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細越麟太郎 MOVIE DIARY



7月21日(火)13-00 渋谷<ショウゲート試写室>

M-092『岸辺の旅』" An Another Journey " (2014) オフィス・シロウズ・Comme des Cinemas・アミューズ

監督・黒澤 清 主演・深津絵里 <128分> 配給・ショウゲート

少女にピアノのレッスンを終えた深津は、ごくありがちな質素なアパートに帰宅して、ひとり食事の用意をしていると、部屋の隅には男がいた。

「おれ、死んだよ」と呟いたのは浅野忠義扮する、3年前に失踪した夫なのだった。何と、死者の帰宅である。

が、妻は驚いた様子もなく「おかえり」という。

ありがちな<ゴースト・ストーリー>なのだが、とくに驚きも感動もなく、久しぶりの夫婦は静かに会話している、という不思議な雰囲気が、妙に和む。

それで、話しの末に、その空白な3年に辿った夫の旅路を、もういちど二人で旅することになった。というのが、この映画のストーリーなのだ。

死者と現世の話しというのは、以前にも「天国への階段」「幽霊と未亡人」から、「ゴースト」などなど、実は非常に多いテーマだったが、そこにはルールがあった。

例えば,死んだひとには感触はなく、他人には見えない、とか、スルーっと、ドアをすり抜けるとか。勝手に消えてしまうとか・・・、いろいろなタイプがあった。

しかし、この3年振りに戻った死人は、ごく当たり前の会話をして、妻との旅も、周囲の人たちにも認知できて、会話もする。つまり生きているままなのだ。

それなのに、夫は死んでいて、その空白の3年間に世話になった人たちを妻に紹介したり、挙げ句の果ては、自分が死んだ場所にも案内して説明するのだった。

高倉健さんの遺作になった「あなたへ」は、亡くなった妻の遺灰を持って、妻の生地に旅をする設定で似ているが、むしろ「鉄道員」の時の死者たちとの交流が描かれて行く。

実に淡々としたロードムービーで、これはまるで、久しぶりの晩婚記念日旅行のようでもあるが、やはり、夫は死人なのだから、ベッドシーンも奇妙なものに見えてしまう。

でも、黒澤監督はまったく死者を同次元で捉えて、情感のある夫婦映画にしているところが、カンヌ国際映画祭で<ある視点>部門の監督賞を受賞したポイントなのだろう。

だから、あちらの審査員の先生方にも判りやすいラブ・ストーリーとして好意的な評価をされたと思う。つねに無理な感情表現をしないクールな演出には、とても好感が持てた。

つい先日公開された「愛を積む人」の逆バージョンとしては、未亡人の奥様方には胸にせまるものがあるだろう。 

 

センター・フライが照明で見えなくなり、フェンスへのツーベース。 ★★★☆☆

●10月1日より、テアトル新宿ほかでロードショー 



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7月21日(火)10-00 半蔵門<東宝東和試写室>

M-091『ミニオンズ・3D』" Minions " (2015) Universal Studios / Illumination / comcast company

監督・ピエール・コフィン+カイル・バルダ 主演(V)サンドラ・ブロック <91分> 配給・ユニヴァーサル+東宝東和映画

いきなり3Dの、あの地球が回転するユニヴァーサル映画ご自慢のタイトルが、ミニオンズたちの奇怪なコーラスで始まるところから笑ってしまう。

イエローなバナナのような、しかし、それよりは💊のような薬状のミニオンズたちが、奇怪な舌足らずのフランス語のような会話で、恐竜時代からの存在を語る。

ま、ユニヴァーサル映画なのだから、「ジュラシック・ワールド」の宣伝PRも兼ねているつもりなのだろうが、この奇妙な黄色い錠剤のようなルックスで暴れ出すのだ。

原始時代から、古代エジプト時代、スペインの海賊時代、フランスの革命時代を経て、1968年に怪盗グルーに出会うまで、奇妙なトリビアでミニオンズに成長を紹介。

さっぱり訳のわからない吃ったフレンチは、当時の人気者の、ダリー・コールの演じた「幸福への招待」や「殿方ご免遊ばせ」などのオヨヨ大統領そっくりである。

一応、ケビン、ボブ、スチュワートと名乗る3匹のミニオンズは、故郷の仲間を、より住みやすい新天地を求めて、まさに三銃士のような活躍を重ねてロンドンにやってくるのだ。

そこで悪女のサンドラは、まさにジェームズ・ボンドの宿敵「スペクター」のような暗黒なテロ組織のリーダーだが、ミニオンズたちを鉄砲玉の子分として悪用する。

彼女の目的は、スコットランドの王室の座を奪い、新しい女王になることだったが、肝心のミニオンズは、その邪悪な企みに抵抗しだすのだから、アクションは007の展開。

もともとは、「怪盗グルー」や悪党家族の「ネルソン・ファミリー」のキャラクターを生み出したパリのピエール・コフィン監督の悪どいブラック・ユーモアがベースなのだ。

それをユニヴァーサルの怪獣や怪奇映画の伝統の社風で味つけているので、これは、あきらかに健全なディズニー・プロへの挑戦状だとも取れるのだ。

これでもか、これでもか、とブラックなユーモアを活かした怪演で、ミニオンズは悪玉組織の王座奪還のテロリズムに抵抗して、呆れるべきラストを迎えることになる。

おかしいのは、その逆転のあとのエンド・クレジットの間も、ミニオンズはスクリーンを支配して飽きさせない。これもまた見上げたエンターテイメントなのだ。

 

■ピッチャーゴロをセカンドも後逸、ライトがサードに送った送球がフェンスまで転々の、ランニングホームラン。 ★★★★

●7月31日より、全国夏休みロードショー 



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7月16日(木)13-00 築地<松竹本社3F試写室>

M-090『黒衣の刺客』" The Assassin " ( 2015) Spot Films / Sil-Metropole Organisation Ltd. 台湾、中国

監督・ホウ・シャオシェン 主演・スー・チー <108分> 配給・松竹メディア事業部

非常に絞り込んだ独特の耽美的な映像世界を主張してきたホウ監督の8年振りの新作は、8世紀後半の唐王朝を舞台にした女性アサシンのサスペンス。

とはいえ、華麗な色彩で再現される栄華な王朝での映像世界の再現で、映画としての魅力は、そのテーマの暗殺陰謀よりも、とてつもなく優美な当時の華麗なヴィジュアルだ。

過去の「悲情城市」や「珈琲時光」などでも、ほとんど俳優のアップは撮らずに、ミドルからロング・ショットを基調にした映画作りは、まるで深艶なステージを見ているよう。

毎度のようにヨーロッパの国際映画祭でグランプリを受賞しているのは、その歴史や映像世界を、独自の美意識に忠実に守り、娯楽的な視線を拒否し続けている作家性の頑さだろうか。 

だから周到な歴史研究と、まるでオペラのように凝縮された栄華なステージと照明の微妙さは、ギレルモ・デル・トロが絶賛するほどアート性に貫かれていて、映画というよりは中国古典美術館。

しかも、ほとんどの台詞を排して、シェークスピアのギリシャ悲劇のステージのような、研ぎすまされた照明による映像表現は、ちょっと最近見る事はできないレベルだ。

ところが、なぜか、この試写の最中に、ちょうどスタートして20分位して、ストーリーの様子が読めるようになった瞬間、あああ、突然の停電。

しばらくして、どうやら松竹本社ビルが全館停電になったというアクシデントに、退席したひともいたが、外は暑いので、ジッと待つ事30分。

やっと試写は再開されたのだが、こちらは気持ちよく昼寝をしていたらしく、また再開されたストーリーもロングショットが多いので、ストーリーがフォローしきれない。

後半になって、わが妻夫木聡くんが出て来ても、変装していてアップはないので、どこに出て来たのかも判らないままに映画は終わってしまった。

やはり、あの中断した時に退出すべきだったが、もう一度見に行くほどの元気もない暑さ。実に不運な試写となったので、野球の雨による中断ゲームのドローのような印象になった。

カンヌ国際映画祭で監督賞受賞という、この栄誉も、頑な監督のステージ・アートを固執する美意識に捧げられたのだろう。

 

■打席の時に雨で中断。再開後も見逃しのフォアボール。 ★★★・・?

●9月12日より、新宿ピカデリーなどでロードショー 



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7月15日(水)13-00 飯田橋<角川映画試写室>

M-089『キングスマン』" Kingsman / The Secret Service " (2014 ) Twentieth Century Fox Film Corporations UK

監督・マシュー・ヴォーン 主演・コリン・ファース <129分> 配給・KADOKAWA

スパイ・コミックの実写劇映画で、一応はメジャーな20世紀フォックス映画のジャジャーン・・・というタイトルで始まる。

しかし、あくまでスタンスは、あのジェームズ・ボンドを茶化したようなコメディだから、ジョン・ヒューストン監督の1967年の「カジノ・ロワイヤル」と同様だ。

あの「カジノ・・・」は、モロ、ショーン・コネリーの正統ボンド・シリーズ映画をネタにして、ピーター・セラーズやウディ・アレンなどがスパイに扮した奇作だった。

もともとはジェームズ・ボンドのリタイアしたあとのエピソードだったが、それを完全にドタバタ・コミック仕立てにしたお笑いで、当時も、かなり失笑もののオチャラケ・コメディ。

この新作「キングスマン」も、どうやらスタンスは、正統ボンド・スパイものを茶化したスタイルで、あの「スナッチ」や「キック・アス」「XーMEN」のマシュー・ヴォーン監督の世界だ。

「キングスマン」というロンドンのメンズ・ファッションの老舗は、実はドアの裏は、イギリスの国際諜報機関の裏組織で、スコットランド警察も感知しない独立エージェント。

かつて活躍して他界したスパイの息子タロンが、父の遺したバッジを持って、その組織のドアを叩いたことから、主任のコリン・ファースのアシスタントとしてスパイ修行を始めるのだ。

65年頃に、ボンド映画と対抗して作られた正統間諜映画「国際諜報局」のスパイ、マイケル・ケインは、まさにショーン・コネリーのライバルだったが、ここでも顧問として登場する。

つまり制作しているスタッフは、マジ、ボンド映画のパロディ作品のプライドで、この奇妙なスパイ・アクションを展開していくが、独特のイギリス人気風がハリウッドとは一味違う。

というのも、正統スパイ映画の流れに、「キック・アス」の劇画タッチのコミック・アクションも取り入れているので、壮絶なアクション・シーンも相当にクレイジー。

とくに、サミュエル・L・ジャクソンが演じる奇妙な悪漢が、まさに「ドクター・ノオ」や「ゴールド・フィンガー」のノリで徹底的に茶化しているので、これは、もう、笑うしかない。

おまけに両足に金具をつけたダンサー、ソフィア・ブテラのカンフー・アクションは、完全にコミック・アクションの世界で、これには007も適うまい。

もうじき、年末には、正調のジェームズ・ボンド新作が公開されるので、ここは「キングスマン」が、お笑いで稼ごうというスパイ笑戦なのである。

 

■いきなり初球からバスターでサード頭上のヒットでセカンド・エラーを誘う。 ★★★☆

●9月11日より、新宿ピカデリーなどでロードショー 



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7月15日(水)10-00 六本木<アスミック・エース試写室>

M-088『Dearダニー*君へのうた』" Danny Collins " (2014) Shivhans Pictures / Handwritten Films / Big Indie Pictures

監督・脚本・ダン・フォーゲルマン 主演・アル・パチーノ <107分> 配給・KADOKAWA

信じられないような話だが、実話なそうだ。

信じられないのは、ジョン・レノンからの手紙ではなくて、どうしてその手紙がコレクターの手に渡って、それが43年も経った今ごろになって出て来たのか、だ。

たしかに、文豪の未発表原稿が、突然今頃になって公開されることはあるが、これは個人に宛てた私的な手紙である。

「郵便配達は二度ベルを鳴らす」というが、この手紙は、郵便配達が勝手に開封して、ジョンの自筆なので、高額でコレクターに密売したのだろうか?

いや、ラジオの番組プロヂューサーが、ジョンの直筆なので、勝手にポケットに入れたのか???

しかし、それが、なぜか、今頃になって当人に届いたというのだから、ラブ・レターならば、多くのハーレクイン・ロマンスのテーマになったところだろう。

手紙の内容は大したことでなくて、その70年代にデヴュしたてのシンガーを励ます内容のもので、その手紙そのものは大して意味のあるものじゃない。

が、43年ぶりに届いたことで、この映画のテーマが誕生したというから、「遅れて来た手紙」も大きな意味を持ったことになり、天国のジョンも呆れているだろう。

一発のヒットソングで人気のでた<ダニー・コリンズ>という歌手をアル・パチーノが演じているが、これは音楽映画ではなくて、人生やりなおしのドラマだから。

いまでも昔の曲をステージで唄ってドサ周りをしているアルは、さすがに中年になって人生に疲れきっていた。その時に届いたのが、あああ、あの昔憧れたジョン・レノン。

奮起して再出発するかと思いきや、彼は唄うのをやめて、過去に捨てた肉親を探し、人生のホコロビを修復しようというのだ。

まさにジム・ジャームッシュの「ブロークン・フラワーズ」や往年の名作「舞踏会の手帳」のように、アルは捨てた家族たちとの再出発をしようと、一度も顔を見た事もない孫に逢いに行く。

ところが孫は障害をかかえていて、家族も火の車。当然、予定されていたツアーはキャンセルして、持てる私財も売りつくして、病苦に悩む家族を救おうと尽力する、という美談。

たしかに感動的なシナリオで、パチーノも巧すぎる。それなのにさっぱり盛り上がらないのは、やはり演出にムラがあるからであって、パチーノの二重人格が強調されるばかり。

とくに、ホテルのチーフであるマダムを演じるアネット・ベニングや、マネジャー役のクリストファー・プラマーに味があるのに、・・・ドラマは平板なまま。惜しまれた。

 

■ライトの横にいいライナーが飛んだが、ポジションを変えた好守備に阻まれる。 ★★★☆

●9月5日より、YEBISU GARDEN CINEMAなどでロードショー 



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7月13日(月)13-00 渋谷<ユーロアクト試写室>

M-087『 EDEN <エデン>』CG cinema / France 2 / Blue Film Productions / Yundal Films 仏

監督・脚本・ミア・ハンセン=ラヴ 主演・フェリックス・ド・ジヴリ <131分> 配給・ミモザフィルムズ

1992年のパリ。多くのファッション・デザイナーたちが、シーズンのファッションをリードすべく日夜ホテルのパーティやショウで人気を得ていた。

実はその人気を支えていたのは、トップデザイナーや世界的なスーパー・モデルを操るショウの演出と同時に、そのバックに流れるクラブ・ミュージックの魅力だった。 

ジャズでもなく、ましてやロックなどの人気ポップスではなくて、一種の環境音楽のような、ある種レイジーで掴みどころのないディスコ・ミックスのソフトなロックの流れは麻薬的でもあった。

もちろん、70年代に流行したドラッグ・サウンドが、より洗練されて進化したクラブ・ミュージックは、パリのファッションショウなどでは、すっかり香りのあるBGMにもなっていた。

この映画では、そうしたエレクトロ・ミュージックが、若者たちの<ガラージ・サウンド>として進化して、多くのパリ・ファッションの背景音楽を支えて、大衆化されていく日々を描いて行く。

大学生だったフェリックスは、母親の目を盗んでは、友人たちと郊外のガラージで、麻薬とロック・ミュージックの虜になっていて、それが次第に深夜ラジオのDJの道へと流れて行く。

ミッドナイトDJの人気は、その語りの流暢さよりも、選曲とダビングの巧さにあって、クリント・イーストウッドの監督デヴュ作「恐怖のメロディ」も、DJがファンに狙われるサスペンスだった。

しかし、この作品はドラマ的にはポイントは置かれていなくて、あの90年代に<ガラージ>から人気DJになって、多くの夜のパリのクラブでサウンドを操り人気者になった青年の成功と陥落を描いて行く。

という意味では、つい先日見た、70年代の<ザ・ビーチボーイズ>のブライアン・ウィルソンのドラッグ・ライフの青春とよく似ているが、フレンチのDJは、よりファッショナブルで魅力的だ。

作品は、ガラージからDJとなり、パリのファッション界とクラブ・ミュージックを支えた青年の、夜の成功から失意への転落を、まるでドキュメンタリーのように淡々と見つめて行く。

どうやら、このミア監督は、彼女の実の兄がガラージDJをしていたので、その生き様をイメージして描いたのだろう。

そのタッチは、まるで当時のヌーヴェル・バーグのフィルムのように魅力的だが掴みにくい。それが、あの時代と、夜のクラブ・ミュージックの魅力だったと証言しているようだ。

だからドラマとしては、よくある青春映画の色合いだが、サウンドが終始強調されて、何と43曲も聞こえるので、あの妖しげなガラージ・ビートのお好きな方には嬉しい時間となる。

 

■平凡なショート・ゴロだが、野手がファンブルして、微妙なヒット。 ★★★☆

●9月、新宿シネマカリテなどでロードショー 



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7月9日(木)13-00 六本木<アスミック・エース試写室>

M-086『ヴィンセントが教えてくれたこと』" St. Vincent "(2014) The Weinstein Company/ a Chernin Entertainment. 

制作・監督・脚本・セオドア・メルフィ 主演・ビル・マーレイ <102分> 配給・キノフィルムズ

クリント・イーストウッドの名作「グラン・トリノ」を、そのままコメディに仕立てた、というと異論はあるかもしれないが、よく似ている。

ブルックリンの古い屋敷に住む初老のビル・マーレイは、よくいる偏屈な独り者。身勝手に生きて来て、酒とギャンブルと女遊びの日々は過去になりつつある。

とにかく、生来の不良な男でポンコツなオープンカーを乗り回し、競馬場と場末のバーで年金を使い果たし、ボケたふりをしては駄洒落を飛ばしてヒンシュクを買うのが楽しみ。

タイプはグラン・トリノだが、もっとグウタラで不潔で毒舌で、とにかく老猫とロシア人の妊娠フッカーぐらいが話し相手の、まさにゴミのようなジジイなのだ。

その家の隣に、やはり肥満なシングルマザーと12才の息子が引っ越して来たが、病院に勤務の母親から頼まれて、ビルはしょうがなくて少年の面倒を見る事になった。

とはいえ、彼の知っているフィールドは競馬場や昼間のバーだけなのだから、少年は学校でイジメにあっているので、この不良な老人とつき合わなくてはならない、という不幸な宿命。

ニール・サイモンの戯曲に「キャッシュマン」という傑作があって、マックス・デューガンというムショ帰りの老人が、孫のために隠し金でいろいろ世話を見るという傑作があった。

だいたいは、実の親子よりも隔世のジジイと少年という関係の方が、よくマッチするというが、この不良なボケと、少年というのは絶妙な相性で結ばれて行く。

昨年のゴールデングローブ賞でもノミネートされたビル・マーレイは、まさにこのキャラクターは<地>で演じているような軽快さがあって、ウォルター・マソウを思い出した。

監督のセオドアは、テレビCMのベテラン演出家らしい、<ワン・シーン、ワン・アイデア>の面白さで、おかしなエピソードを連ねて行くので、まったく飽きさせない。

身重なコールガールを演じるナオミ・ワッツも、久しぶりの役者根性を見せてドラマを引き立てて行く。そのアンサンブルの不具合さが、久しぶりに絶妙なおかしさなのだ。

いろいろと孤独な老人の不幸な事件が多いが、このヴィンセントに教わる事は、少年よりも、われわれの方が多いような気がして、やたらと共鳴してしまった。

 

平凡な右中間のフライが風で流されてライトの頭上を転々のスリーベース。 ★★★☆☆☆

●9月、TOHOシネマズ日比谷シャンテなどでロードショー 



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7月8日(水)13-00 築地<松竹映画3F試写室>

M-085『しあわせへのまわり道』 " Learning to Drive " (2015) Broad Green Pictures / Core Pictures Productions

監督・イサベル・コイシェ 主演・パトリシア・クラークソン <90分> 配給・ロングライド

20年くらい前に「デボラ・ウィンガーを探して」という、セミ・ドキュメンタリー映画が評判になったことがある。

テーマは、ハリウッド女優は、中年になると、突然出演のオファーが来なくなる・・・という、よくあるテーマで、メグ・ライアンも消えた頃で評判になった。

しかしそれはその女優さんと、マネジャーと、キャスティング・ディレクターやスタジオとの関係がズレただけであって、年はとっても、せっせと映画に出演している高齢女優も多い。

このパトリシア・クラークソンは、つい今年アカデミー主演女優賞をゲットしたジュリアン・ムーアのように、とにかく端役から悪役まで、まめによくスクリーンで見かける女優さん。

イーストウッドの「ダーティ・ハリー5」の頃は若かったが、同期のメリル・ストリープの影ながらも、あれから40年近くもハリウッドで君臨して、遂にここでは主演である。

よく出演するウディ・アレン監督は「ブルー・ジャスミン」の役をケイト・ブランシェットの起用で成功したが、このパトリシアも恐らくイメージしていたであろうほど、よく似た設定だ。

まさにジャスミンのように、浮気なバカ亭主から捨てられて、同じくマンハッタンのアッパー・イーストで優雅に暮らしていた彼女も、突然の離婚で冷たい世間の風にさらされる。

ま、マンハッタンの高級マンションに住むマダムは、あの”アドヴァンスト・レディ”のように、自分でクルマを運転する必要がなかったが、さて、離婚してしまうと、そうもいかない。

田舎に住むひとり娘の家に行くにしても、クルマの運転が出来なくては、その後の<自立した老後>には支障があるので、ついに、生まれて初めて、ハンドルを握る事になったのだ。

なぜか親切な老年のインド人の「タクシー・ドライバー」に、アルバイトで車の運転を習うことになったが、これが意外に「異文化コミニケーション」のレッスンとなって、彼女は立ち直る。

あの「ガンジー」のベン・キングスレーが教えるのは、路上の運転マナーはもちろん、そのための<人生行路の再レッスン>として、その後の人生のドライブ方法まで教えてもらうのだった。

評判になった「死ぬまでにしたい10のこと」のイサベル監督は、以前に自身が演出した「エレジー」で、この主演ふたりとは仕事していたので、映画の運転も手慣れたもの。

特に激しいクライシスはないが、人生の赤信号でストップしている中年のひとには、「まわり道」のようだが、何か生活のヒントになるライト・コメディだろう。

 

■手堅いセンター前に抜けるゴロのヒット。 ★★★☆

●8月28日より、TOHOシネマズ六本木ヒルズなどでロードショー 



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7月2日(木)13-00 神谷町<パラマウント映画試写室>

M-084『ターミネイター・新起動』" Terminator/ Genisys " (2015) paramount pictures / skydance productions

監督・アラン・テイラー 主演・アーノルド・シュワルツェネッガー <126分> 配給・パラマウント・ピクチャーズ・ジャパン

公開スケジュールの関係か、大作試写のスケジュールもラッシュで、「ジュラシック・ワールド」を半蔵門で見たあと、大急ぎで地下鉄乗り継ぎ。

やっと虎ノ門で下車してから神谷町のパラマウント映画まで20分で駆けつけるというのは、バカみたいだなーーーと、自笑しつつも坂を登る。やっぱりバカだ。

高齢のせいで、息も絶え絶えでやっと駆けつけて、どうにか満席の外れで見る「ターミネイター」だが、" I’ ll be back1" とは、こちらの台詞である。   

たしか1984年、という30年前に見た「ターミネイター」は、しばし沈黙のあと1997年に復活して、シュワルツェネッガーとジェームズ・キャメロンの名前を不動にした。

それからはカリフォルニア州知事という役職についたシュワちゃんは、もう映画復帰はないだろうと思っていたら、昨今カムバック。まさに「アイル・ビ・バック」なのだ。

さて、これは2029年という、15年後の近未来のロサンゼルス。しかしストーリーは複雑怪奇で、あの84年の時代にタイムスリップしてジョン・コナーの周辺も複雑に変貌していた。

つまり、この「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の人造ロボットのパワー戦争は、このシリーズをよく勉強していないと取り残されて、複雑怪奇な状況に翻弄されてしまうのだ。

おそらく、このシリーズを待望していたファンの方々には、この複雑な過去の復讐関係が理解した上で、より複雑になったスカイネットとジョン・コナーのリベンジを映画的に堪能できるだろう。

ジェームズ・ボンドやイーサン・ホークのように、時代とともに組織や敵が変わってしまうのは単純でいいのだが、この「ターミネイター]は、新起動するためには<総復習>する必要がある。

たしかに単純にストリート・カー・アクションを見ている分には凄まじい迫力があるが、深い複雑な人間関係とロボットの<友情と確執>が理解しきれていないと、この映画はやっかいなのだ。

おっと、イ・ビョンホンの改造ロボットも登場したが途中で消滅。・・・それでも、シュワルツェネッガーは、またしても「アイル・ビ・バック!」と微笑むのだ。

 

■サード強襲のゴロで、ファンブルする間に、きわどい判定でセーフ。 ★★★☆

●全国でロードショー中。 



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7月2日(木)10-00 半蔵門<東宝東和試写室>

M-083『ジュラシック・ワールド・3D』" Jurassic World " (2015) Universal Pictures / Amblin Entertainment

制作・スティーブン・スピルバーグ 監督・コリン・トレボロウ 主演・クリス・ブラット <125分> 配給・東宝東和

このところ、やたらと過去のヒット作品のリメイクや、続編や、それにインスパイアーされた新作が多く公開されるが、これはハリウッド的社会現象。

たしかにタレント不在とも、才能の貧困ともいわれているが、<温故知新>という名言もあるように、古いタネで新しい畑での再生作業というのも悪くない。

前に味わった味や、一度行った場所には、何かホッとした馴染みがあって、新鮮な感動とは全く異質の親しみと安堵感もあり、当然少しの失望もある。

1993年にスピルバーグが作った「ジュラシック・パーク」は、まさに「ジョーズ」の夢を恐竜の出現にブロウアップさせた、画期的な映像革命だった。

それから20年以上もして、映画の特殊な映像表現は、まさにデジタル・アニメによるコンピュータ表現の画期的な開発で、いまでは表現不可能なものはないほど進化してしまった。

しかし、イマジネーションと技術が進化したからといって、<映画的感動>は、また別のレベルだろう。それは制作する映像クリエイターの<夢の表現>であって、映画への永遠の夢と情熱。

あの「キングコング」の発想をベースにして、人間が自然や野生動物を支配しようとする邪心は、過去の映画でも、ことごとく破壊されてきた。それでも人間の欲は増殖する。

ま、ストーリーは毎度のパターンだから、わざわざ紹介する必要もないだろうが、この新作でも、前作や自然破壊による想定外の逆襲を自然界から受けることになるが、その表現はサスガだ。

前作「ジュラシック・パーク」をご覧になった方ならば、この新作も<金太郎飴>であるのは予想がつくだろうが、さすがにスピルバーグは、その甘みにも様々な新しいトリックを見せる。

だから「マッドマックス」同様に、この新作も見てソンはないほど、恐竜たちも多くなり、より獰猛になって大きな3Dのスクリーンを占領するのだ。

ただ、どこかに、人間たちのアミューズメント欲に、かなり嫌みな皮肉も込められているのも伺える。

 

■予測された定位置を遥かにオーバーする右中間のスリーベース。★★★☆☆☆

●8月5日より、全国ロードショー   



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