●4月23日(木)13-00 渋谷<ユーロ・ライブ2F試写室>
M-047『ロスト・リバー』" Lost River " (2014) Bold Film Productions LLC. / Phantasma Films
監督・ライアン・ゴズリング 主演・イアン・デ・カーステッカー <95分> 配給・トランスフォーマー
昨年、ハリウッドのスタントカー・ドライバーの犯罪サスペンス秀作『ドライブ』で好演した、あのライアン・ゴズリングが、あのスタッフと組んで監督デヴューした異色作。
ケビン・コスナーやクリント・イーストウッドも、あるタイミングで映画を監督するようになったが、こうしてチャンスと資金があれば、情熱をフィルムに映像化してほしい。
が、俳優で監督もするというのは、かなりの覚悟はいるが、スタッフが意図を熟知して協力的であれば、それはいい作品を生むチャンスでもあり、ライアンはそれに恵まれたようだ。
この作品で、ライアンは出演していないが、さすがに特異な映像感覚は持っているし、現実とイリュージョンの配分も、かなり計算されていて終始魅力的な映像を展開するのは、さすがだ。
恐らくはデトロイト郊外なのか、大規模貯水池工事が中途で中止されたのか自動車産業の破綻からか、そこは完全に衰退したゴーストタウン。まさに老朽化で瀕死状態の町を舞台にして、現実とイメージが迷走する。
だから、当然のように、映画のテイストは「ロスト・ハイウェイ」や「ブルー・ベルベット」「ツイン・ピークス」などのデヴィッド・リンチ映画の、あのダークなファンタジーとなる。
人間の知性や感性、とくに犯罪は、その住んでいる土地の風土に汚染されがちだが、このような町ごとが都市計画の失敗に風化されるというケースはチチェンだけでなく、アメリカにも多い。
あのジョン・ブアマンの傑作「脱出」も、過疎化した山奥の得体の知れない住人たちの暴行から逃れるサスペンスだったが、この作品の視点も水没したハイウェイの電柱などのイメージは似ている。
たしかに多くのダーク・ムービーの舞台として、これらの水没都市は背景として使われるが、ライアン監督はそこに住んでいた人々の心の沈殿と、異様な悪夢も映像化しようとチャレンジして見せる。
カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門に出品されたのも、そうした古典的なテーマながら、新しいヴィジュアル視点と、異様なドラッグ感覚をゴズリング風に料理したユニークな才能を評価しての成果。
そこにはリンチ・ワールド以前に、フリッツ・ラングやロバート・シオドマークら先陣の作っていた文明破綻と共に頭脳ウィールスに冒された人々の地獄図が、音もなく沈殿していて異様だ。
だからこれは犯罪サスペンスではなく、人間文明の破綻が生んだ、住民たちの感性の崩壊も覗かせるニュータイプの<ダーク・ファンタジー>なのだろう。
■ライトへのヒットがイレギュラーしてファールライン、ツーベース。
●5月30日より、ヒューマントラストシネマ渋谷などでロードショー