創作日記&作品集

作品集は左のブックマークから入って下さい。日記には小説、俳句、映画、舞台、読書、など…。そして、枕草子。

つげ義春コレクション1ー7までを読んで

2009-05-22 09:01:57 | 読書
転機は、やっぱり「沼(66年)」かなあと思う。衝撃の予感のようなものを感じた。これはちょっと違うぞという感じですね。私はつげ義春最高傑作は、「山椒魚」だと思う。閉じられた空間でささやかな楽しみを発見する。井伏鱒二の「山椒魚」に触発されたとはいえ、その創造力は卓越している。好きな作品は「鳥師」。心が和むのは[紅い花]。不思議な世界は「ねじ式」。それらの作品と遜色のない作品は数多い。つげ義春コレクション8、9が楽しみだ。つげ作品は私の人生の一部分だったような気がする。次は70歳代の作品を読みたい。
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つげ義春コレクション7 四つの犯罪/七つの墓標

2009-05-21 11:17:59 | 読書
初期の作品群である。1956年から1959年の4年間に発表されたものである。絵もストーリーも稚拙である。絵も人気作家のまねが多い。だが、貸本としては一定の面白さに達している。私より九才年上の彼は作者であり、私は読者だった。私は小説家希望であり(絵が描けない)、頭の中には、稚拙なストーリーが渦巻いていた。貸本屋について語ろう。確か一泊二日で10円だったと思う。旦那さんが大工で、奥さんがやっていた。「影」「街」「迷路」。劇画に初めて性を持ち込んだ作品もあった。残念ながら作者は誰か覚えていない。佐藤まさあき、辰巳ヨシヒロ、影丸譲也。その中でつげ義春は夢中になる作者ではなかった。白土三平は難しすぎた。ただ一作、「おばけ煙突」は後のつげ作品を予感させる作品である。私は初めてつげ義春に注目した。
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つげ義春コレクション6 苦節10年記/旅籠の思い出

2009-05-20 08:43:25 | 読書
この巻に収められた内容は全く知らなかった。スケッチを見ているだけでも楽しい本である。私見だが、つげ作品は死の匂いはしない。知っている限りでは、死を扱った作品はない。ほのかな生への渇望に思える。旅のエッセイ、自伝的エッセイ、夢日記からなる。作品の背景が垣間見られて興味深い。さらに圧倒されるのは多数のスケッチである。カラーから始まり、素晴らしいスケッチが載っている。パラパラとくっているだけで楽しい。もう少し大判でスケッチ集がでたらいいなあと思う。あまり値段を高くしないでね。つげ義春の私生活は幸せという域からはほど遠い。年齢もいった。老人である。妻は死に、息子は精神に異常をきたしている。創作が出来ない彼は、過去を語るしかないのだろうか。つげ義春コレクションとして。新作を渇望する。
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つげ義春コレクション5 紅い花/やなぎ屋主人

2009-05-19 08:16:05 | 読書
いよいよ旅ものの登場である。
紅い花(67年) 西部田村事件(67年) 長八の宿(68年) 二岐渓谷(68年) オンドル小屋(68年) ほんやら洞のべんさん(68年) もっきり屋の少女(68年) やなぎ屋主人(70年) リアリズムの宿(73年) 枯野の宿(74年) 庶民御宿(75年) 会津の釣り宿(80年)
やなぎ屋主人(70年)以外は自由な空間に自分を遊ばせている。やなぎ屋主人(70年)はやはり異質だ。一巻に入れるべきだと思う。旅で遭った人を見る目は優しい。紅い花の少女。西部田村の患者。長八の宿のジッちゃん。二岐渓谷の猿(人ではないけれど)。オンドル小屋の迷惑人(優しくないか?)。ほんやら洞のべんさん。もっきり屋の少女。リアリズムの宿の家族。枯野の宿の絵師。庶民御宿のKさん。会津の釣り宿の床屋の娘。みんな旅に出なければ会えなかった人々である。会えなかった幻である。
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つげ義春コレクション4 近所の人/無能の人

2009-05-18 07:41:01 | 読書
「魚石」と「近所の人」以外は、「COMICばく」(1984年ー1986年)に掲載された作品である。「COMICばく」は全号読んでいるので全て覚えている。それだけ印象深かったという事だろう。とりわけ「鳥師」は私にとって鳥肌が立つ作品だった。しゃれではありません。鳥師が空を飛ぶシーンは忘れられない。私の拙作にもかなりの影響を与えた。「とべ、とべ、飛ぶんだあ」「飛んだか!」「とんだ、とんだ、飛んだんだ」「おら胸が熱くなり涙がぼろぼろこぼれた。おらも連れて行ってくれぇ」。「蒸発」も印象深い作品である。「何処やらに 鶴の声きく かすみかな」。以降現在に至るまでつげ義春は沈黙している。
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つげ義春コレクション3 李さん一家/海辺の情景

2009-05-17 10:08:45 | 読書
私が好きな 「沼」「チーコ」「 通夜」「山椒魚」「李さん一家」「海辺の情景」が含まれる。
発表年月日は次のようになる。
古本と少女(旧作改稿) (66年) 不思議な手紙(旧作改稿)(66年) 手錠(66年)  蟻地獄(「灼熱の太陽の下に」改稿)(67年) 女忍(61年のリメーク)  噂の武士(65年)  西瓜酒(65年)  運命(65年)  不思議な絵(66年)  沼(66年) チーコ(66年)  初茸がり(66年) 通夜(67年) 山椒魚(67年) 李さん一家(67年) 蟹(70年) 峠の犬(67年) 海辺の情景(67年)
時代劇も面白いが、私が好きな「つげ義春の世界」からは遠い。
「山椒魚」は生への希望を書いた作品だと思った。井伏鱒二の「山椒魚」をつげ義春の意志に関係なく超えてしまった。
「不思議な手紙」は些細な事だが私にもよく似た経験がある。小学校の頃、机の上を飛び回るいたずらっ子に腕を出して、怪我をさせた。叱られたのは彼で、僕は腕を伸ばして寝ていたと言った。死者を焼く窯で同僚が入っているのを見ながら、何もしなかった男の罪と罰がテーマではない。彼は見殺しにした事になんの罪も感じていない。一緒に焼かれた遺族に罪を感じている。微妙な人の心理を描いている。小学生の頃の出来事を今でも鮮やかに思い出すのは、彼に対する罪の意識でない。安全に懲らしめた、自分への軽蔑である。
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つげ義春コレクション2 大場電気鍍金工業所/やもり

2009-05-16 09:38:13 | 読書
自伝的作品を収録している。初見の作品も多かった。 発表年月日は次のようになる。
大場電気鍍金工業所(73年)  少年(81年)  海へ(87年) やもり (86年)  下宿の頃(73年)  義男の青春(74年)  池袋百点会(84年)  隣りの女(84年)  別離(87年) 。「COMICばく」は毎号買っていた。つげ義春は毎号秀作を発表していた。つげ義春のために刊行された雑誌と言ってもよい。つげ義春が書かなくなって廃刊となった。とは言っても、他の作品にも秀作が多かった。私は全巻を古本屋に持ち込むという愚行をやってしまった。創刊号だけでも残しておけばよかった。今も悔やんでいる。近藤ようこ、つげ忠男、花輪和一、畑中純等才能豊かな人々が秀作を発表していた。どんな内容か忘れたがつげ忠男の「ささくれた風景」は秀逸だったのを覚えている。
つげ義春コレクション2に話を戻そう。少年期の話はほぼ事実だと思う。つげ義春コレクション6の「苦節十年記」を読んでもその事は分かる。中でも「やもり」は秀逸。現在を扱った作品では、事実(自殺未遂、池袋百点会、ヤミ米等)を元にしているもののかなりフィクションがあるように思う。自殺未遂などを描きながら、そのまなざしは温かい。
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つげ義春コレクション1 ねじ式/夜が掴む

2009-05-15 19:08:14 | 読書
つげ義春のアンソロジー「つげ義春コレクション」全九冊(現在七冊刊行)が発売されている。年代別ではなくて、描かれている世界を中心として編集しているように思える。
つげ作品は旅もの、夢もの、私生活から材を取ったもの(私生活そのものではない)に大まかに分けられると思う。この巻には旅ものはない。
「ねじ式」とゲンセンカン主人は三つの分類が混じり合っているように思われる。「ねじ式」は週刊誌転載(サンデー毎日? )されて評判になったと記憶している。次作が期待されたが、「ゲンセンカン主人」は「ねじ式」ほど評価されなかった。読み返してみると、「ねじ式」と勝るとも劣らない傑作である。
つげ義春には絵という強い武器がある。絵とストーリーはどちらが主で従という関係ではなく、一体となりつげ義春の世界を現出している。それは説明が不可能な世界である。読者は感覚として不安や安堵感や共感を感じるのである。
巻頭を飾っているのは代表作品「ねじ式」である。茶の間で読みにくいほど第一巻はかなりエロい。
収録作品と発売年を並べてみた。
ねじ式(68年) ゲンセンカン主人(68年) 夢の散歩(72年)  アルバイト(77年)  雨の中の慾情(81年) 作者らしい説明がつく。夜が掴む(76年)  コマツ岬の生活(78年)  外のふくらみ(79年)  必殺するめ固め(79年)  ヨシボーの犯罪(79年)  窓の手(80年) 夏の思いで(72年)  懐かしい人(73年)  事件(74年) 退屈な部屋(75年)  日の戯れ(80年)
ゲンセンカン主人と同列だと思っていた70年「やなぎ屋主人」が別の巻になっている。つげ義春がどちらも自信作だから、振り分けたとも思えるが、彼の中では全く違う作品という事も考えられる。つげ義春がこのアンソロジーに深く関わっているのは確かだ。
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