創作日記&作品集

作品集は左のブックマークから入って下さい。日記には小説、俳句、映画、舞台、読書、など…。そして、枕草子。

『「枕草子」読み語り』発刊!

2016-06-29 08:44:07 | 枕草子
『「枕草子」読み語り』発刊!


このたび「『枕草子』読み語り」という電子書籍CD本を星湖舎から上梓させていただきました。
CDには『枕草子』全巻の現代語訳と原文(注釈付き)・語り(追加説明、解説、感想)が入っています。
原文のハイライトの部分をマウスで指すと注釈が示されます。注釈を参照しながら原文を読み、次に現代語訳を読むと、ストーンと腑に落ちる仕掛けになっています。
「古典の原文を電子本の注釈で読む」が肝です。自分では、ささやかなライフワークかなあと思っています。
小冊子には、CDの使用方法と『私なりの枕草子』というエッセイを収めています。
どうぞ千年前の世界へ。

■A5判・44頁・CD付
■定価:1000円(本体926円+税(消費税8%))
星湖舎またはi.hiromu723.gaia.eonet.ne.jp@gaia.eonet.ne.jp 池窪までメールを。

『鍵』・映画

2016-06-28 16:58:57 | 映画・舞台
『鍵』・映画
時々、新聞の番組表のBSプレミアムシネマをチェックする。
興味のある映画を見つけると録画する。
『鍵』は1959年(昭和34 年)の作品である。
この映画は映画館で母と観た。私は当時12、3才だった。
調べてみると成人映画だって。母さんなんてことを。
一言で言えばエロチックサスペンス。
ところどころ覚えているのは印象が強烈だったからだろう。
京マチ子の妖艶さは凄い。
宮川一夫(撮影)は光と影の魔術師だ。
市川崑の演出は人を飽かさない。
少しだけ観ようと思っていたのに最後まで観てしまった。
これぞプロの仕事だと思う。

画一化する町 イオン

2016-06-24 09:23:10 | エッセイ
先日和歌山の加太に行った。
助手席の窓から町を眺めていると、ふと、まだ、奈良にいるような気になった。
イオンがある。スターバックスがある。コンビニは言うに及ばず、コメリ、ドンキホーテ、オークワ。
奈良の人も和歌山の人も同じ町で暮らしているように思った。
やっと見えた加太の海は美しく輝いていた。
鱧を食べた。美味しかった。ほっとした。
海のある町に来た。



時間

2016-06-22 13:39:07 | エッセイ
眠れぬ夜に、ふと、死んだ人を思い出す。
最初に母方の従兄がいた。二十歳代で心中をした。顔もはっきりと覚えている。
その時はまだ「死」に実感がなかった。
母方の祖母が死んだ時、棺の中の祖母を見せられた。
祖母は白い瀬戸物になっていた。
「ばあちゃんはいない。永遠に失われた」という実感が私を恐れさせた。
自分も死ぬのだ。
次に父方の祖母、本家の長男。しゃべって笑っていた人間が次々消えていく。
上司、友達、義父、父、母、叔父、その先に自分がいる。
みんな白い瀬戸物になる。

世論

2016-06-22 13:07:17 | エッセイ
『大きな鳥にさらわれないよう』・川上弘美著を読んでから、「大きな鳥」について考え続けている。
「大きな鳥」とは何であろう?
小説から少し離れるが、世論もその一つだと思う。
為政者は世論を重視する振りをして、主張の順番を変え、時々嘘を混ぜる。
世論が為政者を動かすこともある。だが、とても危険なのは、為政者と世論が一つになった時だと思う。
先の戦争もその例だ。民衆も戦争に手を染めたのである。

報告。『枕草子』読み語り

2016-06-15 09:29:09 | 枕草子
『枕草子』読み語りは2016/06/29に電子書籍CDとして、星湖舎から自費出版いたします。
それに伴い、Pubooに公開していました『枕草子』読み語りは非公開にいたします。
その代わりに「私なりの『枕草子』―キーワードから読み解く―」をUPしました。
『枕草子』というエッセイのエッセイです。
本が出来ましたらまた報告させていただきます。完成まで五年以上かかりました。
今は、ぬ・け・が・ら。

長寿

2016-06-14 17:18:10 | エッセイ
ガリバー旅行記の第三篇第10章に「不死人間に会う」という話がある。
ラグナル王国にはごくまれだが、ストラルドブラグ(不死人間)が生まれる。
不死人間は死なないが、不老ではない。どんどん歳をとっていく。不死は幸せなことどころか地獄である。
スウィフトはその地獄を詳細にかつ具体的に書いている。
ふと、長寿は幸せなことかと思う。
今年95才の義母と同居することになった。私も今年古希を迎える。
また、朝日新聞デジタルの3人の命奪った秘密の中身(きょうも傍聴席にいます)の2016年6月1日の記事を思い出した。
2015年5月、妻(当時65)と長女(同37)、義母(同89)を首を絞めて殺し、自宅に放火した男(66)の裁判員裁判である。妻と長女を殺した後、男は義母の部屋へ行った。義母は寝ていた。
そのまま殺害しては本人は納得いかないのではと、男は考えた。
男「起こして状況を説明しました。『二人は逝ったから、一緒に逝ってやってくれ』と。
『ほうか、ほうか』と言って聞いていましたが、最後に『わしはもうちょっと生きたかった』と言いました」―
『もうちょっと生きたかった』

歯槽膿漏

2016-06-13 10:34:19 | エッセイ
もうじき齢70である。下の歯は7本、上は2本しかない。それで、かろうじて総入れ歯を逃れている。
下の入れ歯の調子が悪くて、近所の歯医者に行った。
歯医者の先生は三女と同じ幼稚園に通っている子供がいたから、私と同じぐらいの歳であると思う。美男子で有名だったが、今はそれなりに老けた。月水土と週三日の診察である。
盛んに歯垢を取った後(その間自分の顔は引きつっていた)、無口な先生が
「歯槽膿漏ですね。このままやと、歯が抜けます」
 と言って、歯の磨き方を実際にやって教えてくれた。
「前からと後ろからと一日に一回ぐらいはきれいに洗うて下さい。せやないと、すぽっと抜けますよ」。
教材用に使った歯ブラシをもらって帰った。帰り道で自転車を漕ぎながら、「歯槽膿漏……」と呟いた。
昔、歯槽膿漏の人と親しくしていた。顔は覚えているのにどこの誰だったか思い出せない。
一日4回磨いた。出血も止んで目に見えて歯茎がきれいになった。
一週間後の予約日に行くと、
「きれいになってきましたね」
 と言って、二人で顔を合わせて笑った。今度は歯垢ブラシの使い方の実習をやって、歯垢ブラシを一本もらって帰った。
歯槽膿漏の人は依然思い出せない。仕事関係か、友達か、世間の非常に狭い男なのに、深い穴に消えてしまったように思い出せない。
ただ、あのかぐわしい香りだけが残っている。上手に顔をそむけていたせこい自分も。