ICANまにらブログ~第二巻~

日本のNGOアイキャンまにら事務所の日記。

それが「現実」なのだ。

2010年09月18日 | ごみ処分場の子どもたち


ゆきよ@まにら

今、フィリピンは雨季。雷を伴う雨はめずらしくない。パヤタスでは雨の中でも、今日の晩御飯を家族に食べさせるために、明日子どもを学校に行かせるために、ごみ山の上で多くの人が働き続けている。先々月はごみ山で働いている間に雷に撃たれ、ひとり若者が亡くなった。その若者は立っていて、まわりにいた者はたまたま座っていたのだそうだ。

先日家庭訪問させてもらった家の18歳の女の子アンジー(仮名)は、その亡くなった若者と親しくしていた友人のひとりだった。「こんなことになって悲しい。人生で一番辛かったことは、彼に死なれたこと。」と話していた。友人が事故で亡くなること自体ショックだが、ごみ山の上で働いている途中に雷に撃たれて死なれるのは悲しすぎる。そんな彼女の弟もまだ16歳だが、通学経費が続かず高校を中退し、今はごみ山で働いている。母親は「危ないから本当は働かせたくないけど、ほかにチョイスがなくて。。。息子を止めることはできないの。」確かに誰がそんな危ないところで自分の子どもを働かせたいだろう。

アンジーの父親はトレーラーの運転手だが、もともと収入は不安定な上に、病気がちなこともあって、十分に家族が食べられる状況にない。先日は1週間働きに出ていて200ペソ(約400円)しか持って帰れなかった。母親は蒸しパンを仕入れて売り歩く商売をして、なんとかその日のおかずを少し買うくらいの収入(1日50ぺソ:約100円)を得ており、そんな中でアンジーの弟のごみ山で廃品回収をして得られる収入1日100ペソ前後(約200円前後)は、生活費の大部分を占めている。

母親にごみ山をどう見ているのか尋ねると、「大変だけど確実に収入を得られる場所。でも危ないし体を壊すし、長期的に働くべき場所ではないと思っている。夢を持つ者はずっとそこで働くべきではないわ。」ごみ山は必要悪なのか。でもごみ山はあるべきかないべきかという議論とは別に、実際のところ「明日の生活費をどこからか得なければいけない」という切実なニーズが目の前に横たわっており、人々は今日もまたごみ山に登る。生きていくことは簡単なことではない。

「なぜ他の安全なところに引っ越さないのかって? 今サバイバルが大変で、引っ越す余裕なんてない。」と母親は語る。まわりの人々、とくに日本から来た日本人は、はなぜそんな大変なところから移動しないのかと単純に不思議に思うが、サバイバルのまっさなかにいる人たちはそこから出て行く手立てさえ持っていない。それが「現実」なのだ。

この家の娘アンジーは16歳で高校を卒業して(フィリピンは小学6年間のあと高校4年間のみ)さらに勉強したかったが家計が許さず、クラブで働いた時期もあった。まだあどけない華奢な彼女が、クラブで働いていたと聞いたときは驚いた。今はアイキャンの外部技術訓練支援(JICA草の根技術協力事業パートナー型の委託事業の一部)で、美容の勉強をしている。とりあえず技術を身につけて収入を得て、貯金ができたら、またさらに勉強したいという夢をもっている。「ちゃんとした職について母親たちを助けたいの。」いつか弟はごみ山で働かなくてもすむようになるだろうか。

私たちは、どこまでこの「現実」を変えていけるのか。



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