細越麟太郎 MOVIE DIARY

最新の映画情報や批評を掲載します。

●「キャプテン」はストレート勝負の野球命映画。

2007年06月30日 | Weblog
●6月29日(金)13-00 京橋<映画美学校・第一試写室>
M-083 「キャプテン』The Captain (2007) トルネード・フィルム・日
監督・室賀 厚 主演・布施紀行 ★★★☆☆+☆
映画として、どうのこうの言う前に、これは野球への愛を描いたシンプルなテーマなので、野球が好きならばOK。
ちばあきおの人気コミックの本格映画化。中学軟式野球の宇都宮地区予選が舞台だ。
好感が持てるのは、ごちゃごちゃした愛憎ドラマがなくて、ひたすら野球に徹した割り切りだけだからだ。
「野球をして少年は大人になり、大人は野球を見て少年になる」持論である。
勝つことも大事だが、負ける苦汁に克つことがスポ根映画のテーマだろう。
「がんばれベアーズ」と、同じようなストーリーは承知の上。
ラストで、勝ったエリート強剛チームのエースが、負けた布施選手の左手に握手を求めてきた。右手はゲームで負傷していたからだ。
これである。これが男だ。
このワンカットで、この映画が好きになった。

●「さらば、ベルリン」はノスタルジックな戒厳令下エスピオナージ・ロマン。

2007年06月29日 | Weblog
●6月27日(水)13-00 日比谷<ワーナー・ブラザース試写室>
M-082 「さらば、ベルリン」The Good German (2007)warner/section eight 米
監督・スティーブン・ソダーバーグ 主演・ジョージ・クルーニー ★★★★
1945年のベルリン。
終戦処理のためにアメリカ、イギリス、フランス、ソ連の4カ国が分割統治していた時代。
「ジープの4人」や「ベルリン特急」などの作品の傾向と個性を再現したスパイ・ノワールだ。
もともとクルーニーやソダーバーグ監督は、その40年代の映画を資材に映画を勉強したベースがあるから、モノクロームの画調でスパイ・ノワールを作りたい夢があうのは、非常に同感できる。
だから、全編が教科書通りの照明や音楽、演技で構成された40年代映画ムードは嬉しかった。
基本的にはビリー・ワイルダーの「異国の出来事」と、フリッツ・ラングのスパイ映画を基調にしていて、その再現は見事。
ケイト・ブランシェットのデイトリッヒもどきのエロキューションには鳥肌がたった。
ジョージ・クルーニーはアメリカのジャーナリストで廃墟の現地入りをしたが、運転手のトビー・マグワイアーがロシア地区のポツダムで殺されてから、その謎の深さに落ち込んで行く。
宣伝では「カサブランカ」や「第三の男」をサンプルにしているが、実はもっと複雑な構造である。
わたしはこの手のノワールが好きなので、☆が多いが、「だから、どうなのさ」と言われると困る。

●「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」のハリーの苦悩

2007年06月28日 | Weblog
●6月27日(水)10-00 日比谷<ワーナー・ブラザース試写室>
M-081 「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」Harry Potter and the Order of the Phoenix (2007)英
監督・デヴィッド・イエーツ 主演・ダニエル・ラドクリフ ★★★☆
シリーズも第5作。
ハリーとその仲間たちも5年生。少年期を過ぎて、青年期の初期に差しかかり、大人になる多くの苦しみに囚われる。
たまたま不良仲間に喧嘩を売られたハリーは、怒りのために、自らの悪魔を呼んでしまう。
その時に校外では厳禁とされていた魔除けの呪文を使ったために、ホグワーツ魔法学校から退校させられる。
そこには新しく赴任した女性教師の陰謀もあったが、ハリーとしては大ピンチ。
「怒りというのは悪ではない。その怒りと対応するのが善人となる」
つまり悪というのは、怒りを自分のものとしてしまった者に巣食う。
ま、例によってのダーク・ファンタジーで、多くの妖怪変化がオールスター出演。
お好きなマニアのための、大型カルト・ムービーの傾向が強くなった。

●「オーシャンズ・13」は復讐のカジノ壊滅オペレーション。

2007年06月26日 | Weblog
●6月25日(月)13-00 日比谷<ワーナー試写室>
M-080 「オーシャンズ・13」Oceans 13 (2007) warner brothers
監督・スティーブン・ソダーバーグ 主演・ジョージ・クルーニー ★★★☆☆
このシリーズの成果は、これだけのキャストを一度に集結させたことで、ほぼ終わっているようだ。
今回は、グループの長老が、ラスベガスの新しいカジノ・ホテルのオープン計画で裏切られ、そのショックで脳梗塞で入院。
悪徳オーナーのアル・パチーノの進出を阻止しようと、オーシャンの仲間が再三の集結となった。
しかし「テスはどうした?」という仲間の質問に応えなかったオーシャンの曖昧な表情が曇ったように、この映画には女性に絡みがなく、唯一年増のエレン・バーキンが登場したところで、寂しい限り。
いくらいい男たちが集まっても、いい女のいないドラマはヤモメ臭いのだ。
結局は、オールスター野球でヒットが散発の印象。

●「遠くの空に消えた」少年の目で見たUFOの滑走路。

2007年06月23日 | Weblog
●6月22日(金)13-00 六本木ミッドタウン<GAGA試写室>
M-079 「遠くの空に消えた』Into The Faraway Sky (2007) ランブルフィッシュ・日
監督・行定 勲 主演・神木隆之介 ★★★☆☆
少年時代に見た夢と現実。
故郷の野原に空港を作る為に大げさな闘争を繰り返す大人たち。
それをフェリーニのようなユーモア感覚でコミックに戯画化して、少年のピュアな夢をダブらせる。
行定監督の原点帰航ファンタジーだが、どうもおとなの世界が、狙い程シニックな味がなく、そのせいで、少年の夢も萎縮して見えたのが残念。
ラストの滑走路で会ったフライト・アテンダントが、あの彼女だったら・・・。いいなー。

●「パーフェクト・ストレンジャー」自分のなかにいる他人

2007年06月21日 | Weblog
●6月20日(水)13-00 六本木<ブエナビスタ試写室>
M-078 「パーフェクト・ストレンジャー」Perfect Stranger (2007) columbia 米
監督・ジェームズ・フォーリー 主演・ハル・ベリー ★★★☆☆☆
マンハッタンの派遣社員ハル・ベリーは4つの名前を持っている。
子供のころの愛称、社員としてのソーシャル・セキュリティ名、チャット用のハンドル名、そしてライターとしてのペンネーム。アカデミー女優だから、この程度は軽く演じ分ける。
たしかに、われわれも、よく考えれば、いくつか呼称がある。
そんな彼女の幼な友だちが殺害され、ノートには派遣している広告会社社長の名前があった。
ハルはネットに詳しいボーイフレンドのパソコンから、社長の秘密アドレスに潜入を試みる。
要するにインターネットを駆使したサスペンスだから、ブルース・ウィリスが社長を演じても、銃撃もなければカー・チェイスもなく、実にクールなサスペンス映画。
さすが監督はノワール感覚を熟知していて、ヒッチコック風の上質な謎と罠を張り巡らす。
という点で、これは最近のハリウッド・サスペンスとしては上等だ。
このぐらいシナリオに捻りがあれば、多少の不具合は言うまい。

●「長江哀歌」に見る沈みゆく街、溺れゆく家族。

2007年06月20日 | Weblog
●6月19日(火)13-00 京橋<メディアボックス試写室>
M-077 「長江哀歌」Still Life(2006)中国
監督・ジャ・ジャンクー 主演・チャオ・タオ ★★★★
15年の工期をかけて中国の長江に、世界最大級のダムが工事中だ。
このために河岸の三峡などの景勝地が湖に沈むのは2009年。
<死刑宣告をされた街>に、2年ぶりにチャオが帰ってくる。
消えゆく故郷の街と、ビルの崩壊した場所に、別れたままの妻を探すためだ。
ジャ・ジャンクーは乾いた視線で、この沈みゆく不運な街と、人々の貧しい生活を静観していく。
不思議なシーンが二つあった。
別れ話をしていた二人の後ろに見えていたビルが、突然ロケットのように空に飛び立って行く。
街を去るチャオの彼方後方の高層ビルの間を、綱渡りしている男がいた。
これらのシーンは、特に重要なシーンではないだろう。
しかし監督の深い哀しみの滲む映像だった。
2006年のベニス国際映画祭でグランプリを受賞。

●「ダイ・ハード / 4.0」のアナログ・オヤジV.S.サイバー小僧の第4ラウンド

2007年06月19日 | Weblog
●6月18日(月)13-00 有楽町<読売ホール試写>
M-076 「ダイ・ハード/4.0」Die Haed 4.0 (2007) fox 米
監督・レン・ワイズマン 主演・ブルース・ウィリス ★★★☆☆
12年ぶりのジョン・マクレーン刑事は、I.T.オタクの青年を護送中に、全米のライフ・ラインを混乱させる規模のネット・テロに遭遇する。
何のことやら原因の判らぬままに、その青年のスキルを頼りに、テロリスト・グループと対決していく。
ほとんど呑まず食わずでの銃撃戦の連続は、アクション・ファンには堪能できるが、どうもその首謀格の青年が軽すぎだ。
かのジェレミー・アイアンズやアラン・リックマン級のワルでないと、先が見えてしまう。
たしかにネット知識に強い中年となるとキャスティングは難しいだろうが、せめてアル・パチーノとか、ラッセル・クロウのレベルの「顔」が出ていたら、もっと面白くなった筈。
後半でひとり娘が誘拐されるのは「ホステージ」のラインなのか。
相棒役のI.T.オタクを演じたジャスティン・ロングが収穫だった。

●「恋とスフレと娘とわたし」おせっかいママの老婆心。

2007年06月15日 | Weblog
●6月14日(木)13-00 渋谷<ショウゲート試写室>
M-075 「恋とスフレと娘とわたし」Because I Said So (2006) universal 米
監督・マイケル・レーマン 主演・ダイアン・キートン ★★★☆
「花嫁のパパ」のダイアン・キートンが、離婚ママで演じる「花嫁のママ」のようなコメディ。
三人娘の末っ子のマンディ・ムーアが、なかなかいいボーイ・フレンドに恵まれないので、ママが勝手に候補者選びをする。
その老婆心ぶりを、「アニー・ホール」から30年のダイアンが大張り切り。
よけいな出しゃばりの連続で、名優ダイアンも、全編で躁状態。
演出が弱いせいで、完全に彼女の騒ぎ過ぎ映画となった。
離婚した元亭主と似たような相手を選んではいけない、と奔走するのはいいが、これではいい男も逃げてしまう。
娘の人生は彼女のもの。過保護な熱演にも閉口してしまった。

●「22才の別れ」と44才の始まりと。

2007年06月13日 | Weblog
●6月12日(火)13-00 紀尾井町<角川映画試写室>
M-074 「22才の別れ/Lycoris 葉見ず花見ず物語」2006 角川映画
監督・大林宣彦 主演・鈴木聖奈 ★★★☆
福岡。44才の独身サラリーマンが、コンビニで22才の女性に援助交際を申し込まれる。
その娘は、22年前に別れた初恋の彼女の娘だった。
大林監督独特のノスタルジック・ラブ・ロマンの世界は、伊勢正三の唄に入って行く。
時代を交錯した恋なのだが、いつになっても発展しないまま。
恋とは、えてして、こんなもの。と監督は言いたげだが、とにかく展開が迷走するので、こちらがバテる。
あと15分でもスピード・アップしたら、もっと☆が増えたであろう労作だった。