細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『とんび』の、あの回転してばかりの飛び方にも、理屈はある。

2022年04月29日 | Weblog
●4月28日(木)11-05 二子玉川<109シネマ・2シアター>
M-010『とんび』<tombi / kadokawa.co.jp>  原作・重松 清,配給・KADOKAWA
監督・瀬々敬久 主演・阿部 寛、北村匠海、薬師丸ひろ子、安田顕 <139分・ビスタサイズ>
瀬戸内海に面する備後市、昭和37年というから、わたしが銀座の会社に入社した時代とほぼ同じなので、つい阿部の演じるヤスという男と時代感覚はダブる。
が、それは時代だけの話しで、この港町の風景とか、ほとんど出ずっぱりの阿部の生活環境や性格、時代の景色やテンポはまったく違うので、共感は少ない。
それでも、地元の運送会社に勤務していて、一生懸命に行きて行く姿は、あのフーテンの寅さんとは正反対なのだが、キャラクターの奔放さは、似ている。
長男が幼児のころに、事故で妻を亡くしてからは、ほとんど男手と、周囲の人々の暖かい尽力で、一人前の男に息子を育て上げて行く・・というドラマなのだ。
わたしは、その時代の育ちのせいか、多くの高倉健サンの映画を見て育って来たのか、どうしても、あの健さんの生き様に比較して見る悪いクセがあるのだが・・。
同時に、もしも、あの健さんが、この<離れトンビ>のような生き様を演じていたら・・と思ってしまうのだが、いや、やはり健さんは<とんび>は似合わない。
あの「居酒屋兆治」のような男気は、性格のなかにあるようだが、そこは地道に工場で働いて子育てしていく姿は、あの孤高な健さんのキャラクターと比較は無用。
ドラマは、事故で妻を失ってから、このヤボで野放図で短気な男が、それでも町内の仲間たちの支えで、昭和の時代を生き抜いて、ひとり息子を育て上げる。
従って、ほとんどは阿部寛と、その港町の備後の町、というよりは、短気で一本気の彼の人生が、どこか空を当てもなく滑空する<とんび>に似ているようだが。
たしかに鷲のような風格はなく、カラスや雀のように群れないで、正直で懸命に子育てに尽力していく、ひとりの無名な男の生き様には、<昭和>がダブルのだ。
<暗夜行路>じゃないが139分というラニングタイムの長さには、さすがに、こちらも腰が痛くなる苦痛は避けられないのは、かなり覚悟の必要な人生行路なのだ。

■左中間のフェンスへの当たりだが、セカンドに戻る。 ★★★☆☆
●全国で公開中

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