創作日記&作品集

作品集は左のブックマークから入って下さい。日記には小説、俳句、映画、舞台、読書、など…。そして、枕草子。

「わたしなりの枕草子」#362~#366

2012-03-31 07:33:22 | 読書
都合により、四日分UPします。
【本文】
【読み】
 一本五
 下の心(こころ)、構へてわろくて、清げに見ゆるもの
 下の心(こころ)、構へわろくて、清げに見ゆるもの。 唐(から)絵(ゑ)の屏風(びやうぶ)。
 石灰(いしばひ)の壁。
 盛物(もりもの)。
 檜皮葺(ひはだぶ)きの屋の上(うへ)。
 河尻(かうじり)の遊女(あそび)。

【読書ノート】
 下の心(こころ)=下地。構へて=必ず。
 盛物(もりもの)=装飾的なお供えの盛り物。
 河尻(かうじり)=河口。日やけ汐荒れした地肌。
 それぞれに意味があります。

「わたしなりの枕草子」#363
【本文】
【読み】
 一本六
 女の表着(うはぎ)は
 女の表着(うはぎ)は、
 淡色(うすいろ)。
 葡萄染(えびぞめ)。
 萌(もえ)黄(ぎ)。
 桜。
 紅梅。
 すべて、淡色(うすいろ)の類。

【読書ノート】
 これは同感です。

「わたしなりの枕草子」#364
【本文】
【読み】
 一本七
 唐衣(からぎぬ)は
 唐衣(からぎぬ)は、
 赤色。
 藤。
 夏は 二藍(ふたあゐ)。
 秋は 枯野。

【読書ノート】
 表着(うはぎ)に重ねる唐衣(からぎぬ)について。

「わたしなりの枕草子」#365
【本文】
【読み】
 一本八
 裳(も)は
 裳(も)は、
 大海(おほうみ)。

【読書ノート】
 裳(も)=平安時代以来の女房の装束で、腰から下の後方にまとった服。
 大海(おほうみ)=織物や蒔絵などで、大波・洲浜(すはま)・海松(みる)・磯馴(そなれ)松・貝など、海辺の景をえがいた文様。

「わたしなりの枕草子」#366
【本文】
【読み】
 一本九
 汗衫(かざみ)は
 汗衫(かざみ)は、
 春は 躑躅(つつじ)。桜。
 夏は 青朽葉(あをくちば)。
 朽葉。
【読書ノート】
 汗衫(かざみ)=童女の表着。
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「わたしなりの枕草子」#361

2012-03-30 08:39:40 | 読書
【本文】
【読み】
 一本四
 文字に書きて、あるやうあらめど、心得ぬもの
 文字に書きて、あるやうあらめど、心得ぬもの。
 板(いた)目(め)塩(じほ)。
 衵(あこめ)。
 帷子(かたびら)。
 屐子(けいし)。
 潘(ゆする)。
 槽(ふね)。

【読書ノート】
 文字=漢字。あるやう=意味。理由。漢字は表意文字だから。→百四十七段。
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「わたしなりの枕草子」#360

2012-03-29 08:26:20 | 読書
【本文】
【読み】
 一本三
 聞きにくきもの
 聞きにくきもの。
 声にくげなる人の、物言ひ、笑ひなど、うちとけたる気はひ。
 眠(ねぶ)りて陀羅尼読みたる。
 歯黒(はぐろ)めつけて、物言ふ声。ことなることなき人は、もの食ひつつもい、ふぞかし。
 篳篥(ひちりき)習ふほど。

【読書ノート】
 聞きにくき=聞くに堪えないもの。
 つけて=「て」はつつ。眠(ねぶ)りても同じ。ことなることなき人=格別のこともない人。
 篳篥(ひちりき)=雅楽の管楽器。→二百四段。まして練習はやかましい。
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「わたしなりの枕草子」#359

2012-03-28 07:17:34 | 読書
【本文】
【読み】
 一本二
 灯影(ひかげ)に劣るもの
 灯影(ひかげ)に劣るもの。
 紫(むらさき)の織物。
 藤の花。すべてその類(るい)はみなおとる。
 紅(くれなゐ)は、月夜にぞわろき。

【読書ノート】
 灯影(ひかげ)に劣るもの=灯火に照らされると見劣りがするもの。
 感覚が鋭いですね。
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「わたしなりの枕草子」#358

2012-03-27 07:43:39 | 読書
【本文】
【読み】
 一本一
 夜(よる)まさりするもの
 夜まさりするもの。
 濃き掻練(かいねり)の艶(つや)。
 むしりたる綿。
 女は、額(ひたひ)はれたるが、髪うるはしき。
 琴(きん)の声。
 容貌(かたち)わろき人の気はひよき。
 郭公(ほととぎす)。
 滝の音。

【読書ノート】
 夜(よる)まさりするもの=昼より夜の方がよく思われるもの。
 掻練(かいねり)=練って膠質(にかわしつ)を落としやわらかにした絹。
 むしりたる綿=むしってふわふわになっている真綿。
 額(ひたひ)はれたる=額が出ている。
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「わたしなりの枕草子」#357

2012-03-26 07:26:03 | 読書
【本文】
【読み】
 一本
  きよしと見ゆるもの のつぎに

【読書ノート】
 百四十二段の次ぎにあったらしい。増補とみられる。
 一本=書写するにあたって参照比較したうちの一つの本。「能因本」にはなぃ。
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「わたしなりの枕草子」#356

2012-03-25 11:36:27 | 読書
【本文】
二百九十八段
「まことにや、やがては下る」
「まことにや、やがては下る」と言ひたる人に、
  思ひだにかからぬ山のさせもぐさ
    誰か伊吹の里は告げしぞ

【読書ノート】
 やがて=間もなく。下る=京から地方に行く。
「思ひ」艾(もぐさ)に点ずる「火」を、「斯(か)からぬ」に「掛からぬ」を、「言ふ」に「いふき(伊吹)」に、「さ(然)と」に「里」をそれぞれ掛ける。
 掛詞のオンパレードです。
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「わたしなりの枕草子」#355

2012-03-24 08:14:18 | 読書
【本文】
二百九十七段
 便(びん)なき所にて
 便(びん)なき所にて、人にものをいひけるに、胸の、いみじう走りけるを、
「など、かくある」
と言ひける人に、
  逢坂(あふさか)は胸のみつねに走り井の
   みつくる人やあらむと思へば

【読書ノート】
 便(びん)なき所=具合の悪い場所。人にものをいひける=男と逢っていたところ。
「など、かくある」=(男が)。
 つねに=常に。走り井=清水がこんこんと湧き出る泉。
 みつくる=「見」と「水」を掛ける。
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「わたしなりの枕草子」#354

2012-03-23 08:47:53 | 読書
【本文】
二百九十六段
 ある女房の、遠江(とほたあふみ)の子なる人を
 ある女房の、遠江(とほたあふみ)の子なる人を語らひてあるが、
「『同じ宮人をなむ忍びて語らふ』と聞きて、恨みければ、『親などもかけて誓はせ給へ。いみじき虚言(そらごと)なり。ゆめにだに見ず』となむいふは、いかがいふべき」
と言ひしに、
  誓へ君遠江(とほたあふみ)のかみかけて
   むげに浜名の橋見ざりきや

【読書ノート】
 語らひて=深い仲。
 同じ宮人=(相手の男が)が(その女房と)同じ宮に仕えている女と。親などもかけて=親の名誉にかけても。いかがいふべき=どう言ってやったらいいでしょう。
 かみ=「守」=「神」の名誉にかけても。むげ=まったく。浜名の橋見ざりきや=その女に逢わなかった。浜名の橋=「逢瀬を渡る」等の意がある。→萩谷朴校注。
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「わたしなりの枕草子」#353

2012-03-22 08:13:29 | 読書
【本文】
二百九十五段
 男は、女親(めおや)亡くなりて
 男は 女親(めおや)亡くなりて、男親(をおや)の一人ある、いみじう思へど、心わづらはしき北の方出で来て後は、内にも入れ立てず、装束などは、乳母(めのと)、また故上(こうへ)の御人どもなどしてせさせす。
 西(にし)・東(ひむがし)の対のほどに、客人居(まらうどゐ)など、をかし。屏風・障子(さうじ)の絵も、見どころありて住まひたる。
 殿上のまじらひのほど、「口惜しからず」人々も思ひ、主上(うへ)も御気色(みけしき)よくて、常に召して、御遊びなどの仇(かたき)におぼしめしたるに、なほ、常にもの歎かしく、世のなか心に合はぬ心地して、すきずきしき心ぞ、かたはなるまであべき。
 上達部の、またなきさまにてもかしづかれたる妹(いもうと)一人あるばかりにぞ、思ふことうち語らひ、慰(なぐさ)めどころなりける。

【読書ノート】
 皇后定子崩御後の敦康(あつやす)親王の境遇を諷した随想かと思われる。→萩谷朴校注。他の文献、枕草子・小学館、石田穣治訳注、桃尻語訳「枕草子」にはそのような記載はありません。だが……。「主上(うへ)も……」の記載はそうとも取れるような気がします。すると、「心わづらはしき北の方」は彰子……。桃尻語訳の「註」に「この話に具体的なモデルがあるかとかなんとかは、もうこれ以上言えないけどねー」と、仄めかしています。
 住まひたる=別居している。まじらひ=宮仕え。御気色(みけしき)よく=お気にめされて。仇(かたき)=相手。すきずきしき心=「色好み」とするか、「風雅を愛でる心」→枕草子・小学館。とするか。下に、「かたはなるまで」=異常なまで、とあるのでまったく違ってきます。
 かしづかれ=大事にされている。
 敦康(あつやす)親王をネットで調べました。「風雅を愛でる心」の人であったのは間違いないと思います。后腹の第1皇子が立太子できなかったのは異例のことだと。享年二十。
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