最新の映画情報や批評を掲載します。
細越麟太郎 MOVIE DIARY



11月21日(金)13-00 目黒<ウォルト・ディズニー映画試写室>

M-131『ベイマックス』" Big Hero 6 /BAYMAX " (2014) Walt Disney Animation studio Hollywood 

監督・ドン・ホール+クリス・ウィリアムズ 制作総指揮・ジョン・ラセター <92分> 配給・ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン ★★★☆☆

大ヒットの「アナと雪の女王」の後を受けてのディズニー・スタジオの新作は、少年の夢をバックアップする<癒し系ロボット>の「ベイマックス」の登場で、万全の期待作。

ちょっとマシュマロ人形のような「ベイマックス」は、まさに、「くまのプーさん」のドン・ホールと、「ブラザー・ベア」のクリス監督がタッグを組んだだけに、シロクマの発想。

未来都市の「サンフランソウキョウ」は、サンフランシスコと東京のふたつの都市の美点を合体したような理想的な文化市街で、チャイナタウンと渋谷がミックスされていて妙である。

多くの東京グッズや街角スケッチが、こうしてワールドワイドなアニメに紹介されるというのは、またしても東京観光のPRには大きく貢献してくれることも間違いない。

14歳の少年ヒロには、工科大学に通う仲良しの兄タダシがいたが、大学の発明祭の夜に不審火をだして大火となり、消火の為にとびこんだ兄は焼死してしまう。そして悲しみのヒロは自室に籠ってしまった。

そこにシロクマのように、全身まっしろで、ビニール人形のような癒し系ロボットの「ベイマックス」が現れて、何かとヒロの話相手として、傷ついた心の支えになってゆき、しだいにそこには友情も生まれてくる。

やっと心をリセットしたヒロは、焼け残った工科大学のコーナーに、兄が研究していた新発明の<マイクロボット>を見つけて、その再生に努力して、出火の原因が悪徳企業の陰謀だったことに気がついて行く。

しかし平和主義の癒し系<ベイマックス>は、もっとやさしい方法でマイクロボットを完成させるために、新しい手段をヒロに教えていくのだった。という具合に、ディズニーの新企画はさすがに抜かりがないのだ。

どこか、わが「ドラえもん」のようでもあり、このヌーボーとしたメタボなビニール・ロボットにも、見ているうちに、不思議とこちらも愛着を感じだす、という計算も、相変わらずお上手であった。

どんな怒りや矛盾にも、絶対に暴力を行使しないで、心の優しさで解決してゆく、なんて、まるでどこかの平和主義者の説法のようで照れくさいが、ま、このメタボなビニールロボットを見てると心は休まる。

という意味では、またしてもディズニー・スタジオの商魂は一応のレベルで評価されて、大衆に喜ばれるだろう。そのことのは全く異論はない。<スマホより、大画面で>とベイマックスは言っているのだ。

 

■大きなホームラン性の当たりだが、もうちょいでフェンスに当たる。

●12月20日より、全国でお正月ロードショー 



コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




11月19日(水)13-00 京橋<テアトル試写室>

M-130『マップス・トゥ・ザ・スターズ』" Maps to the Stars "(2014) Starmaps Production / Integral Films GmbH

監督・デヴィッド・クローネンバーグ 主演・ジュリアン・ムーア <119分> 配給・プレシディオ・松竹 ★★★☆☆

ハリウッドは映画産業の街だが、映画の仕事で裕福な生活を維持しているのは、ごく、ほんの一部の恵まれた人たちで、ほとんどの住民は重い住民税に苦労している。

この映画では、ひとりの落ち目な女優と、彼女の精神的な心理セラピーをしている精神科医師の一家を中心にして、その崩壊の構図をシニカルにカリカチュアライズしているシニック・コメディ。

という意味で、いつもアブノーマルな人間心理の内面を描くクローネンバーグの新作が、そのハリウッドの恥部を描くことは興味深いし、ただの華麗なスター映画でないのは当然のこと。

明らかにビリー・ワイルダーの名作「サンセット大通り」を意識した、スターの虚像と、その異常心理を巧みに悪用するセラピストの家族というのは、かなり極端だが実に面白いのだ。

熟女の女優ジュリアンは、離婚しているがアンバランスな精神状態を、専属精神医師のジョン・キューザックの豪奢な屋敷に通って治療しているのだが、その家庭は精神的にボロボロなのだった。

重度のノイローゼで転地療法していた娘のミア・ワシコウスカが突然に帰宅したことから、琴線上の危険な心理状態にあった家族のバランスは狂いだし、それがジュリアンにも飛び火していく。

ただでさえユニークな心理状態のキャラクターを描く監督の趣味性は、この砂上の楼閣のようなビバリーヒルズの家族をテーマにしたら、奇異で面白い素材は豊富な筈で、ここでも随所に鋭い皮肉をこめる。

とくに現代のノーマ・デスモンドを演じるジュリアンは、まさに彼女の根性を丸出しに露呈して毒演して、カンヌ国際映画祭では今年の最優秀女優賞を受賞。アカデミーは恐らく蔑視するだろう。

ビバリーヒルズの住人で、実際に映画のスタジオに行っているのは、ごく僅かであって、実際には「テン」の歯医者のような、医者やプール清掃業者や、パーティ屋とか不動産業者がハバを効かせている。

つまり大都会とは違って、かなりアンバランスな連中が世界中から集まった雑居地域であって、このような視点で描く狂気な人間ドラマの素材としては、たしかに宝庫なのだ。

だから監督としても、面白すぎて曖昧な描き方も多くて、<ハリウッド・マッドネス>を描いたにしては、意外に軽い常套的な悲劇の印象だったが、映画人種スケッチ集としては充分に悪臭があって面白い。

あのデヴィッド・ホックニーの絵画にあるようなプールの景色には、血染めの現実が潜んでいる、・・・・というジョークだ。

 

■大きなライトフライを野手が目測を誤って落球・

●12月20日より、新宿武蔵野館などでロードショー 



コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




11月17日(月)13-00 外苑前<GAGA試写室>

M-129『シン・シティ/復讐の女神』" Sin City : a dame to kill for " (2014) dimension films / aldamisa entertainment 

監督・ロバート・ロドリゲス+フランク・ミラー 主演・ミッキー・ローク <103分> 提供・アピネット+ギャガ ★★★☆☆

ちょうど10年ほど前に公開されてマニアの間で評判になったフランク・ミラーのグラフィック・ノヴェル「シン・シティ」の、これはエスカレートした3Dのエピソード2だ。

「スーパーマン」や「バットマン」の健全マーヴェル・コミックスのライバル的な存在の、ブラック・ヒーローに徹する企画で、徹底的に暗黒な邪悪の世界を描くのがポイント。

極悪には、それ以上の邪悪で立ち向かうというコンセプトの、この作品には正義や幸福などは通用しない。その徹底した極道ぶりが滑稽なくらいにエスカレートして突き走る、その豪放さが愉しい。

ま、要するに、ブラック・コミックの、あのチープな感覚を、徹底的にアニメーション処理にしたスクリーンは、まさにあのザラザラした紙質のトラッシュ・ペーパーを再現して嬉しくも貴重。

もともとチャンドラーやハメットの探偵小説なども、このテのモノクロームの動画感覚で街の不良たちに親しまれたのが発端で、あのいかにも寂れた暗黒街美学が徹底しているのがユニークでいい。

だからアクション・シーンやカー・チェイスから銃撃までが、あの派手なコミック感覚でブローアップされていて、この低俗趣味に共感するひとには絶品であり、そうでない趣味の人には悪臭ものなのだ。

この地獄のシン・シティに現れたジェシカ・アルバは、ブルース・ウィリスの亡霊の復讐のために、謎の酔っぱらいのミッキー・ロークのバックアップを得て、悪徳上院議員の組織をやっつけるのだ。

単純明快なリベンジ話を、ロドリゲスはいくつかのエピソードを交えながら、曲者のバイ・プレイヤーたちでバトンタッチして描く手法は、一種のオムニバス・コミックのようで面白い。

多くの有名な俳優が、まるでカメオ出演のように登場するので、あのジョン・ヒューストンの「秘密殺人計画書」のようで、まるで隠し芸大会のようだ。

その中でも、ダイナーのウェイトレス役で顔を出す<レディ・ガガ>には笑ってしまった。

全編グリーンバックで撮影されたというだけに、暗黒なシーンは、まるで下品な人工着色の幼稚なコミック・マガジンのセンスなので、これは映像学生には、大いに勉強になる素材なのだ。

 

■セカンドベース直撃の低いライナーが左中間に転々のヒット。

●2015年1月10日より、新宿ピカデリーなどでロードショー 



コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




小田さんち。

 

11月22日(土)12-00

 

今日は、とても心地のいい小春日和なので、多摩川の川原に行き、コンビニのおにぎりと缶ビールで勝手にランチ。

川原から土手を上がると、野菊が咲いていたので、美しい小ぶりの黄色い花を5本ほどちぎり、紙に包みました。

瀬田2丁目のわが家から5分くらい南に歩くと、報徳寺があり、道沿いの陽だまりの高台を歩くと、車道の終わりの路地があり、後は階段があるのです。

そこからは多摩川と、工事中のニコタマ・シネマコンプレックスと、東急ホテルの30階の工事現場が見下ろせます。来年5月にはオープン予定の現場は、すぐ眼下です。

おしゃれな豪邸が並ぶ袋小路の左側に、小田さんの家があり、いつも車庫のシャッターは降りているのですが、きょうはいい日和で、二階のテラスも輝いていました。

美しい松の大木に囲まれた家は静かに微笑んでいました。わたしは、その車庫のシャッターの横に、つまでん来た黄色い野菊の花束を置き、表札に手を当てて、30秒くらい黙祷しました。

何となく、とても、いい気持ちになりました。

小田さんの家は、大きな松の樹々に囲まれて、もう30年くらい前から、わたしの憧れの家で、白い外壁は今日も輝いていました。

それが、つい先日まで高倉健さんの住んでいた家なのです。 



コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




11月13日(木)13-00 六本木<アスミック・エース試写室>

M-128『ドラフト・デイ』" Draft Day " (2014) Summit Entertainment, Montecito Pictures, / Oddlot 

監督・アイヴァン・ライトマン 主演・ケヴィン・コスナー <110分> 配給・キノ・フィルムズ ★★★☆

先日こちらでもプロ野球のドラフト会議が行われたばかりだが、アメリカではMLBよりも、プロ・フットボールのドラフトの方が全国テレビ中継でショウアップされて派手だ。

トム・クルーズ主演の「ザ・エージェント」は、たしかそのドラフトの下請け個人マネジャーの話だったが、こちらのクリーブランド・ブラウンズのジェネラル・マネジャーは凄腕のチーム所属プロ。

つい最近でも、ブラッド・ピットが演じた「マネーボール」のGMも、かなり切れ者だったが、やはり野球よりもNFLの方がアメリカでは人気も高くて、その注目度は凄い、とされる。

なにしろ、あのニューヨークの<ラジオ・シティ・ミュージックホール>の巨大な客席内部を、そのドラフト・デイのために改装して、満員の聴衆も、その一瞬の駆け引きに固唾をのむというのだから、大変な日なのだ。

本格ドラマ主演のケヴィン・コスナーは、クリーブランドのチームの少ない予算で、来期にかけて優秀な選手をスカウトしたいのだが、すでに舞台裏では、有力な予算のあるビッグチームが派手な裏工作をしているのだ。

初めてこの映画で、その裏取引の仕掛けが紹介されるが、日本のプロ野球のドラフトのように、希望球団同士の抽選券を引き当てたGMが、選手との交渉権利を持つ事になる筈が、このNFLの場合はちょっと違う。

というのも、その指名順序は、前年の下位チームから10分だけの指名権があるのだが、野球のように選手のポジションだけで判断できなくて、当然、来期の攻撃守備のメンバー配置を先行して決める必要がある。

従って、その為にも、自分のチーム・メンバー配分と、ライバルチームたちの狙いを掌握しつつも、そのまた裏の配分も考えなくてはいけないから、ファイブカード・スタッド・ポーカーの、カード・ルールのような緻密な頭脳戦となる。

だからどうしても、この不思議な<ドラフト・ゲーム>の構図をまず理解しないと、この映画の本当の面白さはわからない。で、わたしの知能では、このスピード判断には、つい出遅れてしまうのだ。

たしかにケヴィン・コスナーも久々に好演していて、その老けぶりも、段々とゲイリー・クーパーの晩年の表情に似て来ていいが、ドラマが名作「スティング」のような明快さがないので、この裏取引がよく見えない。

せめて、「マネーボール」のように、実戦シーンを入れてくれると、もう少しドラマの意味合いが明快に判ったであろうが、全編インサイダー・ドラマなので、ちょっと娯楽性に欠けていた。

 

■痛烈なヒットのツーベースかと思ったが、隠し球でタッチアウト。

●2015年1月30日より、全国ロードショー 



コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




11月18日(火)12-00

 

高倉健さんが亡くなられたことを、テレビのニュースで見て、ふと溜め息がでた。

悲しい涙でも、惜別の苦汁の虚しさでもない。もっと乾いた、ひとつの安堵感のような思いだった。

彼の出演した「昭和残侠伝」シリーズに熱中したのは、1970年代の頃で、ちょうどわたしが仕事をはじめてサラリーマン10年すぎか。

いろいろと挫折感やトラブルの多かったときに、新橋の寂れたバーのバーテンダーに、すぐ近くのガード下にある「新橋文化」で、高倉健の映画を薦められた。

どうでもいいや、という尖った気分で、初めて高倉健さんの演じる<花田秀次郎>に会った瞬間、わたしの頭にあった悶絶の腫瘍は一気にぶっとばされたのだった。

それからは、毎週のように、銀座並木座や渋谷東映で、健さんの映画なら何でも見た。そこには、なぜかわたしの欠陥を切除する特効薬のような効果があった。

80年のある早春の日。テレビのCMの友人ディレクターから電話で、「いまここで、健さんとCMの撮影してるけど、昼休みに来てみるか?」と言われて、わたしはスタジオに飛んだ。

何もテにつかずに、電車を乗り継いで調布のスタジオに行ったら、多摩川の土手で、例によって立ったままで、友人は高倉健さんを紹介してくれたのだ。

わたしは興奮して「あのーー花田秀次郎さんのファンでして・・・」というと健さんは、あの苦笑で眩しそうに「・・・あ、そーーすか」と微笑した。

早春の太陽が眩しくて、10分くらい、何を話したか、「こんないい天気に、暗がりで仕事してるのって、さみしーーですね」と、彼は照れ笑いしていた。

撮影が再開されるので、わたしが咄嗟に自分の手帳に、「あのーー、サイン、して貰えますか」と言うと、健さんは「ここじゃ何だから、あとで送るので・・・」とスタジオに戻ったのだ。

わたしは空振りの三振をした打者の気分で、名刺を友人に手渡して、またすごすごと土手を降りて調布の駅に向かったのだ。

 

それから1週間後。何と、8×10サイズのオリジナルプリントのカラー写真に、花田秀次郎の扮装の着流しの健さんが、墨で「細越さんへ、高倉健」とサインした速達が届いた。

いまも、わたしは、それを自分の宝物にしていて、50本もの健さんDVDと共に、ベッドの横に飾っている。

だから、悲しいことはない。またいつか、あの陽の当たる多摩川の土手で、彼に会えると信じているからだ。 



コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




11月11日(火)13-00 京橋<テアトルB-1試写室>

M-127『はじまりのうた』" Begin Again " (2013) Killifish Productions / Exclusive Media / Sycamore Pictures

監督・ジョン・カーニー 主演・キーラ・ナイトリー <104分> 配給・ポニーキャニオン ★★★☆

2006年に公開されて人気のあった『ONCE ダブリンの街角で』のジョン・カーニー監督が、またしても同じようなミュージシャンの青春をマンハッタンで再現した。

まるでイーサン・ホークの「ビフォア・ミッドナイト」のシリーズのように、一卵性双生児のような作品であって、このタイプの青春讃歌がお好きな人向きの音楽サクセス映画。

たしかに背景の街は変わったが、ニューヨークはもっと厳しい。とくに新人アーティストの出世の苦労話は多く、『インサイド・ルーウィン・デイヴィス』のような秀作は少ない。

しかしこのジョン・カーニー監督のタッチは、その厳しい現実を正視しながらも、基本的にはアップライトでポジティブな体質を持っていて、その明るくて誠実な作風は好感が持てる。

という意味では、一連のウディ・アレンのマンハッタン・コメディのように、気楽に見られて、ときおりミュージカル映画のように突然に、心地のいい歌を聞かせてくれる。

キーラ・ナイトリーも、海賊との鬼ごっこばかりしてないで、こうしてギター片手で危なっかしい歌唱を聞かせてくれるのも、等身大で、その多彩な側面を覗かせてくれて好感が持てるのだ。

ま、ストーリーはというのは、落ちこぼれて自堕落な音楽プロデューサーのマーク・ラファロに、クラブハウスで偶然にスカウトされるという、よくアリガチな発端から苦労話が展開する。

往年は大ヒットのミリオンセラー連発で、自分のレコード会社を経営していた男も、クビになって金がなくてはレコードも作れない。そこで彼はキーラを連れ出して、要するに電撃街頭レコーディングをする。

そのテレビ取材のような発想が面白くて、いかにも陽気でノーテンキなニューヨークの街頭スケッチで愉しく見られるのが、この作品の魅力であろう。その思いつきの発想が楽しめる。

たしかにどんなミュージシャンにも、惨めで滑稽なデヴュー秘話はあるだろう。そんな明日のスターを夢見ている若者には、とても心強い、勇気を与えてくれる作品ではあろう。

 

■サインミスで出したドラックバントが、意外や前進守備のサードの頭上を越えてヒット。

●2015年2月7日より、新宿ピカデリーなどでロードショーv



コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




11月11日(火)10-00 外苑前<GAGA本社試写室>

M-126『サンバ』" SAMBA" (2014) Quad-Ten Films / Goumont / TF1 films production

監督・エリック・トレダノ+オリヴィエ・ナカシュ 主演・オマール・シー <119分> 配給・ギャガ ★★★☆

ラテン音楽の「サンバ」ではなく、もちろん、ミュージカルでもない。これはセネガルからフランスに不法入国していた陽気な男の名前で、その語感のように陽気。

あの大ヒット作「最強のふたり」の監督が、またしても、あの陽気な黒人を主役にした、実はかなりシリアスな問題。それをあの明るいキャラクターでオマールは演じている。

パリのレストランで皿洗いをしていた彼は、突然にビザの失効で国外退去を命じられる。さあ大変。大した収入もないのに苦心して国の家族に仕送りしていたのに、大ピンチである。

就業ビザなし、預金なし、恋人なし、住所なし。それでもサンバは、あのラテンのリズムのように陽気だ。

空港の外角にある不法入国者の施設に入れられたサンバは、担当の女性係員のシャーロット・ゲンズブールにビザの再発行を頼むのだが、彼女は<燃え尽き症候群>の統合失調症ときた。

同情はするものの、彼女のアンバランスな精神状態では、なかなか業務は進展しない。そのトラブル満載の苦難の日々を淡々と描くので、これは前作のように笑ってばかりもいられないのだ。

20年くらい前にジェラール・ドパルデュが主演した「グリーンカード」と同じような設定だが、あれはラヴストーリーで、アメリカ女性と結婚することでハッピーエンドだが、こちらは多難である。

海に囲まれた日本では、あまり不法入国者のトラブルはテーマにならないが、フランスのパリというのは、どこからでもビザなしの不法入国が出来るので、とくにアフリカやアラブ系も多く滞在している。

だから以前にあったトム・ハンクス主演のリメイク「ターミナル」のように、エアポートに釘付けになる旅行者も居るが、陸路入国できるという状況は、たしかにシリアスな問題も多いだろう。

そのせいか、どうしても「最強のふたり」のような秀逸なコメディ・シチュエイションではなく、ストーリーも挫折が伴いスッキリしないのは困った者ものだ。

おまけにシャーロットのナーバスな情緒不安定が、このトラブルにブレーキをかけて、話はなかなか好転しない。まさに二重苦の貧民ドラマというワケで、オマールの満面の笑顔だけが救いとなるのだった。

 

■レフトがファンブルするヒットで、セカンドを狙うが封殺。

●12月26日より、TOHOシネマズ・シャンテなどでロードショー 



コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




11月7日(金)13-00 西銀座<東映本社7F試写室>

M-125『アゲイン/28年目の甲子園』(2014) 東映、木下グループ、ロード・アンド・スカイ、ポニー・キャニオン

監督・大森寿美男 主演・中井貴一 <120分> 配給・東映 ★★★☆☆

サブ・タイトルのように、高校時代に甲子園に出られなかった男たちの、心のリベンジの熱血野球映画かと思っていたら、意外にも、ちょいと違った味。

28年も前に、埼玉の高校野球予選で、チームメイトの不祥事で出場停止となった球児たちは、今では挫折だらけの負けゲームのような人生を空費していた、という設定。原作は重松清。

あの震災の津波で亡くなった父の遺品の中に、未発送の年賀状の束が見つかり、甲子園でボランティアをしていた娘の波瑠は、宛先から当時の野球部員だった中井の家を訪ねる。

28年前には川越の高校でキャッチャーをしていた彼は離婚の独り身、あのとき突然の出場停止になった、そのチームメイトのことは忘れていたが、その娘から甲子園マスターズのことを知らされる。

当時のピッチャーだった柳葉敏郎は、いまはリストラで無職の身。もしあの時に甲子園に出場していたら、自分の人生はもっと陽の当たる道を歩けた筈だった、とボヤイている。

ま、あの「オーシャンズ11」のように、古参の同士が集められ、あのときの夢を再現するために、<マスターズ甲子園>という企画があって、いまでも、あの夢のグラウンドの立てるチャンスがあるのだ。

たしかに、高校野球で出場できるのは、その予選の優勝チームだけで、そのときの心の夢を失った高校球児というのは、全国に数万人もいて、まだ心に夢は残したままだろう。

その遥かなる熱血を、こうして28年もして再燃させるという企画は、当時の野球少年には、人生リセットの何かのきっかけになるかもしれない。という視点から生まれたストーリーは熱い。

だから野球映画だと思って試写を見に行ったわたしは、ちょっと軽卒だったようだ。たしかに、これも負けゲームのような人生を空費している男たちには、勇気を与えてくれるチャンス。

昔の仲間が座敷に集まり、案の上、当時のイキサツの誤解から口論となり、そのあと路上に出てから激論を続ける中井と波瑠のワンショットによる路上のシーンは、久しぶりにいいシーンを見た。

大森監督がシナリオを書いているが、あの「風が強く吹いている」での箱根駅伝のエピソードのように、集団シーンと個人のドラマのコントラストに、実にいい味わいの演出を見せて光るのだ。

ラストシーンで、多くの人たちが甲子園のグラウンドに出て、それぞれにキャッチボールをしている絵は、何も言わないが、人間たちのコミニケーションの大切さを訴えていて感動させられる。

 

■左中間の当たりがフェンスまでゴロで抜けるツーベース。

●2015年1月17日より、東映系で全国ロードショー 



コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




11月4日(火)13-00 内幸町<ワーナー・ブラザース映画試写室>

M-124『インターステラー』" Interstellar " (2014) warner brothers / paramount pictures / legendary

監督・クリストファー・ノーラン 主演・マシュー・マコノヒー <169分> 配給・ワーナー・ブラザース映画 ★★★☆☆

タイトルの意味は「星の間で」というような意味らしいが、監督が意図している作為は、もっともっと深遠で、謎の多すぎる、しかも長過ぎる作品だ。

いきなり地球が自然破壊によって重度の大気汚染。空気が北京状態でホコリだらけの時代。農業も壊滅でトウモロコシしか栽培できない食料危機のために都市部は壊滅している。

元宇宙飛行士で技師のマシューは、NASAの委託機関によるミッションで、太陽系圏外で人類が生息可能な星を見つけるために探査ロケットで宇宙ステーションに向かい、クルーと合流。

まさにジョージ・パルの「地球最後の日」や「ディープ・インパクト」のような末期的な時代。例によって、凄まじいサウンドでロケットは大気圏を脱出してブラックホールに行くのだ。

そこまでは、昨年大評判だった「ゼロ・グラビティ」同様に、さすがはワーナー・ブラザースの映像とサウンド・コントロールで迫力があり、しかもクリストファー監督のセンスで圧倒する。

試写室に入る前に、その後はネタバレになるので、作品の詳細はネットに書かないでくれ、という誓約書にサインさせられたので、詳細は書かないが、たしかに、その先の展開は知らぬが花か、仏さま。

要するにブラックホールの先は、到底、誰も知らない世界なので、スタンリー・キューブリックが「2001年宇宙の旅」で見せたように、映像によるイマジネーションの創造性が問われる次元となる。

つまり、三途の川の先の次元なので、そこに行方不明となっていたジェイソン・ボーンのような宇宙飛行士や、亡くなった家族がいても、これはクリエイターの空想的異次元創作のレベルとなる。

それ見ろ!!!。またしても監督は「インセプション」のように、想像を絶したクリストファー・ノーランのイマジネーションの世界に漂流することになるのが、面白くもあり、こちらの頭脳も迷走するのだ。

結局は死後の世界のように、誰にも予想の出来ないイマジネーションなので、そこは好みのレベルだが、それが、実は身近な本棚の裏側にあった空間だったというのも、カフカ的な逆視感覚で酔わされる。

困るのは、地球脱出までのリアル・ワールドが長過ぎるので、その分の後半の負担が、こちらの思考能力の限界も遥かに越えて行く。そこは見てのお楽しみだ。

昨年のオスカー受賞マシューと、アン・ハサウェイも、恐らくスタジオのグリーン・マットで苦戦しただろうが、ま、話のタネには面白い作品だろう。

 

■大きなフライがドーム天井の柵に引っかかってしまい、ツーベース。

●11月22日より、新宿ピカデリーなどでロードショー 



コメント ( 0 ) | Trackback ( 3 )



« 前ページ