創作日記&作品集

作品集は左のブックマークから入って下さい。日記には小説、俳句、映画、舞台、読書、など…。そして、枕草子。

「わたしなりの枕草子」#350

2012-03-19 08:31:11 | 読書
【本文】
二百九十二段
 左右の衛門尉(ゑもんのぞう)を
 左右の衛門尉(ゑもんのぞう)を判官(はうぐわん)といふ名つけて、いみじうおそろしう、かしこき者に思ひたるこそ。 夜行し、細殿などに入り臥したる、いと見苦しかし。布の白(しろ)袴(ばかま)、几帳(きちやう)にうちかけ、袍(うへのきぬ)の長くところせきを、わがねかけたる、いとつきなし。太刀の尻に引きかけなどして、立ちさまよふは、されどよし。
 青色を、ただ常に着たらば、いかにをかしからむ。
「見し有明ぞ」
と誰言ひけむ。

【読書ノート】
 百八十九段にも同様の記載があります。
 衛門尉(ゑもんのぞう)=衛門府の第三等官。判官(はうぐわん)=検(け)非(び)違(い)使(し)の大小尉を兼官している者で六位蔵人を兼務した者を言う。ところせきを=邪魔なのを。わがね=折り曲げて。つきなし=ふさわしくない。尻=裾。
「見し有明ぞ」=不詳。



「わたしなりの枕草子」#349

2012-03-19 08:31:11 | 読書
【本文】
二百九十一段
 よろしき男を、下(げ)種(す)女(おんな)などのほめて
 よろしき男を、下(げ)種(す)女(おんな)などのほめて、
「いみじうなつかしうおはします」
などいへば、やがて、思ひおとされぬべし。譏(そし)らるるは、なかなかよし。
 下(げ)種(す)に褒めらるるは、女だに、いとわるし。また、褒むるままに、言ひそこなひつるものは。

【読書ノート】
 なつかしう=「なつく」の形容詞化した語。そばに寄りたい気持。今の懐かしいの意は中世(一般に十二世紀末鎌倉幕府の成立から十六世紀末室町幕府の滅亡までをいう。)以降。やがて=たちまち。思ひおとされ=男の株が下がる。言ひそこなひつる=言い間違える。
 ここは凄いです。身分社会だからでしょう。でも今でも心の中で思うのは勝手です。あの女上司、下(げ)種(す)なんだから。