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細越麟太郎 MOVIE DIARY



●2月に見た新作試写ベスト3

1/『ミッドナイト・イン・パリ』(ウディ・アレン)主演/オーウェン・ウィルスン ★★★★☆
  深夜のパリで乗ったタクシーが行ったバーには、ヘミングウェイやピカソたちがいて、20年代の気品が溢れていた。

2/『別離』アスガー・ファルハディ)主演/レイラ・ハタミ ★★★★
  ひとつの夫婦喧嘩が、その家の家政婦の家族までも巻き込む誤解と口論の連鎖。アカデミー外国語賞受賞のイラン映画の秀作。

3/『さあ帰ろう、ペダルをこいで』ステファン・コマンダレフ 主演/ミキ・マノイロヴィッチ ★★★☆☆☆
  イタリアからブルガリアの生まれ故郷まで、記憶喪失の青年と祖父のタンデムの旅。愛情と奇跡の美しい心の旅路。

●その他に見た新作では『スーパー・チューズデー』『ヘルプ』『ドラゴン・タトゥーの女』『裏切りのサーカス』『愛と恋の測り方』などが印象的。



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●2月27日(月)13−00 六本木<シネマートB−1試写室>
M−028『さあ帰ろう、ペダルをこいで』The World is Big and Salvation Lurks Around the Corner (2008) ブルガリア
監督/ステファン・コマンダレフ 主演/ミキ・マノイロヴィッチ <105分>★★★☆☆☆
1983年、圧政と貧困の時代にブルガリアを脱出して、イタリアに移民した家族。
しかし、そこでも偏見と差別に苦労して、現代、やっと政変の故郷に戻ろうとした家族は交通事故に会って両親は即死。
ひとり残された息子も重傷で、記憶を失う。
これは一家の祖父が、病身の孫息子をタンデム(二人乗り自転車)で、ボスニアやセルビアを走って帰郷するまでのロードムービー。
あの名作「ラテンアメリカ/光と影の詩」を思い出させる、壮大な家族愛の映像詩。
バックギャモンで、それぞれの土地の老人たちと交流をしながら、恋と観光も逃がさない。
洗練された演出、カメラ、音楽。素晴らしい雄大な心の旅路に、はからずも感動した。
1年に8本しか映画を作れないブルガリアの国情があるからこそ、ここまで洗練されるのだろう。
愚作ばかり乱発するハリウッドや、近隣国の映画屋さんは、もっとシナリオを練って欲しい。
青年が、祖父の愛情と尽力で、少しずつ過去と家族の愛情を取り戻して行くプロセスも緻密だ。
祖父のミキが、エミール・クストリッツァ映画での重厚な味わいを見せる。
故郷の山と河と住民達。それほど痛んだ心を癒すものはないだろう。傑作だ。

■意外や初球狙いの打球がレフトのフェンス。返球の間にスリーベース。
●5月12日より、シネマート新宿などでロードショー



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●映画とジャズのFMサウンド・カフェ●
『シネマッド・ジャズ・カフェ』CINEMAD JAZZ CAFE(FMたちかわ/84−4mhz)
今夜の放送/ Vol.085『アカデミー・ノミネート・ジャズ』Academy Nominee Jazz       
司会/鵜飼一嘉+選曲・解説/細越麟太郎

★2月26日(日)午後8時ー9時放送
●好評につき、毎翌週金曜日の午後7時からも再放送されています。
★今夜の曲目メニュー紹介

1/『ラブ・タウン』演奏/唄/ピーター・ガブリエル(映画/「フィラデルフィア」より)
2/『ハッピー・アナトミー』演奏/デューク・エリントン(映画「ある殺人」より)
3/『マイ・フーリッシュ・ハート』唄/ローラ・フィジー(映画「愚かなり我が心」より)
4/『テイク・マイ・ブレス・アウェイ』唄/演奏/ベルリン(映画「トップガン」より)
5/『オール・ザ・ウェイ』演奏/キング・カーティス(映画「抱擁」より)
6/『スター!』唄/フランク・シナトラ(映画「スター!」より)
7/『マイ・ハート・ウィル・ゴーオン』唄/セリーヌ・ディオン<映画「タイタニック」より)

★今週の映画紹介/シャーリーズ・セロン主演『ヤング=アダルト』

●<FMたちかわ>のホームページから、サイマル放送で検索すれば、パソコンでも聞こえます。
★次回のこの番組は、3月4日(日)「アカデミー・ノミネート作品と音楽・2」と題して、オスカー・ノミネート映画のジャズを。
どうぞ、ご期待ください。




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●2月24日(金)16−00 有楽町<朝日講堂ホール>
M−027『この空の花』2012/長岡映画+PSC
監督/大林宣彦 主演/松雪泰子 <160分>★★★☆
「世界中の爆弾が花火になったら、きっとこの世から戦争はなくなる。」
終戦間際に米軍の爆撃で壊滅状態だった新潟の長岡市は、中越地震でも大きな被害を出した。
それでも市民たちは、壮大な花火によって、それぞれの時代の悲劇を吹き飛ばして来た。
別れた恋人の手紙と、今回の東北震災の被災者を受け入れた町を取材に、天草からレポーターの松雪が来る。
そして長岡という町で、さまざまな人々から、戦災や震災の体験談を聞き、実感していく。
これは長岡を通じて、日本人が辿った被災の歴史と復興の勇気や魂の力強さを戯画化したファンタジーだ。
そのために、多くの体験者の回想などを紙芝居風にして、それをCGでディフォルメする。
問題は、シンプルにすべきプロットを、まるでジグソーパズルのように散在してしまったシナリオの構成だろう。
同じ時代の同じ事件が交錯して、そこに一輪車に乗った少女が駆け抜ける。
ノスタルジーとしては、いい発想だろうが、ストーリーが煩雑になって、時間ばかりが長くなる。
久しぶりの大林監督の情熱はいいが、あまりにもエピソードが多すぎポイントが擦れてしまった。
シンプルな筈の展開が多様に広がりすぎて、せっかくの花火も空砲に散ってしまった印象。
せめて花火に託す市民たちの夢としてだけで、充分に感動作になったのに、印象ばかりが四散したのが惜しまれた。
だから恋も情熱も、夢も理想も、過去と未来も。すべてが混沌としたコラージュに見えてしまった。

花火大会も、長すぎてはいけないです。
大林さん、言いたい事はわかりますが、せめて2時間くらいに。テーマを単純に、一発で決めてください。

■高く上がりすぎたセカンドフライ。
●4月7日より、新潟、長岡先行公開。



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●2月22日(水)13−00 六本木<シネマートB1試写室>
M−026『ある秘密』Un Secret (2007) UGC ym / integral film. 仏
監督/クロード・ミレール 主演/セシル・ドゥ・フランス <110分> ★★★☆
いかにもフランス映画らしく、ひとの感性を繊細な映像視点で描いた作品。
少年は、なぜかいつも自分のそばに兄の存在を感じている。
そのために発育も遅く、虚弱体質で思考もマイナーだ。
両親は、彼の発育を心配して、積極的に水泳などに連れ出して励ましている。
その少年が中年になったマチュ・アマルリックで、過去の成長の秘密を解明していく二重構造。
母親が「ヒア・アフター」のセシルで、さすがの存在感でドラマを引っ張るパワーは、強い。
ところが、「サラの鍵」や「灼熱の魂」のように、あの戦時中のナチスの問題がからむと、どうもサスペンスも冗漫。
語り尽くされた悪夢のエピソードが、またも繰り返される。
フランス人にとっても、大きな心の傷痕になっているのは判るが、われわれには「またかよ」という気になる。
しっとりとしたフランス映画らしいタッチは嬉しいが、後半はダレた。
「フランス映画未公開傑作選」としてシリーズ上映される。
独特のフランス映画のエッセンスに浸りたいファンの方は、どうぞ。

■ヒット性のライトライナーだったが、失速して普通のフライ。
●4月以降、渋谷イメージフォーラムで限定ロードショー



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●2月21日(火)13−00 六本木<シネマート試写室>
M−025『恋と愛の測り方』Last Night (2009) goumont / 米
監督/マッシー・タジェディン 主演/キーラ・ナイトレイ <92分> ★★★☆☆
ちょいと倦怠期気味の若い夫婦の、一晩のそれぞれの危機の心理を描いた佳作。
マンハッタンに住むキーラはライターで、夫のサム・ワーシントンは今日も出張。
出張先の夜。仕事の同僚の美女とは、あぶない関係だが、ぎりぎりで一線は守っている。
一方その出張の日に、キーラの元カレがパリからやってきて、夕食を一緒にすることになった。
イラン出身の女性監督だが、編集をウディ・アレンの作品の常連スーザンが手がけているだけに、いい緊張感がある。
要するに、夫婦の「一線」を丁寧に描いた都会ドラマで、その一線のラインを一種のサスペンスで描く。
おとなの良識を描いているが、珍しく真面目な作品で、誰にでも経験のあるヤバいスリリングな関係。
しかし一見がたがたしていても、夫婦には暗黙の良識と絆はある。
そのきわどい一線の動揺と確認を描いた、珍しくも誠実なラブストーリーだ。
邦題は通俗だが、原題の「ラストナイト」は、実にテーマを知的に言い当てている。
フランスの出資作品のせいか、やはりハリウッド映画のノリとは違い、慎重だ。
結婚倦怠期を迎えつつある子供さんのいないカップル重視の作品だ。

■ちょこんと出したバットでのショート頭上の渋いヒット。
●5月、新宿ピカデリーなどでロードショー予定



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●映画とジャズのFMサウンド・カフェ●
『シネマッド・ジャズ・カフェ』CINEMAD JAZZ CAFE(FMたちかわ/84−4mhz)
今夜の放送/ Vol.084『中東/アフリカン・ジャズ/2』More Afro African Jazz       
司会/鵜飼一嘉+選曲・解説/細越麟太郎

★2月19日(日)午後8時ー9時放送
●好評につき、毎翌週金曜日の午後7時からも再放送されています。
★今夜の曲目メニュー紹介

1/『ポンタ・デル・ソール』演奏/デイヴ・グルーシン
2/『キャラヴァン』唄/ナット・キング・コール
3/『サハラ』演奏/ミクロス・ローザ<映画「サハラ戦車隊」より>
4/『ディ・ピータ』唄/演奏/リチャード・ボナ
5/『アフリカン・ブルース』演奏/バーニー・ウィリアムス
6/『オ−ルド・ブラック・マジック』唄/フランク・シナトラ
7/『エクストリーム・ウェイ』演奏/ジョン・バウエル<映画『ボーン・アルティメイタム』より>

★今週の映画紹介/トム・ハンクス主演『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』

●<FMたちかわ>のホームページから、サイマル放送で検索すれば、パソコンでも聞こえます。
★次回のこの番組は、2月26日(日)「アカデミー・ノミネート作品と音楽」と題して、オスカー・ノミネート映画のジャズを。
どうぞ、ご期待ください。




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●2月17日(金)11−00 六本木ヒルズTOHOシネマズ7スクリーン
M−024『ドラゴン・タトゥーの女』The Girl with the Dragon Tattoo (2011) columbia picture / MGM
監督/デヴィッド・フィンチャー 主演/ダニエル・クレイグ <158分>★★★☆☆
非常に見たい新作だったが、たった1回の夜の試写を見逃したので、さっそく劇場で見た。
オリジナルのスウェーデン映画は、3部作に分かれていたので、3冊のミステリーを読むように魅せられた。
それから3年もしないのにリメイクされ、しかも1本の作品にしたのは、恐らく英語圏の集客を狙ったのだろう。
だからストーリー進行に無理があり、さすがのフィンチャー演出にも乱れがある。おまけに編集ももたつく。
やはり主演のボンド氏の存在感が、あまりにも軽く、加えてリスベットの個性にも、あの驚きが少ない。
そりゃ、先発のオリジナルのパワーに比較することが、そもそもナンセンスなことなのだろう。
いっそアメリカの事件にアレンジして再映画化したほうが、もっと個性も出た筈。
あの「インソムニア」のような、思い切ったハリウッド風アレンジだったら、と惜しまれた。
「デパーテッド」という好例もあったではないか。
でもオリジナルの人間関係を、複雑にせざるを得ない事情も、リメイクの契約にあったと思われる。
ま、それでも「ミレニアム」の初体験の方には、見逃せないサスペンス。
フィンチャーならではの、素晴らしいショットも、ときどき見られるので、気を抜けない長丁場だ。
これだけ時間をかけた重厚な大河サスペンスは、やはり、めったに見られない。
分厚いハードカバーをゆっくり読むつもりで、体調のいい日に挑戦してほしい大作であった。

■左中間に上がった長打コースだったが、意外に伸びずにセンターフライ。
●全国でロードショー中



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●2月16日(木)13−00 六本木<シネマート試写室3F>
M−023『ファウスト』Faust (2011) proline films. russian film fund. 独、露
監督/アレクサンドル・ソクーロフ 主演/ヨハネス・ツァイラー <140分> ★★★☆
ゲーテの原作も、監督の個性も承知の上で、喰わず嫌いの異色作を見たが、やはり生理的にダメだった。
「ブラック・スワン」のアロのフスキー監督が審査員長をして、ヴェネチア映画祭でグランプリ受賞。
それも納得できる。とにかく心の暗部や恥部を、外科医のように執刀する映像感覚は、とにかく強烈だ。
まさに人間のハートや魂は、人体のどこの部位にあるのかを、真剣に手術するような映画。
ことさらアナモフィック・レンズを、スタンダード・サイズに映写して、画像を歪めて見せる手法。
おまけに念仏のような、低音での独白と、異常な衆音の不気味さ。
一転して、マルガレーテの輝くような美しさ。
この過激なコントラストの強さで、人間の美しさと心の醜さをカットバックさせるのだ。
後半のファウストが、マウリツィウスに、心を売ってからのテンポはドラマを盛り上げた。
しかし前半の試行錯誤のような、音と映像には嫌悪感が募ったのは、趣味性の違いだろう。
ハリウッド・スタイルのエンターテイメントにウンザリで、生体実験に平気な方にお勧め??。
まさに、苦行のような恐るべき映画だった。わたしは遠慮したい。

■選球で粘ってファーストへのファールゴロの末にデッドボールとは。
●5月、シネスイッチ銀座でロードショー



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●2月14日(火)13−00 六本木<シネマートB1試写室>
M−022『ミッドナイト・イン・パリ』Midnight in Paris (2011) mediapro. versatil cinema 米/仏
監督/ウディ・アレン 主演/オ−ウェン・ウィルソン <98分> ★★★★☆
見事なウディの集大成ともいえる傑作だ。
つまり自身の夢の存在を、タイムスリップして見せて、憧れの偉人たちと遭遇させる、という夢。
これこそがクリエイターとしての夢であり、それが現代のパリで、深夜にのみ起こりうるという映画ならではの感覚。
もちろん、彼は過去の作品でも「カイロの紫のバラ」や「誘惑のアフロディーテ」など多くの作品で異次元共演を試みて来た。
つまり過去との想像の遭遇は、すべての人の夢であり、その表現の深度が問われて来た。
それを、この作品ではパリの真夜中の時報によって、彼だけに起こるミステリー・ツアーとして描いて見せた。
最近はヨーロッパでの撮影が多いのは、プロダクションの資金難のためだと、彼はいう。
でも彼の精神構造の中では「ラジオ・デイズ」でのニューヨークと同様に、「失われた世代」の20年代のパリがある。
そしてヘミングウェイや、スコット・フィッツジェラルド、ロートレック、コール・ポーターらとの遭遇も可能となる。
要するにタイムスリップものの一種ではあっても、彼の作品には必然性と、ウィットが充満しているのだ。
ことしのアカデミー賞では、偶然にもスコセッシ監督が「ヒューゴ」で同じ時代のパリを描いてジョルジュ・メリエスと遭遇した。
人気の高い「アーチィスト」の時代も含めると、それぞれが20年代へのノスタルジー志向。
それでもウディは「いまの、自分の生きている現代が、一番いい」と明言して見せた。それが感動になった。
ダニー・ケイの「虹を掴む男」のように、とてもいい夢を見せてくれたウディに絶賛の拍手を贈りたい。

■軽くジャストミートした文句なしの左中間ホームラン。
●5月26日より、丸の内ピカデリーなどでロードショー



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