TOKKO(特攻)を観た。日系二世アメリカ人のリサ・モリモト監督の長編ドキュメンタリーである。とても悲しい物語だ。私達に出来ることは、一人として特攻を出さないこと。是非、若い世代に観てもらいたい。
時の廻廊
「時の廻廊」は完結しました。左のリンクをクリックして下さい。沢山の方に読んで頂いてありがとうございました。感想を期待しています。右クリック、対象をファイルに保存で、ダウンロードも出来ます。
もし見られないならアクロバットリーダーの最新版をダウンロードしてください。75%表示が見やすいと思います="http://www.adobe.com/jp/products/acrobat/readstep2.html">ここをクリック
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時の廻廊
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最初を書いたときは、1回で終わるかなあと思っていた。2回目を書いて、最初を1に書き直した。5回まで書き続けて、やっと終わりが見えた。僕は多分、この短篇から、かなり長い物語を紡ぎ出すだろうと思う。キーワードは敦賀だった。去年と今年、2回通過している。賢明な読者はお気づきだと思うが、発想と言うより、書いているうちに、「2001年宇宙の旅」、デイブとハルの会話を思い出していた。読んでいただいた方に感謝します。
春になった。私は春が嫌いだ。春は生殖のにおいに満ちている。性器である花は咲き乱れ、生殖を担う虫や鳥が飛び交う。なんていやな季節だろう。優と私とムッシュは一日中部屋の中にいた。珍しく休みが一致したのだ。テレビも一日中桜を映している。昼食後、私達にとっての事件が起こった。後片付けに動き出すはずのムッシュが動かない。二人はムッシュを見つめた。ムッシュが動かなくなった。
「ムッシュ」
語りかけても無反応だ。
「電池切れかなあ」
優が首をかしげた。
「ムッシュは電池で動いていたの?」
「さあ。でも、energyはfull だよ」
「死んだ」
私がぽつりと言った。
「死んだ」
優は繰り返した。私は少し泣いた。オブジェになってしまったムッシュを寝室に運んだ。優は私の肩を抱いた。私は目を閉じた。無数の桜の花びらが舞っている。優の涙が私の胸に落ちた。強いものに突かれた。気の遠くなるエクスタシーが私の全身を震わせた。二人は満開の桜の下にいた。優の身体が離れ、やがて、降り注ぐ無数の桜の花びらの中に消えていった。彼は私の身体にしるしを残した。生まれた瞬間に死が約束される「いのち」。
私はその命と一緒に生きていこうと思った。
「ムッシュ」
語りかけても無反応だ。
「電池切れかなあ」
優が首をかしげた。
「ムッシュは電池で動いていたの?」
「さあ。でも、energyはfull だよ」
「死んだ」
私がぽつりと言った。
「死んだ」
優は繰り返した。私は少し泣いた。オブジェになってしまったムッシュを寝室に運んだ。優は私の肩を抱いた。私は目を閉じた。無数の桜の花びらが舞っている。優の涙が私の胸に落ちた。強いものに突かれた。気の遠くなるエクスタシーが私の全身を震わせた。二人は満開の桜の下にいた。優の身体が離れ、やがて、降り注ぐ無数の桜の花びらの中に消えていった。彼は私の身体にしるしを残した。生まれた瞬間に死が約束される「いのち」。
私はその命と一緒に生きていこうと思った。
月曜日の午後8時。優はきっかりにやって来た。ダイニングに通す。ムッシュがお茶を運んでくる。
「ムッシュ、こんにちは」
「いらっしゃいませ、店長」
「店長はいいよ。優と呼んで」
「こんにちは、ゆう」
その日は、30分ほどして優は帰った。
「また、来てもいい」
「いいよ、この時間ならほとんどいる。いない時はメールする」
「ありがとう」
一週間に2回ぐらい優は来た。時々泊まっていく。一つしか布団がないので、彼は寝袋を持ってきた。私は吹き出した。私とムッシュは寝室で眠り、優は書斎で眠った。書斎のパソコンは寝室に移した。二つの部屋はダイニングに面していて、手洗いに行く時お互いの部屋を通ることはなかった。部屋の個別性は保たれていた。
私は彼のことをなんにも知らない。結婚しているのか、子供がいるのか、何も知らない。年令さえ知らない。私達は向かい合う。相手が何者かは関係がない。前にいる人が彼だ。私が知っている以外の彼を知りたくない。私達は向かい合い、とりとめのないことを喋る。テレビのニュースだったり、新聞だったりする。私達の間にセックスはない。だから、向かい合うことが出来る。優は時々朝ご飯を作る。おいしいというと、とても嬉しそうな顔をする。夜はムッシュと私は枕を並べて眠る。平穏な一日が過ぎていく。
「ムッシュ、こんにちは」
「いらっしゃいませ、店長」
「店長はいいよ。優と呼んで」
「こんにちは、ゆう」
その日は、30分ほどして優は帰った。
「また、来てもいい」
「いいよ、この時間ならほとんどいる。いない時はメールする」
「ありがとう」
一週間に2回ぐらい優は来た。時々泊まっていく。一つしか布団がないので、彼は寝袋を持ってきた。私は吹き出した。私とムッシュは寝室で眠り、優は書斎で眠った。書斎のパソコンは寝室に移した。二つの部屋はダイニングに面していて、手洗いに行く時お互いの部屋を通ることはなかった。部屋の個別性は保たれていた。
私は彼のことをなんにも知らない。結婚しているのか、子供がいるのか、何も知らない。年令さえ知らない。私達は向かい合う。相手が何者かは関係がない。前にいる人が彼だ。私が知っている以外の彼を知りたくない。私達は向かい合い、とりとめのないことを喋る。テレビのニュースだったり、新聞だったりする。私達の間にセックスはない。だから、向かい合うことが出来る。優は時々朝ご飯を作る。おいしいというと、とても嬉しそうな顔をする。夜はムッシュと私は枕を並べて眠る。平穏な一日が過ぎていく。
日曜日にムッシュが送られてきた。
「ムッシュ(ロボ・ボーイ)が来ました」と優にメールを送った。
「月曜日の午後8時に伺います。ムッシュとの再会が楽しみです」
「OKです」
久しぶりに再会してスイッチを入れた。メニューボタンを押した。当然お子様ランチ。
「お子様ランチお一つですね。ありがとうございます」
懐かしい声が聞こえてきた。
「ムッシュ。君の名前はムッシュ」
「私の名前はムッシュ。名づけていただいてありがとうございます」
「ムッシュ」
「はい」
「聞いてもいい。君には心があるの」
「こころ…。分かりません。プログラムされていません」
私はムッシュをキッチンに連れて行く。コップをとり、蛇口を押す。
「できる?」
「はい」
ムッシュは正確に私の行為をまねる。私は拍手する。
「完璧だよ、ムッシュ。私についてきて」
私のマンションは2DKだ。一部屋は机とパソコンを置いて書斎ふうに使っている。もう一つの部屋は寝室。
「掃除をお願いね」
彼自身が掃除機になっている。掃除をし始めたので慌てて言った。
「いいの、明日からで」
ムッシュは頷いた。
「分かりました。あなたの名前は?」
「私は村瀬瞳」
「私はなんて呼べばいいのでしょう」
「瞳でいいよ。ひとみって呼んで」
「ひとみ」
「はい」
「とても素敵な名前ですね」
私は再会を祝して、ワインを抜いた。
「ムッシュ、君と私に乾杯」
「ムッシュ(ロボ・ボーイ)が来ました」と優にメールを送った。
「月曜日の午後8時に伺います。ムッシュとの再会が楽しみです」
「OKです」
久しぶりに再会してスイッチを入れた。メニューボタンを押した。当然お子様ランチ。
「お子様ランチお一つですね。ありがとうございます」
懐かしい声が聞こえてきた。
「ムッシュ。君の名前はムッシュ」
「私の名前はムッシュ。名づけていただいてありがとうございます」
「ムッシュ」
「はい」
「聞いてもいい。君には心があるの」
「こころ…。分かりません。プログラムされていません」
私はムッシュをキッチンに連れて行く。コップをとり、蛇口を押す。
「できる?」
「はい」
ムッシュは正確に私の行為をまねる。私は拍手する。
「完璧だよ、ムッシュ。私についてきて」
私のマンションは2DKだ。一部屋は机とパソコンを置いて書斎ふうに使っている。もう一つの部屋は寝室。
「掃除をお願いね」
彼自身が掃除機になっている。掃除をし始めたので慌てて言った。
「いいの、明日からで」
ムッシュは頷いた。
「分かりました。あなたの名前は?」
「私は村瀬瞳」
「私はなんて呼べばいいのでしょう」
「瞳でいいよ。ひとみって呼んで」
「ひとみ」
「はい」
「とても素敵な名前ですね」
私は再会を祝して、ワインを抜いた。
「ムッシュ、君と私に乾杯」
敦賀まで一緒のタクシーで帰った。車内では一言も喋らなかった。
駅に着くと、
「僕はもう少し先に行ってみようと思います」
と、言った。
私は京都に帰ると言った。
一回だけあの長いトンネルを通ったことがある。出口がないような長いトンネル。ずーと暗闇の中にいるようで怖かった。敦賀は私の終着駅だ。
「それと」
彼は言いよどんだ。
「あなたの家に行っていいですか?私は水村と言います」
彼は名刺を出した。水村 優。優の字にユウとふりがながあった。
私はしばらく黙っていた。彼も言葉を続けなかった。私は手帳を出し、私の住所と名前を書いた。携帯の電話番号も書いた。電車の時間が迫っていたので、私はホームへ急いだ。振り返ると彼が手を振っていた。私は無視して、ホームへの階段を上がった。柳原さんが、帰りがけに言った言葉が突然頭に浮かんだ。
「ロボ・ボーイが死ぬ日が来ます」
「死ぬ…」
「全機能を停止する日です」
私は何故か分かるような気がした。彼は続けた。
「明日かも知れないし、100年後かも知れない」
駅に着くと、
「僕はもう少し先に行ってみようと思います」
と、言った。
私は京都に帰ると言った。
一回だけあの長いトンネルを通ったことがある。出口がないような長いトンネル。ずーと暗闇の中にいるようで怖かった。敦賀は私の終着駅だ。
「それと」
彼は言いよどんだ。
「あなたの家に行っていいですか?私は水村と言います」
彼は名刺を出した。水村 優。優の字にユウとふりがながあった。
私はしばらく黙っていた。彼も言葉を続けなかった。私は手帳を出し、私の住所と名前を書いた。携帯の電話番号も書いた。電車の時間が迫っていたので、私はホームへ急いだ。振り返ると彼が手を振っていた。私は無視して、ホームへの階段を上がった。柳原さんが、帰りがけに言った言葉が突然頭に浮かんだ。
「ロボ・ボーイが死ぬ日が来ます」
「死ぬ…」
「全機能を停止する日です」
私は何故か分かるような気がした。彼は続けた。
「明日かも知れないし、100年後かも知れない」