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細越麟太郎 MOVIE DIARY



11月25日(金)10-00 内幸町<ワーナー・ブラザース映画試写室>

M-151『モンスターストライク・はじまりの場所へ』" Monster Strike The Movie " (2016) XFLAG pictures / ライデンフィルム、ウルトラスーパー・ピクチャーズ

監督・江崎慎平 脚本・岸本 卓 主演(声)坂本真綾、小林裕介 <103分・ビスタサイズ> 配給・ワーナー・ブラザース映画

大人気のスマホアプリが、You Tubeオリジナルアニメの末に、こうして遂に劇場型の大型長編映画に成長したという、その事件性をまったく知らないオジンにとっては、不思議映画。

それでも映画であることに変わりなく、とにかく試写で一応見てみよう・・・というブロガー根性で観たものの、やはりさっぱりワカラナイ次元で、ただ唖然である。

「君の名は。」のメガヒットもあるので、アニメは超文化に進化し、この作品もスマホアプリで見ているファンには待望の大型映画化で、おそらくお正月のシネコンを賑わせるだろう、問題作、らしい。

ストーリーは、あの「スタンド・バイ・ミー」のような小学生チームメイトが、廃墟と化したような野球場の地下に、巨大な研究施設を見つけて、そこに監禁された<ドラゴン>を見つける。

そこは行方不明になっていた考古学者で少年レンの父が、かつて失踪した場所であって、父の行方を探し、加えてそのドラゴンを元の世界に返すための、時空を越えた大冒険が展開していく、という話。

この劇場版というのは、YouTubeでの51話につながるという、どうやらそのスタート時点で、主人公のレン少年は10才で、これはその膨大な冒険談の<はじまりの場所へ>の冒険だという。

そのために突然、円卓の騎士が出たり、お姫様や妖怪変化などの<モンスターストライク>の登場者たちが、突然マシンガンで撃ち合ったりして、さっぱりワケの判らぬままにドラマは突っ走るのだ。

従って、ただでさえ難解な冒険が、突然、ゲームの世界にトリップして銃撃戦を展開したかと思うと、またアニメの冒険に戻ってストーリーは狂騒していくのだ。

ま、そこは<モンスト>のファンであれば、状況の危機感は理解して見るはずで、こうして、その次元に馴染めないでいる高齢者にはカンケイのないストーリー展開なのだろう。

少年達の冒険は「バケモノの子」のように奔放で夢に満ちているので、こうした多重構造のストーリー展開も、ポケモン次元で見ていないと、古い頭脳は破壊されてしまう。

 

■初球がヘルメットをかすめるデッドボールで出塁。 ★★★???

●12月10日より、全国お正月ロードショー 



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11月21日(月)13-00 外苑前<GAGA試写室>

M-150『たかが世界の終わり』" It's Only The End of The World " (2016) Seville International, France 2 Cinemas / Canal+

監督・グザヴィエ・ドラン 主演・ギャスパー・ウリエル、マリオン・コティヤール <99分・ビスタサイズ> 配給・GAGA

いま、いちばん早く見たい監督の映画なので、とにかく最優先で試写室に駆け込んだら、やはり、同じような考えの人が多くて、試写室は開場時で満席。

昨年に見た『Mommy/マミー』の感動が鮮烈だったこともあるが、とにかく映画を見ていて、自分の脈拍と同じ情感の伝わる、という非常な魅力の映画監督なのだ。

ストーリーは実にシンプルで、ここでも少人数の家族の、それぞれの感情の行き違いと、根本的な憎悪と亀裂が、まるで自然災害のように、この家族を飲み込み流し去る。

12年もの間、家族とは離れてパリで作家として成功しているギャスパーはゲイで、恐らくはそのことが家族と疎遠になっていた原因なのだろうが、きょう突然、家に帰ってきたのだ。

「話したいことがある・・」という彼には、死を覚悟したような、絶望しきった表情が見られるが、それが大病なのか、自殺を覚悟しているのかは、最後まで判らない。

ドラマは、その彼の告白の瞬間を待つ様に緊迫していくが、長い間の空白のあとの突然の帰還には、家人がそれぞれに複雑な反応を持っていて、それが家族の崩壊を暗示していく。

見ている我々は、どのシーンで重大な発言をするのかを待っているのだが、あまりにも長い空白だったせいか、なかなか家族みんなが同じテーブルにつかない、そのもどかしさがつのる。

庭先でのブランチの席で、彼は切り出そうとするが、昔からゲイの弟に敵意を持っている兄のヴァンサン・カッセルは、その<かくも長い不在>をネタにして弟の発言に邪魔するのだ。

その倹悪な雰囲気にはいたたまれずに、それぞれ家族が、別々の感情でテーブルを離れ、母のナタリー・バイだけが帰って来た弟の心の痛みに気をつかうが、溝は深まるばかり。

「お前は、いったい何をしに来たのだ・・・」と捲し立てる兄の暴言に、話のきっかけをつかめないギャスパーは、この他人の家族のような現実の冷たさに、ますます萎縮していくのだ。

とうとう傲慢な兄は、業を煮やして、弟の宿泊も拒否して強引に空港に連れ去るべく車のスピードを上げて行く・・・、このあまりにもチグハグな家族の、それぞれのエゴが刺々しく痛い。

あの「過ぎ去りし日の・・」の自動車事故を予感させるサスペンスだが、その合間には意外にもソウルフルなリズムのサウンドが流れて、またしてもドラン監督は見るものを翻弄していく。

ラストはネタバレになるので書けないが。それぞれ家人が好演する、この感情のズレは、トリュフォー監督の「大人は判ってくれない」や「隣の女」などのように、刺々しく痛ましい。

今年のカンヌ国際映画祭でのグランプリ受賞には、心から拍手をしたい、見事に圧倒的な映画的な魅力と迫力!!!、拍手。

 

■まさかの初球を叩いてのレフト中段へのホームラン。 ★★★★☆☆☆

●2017年2月11日より、ヒューマントラストシネマ有楽町などで、ロードショー 



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11月18日(金)13-00 神谷町<ソニー・ピクチャーズ試写室>

M-149『マグニフィセント・セブン』" The Magnificent Seven " (2016) Metro-Goldwyn- Mayer Pictures / Columbia Pictures

監督・アントワーン・フークア 主演・デンゼル・ワシントン イーサン・ホーク <133分・シネマスコープ>配給・ソニー・ピクチャーズ・エンターテイメント

もちろんオリジナルは、あの黒澤明監督の「七人の侍」で、1960年にジョン・スタージェス監督が新人のスティーブ・マックイーンを起用して,何と西部劇にリメイクしたっけ。

その時の英語タイトルがこれで、「荒野の七人」として、ま、最後の西部劇ブームのフィナーレのように持て栄され、ユル・ブリンナーや、<マンダム>ブロンソンまでもが大スターになった。

60年代以降に、アメリカのネイティブ・インディアンなどの、異人種マイノリティへの偏見や虐待が世界的に異論の的になり、以後、あまりオリジナル西部劇は製作されなくなった。

たしかに私たちの青春のヒーローたちは、すべて西部劇のスターであり、長身でガン・プレイが鮮やかで、正義の味方として憧れのアイドルだったが、突然プツンと消えてしまったのだった。

最近「決断の3時10分」はリメイクされたが、ボブ・ディランの「ビリー・ザ・キッド*21才の生涯」などや、「ワイルド・バンチ」があった時代に、この「荒野の七人」は、ストレートな西部劇。

たしかに7人のラスト・サムライのような、落ち武者たちにはロクな仕事もなく、カウボーイや農作業の不得手なガンマンは、こうして僻地の農業者のボディガードをするしか仕事はない。

この作品も、オリジナルの気概を受け継いで、小さな西部開拓部落の悪徳資産家の独裁を、貧しい開拓者や農民たちの生活を守るために尽力する流れ者ガンマンたちの、善意の抵抗を描く。

ロサンゼルス警察の腐敗と悪徳刑事の実態を描いた「トレーニング・デイ」のアントワン監督は、あの時のデンゼルと、イーサン・ホークをまた組ませて、このリメイク・ウェスターンに挑戦。

もともと黒人が西部劇に出ることは異例だったが、シドニー・ポワチエが「砦の29人」に出てからは、ま、「ニュートン・ナイト」の時代でもあり、違和感がなくなった。

それにしても、このデンゼルは冷酷タフガイで「追跡者」のバート・ランカスターのように、頑に正義にこだわり終始苦虫をつぶしたような表情で、あまり魅力的でないのが残念。

おまけに悪徳地主のピーター・サースガードが弱腰で個性味が薄くて、あのイーライ・ウォラックのような憎らしさが乏しいので、ウェスターンの敵役としての存在感に乏しいのが残念。

イ・ビョンホンも東洋の殺し屋としての異彩は放つものの、意外にあっけない最後であり、やはり7人の、それぞれのキャスティングの個性も、50年前ほどでもない。

デンゼルの役が<チザム>というので、あの有名な男かと思い、ジョン・ウェインの『チザム』を見たが、彼は牧場主だったので、どうやら別人みたい。

が・・。久しぶりにあの西部の荒野がシネマスコープの大画面で見られたし、エンド・クレジットでは、例のエルマー・バーンスタインの懐かしいテーマ曲が流れて・・・ホッと一息。

 

■左中間へのゴロをレフトがもたついて、その間にツーベース。 ★★★オマケに☆

●2017年1月27日より、全国ロードショー 



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11月18日(金)10-00 神谷町<ソニー・ピクチャーズ試写室>

M-148『新宿スワン"The Sinjuku Swan Ⅱ”(2016) トライストーン・エンターテイメント、ジャパン・ミュージック、講談社

製作・山本又一朗 監督・園 子温 主演・綾野 剛、浅野忠信 <133分・ビスタサイズ> 配給・ソニー・ピクチャーズ・エンターテイメント 

昨年公開されて大ヒットした「新宿スワン」の、これはその待望<パート>というワケで、あの1作目が大いに気に入っていた当方としては、ちょっと期待が大きかった。

ま、ヒット作で、その<パート2>が前作を凌駕したのは「スーパーマン」「ゴッドファーザー」、それに「フレンチ・コネクション」くらいで、なかなか難しい。

まさかこれが、あの「不良番長」や「網走番外地」のようなブランド・シリーズになるとは思えないが、好きだった一作目に次いでの新作だから・・・これは愉しみ。

今回は、あの一作で新宿歌舞伎町の、夜のスカウトマンの第一人者に伸し上がった綾野剛くんが、さて、あの歓楽街で多くのライバルを凌いで、どんな裏技新手を見せるのか。

まだ、あの歌舞伎町にコマ劇場が出来た当初、トッドAOという大画面でミュージカル「オクラホマ!」を見た記憶は残っているが、それからの最近の歌舞伎町は豹変してしまった。

さすがに夜の国際歓楽街を闊歩する気力はないが、たまに歩いても、もうそこは異国の不法歓楽街のような、強烈な色彩と喧噪と熱気を湛えていて、まさに<ガイコク>の様相。

だからして、ミラノ座の解体ラストシーンを見せた、一作目のリズムと歯切れの良さは素晴らしかったし、ノリノリの綾野剛の狂騒ぶりと、伊勢谷友介の異彩も愉しかった。

この2作目は、その歌舞伎町でのスカウト合戦を制した新宿バースト、<タキ王国>が、何と横浜伊勢佐木町にケンカを売り、事業拡大作戦にでるという新規「仁義なき戦い」なのだ。

あの東映やくざ映画後期の、深作欣ニ監督シリーズでも、関東やくざが広島攻略を狙った暗黒街抗争映画のシリーズが人気があったが、ま、発想はそれに似ている。

もともとは、和久井健の原作アニメ・シリーズの映画化なので、この横浜侵略作戦も、その路線であって,当然の展開なのだろうが、その強敵を浅野忠信が挑むというところが注目。

ラストでは新宿と横浜の、この二人の宿敵が、元町だか本牧裏通りか、倉庫の裏通りのような暗がりで壮絶な死闘を展開して、ま、それがこの映画の大きな見せ場にはなっている。

しかし欲張り過ぎの領地拡大の焦りが、そのまま作品の後半では呼吸を乱していて、どうも最近不調の子温監督の<お疲れ>なのか、リズムが乗り切れなく、こちらも白けてしまう。

これがバイオレンス・アクション映画の難しさで、ただの殴り合いではテンションも持続せずに、ちょっと尻つぼみな印象で<おつかれさま>な長尺だった。

 

■フルカウントからのレフト・オーバーの筈のフライが失速。 ★★★

●2017年1月21日より、TOHOシネマズ新宿ほかで公開。

  


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11月16日(水)13-00 渋谷<ショウゲート試写室>

M-147『ニュートン・ナイト*自由の旗をかかげた男』" Free State of Jones " (2016) STX Entertainment / Hunky Brothers Pictures

製作+監督+脚本・ゲイリー・ロス 主演・マシュー・マコノヒー、ググ・ンバータ=ロウ <140分・ビスタサイズ> 配給・キノ・フィルムズ

アメリカでの黒人奴隷解放問題で起きた南北戦争は、もう何度も映画化され、あのスカーレット・オハラも「風と共に去りぬ」で、ダンナまで失った、あの大戦争だ。

もう腐る程、西部劇のテーマとして取り沙汰されて、負け組の南部軍をテーマにした作品も、もうウンザリするほど見て来たが、これはまた、知らなかった南北戦争秘話。

1862年のミシシッピー州ジョーンズ郡では、黒人解放を謳うリンカーン大統領支持の優勢な北軍の大隊が、日に日に南軍を追いつめて、その死闘が激化していた。

いきなり映画はその壮絶な流血残酷銃撃戦を展開して、戦況不利な南軍は多くの死傷者を出していて、かなりリアルな死闘は、これまでにない残虐な戦闘シーンを展開していく。

ところが、マシューが演じているニュートン・ナイト地区の自由解放軍は、本来は南軍の援軍の筈だが、彼は南部の人種偏見思想には反対していて、独自の自由解放軍を指揮していた。

恐らくは南軍の武器等は裏調達していたのだろうが、自分たちの住むジョーンズ地区は、まったく独自の混血ゲリラ軍を組織して、侵略には抵抗し、アメリカの自由解放のために戦った。

まさにあのゲイリー・クーパー主演「友情ある説得」のクエイカー教信者たちの、独立平和思想のためにのみ、自衛のための戦闘をしていたテーマと共通しているのだ。

しかしこちらはまじ、リアル実話で、その<ジョーンズ自由州>という、ごく狭いエリアでは、どちらの軍隊とも関係なく、白人も黒人も同じ思想のもとに自衛戦争に挑んでいたというエピソード。

ま、あちらの人はご存知で、わが<真田丸>騒動と似たような事件だったらしいが、この史実をゲイリー・ロスは「シービスケット」の時のような時代考証で、入念に描いて行く。

マシューも、さすがはオスカー受賞俳優の貫禄で、この自由へのリーダーシップを熱演していて、またも次回のアカデミー主演男優賞狙いの気合いの入れようは鬼気迫った熱演。

恐らくこの史実ドラマは、アメリカ人には意義のある人種差別解放の歴史検証なのだろうが、もう南北戦争を何度も西部劇で見ているオールドファンには、大して新鮮な感動はない。

たしかジョセフ・コットン主演の「西部のニ国旗」という、南北両軍の仲良しウェスターンがあったが、これはそれとはまた別の、独立人種解放戦線のお話として、貴重ではある・・のだが。

 

■左中間への大きなフライをセンターが後逸、ツーベース。 ★★★☆+

●2017年2月4日より、新宿武蔵野館などでロードショー 



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11月14日(月)13-00 渋谷<映画美学校B-1試写室>

M-146『グリーンルーム』" GREENROOM " ( 2015) Broad Green Pictures / Film Science Film Productions / Westeho Films

監督・脚本・ジェレミー・ソルニエ 主演・アントン・イエルチン、パトリック・スチュワート <95分・シネマスコープ> 配給・トランスフォーマー

最近では「エクス・マキナ」や、「サウルの息子」とか、「ホワイト・ゴッド」「Mr・タスク」のような、ええええー、なに、これ・・・ってタイプに似た作品だ。

たしかに、かなり異色だが、作品的にはしっかりしているし、実に入念に作られていて面白いのだが、・・・わああ、またも、厄介な映画が出て来たな・・・という驚き。

初めて「レザボア・ドッグス」でタランティーノを見た時や、一作目「マッドマックス」や「ワイルドバンチ」などを見たときの、あのショックに似た新作が、またも出て来た!!!という気分。

<グリーンルーム>とは、要するに<楽屋>のことで、特にメジャーな劇場の立派な楽屋ではなくて、この映画では、カナダの国境に近いオレゴン州の山奥の僻地の納屋のような場所だ。

素人のロックバンドで、仕事のないアントン達の「エイント・ライツ」は、場末のバーの最終公演などで、細々とプレイしていたが、そのオレゴンのド田舎のバーからの仕事。

半信半疑で、その山奥の家畜の納屋のようなスポットに行くと、たしかに場内では酒乱気味の男達が騒いでいるが、それは予想したような、大都会のクラブと変わらない。

あの名作「ブルース・ブラザース」のバンドが、場違いなカントリー・ロックのクラブに出て、ビール瓶を投げつけられた・・あの最悪な状況なのだ。

ま、安いが、ギャラが一応もらえるし、リハーサルのつもりで1曲だけハードなパンクロックを演奏したが、客の酔っぱらいの男達は、どうせマジには聞いていない・・毎度のステージ。

ところが、さて帰ろうか・・と思ってバンド連中が<グリーンルーム>に戻ると、そこにはパンクなヤク中の女性の死体が横たわっていたので出ようとしたら鍵がかかっている。

罠なのか、偶然なのか。しかしオーナーのパトリックは、彼らを監禁してしまったので、さあ大変・・・どうやってこの地獄の一丁目から脱出できるのか・・・というのがテーマだ。

話は、昨年のオスカー候補だった「ルーム」の団体版だが、何しろその秘密酒屋や、実はネオ・ナチのグループの拠点だったものだか、地元警察もお手上げの無法地帯だったのだ。

あとはタランティーノの密室ウェスターンのような銃撃と鮮血の飛び交う修羅場だが、さすが「スタートレック」のパトリックはクールな極悪首領を貫禄で見せるのがお楽しみ。

主演のアントン・イエルチンは自身でもロック・バンドを持って、映画の出演も相次いで期待されていたが、今年の6月に謎めいた死で他界したのが、実に惜しまれる。

 

■ライト線いっぱいのライナーで俊足のツーベース。 ★★★☆☆

●2017年2月11日より、新宿シネマカリテなどでロードショー 



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11月10日(木)13-00 六本木<アスミック・エース試写室>

M-145『ヒトラーの忘れもの』" Land of Mine " (2015) Nordisk Film Productions A/S & Amusement Park Films GMBH & ZOF デンマーク

監督・脚本・マーチン・サントフリート 主演・ローラン・ムラ、ミゲル・ボー・フルスゴー <101分・シネマスコープ> 配給・キノ・フィルムズ

呆れた事に、ヒトラーのドイツ軍は、戦時中にヨーロッパの西海岸、ノルウェイ、デンマーク、オランダからフランスに到る長蛇の海岸線に、すごい数の地雷を埋めていたという。

あの「史上最大の作戦」やジャン・ポール・ベルモンド主演の「ノルマンディ」などでも、海岸に地雷が埋められていたのは知っていたが、このデンマークの海岸にも埋めていたのは知らなかった。

このデンマーク映画には、あのヒトラーも戦闘シーンもないが、戦後の後処理として、デンマークは敗残のドイツ軍の15歳から18歳の未成年兵士に、海岸線一帯の地雷除去を命じていたのだ。

その地雷の数は200万個ともいわれ、ほぼ3メートル間隔に絨毯のように敷き詰められた地雷は、地下30センチから深いものでは、二重に埋められていたために、その除去は命がけ。

毎日の様に、海岸に建てられた木造の捕虜収容所で、粗末な食事と定刻の監視のもとで作業を続けられていて、少年兵たちは毎日の様に終日発掘作業をして、友人は爆死し、希望も失われて行く。

こんなことがあったなんて信じられないし、一気に海岸一帯の爆破撤去でもすればいいのに、残された敗残の少年たちには、祖国の犯した戦争犯罪の後処理をさせられていたのだった。

映画はその少年達と、ひとりのデンマーク軍の監視軍曹との日常を、憎しみと友情、絶望と希望の交錯を、実にクールに知的な思慮を込めて描いていて、強い戦争への憤りを募らせる。

監督はドキュメンタリー映画出身というキャリアを活かして、実に丁寧に地雷の構造や、その点火装置の除去方法には、執拗にアップ画面で、その危険性を睨みつけて描いて行く。

だから見ている方としても、その緊迫した除去までのプロセスには目を離せずに緊張の連続だから、そのあとの監督軍人と少年たちの交情にはジーーーンとくるシーンも多い。

とくにその監視軍人を演じたローラン・ムラが好演で、ちょっと名優ロバート・デュバルを思わせる風貌と温情は素晴らしく、もしかしたらアカデミー賞も注目するかも知れないほど、いい。

愛犬が地雷にふれて爆死したときの悲しみと憤りを、ドイツの少年兵に八つ当たりして、次第に人間的な理性と、少年兵たちの不運にも心をかけていく、その感情の移りが見事だ。

まったくヒトラーの出ない、これも戦争という悲劇の後遺症としての一面を描いた人間ドラマとして、ことし屈指の感動的な傑作であることには間違いがない。

 

■鋭いライナーが、レフトスタンドぎりぎりに突き刺さる。 ★★★★☆☆+

●12月17日より、シネスイッチ銀座でロードショー 



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11月10日(木)10-00 渋谷<ユーロライブ試写室>

M-144『壊れた心』" Ruined Heart " (Pusong Wazak)  (201) Rapid Eye Movies <73分・ビスタサイズ>フィリピン

監督・ケヴィン・デ・ラ・クルス 撮影・クリストファー・ドイル 主演・浅野忠信、ナタリア・アセベド 配給・Tokyo Newv Cinema

フィリピン映画界の鬼才という触れ込みのケヴィン監督は、詩人で、作曲家でもあるというクリエイティブなキャリアの才人で、これは彼の<頭脳遊戯>とでも言うような個性的な作品。

2015年の東京国際映画祭でも上映され、コンペ部門では、かなりユニークな作品として評価されたインディ映画で、娯楽的な要素もあるが、商業目的のエンターテイメントじゃない。

フィリピンのマニラのスラム街は、よく映画の舞台になるメキシコのティワナや、ブラジルのリオの貧民街のように、まさに治安の施しようのないような貧困の掃き溜めのような地獄の一丁目。

そこは貧困と麻薬に冒された、アウトローの掃き溜めのようなエリアで、見た目にも醜悪だが、雑音と悪臭と暗黒が支配する、まさにキャロル・リード監督の「文化果つるところ」のようなデッドエンドなのだ。

とにかく、ここでは明快なストーリーもダイアローグもなしで、ただ名手クリストファー・ドイルの視線で、四方八方に動き回る映像は、悪夢の走馬灯のようで、リオのカーニバルのアジア・バージョン。

なぜか、わが浅野忠信は、黒澤清監督の「岸辺の旅」での、あの死者の亡霊のように、この掃き溜め地獄を徘徊するのだが、彼は逃亡の犯罪者なのか、もしやドラッグ・ディーラーなのか・・?

映画は、ウェス・ポールの「メイズ・ランナー」のように、とにかくこの醜悪な迷路のような薄汚い路地裏を四方に動き回り、パンクなサウンドに追い回されるように回転するのだ。

ま、これも映画による、悪夢のレトリックであり、ひとつの映画という思考表現の手段として、メジャーな商業目的の映画たちを嘲笑するような視線には、あるエネルギーを感じる。

ジョン・ヒューストン監督の「火山のもとで」では、高名で裕福な老作家が、メキシコの山奥のカーニヴァルに魅せられて、人生を転落していく高尚な美学であったが、これも<それ>なのか。

 

■三遊間をゴロで抜けるが、ショートのエラーで判定セーフ。 ★★★☆

●2017年1月7日より、渋谷ユーロスペース他でロードショー  



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11月7日(月)13-00 渋谷<映画美学校B-1試写室>

M-143『五日物語*3つの王国と3人の女』" Tale of Tales " (2015) Archimede S. R. L. Le Pacte SAS. Rai Cinema, Hanway Films 伊

製作・脚本・監督・マッテオ・ガローネ 主演・サルマ・ハエック、ヴァンサン・カッセル <133分・シネマスコープ>配給・東北新社

いやはや、かなりユニークで奇異な映像のオムニバス古典で、世界でも最も古いといわれるジャンパディスタ・バジーレの原作「ペンタローネ<五日物語>」は、イタリアでは有名な昔話だという。 

サブタイトルの「3つの王国と3人の女」とあるように、17世紀初頭にナポリ王国で残された怪奇な民話集で、50ものエピソードの中から選ばれた、3人の女性の怪奇な話。

後にこの神秘的な原作に影響されて、グリムの童話や、多くのファンタジー小説の原点となったらしく、その奇想天外な世界と、悲惨な女性の悲劇は、たしかに聞いた事がある。

とくにオムニバス映画として、3つの寓話が分断されることはないが、それぞれに欲望と希望と野望を持った女性達の、それぞれの秘められた寓話としては面白く、興味をそそられる。

オスカー・ノミネートされたセルマ・ハエックは、不妊に悩む女王で、魔法使いのいうように、国王ジョン・C・ライリーの命と引き換えに、洞窟に棲む大きな怪獣の心臓を食べる。

また、不遇な王女は結婚の相手探しをして、父親の王様は、国の屈強な若い男たちを戦わせた結果、優勝した男と結婚させようとしたが、優勝したのは、半猿人のような野獣のアタマをした男。

ある王国の年老いた王女は、まだ結婚の夢を捨てきれずにいて、魔女の妖術で若い肌を取り戻そうとするが、その美しい素肌も、すぐに美しさを失って行く・・・。

このような3つのエピソードは、たしかに「白雪姫」や「シンデレラ」の原点の要素を持っているが、このガローネ監督の映像は、敢えて狂気の野獣や老化してゆく美貌の醜さを強調する。

つまりは人間の野望や夢の実現には、それぞれのリスクを伴うもので、その代償の醜さを、この作品では周到な美術表現で、かなりグロテスクさを強調して見せるのが、すさまじい。

こうして凄惨な映像の魅力は、たしかにフェリーニやパゾリーニなどの映画にも、多くの影響を残しているが、それらのイタリア国内の古城や渓谷の異様な美しさは、この作品の魅力。

たしかに「日本昔ばなし」にあるようなストーリーだが、イタリアの古城や、奥地の神秘な風景には、見た事もない気味悪さもあって、幻想的なCGエフェクトにも、かなり魅了された。

 

■レフトオーバーのライナーがワンバウンドしてスタジアム・イン。 ★★★☆☆

●11月25日より、TOHOシネマズ六本木ヒルズなどでロードショー 



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11月4日(金)13-00 神谷町<ワーナー・ブラザース・第2試写室>

M-142『ザ・コンサルタント』" The Accountant " (2016) Warner Brothers Pictures / Electric City Entertainment / Zero Gravity Management

監督・ギャビン・オコーナー 主演・ベン・アフレック、J・K・シモンズ <114分・シネマスコープ> 配給・ワーナー・ブラザース映画

シカゴ郊外の小さな町の公認会計士事務所のホワイト・カラー、ベン・アフレックは、一応は地域の低額所得労働者家族の税金対策相談などをしているマジな男。

まさにあの名作「素晴らしき哉、人生」のジェームズ・スチュワートのような、善良な市民の味方として、いろいろな庶民の生活保護の提案などをしている。

しかし、感動の社会派ドラマと思いきや、やはり現代犯罪映画を得意としているワーナー映画としては、そんな甘いヒューマンな庶民ドラマなどは作る筈はないに決まっている。

大手電子メイカーの経理担当をしているアナ・ケンドリックスは、不正な使途流用金の行方に気がついて、財務省の局長J・K・シモンズに調査の相談に行くと、意外な話。

案の上、ベン会計士は、実は裏社会の巨額な運動資金の流れを巧みに表面処理をしていたクセもの会計コンサルタントで、当局も背景には疑惑が山積されていたのだ。

さて、ここからがこの映画の見どころとなり、実はベンには別の顔があり、まさに空を飛ばないスーパーマンのように二つの顔を持ち、巧みに地下資金の流れを操るアカウンタント。

あのテレビ映画「スーパーマン」の主役スターの悲劇を演じたときの「ハリウッド・ランド」のベン・アフレックをふと想像したが、実は幼少のころに自閉症だったために二重人格になっていた。

で、まるで高倉健さんのように非常にストイックな性格で、自宅には高性能な銃器をもつコレクターで、格闘技も収得したスーパー・アスリートにして、スナイパー能力も半端じゃない。

会計監査の処理に破綻のでた裏組織は、ついに会計士のベンと、調査員のアナを葬ろうとするのだが、そこはおなじみのワーナー・ブラザースの暴発的なエンターテイメントが炸裂。

さすがに「セッションズ」でオスカー受賞のJ・K・シモンズは苦心の演技を見せるが、どうも地下組織の描写に旨味がなくて、後半のドラマがギャビンの演出に工夫がない。

やはりあの「チェンジング・レーン」のように、もう一枚のビッグ・スターがベンと対抗しなくては、サミシい一人芝居の知り蕾に終ったダーク・ムービー・・・惜しい。

 

■当たりは痛烈な左中間だったが、意外に失速してレフトが好捕。 ★★★

●2017年1月21日より、丸の内ピカデリーなどでロードショー 



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