細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『愚行録』で暴かれる一家殺人事件への、意外な闇の部分。

2016年12月02日 | Weblog

11月25日(金)13-00 内幸町<ワーナー・ブラザース映画試写室>

M-152『愚行録』(2016)バンダイビジュアル、テレビ東京、北野オフィス、東北新社、ワーナー・ブラザース映画

監督・石川 慶 主演・妻夫木 聡、満島ひかり <120分・シネマスコープ> 配給・ワーナー・ブラザース映画

あの世田谷一家殺人事件が、ほぼ迷宮入りして長い時間が経過しているが、あの事件の直後に警察の聞き込みを受けた当方は、ご近所であったこともあり、とても印象深い。

貫井徳郎の原作は、あの事件のように、10年前に起こったある若い家族が皆殺しになった迷宮の事件を、売れない週刊誌の記者である妻夫木くんが単独捜査することから始まる。

殺された一家の主人のかつての学友や、奥さんの同級生たちの聞き込みをしていくが、もう事件から時間も経っているので、もちろん、新しい情報などが出て来るでもない。

それでも、妻夫木記者は<ネグレクト(育児拒否)>で入所している妹の満島を訪ねたりして、停滞している生活の日々、ライターとしての取材を繰り返す日常なのだ。

映画は、このところ「ロクヨン」や「クリーピー」「ヒメアノール」などの好調な邦画ミステリーの画質を継承したような、なだらかなサスペンスを秘めて飽きさせない。

どうも妻夫木記者のキャラが、事件記者としては感情が薄いナー・・と思っていたが、やはり獄中の妹との会話の節々から、徐々にドラマの異常さが覗き始める辺りから、テンションが濃くなる。

ま、映画は<愚行>には違いないが、それ以上に異常な人間関係の闇を描いていくので、ポーランドで、あのロマン・ポランスキー監督と同じ学校で学んだという石川監督の冷感が巧み。

というのも、同じポーランド映画大学卒業生のピエトロ・ニエミイスキのカメラが、すべてを東京郊外で撮影しているのに、いつも見ている風景と違って、とても冷たい感触なのだ。

だからもちろん、日本映画なのだが、見ている風景や登場人物たちの陰影の温度が、ちょっとヒヤリとする冷たさを見せて、とくに満島の表情にはこれまでとは別の味があった。

当然のように、試写の前には、重要な4つの問題点については、来年2月の公開までは、<ネタバレ>になるので、書かないで下さい・・・という念書が渡されたのだ。

もし事前にネタを知りたい方は、書店で創元推理文庫の原作本を買って読んでみて頂きたいが、ま、真相の意外性よりも、この作品の低温のタッチは、邦画としては心地よい冷たさだ。

 

■定位置よりもかなりライト線ギリギリの痛烈なヒットでツーベース。 ★★★☆☆+

●来年2月18日より、全国ロードショー 


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