細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『お嬢さん』の甘い微笑と愛液には猛毒が潜む。

2017年01月30日 | Weblog

1月26日(木)12-30 六本木<アスミック・エース試写室>

M-010『お嬢さん』" The Handmaiden ( Agassi ) " (2016) CJ Entertainment , Moho Films / Yong Films All Rights Reserved.

監督・パク・チャヌク 主演・キム・テリ、キム・ミニ <145分・シネマスコープ> 配給・ファントム・フィルム

イギリスの作家サラ・ウォーターズ原作のベストセラー「荊の城」上下篇をベースにして、1939年の日本統治下の朝鮮半島を舞台にした壮絶な情欲地獄にして描く長編韓国映画。

なにしろ「このミステリーがすごい!」で第一位の原作を、あの傑作「オールド・ボーイ」のパク監督が異国ものにアレンジしたとなると、これはミステリー・ファンとしては必見だ。

おそらくは原作のイメージは、あのヒッチコックの名作「レベッカ」のように、大富豪の豪邸に嫁いだ後妻のような、まさに別世界への人間関係の軋轢と欲情の逆流に揉まれるドラマ。

日本語が話せるという利点で、この大富豪の屋敷に雇われて来た小間使いの少女キム・テリは、想像を絶するような屋敷の広さと、その贅沢さと住人の異常さに驚いてしまう。

そして徐々にその屋敷の異常な設計サイズや、部屋の異様さとか廊下や階段の複雑な仕掛けに、この大きな屋敷が、ひとつの城塞のような仕掛けに満ちていることに恐怖していく。

という具合で、前半ではその異様な巨大屋敷と、そこに住む日本人家族の奇怪なセックス生活ぶりを描いて行くのだが、さてさて、その後の展開は、がらりと<女中>の本来に任務が見えて来る、という具合。

タイトルのように、<ハンドメイデン>というのは、そのものズバリの<侍女>のことで、ブニュエル監督の「小間使いの日記」のような視線からの凝視アングルとなっていくのだ。

長い映画だが、そのストーリー展開は、おそらく原作もそうであろうように、そのチャプターの変化のように、視点のポイントが変わり、次第に、女中の視線が基本になっていくのだ。

例えは極端だが、敵国の秘密機関に僣入した囮捜査官のような、一種、インファーナル・アフェアの「メイド版」という感じで、趣味的には、ワクワクものなのだ。

・・・という勝手な想像をしてしまったのが、わたしの甘さであって、たしかに想像を越える当時の日本人富豪の生活様式と、その呆れるような傲慢さは、見ていて徐々に不快になってくる。

それにも増して、日本人富豪を演じている伯爵のハ・ジョンウと、その叔父のチョ・ジヌンに加えて、主役のお嬢様のキム・ミニたちが、一様にたどたどしい日本語で演じるのが歯がゆい。

恐らくは予算の関係とイメージの疎通のために、片言の日本語を話せる韓国人俳優を起用したのだろうが、この歯がゆい不快感は困ったもので、ハリウッドの二世日本人俳優の演技のように朴訥。

一緒に見た試写室の友人は「それを気にしたら、この映画は面白くないよ」というのだが、どうもその基本的な日本人同士の会話が気になって、下手な翻訳芝居を見ているような違和感に戸惑う。  

ま、そのストーリーは長編小説のように、見事に再三逆転してゆくので、当然に<ネタバレ>なので書く訳にはいくまいが、ミステリー・ファンなら想像するようなオチになっていく。

 

大きく上がった滞空時間の長いレフトフライだが、意外に伸びずに前進の外野フライ。 ★★★

●3月3日より、TOHOシネマズ・シャンテなどでロードショー 


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