細越麟太郎 MOVIE DIARY

最新の映画情報や批評を掲載します。

クリントおめでとう。

2005年02月28日 | Weblog
●2月28日(月)10-30a.m.
第77回 アカデミー賞予想結果反省の言い訳。

まさかのクリント・イーストウッドの圧勝は感激でした。
「キネマ旬報」の予想の時点では「ミリオンダラー・ベイビー」を見ていなかったので、「アビエイタ-」で決まりだと予想したのが早トチリ。失礼しました。見てもいないのに、結論を出した自分がバカでした。ハリウッドのアカデミー会員のジェーン・ジェンキンスからのメールで「Everybody Loves Clint」というコメントを信用して、このブログで本音の予想したのが座談会のあとだったけど、もし、あのままの予想をしていたら、結果はほぼ満点だったのに。
ああ、クリント・イーストウッド様、ご免なさい。本当にI'm so Sorry.
今年こそ、カーメルのクリントの経営するホテルに行こうと思います。
タイミングよく会えたらラッキーですね。
でも、ケイト・ブランシェットが受賞したのは嬉しかった。一昨年、ジェーンを通じてサインをもらっていて、ラッキーでした。これだけは初めから信じて賭けていたので、ハッピーでした。

ダグラス・サークとの再会

2005年02月27日 | Weblog
2月 27日(日)DVD
●「風と共に散る」Written on the Wind (1956)
監督・ダグラス・サーク 主演・ローレン・バコール ★★★★
とうとう幻のダグラス・サークの映画がDVDになった。
フランスの映画評論家たちが80年代頃になって、ハリウッドの大甘メロドラマ監督ダグラス・サークを絶賛した時には困ってしまった。ヒッチコックやサミュエル・フラーを再認識するのは理解できたが、ダグラス・サークの映画は口に合わなかったからだ。大きなチョコレート・ケーキに砂糖をかけたような甘さは歯の健康によくない。
アメリカの中流階級の家が不倫がもとでガタガタに崩壊するメロドラマは、当時まだ独身だったわたしには関係のない世界。「青春物語」や「エデンの東」は認めるのに、サークの作品には閉口していた。
トッド・ヘインズ監督が02年に「エデンより彼方に」を作ったとき、これはモロ・ダグラス・サークじゃないかと思いながら、実はとても懐かしい快感があった。そう、いまこそ、もう一度彼の映画を見てみたい。
店頭で「風と共に散る」のDVDを見つけた瞬間は、56年頃に憧れた美女に再会したようなショックだった。あの時代にはドリス・デイのコメディの方がユニヴァーサルらしいと思って見ていたのだが、こうして今見ると、このメロドラマを懲りずに量産したハリウッドの甘さが、逆にブランドとして認識を新たにしてしまった。
ぜひ「愛する時と死する時」「心のともしび」などもDVDで出して欲しい。

「追跡・第三の男」の記憶

2005年02月26日 | Weblog
2月 26日(土)VTR-BS2
●「追跡・第三の男」Shadowing The Third Man (2004)英国
監督・フレデリック・ベイカー 制作・カナル・プリュス・UK
NHK-BS2で24日に放映されたドキュメンタリー映画だが、名作「第三の男」のメイキングではなくて、最近収録されたウィーンのロケ現場を訪れて、当時の関係者たちの回想が90分も見られたのは幸運だった。とくにキャロル・リード監督の助監督をしていたガイ・ハミルトンの追憶の証言は貴重だ。
「予算もない上に、当時のウィーンは政治的にも不安定だったので、ほとんどドキュメンタリーのように、ぶっつけで撮っていて、スター以外は現地のひと。風船売りの老人は偶然カメラの前に現れた老人で、ボールを持った子どももロケ現場にいたんだ。オーソン・ウェルズは地下水道の臭気が嫌で、一度も地下には来なかった。だから逃げる第三の男はスタンド・インで、追いかける警官は本もの。マンホールからでる指は監督の指さ。だから、オーソンの逃亡シーンはロンドンのスタジオで撮影したのさ」と、真実には呆れることが多い。
「監督は政治的にはならないように、人間関係のドラマにこだわった。ラスト・シーンは観客が立たないように、ワンショットでなるべく長く廻したのさ・・・」
名作は計算でなく、窮地から生まれたのだ。

ソフィア・ローレンとレモニー・スニケット

2005年02月25日 | Weblog
2月25日(金)VHS-VTR
●M-027「微笑みに出逢う街角」Between Strangers (2002) カナダ
監督・エドアルド・ポンティ 主演・ソフィア・ローレン ★★★☆☆
「キネマ旬報」に、ソフィア・ローレン100本目の出演作品のことを書く依頼があったのだが、この新作の試写を見逃していたので、VTRで見た。しかしこれはちゃんとスクリーンで見るべき映画。つまり、画面の隅々まで気をくばった人間の感情を描くドラマだから、テレビ画面ではもったいない。3人の女性の悩みと、その転機を描いて三人三様の葛藤が詩情豊かに展開する。ソフィアの息子の初監督はジーナ・ローランズの息子のニック・カサベテスには適わないが、今後に期待できる映画センスが随所に光っていた。女性映画の佳作だ。

2月25日(金)13-00 アスミック・エース試写室
●M-028 「レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語」(2004) 米
監督・ブラッド・シルバーリング 主演・ジム・キャリー ★★★☆
ハリウッドが、イギリスの「ハリー・ポッター」シリーズに対抗して作ったような、三人の子どもの映像冒険映画。童心の純粋さは、大人たちの企む悪徳の世界も楽しい冒険に変えてしまう。まさに悪夢のピーターパンだ。ジム・キャリーがまたしても悪のり変装を見せ、あのメリル・ストリープも「エンジェル・イン・アメリカ」の延長のような怪演をする。
まるでハリウッドのワックス・ミュージアムのCG映画。テクニカルにはアカデミー賞にノミネートされるだけのスキルの高さは見せるのだが、感動はない。ああディズニーの童心はどこに行ってしまったの?

確定申告と「ウィンブルドン」

2005年02月24日 | Weblog
●M-026 2月24日(木)13-00 U.I.P.試写室
「ウィンブルドン」Wimbledon (2004)英
監督・リチャード・ロンクレイン 主演・ポール・ベタニー ★★★☆☆☆
気になっている恒例の確定申告は、アカデミー賞が決まる前がいい。3月に入るとバタバタとして時間に追われるので、今日は早めに税務署に行った。しかし医療控除の記載に不備があり、追試験となった。そんな日に見る試写はあまりシリアスな社会ドラマやアート性のある作品はよくない。気が重くなってしまうからだ。マリア・シャラポアが昨年の勝者になったロンドンのウィンブルドンは、一度は行ってみたい本場の風格がある。この映画は単純にあのセンター・コートに行ったような気分になる。<スポ根・映画>としては爽快なフェア・プレイ感覚を満足させてくれた。
ポール・ベタニーは今期で引退を表明したラスト・ゲーム。ケビン・コスナーの「ラブ・オブ・ザ・ゲーム」と同じようなストーリーだが、スカッとしたライト感覚が、最後まで気持ちいい。C・G処理もあまりやりすぎない程度のスポーツマン・シップで処理して、テニス・ファンには申し分のないハッピーな快作だ。

「ウィスキー」の酔い心地

2005年02月22日 | Weblog
2月22日(火)13-00  <映画美学校第二試写室>
●M-025「ウィスキー」Whisky (2004) ウルグァイ
監督・ファン・パブロ・レベージャ+パブロ・ストール 主演・アンドレス・パゾス ★★★★☆
南米のウルグァイはブラジルとアルゼンチンの間にある小国で、日本の半分位の広さ。映画も一年に10本も作らない国なのに、この映画は面白い。シンプルなストーリー。寡黙なダイアローグ。沈黙のユーモア。アキ・カウリスマキよりも、ラテンのお国柄か、むしろイタリアのナンニ・モレッティの感覚だ。それにしてもストーリーが面白い。介護に疲れた長男のところに久しぶりにブラジルから次男が謝罪にくる。靴下の工場を経営している長男は、秘書の女性ににわか奥さんになってもらい、数日弟を歓待する。沈黙の食事。おかしなドラマが意外な感動で終わる。われわれは無理に誇張
した先進国娯楽ドラマに汚染されていたことを、またこの秀作で知らされた。必見だ。

「バタフライ・エフェクト」の分裂症

2005年02月21日 | Weblog
2月21日(月)13-00 <映画美学校第一試写室>
●M-024「バタフライ・エフェクト」The Butterfly Effect(2003)米
監督・エリック・ブレス & J・マッキー・グラバー 主演・アシュトン・カッチャー ★★★☆
「素晴らしき哉、人生」の悪夢版。もしあの時、もっと早く賢明な判断をしていたら、人生はもっと幸せだったに違いない。と言う想像は誰でもする。最近、学校の教師を殺害した少年が、その瞬間の記憶がない、と供述していたが、この映画は、トラウマに支配されて狂気におちた瞬間の記憶は一時的に失われる、という分裂症の原因を探り修正しようとする。そのアイデアは面白い。しかし、やたら修正するために現実が希薄になる。その辺に演出の無理がある。記憶の確認のためにひとは日記を書くが、それを焼き捨てることで過去は消えるものじゃない。君は日記を書いていますか?

「シャル・ウィー・ダンス?」のリメイク度

2005年02月18日 | Weblog
2月18日(金)13-00 <GAGA試写室> 監督・ピーター・チェルソム 主演・リチャード・ギア ★★★☆☆
オスカー・ノミネートも期待されたリメイクだが、思ったほど感動がない。そこがリメイクのリスクなのはスタッフも承知のことだろうが、なぜかオッかなビックリのステップなのだ。つまりハリウッドとしての意外性が見られない。リチャード・ギアは「シカゴ」の活気だ見えないし、ジェニファー・ロペスはオーラがない。ひとりスタンリー・トウチが悪のりしているので、作品全体が毒気にやられて生彩がない。これではオリジナル版も踊れないな。

雨の日のDVD

2005年02月16日 | Weblog
2月16日(水)東京は雨。
ベン・アフレックの新作は評判悪いし、「バタフライ・エフェクト」は全くの未知数。こんな雨の日にわざわざ出かけるにはリスクが大きい。だから雨の日は試写もお休みだ。こんな日には溜め込んでいるDVDを見るのが賢明だ。年金生活の映画評論家は身勝手なお天気屋。
●ジョン・フォード監督「コレヒドール戦記」は傑作だ。50年ぶりにDVDで見て、さすが45年のアカデミー作品賞にノミネートされた作品だけに堅実な仕上がりの戦争映画。しかしユニークなのは、アメリカ軍の撤退を描いているところ。当時はアメリカ連合軍は太平洋戦線でも勝利していたのだから、この敗色の戦記映画というのは異色である。
ミンダナオ諸島のコレヒドールやバターンは、日本軍の猛攻でマッカーサー司令官も撤退した屈辱の戦場。この映画のラスト・シーンでも、海軍司令官とその副官のジョン・ウェインは軍用機で脱出するが、「我々は逃げ出すのではない。この戦線に戻るために一時的に撤退するのだ」。そしてエンド・マークではなく「WE SHALL BE RETURN」と大きな文字で終わる。マッカーサーの名台詞だ。
ジョン・ウェインはあくまで助演というのも珍しい。
そして彼の役名は「ラスティー・ライアン」。聞いた名前だなー、と思ったら「オーシャンズ12」のブラッド・ピットの名前と同じ。役もサポート役でそっくりだから、もしかしたら、この忠実な副官の名前を頂いたのかもしれない。
ジョン・ウェインとブラッド・ピットが、50年ぶりに同じ名前の役を演じたのも、面白い発見だ。
雨の日は、DVDに限る。


「オオカミの誘惑」の憂鬱

2005年02月15日 | Weblog
2月15日(火) 13-00 <渋谷シネカノン試写室>
●M-22 『オオカミの誘惑』Romance of Their Own (2004)韓国
監督・キム・テギュン 主演・チョ・ハンソン ★★★☆☆
「インファーナル・アフェア・3」の試写に行くつもりが、どうも気になって予定変更。
少女コミックの映画化という噂の学園ラブ・ストーリー。と思いきや、これは高校生の感覚よりはオトナしている。ま、韓流ムードに支えられた仕上がりだが、感涙のラストはスクリーンの上だけ。ブスな少女になぜかイケメンのふたりが絡むという「突然炎のごとく」のパターンで、監督は一応見せてくれるのだが、イマイチだった。