がない。
と、「次は三国です」の車内アナウンスがあった。アテンダントさんは列車の前方にいるが、この類の案内はしないようだ。
駅に止まり、人が降りれば深々とお辞儀をし、乗車すれば丁寧な挨拶をする。たったそれだけのことだが、それが絶妙の癒し感を醸し出していた。
何とか彼女の写真を撮りたいが、それではカメラ小僧になってしまう。今回は電車マニアとして乗っているので、その欲求はギリギリに抑えた。
気が付くと、この列車は「キッズおえかきでんしゃ」だった。地元「安田幼保園」ちびっこ諸君の力作が、網棚の上のスペースに整然と飾られていた。路線バスではできない、ナイスな企画であった。
11時25分、福井口着。ここで勝山永平寺線に乗り換える。えちぜん鉄道2線は、ここを基点に左右に分かれているのだ。アテンダントさんも引き続き、勝山永平寺線に乗るようだ。
11時30分、列車はもちろん1両で出発した。勝山永平寺線も30分ヘッドなので、分かりやすい。えちぜん鉄道も経営はラクでないはずだが、多くの列車を発着させているのは頭が下がる。
11時50分、永平寺口着。永平寺をお参りするには、ここからさらにバスに乗らなければならない。もちろんお参りしたいが、ここで2択である。乗客の大半が降りたが、私はそのまま勝山に向かった。乗りつぶしを優先したのだ。
列車は広大な畑の中を、淡々と走る。うっすらと雪化粧をした冬の景色がまばゆい。これぞ典型的なローカル線旅だと思う。
12時19分、終点勝山着。福井口から小1時間の旅で、このくらいの長さがちょうどよい。これでえちぜん鉄道は全線完乗である。アテンダントの山田さん、ありがとうございました。
駅前には恐竜の巨大オブジェがあった。この地方から恐竜の骨が発掘されたのか、勝山は恐竜を全面に押し出している。付近には「恐竜渓谷ふくい恐竜ジオパーク」や「恐竜博物館」があるが、これを見学していたら、永平寺をお参りできなくなってしまう。
とりあえず、昼食である。駅前に食堂があったので、入る。「福井名物セット」はみそカツ丼とおろしそばのセットで、これを頼む(850円)。みそのカツ丼は大好きというわけではないが、どちらも美味しくいただいた。
きょうは月曜日で、私はもうひとつやることがある。旅行貯金だ。駅前を流れる九頭竜川を渡ると、勝山郵便局があった。有人駅の近くに郵便局アリ、だ。きょうは12月30日なので、1,230円の貯金となる。1年でいちばん高い貯金額である。
小銭をほとんど吐き出したら1,230円になったので、ちょっとイヤな予感がしたが、これを窓口に出す。ゴム印には、恐竜のワンポイントが入っていた。
帰り、橋のたもとにも恐竜のオブジェがあった。改めて勝山は、恐竜の街なのだった。
13時20分の列車に乗る。上りももちろん、アテンダントさんが乗ってくれる。私に会釈してくれたのがうれしかった。
永平寺口13時48分着。アテンダントの中島さんとは、ここでお別れである。ありがとうございました。
さて永平寺へは、以前は列車で行った記憶があるのだが、その路線は2002年に廃止されてしまった。まったく永平寺への鉄路が無くなるとは、モータリゼーションの波はどれだけ高いのだ。
現在は京福バスの利用となる。隣接のバス停に駆けると、13時50分のバスがあった。が、なかなかバスが来ない。近くにはいつの間にか4人組の女性がいたが、彼女らは駅舎に向かってしまった。
そこで時刻表を見ると、きょう12月30日から休日ダイヤが適用されており、何と13時50分のバスは削減されていた。ここでも年末の余波か…。
それよりも私は、郵便局で大悪手を指していたことを再認識していた。
このとき私の所持金は壱万円札3枚に50円玉1枚、10円玉1枚、1円玉15枚しかなかった。これではバスに乗っても、おカネが払えない! 車内で万札は両替してくれないだろう。うあ、こんなことなら郵便局で壱万円札を使えばよかったと後悔したが、もう遅い。
付近に京福バスの事務所はなく、私は永平寺口駅舎に入るが、窓口には「両替お断り」の貼り紙があった。そうか…まあそうであろう。京福バスの便宜を、えちぜん鉄道が図ってくれるわけがない。
私は、待合室の入口付近でグズグズしている4人組の女性を一瞥して、表へ出る。商店かどこかで買物をしようと思ったのだが、辺りにそれらしき店はない。
千円札を入手するために、ほかにどんな手があるんだ…。
次のバスは14時20分である。私は途方に暮れた。
(7月7日につづく)
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