今年はずっと旅行の予定もキャンセル続きで、登山も5月初めに奥多摩に2回行ってからは機会なし。
週末も他の用事でプライオリティの高いものがあったりして、出かけることがないまま7月になってしまった。
このままではどこにも行かずに夏が終わる(気が早い)という危機感があり、ここは休みを取ってでも簡単な登山旅行をしなければと思い立った。
いや、週末でなくて月曜・火曜になったのは天気の見通しが大きな理由ではあるんですけど。
元々、日本の希少な高山植物が温暖化などの影響で見られなくなってしまう前にしっかりと見ておきたいというのが、登山の大きな動機の一つ。
そうなると、日本固有種はおろかその山にしか咲かない花が4種類もある早池峰は絶対にはずせない。と言うか、行くまで早池峰固有種はハヤチネウスユキソウだけだと思っていたら、実は他にも3つもあった。早池峰、まさに希少種の宝庫。
と言うことで、いつも通り天気図とにらめっこをしながら、最悪でも曇り、恐らくは晴れ時々曇りくらいの予想が立った8日の火曜日に登山すべく、月曜と火曜に有給を取って岩手まで行ってきました。
先に結論を書いておくと、この弾丸旅行は大成功。お天気は晴れて気温も上がって夏山登山状態だったし、花も丁度見頃でした。
軽く写真を載せておくと、
山頂付近からの眺め。気持ちいい。
この山にしか咲かないハヤチネウスユキソウ。意外なことに、相当大量に咲いています。本当にそんなに珍しいのかと疑いたくなる密度です。
ミヤマシオガマもこの密度。本当はこんなもんじゃなく、壮大な花畑状態ですし、登山道の脇にはほぼ途切れずに何らかの花が咲いています。
初めは喜んで写真撮っていたミヤマオダマキ。そのうち、まったく珍しさを感じなくなるくらい大量に咲いてました。
東京から公共交通機関を利用する場合、早池峰へのアクセスは簡単ではありません。
当然東北新幹線を利用し、新花巻に出てからバスということになりますが、バスも途中で2~3回乗り継ぐことになります。
週末は臨時のバスが出たりしてまだましですが、それでも麓の峰南荘という山小屋に前夜は泊まるプランになり、しかもバスの乗り継ぎは行きも帰りも1パターン以外ありません。
つまり、ちょっと下山が遅れたりしてバスを逃すと、その日のうちに帰れなくなります。
こういう厳しいアクセス条件ながら、ネットで「早池峰、登山」などと検索すると、平日宿泊でお得な送迎プランを提供しているホテルが見つかります。ステイヒルというホテルです。
花巻と早池峰の間にある大迫(おおはさま)という町のホテルで、この町はワインの生産も盛んで見どころもそこそこあります。
そこで、1泊2食付、新花巻とホテルの間の送迎に加え、下山後の早池峰からのピックアップもしてくれてます。つまり、登山の朝にホテルから早池峰までのバスは自分で乗らないといけないですが、それ以外の送迎は全部ついています。これで9,800円というお値段。全部自分でバスを乗り継ぐと、それだけで4,000円以上かかると思うので、宿泊に食事もついたうえでこのプライシングは非常にお得なものです。
と言うことで、迷わずこのプランを予約。
泊まった実感として、この宿結構おすすめです。
値段が良心的なだけでなく、大迫の町の中で地元の農産物の直売所やワインの醸造所とも近いので、登山前日には散策しながらそれなりに楽しめます。
部屋自体は特に特徴はないのですが、大浴場は新しく、天井が高くてとても気持ちがいいです。
夕食もまずまずで、量的にも十分。翌日の朝食は、ボリュームたっぷりのおにぎり弁当にしてくれるので、山頂での昼食にすればよいです。
山小屋の布団もいいですが、ユニットバス付のホテルの部屋のベッドで寝てから登山に臨むというのも悪くないと思います。
ホテルステイヒル。建物はそれほど新しくないですけど、可愛い感じです。
大迫の町にある看板。ステイヒルから1分のところ。いろんな観光施設が至近です。
エーデルワインというワイナリーの醸造所の裏にある直営販売所。ワインだけでなく、ジュースやグラスなども売ってます。試飲し放題。
大迫のブドウ。美味しいワインになってください。
閑話休題、早池峰登山。
ステイヒルに泊まった翌朝は、ホテルから歩いて5分ちょっとのバスターミナルを5:50に出発するバスにて早池峰の河原の坊登山口に向かいます。
レトロな路線バス。
バスターミナルの事務所もレトロ。両替をお願いしました。
50分ほどで河原の坊登山口に着きます。350円で携帯トイレを売っています。3つで1,000円という微妙に団体向けのプライシング。
天気図的には曇りかと思っていましたが、沖縄に来襲した台風の影響で梅雨前線が南に引っ張られたのか、この日の早池峰は晴れていました。ラッキーです。ただし、真夏の日差しと気温を覚悟しなくてはならないのは、登山開始時点で予想できました。
準備運動もせずに早速登り始めます。河原の坊コースは、その名の通り沢筋を登るコースなので、この日のような暑いコンディションでも比較的気持ちよく進めると思います。
何度か渡河することになりますが、これはこれで楽しい。ただし、濡れた岩は滑るので注意。早池峰は蛇紋岩という岩でできた山で、この岩は濡れるとよく滑ります。
沢筋は花が多くて最初から楽しい。色的には、圧倒的に白い花ばかり。まずはシャクナゲ。ただし、写真のもの以外にはほとんど咲いていなかった。
カラマツソウ。モミジカラマツかね?
ブナの原生林が美しい。森林浴最高。
マルバシモツケ。
センジュガンピ。ぎざぎざの花弁の割に、全体的には上品な感じ。
この花、いろんな山の沢筋にあるような気がするけど、名前が特定できず。
暫く登ると、相変わらずの岩道ですが、徐々に木々の背が低くなっていきます。そして、ミヤマオダマキやヨツバシオガマのような鮮やかな色のものが目立つようになります。
こんな感じの道。
ヨツバシオガマ。上の方ではもっと群生しているけど、この時点では1つでも見つけると嬉々として写真撮ってました。
ミヤマオダマキ。
ヤマガラシ。アブラナの仲間らしい。数は少なかったと思う。
そして、森林限界を超えたあたりから目当てのハヤチネウスユキソウが現れました。
ハヤチネウスユキソウ。固有種です。
個体数が少ないのかと思っていましたが、意外なほどたくさん見られます。
これもたくさん咲いてきて、あまりありがたみを感じなかった花。しかし、下山後に調べると何と早池峰の固有種の1つでした。ミヤマヤマブキショウマ。
チングルマの花は終わり、毛がなびいていました。ミヤマヤマブキショウマとこのチングルマの写真はお気に入り。
このヨツバシオガマもそうですが、遠景に山や空が写っていると高山植物感が出ると思う。
ハクサンチドリ。個人的に贔屓の高山植物です。
そして、シロバナハクサンチドリ。普通は紫色の花ですが、早池峰では白い変種が見られることを事前のウェブ調査で知っていました。これは見たかったもの。
タカネニガナ。撮っている時はオトギリソウと思っていましたが、下山後に調べたら違うらしい。
ウラジロヨウラク。この辺りのものは、昨年谷川山系の平標山でも見ました。
しかしこれは早池峰固有種。ナンブトラノオ。固有種であることは、登っている時に他の登山者から聞きました。
チチマフクロ。ハクサンフクロに似ているけど、その名の通り北海道や樺太、千島の植物らしい。チシマと頭につく植物が多いのも、東北の山の特徴でしょう。
この辺りでは、登山道の左右の端まで行ったり来たりしながら花の写真を撮るのに夢中で、太陽に晒されているうちに汗も引いていく始末。全然登山になりません。花の好きな人にはコースタイムは参考にならない山です。私より高齢の女性2人組にも抜かれ、あなたさっきから全然進んでませんねとか言われる始末。
しかし、ここから御座走りや打石といったスポットが出てくるのですが、急登が続くのと下で見た花と変わらなかったりすることで、だんだんと登山に集中します。もう一つの理由は、9時近くなって徐々に雲が湧き上がってきたからです。まさに夏山のようで、早く登頂しないと山頂がガスで覆われる恐れが出てきました。
御座走り。
打石。犬が左上を見ているようだと書いてあった山行記録があったけど、その通りと思う。
振り返ると、南側で早池峰と対峙する薬師岳が見えます。こちらは花崗岩質の山のために植生が全然違い、樹林帯が山頂まで続いているようです。
9時ちょうど。ガスに捕まる。
頂上へはあと少し。鎖場などをが出てきますが、足元が濡れていない限り滑らないのであまり怖くないです。
御座走りを超えたあたりからは、花の密集度が上がります。
ヨツバシオガマ中心に。多くの花。
ナンブイヌナズナとミヤマオダマキ。
ミヤマキンバイ。
ミヤマアズマギク。下の方からかなりの数が咲いています。白っぽいものから青紫の濃いものまで。
キバナノコマノツメ。スミレの仲間ですが、黄色で珍しい。これとミヤマオダマキ、ミヤマアズマギク、ミヤマシオガマ、そしてハヤチネウスユキソウが一番多かったと思います。色もそれぞれ違うので、まさに色とりどり。
ハヤチネウスユキソウとミヤマオダマキ。
ミヤマシオガマ三連星。
写真と高山植物観賞に時間を相当取られたとは言え、登山口から2時間半ほどで9時15分ごろに登頂です。山頂には神社があり、神楽の道具も奉納されているようです。滑りやすい蛇紋岩の急な登りをここまで運んでくるのは根性ですな。
山頂は幸いなことに晴れていました。ガスは南側から上がり、山頂を超えると東側に流れて消えていく感じでした。頂上は岩岩しく、結構広いです。天気に恵まれたおかげで眺望はよく、東側はもしかしたら太平洋まで見えていたのかもしれません。
ホテルの送迎車とは、小田越の登山口で13:30の待ち合わせなので、時間的には余裕があります。そこで、山頂から西の鶏頭山方面を散策します。事前の調査で、こちらに花畑があるとのことだったので。そして、その花畑の迫力は凄かった。
ミヤマシオガマ。辺り一面に咲いています。
ミヤマアズマギクとホソバイワベンケイ。
ミヤマアズマギク。
白花のミヤマオダマキ。
チシマゼキショウ。これだけ多くの花が特定できるのは、早池峰に関するウェブ上の情報が充実しているから。やはり、花の名山として親しまれているのですね。
この辺りの稜線の登山道はこんな感じです。
暫く花を愛でながら遊んで、山頂に戻ります。北側の眺望が良いので、そこでホテルでいただいたおにぎり弁当を食べました。ボリュームあった。
山頂からの眺めを楽しんでぼんやりして時間を過ごし、10時50分頃に小田越を目指して下山を始めます。
すると、ミネザクラガ2輪ほど残っていました。今年は雪が多めだったようで、サクラも遅かったようです。7月に桜の残っている所って、日本中でどれくらいあるのかね。
こちらのコースも高山植物が豊富で、河原の坊からの登りでは気づかなかったものも幾つか見つけました。
ミツバオウレン。
ウコンウツギ。
イワカガミは花畑状態になっていました。
葉の形状からイワウメだと思うんだけど、時期的にちょっとずれているかも。何の花でしょうね。
ショウジョウバカマは一輪だけ残っていました。
小田越コースは木道が整備されていて、とても歩きやすいです。全体的に、とても手入れの行き届いている山です。高山植物を守るため、登山道を整備してそれ以外のところには人を入らせないようにする配慮でしょう。
カラマツソウは大花畑状態でした。
拡大。
木道の下にはマイヅルソウが咲いていました。まだ咲き初めでした。
途中、剣ヶ峰方面にも少し足を延ばしましたが、風景や植物はあまり変わり映えしない感じだったので素直に小田越コースを下りました。
岩の結構急なコースで、濡れていたらかなり滑るでしょう。私は晴れでラッキーでした。河原の坊コースほどではないですが、下りでは気をつけないと転ぶかもしれません。
登りで見た花々は、こちらのコースでも見ることができます。花の数はどちらとも言えない感じですが、河原の坊の方が序盤の沢筋でいろんな花があるのでいいかもしれません。
途中、こんな花を見つけました。
恐らくホソバツメクサ。下山後調べたところ、これとよく似たカトウハコベという花はかなり希少なようです。
ちなみに、これは河原の坊からの登りで撮った写真。もしかするとこっちはカトウハコベかも。いずれにしても、小さくて白い可憐な花です。
途中、鳥の声が常に聞こえていました。ウグイスも早池峰ではまだまだ健在だし、ヒバリのような鳥もいました。これは登りの途中で見たもの。
そして、これは下山中に会ったホシガラス。大きな声で2羽で泣いていました。
下りは滑らないように気を使ったのと、大人数のツアー客とのすれ違いが大変だったのであまり写真は撮りませんでした。
そして樹林帯へ。
ここでも木道が整備されています。
ギンリョウソウを見つけました。これも平標山以来。
13時前には下山完了で、登山口にいらっしゃった監視員の方にいろいろお話を聞いて過ごしました。
空の様子は完全に真夏でした。
その後、同行のご夫妻の下山が遅れて予定よりも出発が遅れたものの、無事にホテルの車で送ってもらって新花巻に出ました。
この日の岩手県は真夏の様相で、盛岡辺りは雷雨が凄かったようです。
私はお天気に恵まれて、花のハイシーズンの早池峰を満喫。ある意味で相当に贅沢な旅でした。
これからのシーズンは、やはり高山、アルプスに行きたいと思います。
早池峰、名前も綺麗な山です。
温暖化と植生のことを去年本で読んで、日本の希少な高山植物に興味を持ってからずっと行ってみたい山でした。
ハヤチネウスユキソウ、ナンブトラノオ、ミヤマヤマブキショウマといったこの山にしか咲かない花と巡り合うことができ、さらに多くの可憐な花々を見ることができたのは貴重な体験です。
登山としても、 蛇紋岩の道を行くのは楽ではなく、眺望も含めて楽しめるレベルのものでした。
東京から行くのであれば、平泉などの観光名所と組み合わせるとか、神楽や鹿踊りなどのイベントと合わせて楽しむのがよいでしょう。
弾丸で行くのはもったいないと思います。
週末も他の用事でプライオリティの高いものがあったりして、出かけることがないまま7月になってしまった。
このままではどこにも行かずに夏が終わる(気が早い)という危機感があり、ここは休みを取ってでも簡単な登山旅行をしなければと思い立った。
いや、週末でなくて月曜・火曜になったのは天気の見通しが大きな理由ではあるんですけど。
元々、日本の希少な高山植物が温暖化などの影響で見られなくなってしまう前にしっかりと見ておきたいというのが、登山の大きな動機の一つ。
そうなると、日本固有種はおろかその山にしか咲かない花が4種類もある早池峰は絶対にはずせない。と言うか、行くまで早池峰固有種はハヤチネウスユキソウだけだと思っていたら、実は他にも3つもあった。早池峰、まさに希少種の宝庫。
と言うことで、いつも通り天気図とにらめっこをしながら、最悪でも曇り、恐らくは晴れ時々曇りくらいの予想が立った8日の火曜日に登山すべく、月曜と火曜に有給を取って岩手まで行ってきました。
先に結論を書いておくと、この弾丸旅行は大成功。お天気は晴れて気温も上がって夏山登山状態だったし、花も丁度見頃でした。
軽く写真を載せておくと、
山頂付近からの眺め。気持ちいい。
この山にしか咲かないハヤチネウスユキソウ。意外なことに、相当大量に咲いています。本当にそんなに珍しいのかと疑いたくなる密度です。
ミヤマシオガマもこの密度。本当はこんなもんじゃなく、壮大な花畑状態ですし、登山道の脇にはほぼ途切れずに何らかの花が咲いています。
初めは喜んで写真撮っていたミヤマオダマキ。そのうち、まったく珍しさを感じなくなるくらい大量に咲いてました。
東京から公共交通機関を利用する場合、早池峰へのアクセスは簡単ではありません。
当然東北新幹線を利用し、新花巻に出てからバスということになりますが、バスも途中で2~3回乗り継ぐことになります。
週末は臨時のバスが出たりしてまだましですが、それでも麓の峰南荘という山小屋に前夜は泊まるプランになり、しかもバスの乗り継ぎは行きも帰りも1パターン以外ありません。
つまり、ちょっと下山が遅れたりしてバスを逃すと、その日のうちに帰れなくなります。
こういう厳しいアクセス条件ながら、ネットで「早池峰、登山」などと検索すると、平日宿泊でお得な送迎プランを提供しているホテルが見つかります。ステイヒルというホテルです。
花巻と早池峰の間にある大迫(おおはさま)という町のホテルで、この町はワインの生産も盛んで見どころもそこそこあります。
そこで、1泊2食付、新花巻とホテルの間の送迎に加え、下山後の早池峰からのピックアップもしてくれてます。つまり、登山の朝にホテルから早池峰までのバスは自分で乗らないといけないですが、それ以外の送迎は全部ついています。これで9,800円というお値段。全部自分でバスを乗り継ぐと、それだけで4,000円以上かかると思うので、宿泊に食事もついたうえでこのプライシングは非常にお得なものです。
と言うことで、迷わずこのプランを予約。
泊まった実感として、この宿結構おすすめです。
値段が良心的なだけでなく、大迫の町の中で地元の農産物の直売所やワインの醸造所とも近いので、登山前日には散策しながらそれなりに楽しめます。
部屋自体は特に特徴はないのですが、大浴場は新しく、天井が高くてとても気持ちがいいです。
夕食もまずまずで、量的にも十分。翌日の朝食は、ボリュームたっぷりのおにぎり弁当にしてくれるので、山頂での昼食にすればよいです。
山小屋の布団もいいですが、ユニットバス付のホテルの部屋のベッドで寝てから登山に臨むというのも悪くないと思います。
ホテルステイヒル。建物はそれほど新しくないですけど、可愛い感じです。
大迫の町にある看板。ステイヒルから1分のところ。いろんな観光施設が至近です。
エーデルワインというワイナリーの醸造所の裏にある直営販売所。ワインだけでなく、ジュースやグラスなども売ってます。試飲し放題。
大迫のブドウ。美味しいワインになってください。
閑話休題、早池峰登山。
ステイヒルに泊まった翌朝は、ホテルから歩いて5分ちょっとのバスターミナルを5:50に出発するバスにて早池峰の河原の坊登山口に向かいます。
レトロな路線バス。
バスターミナルの事務所もレトロ。両替をお願いしました。
50分ほどで河原の坊登山口に着きます。350円で携帯トイレを売っています。3つで1,000円という微妙に団体向けのプライシング。
天気図的には曇りかと思っていましたが、沖縄に来襲した台風の影響で梅雨前線が南に引っ張られたのか、この日の早池峰は晴れていました。ラッキーです。ただし、真夏の日差しと気温を覚悟しなくてはならないのは、登山開始時点で予想できました。
準備運動もせずに早速登り始めます。河原の坊コースは、その名の通り沢筋を登るコースなので、この日のような暑いコンディションでも比較的気持ちよく進めると思います。
何度か渡河することになりますが、これはこれで楽しい。ただし、濡れた岩は滑るので注意。早池峰は蛇紋岩という岩でできた山で、この岩は濡れるとよく滑ります。
沢筋は花が多くて最初から楽しい。色的には、圧倒的に白い花ばかり。まずはシャクナゲ。ただし、写真のもの以外にはほとんど咲いていなかった。
カラマツソウ。モミジカラマツかね?
ブナの原生林が美しい。森林浴最高。
マルバシモツケ。
センジュガンピ。ぎざぎざの花弁の割に、全体的には上品な感じ。
この花、いろんな山の沢筋にあるような気がするけど、名前が特定できず。
暫く登ると、相変わらずの岩道ですが、徐々に木々の背が低くなっていきます。そして、ミヤマオダマキやヨツバシオガマのような鮮やかな色のものが目立つようになります。
こんな感じの道。
ヨツバシオガマ。上の方ではもっと群生しているけど、この時点では1つでも見つけると嬉々として写真撮ってました。
ミヤマオダマキ。
ヤマガラシ。アブラナの仲間らしい。数は少なかったと思う。
そして、森林限界を超えたあたりから目当てのハヤチネウスユキソウが現れました。
ハヤチネウスユキソウ。固有種です。
個体数が少ないのかと思っていましたが、意外なほどたくさん見られます。
これもたくさん咲いてきて、あまりありがたみを感じなかった花。しかし、下山後に調べると何と早池峰の固有種の1つでした。ミヤマヤマブキショウマ。
チングルマの花は終わり、毛がなびいていました。ミヤマヤマブキショウマとこのチングルマの写真はお気に入り。
このヨツバシオガマもそうですが、遠景に山や空が写っていると高山植物感が出ると思う。
ハクサンチドリ。個人的に贔屓の高山植物です。
そして、シロバナハクサンチドリ。普通は紫色の花ですが、早池峰では白い変種が見られることを事前のウェブ調査で知っていました。これは見たかったもの。
タカネニガナ。撮っている時はオトギリソウと思っていましたが、下山後に調べたら違うらしい。
ウラジロヨウラク。この辺りのものは、昨年谷川山系の平標山でも見ました。
しかしこれは早池峰固有種。ナンブトラノオ。固有種であることは、登っている時に他の登山者から聞きました。
チチマフクロ。ハクサンフクロに似ているけど、その名の通り北海道や樺太、千島の植物らしい。チシマと頭につく植物が多いのも、東北の山の特徴でしょう。
この辺りでは、登山道の左右の端まで行ったり来たりしながら花の写真を撮るのに夢中で、太陽に晒されているうちに汗も引いていく始末。全然登山になりません。花の好きな人にはコースタイムは参考にならない山です。私より高齢の女性2人組にも抜かれ、あなたさっきから全然進んでませんねとか言われる始末。
しかし、ここから御座走りや打石といったスポットが出てくるのですが、急登が続くのと下で見た花と変わらなかったりすることで、だんだんと登山に集中します。もう一つの理由は、9時近くなって徐々に雲が湧き上がってきたからです。まさに夏山のようで、早く登頂しないと山頂がガスで覆われる恐れが出てきました。
御座走り。
打石。犬が左上を見ているようだと書いてあった山行記録があったけど、その通りと思う。
振り返ると、南側で早池峰と対峙する薬師岳が見えます。こちらは花崗岩質の山のために植生が全然違い、樹林帯が山頂まで続いているようです。
9時ちょうど。ガスに捕まる。
頂上へはあと少し。鎖場などをが出てきますが、足元が濡れていない限り滑らないのであまり怖くないです。
御座走りを超えたあたりからは、花の密集度が上がります。
ヨツバシオガマ中心に。多くの花。
ナンブイヌナズナとミヤマオダマキ。
ミヤマキンバイ。
ミヤマアズマギク。下の方からかなりの数が咲いています。白っぽいものから青紫の濃いものまで。
キバナノコマノツメ。スミレの仲間ですが、黄色で珍しい。これとミヤマオダマキ、ミヤマアズマギク、ミヤマシオガマ、そしてハヤチネウスユキソウが一番多かったと思います。色もそれぞれ違うので、まさに色とりどり。
ハヤチネウスユキソウとミヤマオダマキ。
ミヤマシオガマ三連星。
写真と高山植物観賞に時間を相当取られたとは言え、登山口から2時間半ほどで9時15分ごろに登頂です。山頂には神社があり、神楽の道具も奉納されているようです。滑りやすい蛇紋岩の急な登りをここまで運んでくるのは根性ですな。
山頂は幸いなことに晴れていました。ガスは南側から上がり、山頂を超えると東側に流れて消えていく感じでした。頂上は岩岩しく、結構広いです。天気に恵まれたおかげで眺望はよく、東側はもしかしたら太平洋まで見えていたのかもしれません。
ホテルの送迎車とは、小田越の登山口で13:30の待ち合わせなので、時間的には余裕があります。そこで、山頂から西の鶏頭山方面を散策します。事前の調査で、こちらに花畑があるとのことだったので。そして、その花畑の迫力は凄かった。
ミヤマシオガマ。辺り一面に咲いています。
ミヤマアズマギクとホソバイワベンケイ。
ミヤマアズマギク。
白花のミヤマオダマキ。
チシマゼキショウ。これだけ多くの花が特定できるのは、早池峰に関するウェブ上の情報が充実しているから。やはり、花の名山として親しまれているのですね。
この辺りの稜線の登山道はこんな感じです。
暫く花を愛でながら遊んで、山頂に戻ります。北側の眺望が良いので、そこでホテルでいただいたおにぎり弁当を食べました。ボリュームあった。
山頂からの眺めを楽しんでぼんやりして時間を過ごし、10時50分頃に小田越を目指して下山を始めます。
すると、ミネザクラガ2輪ほど残っていました。今年は雪が多めだったようで、サクラも遅かったようです。7月に桜の残っている所って、日本中でどれくらいあるのかね。
こちらのコースも高山植物が豊富で、河原の坊からの登りでは気づかなかったものも幾つか見つけました。
ミツバオウレン。
ウコンウツギ。
イワカガミは花畑状態になっていました。
葉の形状からイワウメだと思うんだけど、時期的にちょっとずれているかも。何の花でしょうね。
ショウジョウバカマは一輪だけ残っていました。
小田越コースは木道が整備されていて、とても歩きやすいです。全体的に、とても手入れの行き届いている山です。高山植物を守るため、登山道を整備してそれ以外のところには人を入らせないようにする配慮でしょう。
カラマツソウは大花畑状態でした。
拡大。
木道の下にはマイヅルソウが咲いていました。まだ咲き初めでした。
途中、剣ヶ峰方面にも少し足を延ばしましたが、風景や植物はあまり変わり映えしない感じだったので素直に小田越コースを下りました。
岩の結構急なコースで、濡れていたらかなり滑るでしょう。私は晴れでラッキーでした。河原の坊コースほどではないですが、下りでは気をつけないと転ぶかもしれません。
登りで見た花々は、こちらのコースでも見ることができます。花の数はどちらとも言えない感じですが、河原の坊の方が序盤の沢筋でいろんな花があるのでいいかもしれません。
途中、こんな花を見つけました。
恐らくホソバツメクサ。下山後調べたところ、これとよく似たカトウハコベという花はかなり希少なようです。
ちなみに、これは河原の坊からの登りで撮った写真。もしかするとこっちはカトウハコベかも。いずれにしても、小さくて白い可憐な花です。
途中、鳥の声が常に聞こえていました。ウグイスも早池峰ではまだまだ健在だし、ヒバリのような鳥もいました。これは登りの途中で見たもの。
そして、これは下山中に会ったホシガラス。大きな声で2羽で泣いていました。
下りは滑らないように気を使ったのと、大人数のツアー客とのすれ違いが大変だったのであまり写真は撮りませんでした。
そして樹林帯へ。
ここでも木道が整備されています。
ギンリョウソウを見つけました。これも平標山以来。
13時前には下山完了で、登山口にいらっしゃった監視員の方にいろいろお話を聞いて過ごしました。
空の様子は完全に真夏でした。
その後、同行のご夫妻の下山が遅れて予定よりも出発が遅れたものの、無事にホテルの車で送ってもらって新花巻に出ました。
この日の岩手県は真夏の様相で、盛岡辺りは雷雨が凄かったようです。
私はお天気に恵まれて、花のハイシーズンの早池峰を満喫。ある意味で相当に贅沢な旅でした。
これからのシーズンは、やはり高山、アルプスに行きたいと思います。
早池峰、名前も綺麗な山です。
温暖化と植生のことを去年本で読んで、日本の希少な高山植物に興味を持ってからずっと行ってみたい山でした。
ハヤチネウスユキソウ、ナンブトラノオ、ミヤマヤマブキショウマといったこの山にしか咲かない花と巡り合うことができ、さらに多くの可憐な花々を見ることができたのは貴重な体験です。
登山としても、 蛇紋岩の道を行くのは楽ではなく、眺望も含めて楽しめるレベルのものでした。
東京から行くのであれば、平泉などの観光名所と組み合わせるとか、神楽や鹿踊りなどのイベントと合わせて楽しむのがよいでしょう。
弾丸で行くのはもったいないと思います。