●12月21日(月)13-00 外苑前<GAGA試写室>
M-159『YOUTH<シンプル・ソング>』" Youth " (2015) Indigo Films / Barbary Films / Pathe Productions / France2 英仏伊
監督・パオロ・ソレンティーノ 主演・マイケル・ケイン <118分> 配給・GAGA・クレストインターナショナル
耽美的な不思議な魅力のあった『グレート・ビューティ=追憶のローマ』は、かなりフェデリコ・フェリーニ監督の「甘い生活」を意識した傑作だった。
いまのイタリアで、あれだけのイタリアン・デカダンスの映像美を駆使するタイプの映画人は、このソレンティーノ監督が筆頭で、他には見当たらない。
そのお気に入り監督の新作の内覧試写があるというFAXがあって、わたしとしては、もうウハウハと胸躍らせて試写室に走り込んだのだ。<師走>とは、これだ。
この作品は、まだ公開の邦題も決まっていなくて、一応、英語のタイトルが<YOUTH>というが、たしかに、確実に失われて行く<生命力の若さ>についての作品。
老優マイケル・ケインは、もう引退した80才の作曲家だが、親しい映画監督のハーヴェイ・カイテルと、のんびりとスイス・アルプスのリゾートで休暇を過ごしていた。
しかしイギリスの王室が、ぜひ生前の交響楽の名曲<シンプル・ソング>を、ロイアル・アルバート・ホールで、クイーンの前で演奏して欲しいというオファーがあった。
乗り気のしない彼はキャンセルを伝えるが、慇懃な王室のメンバーが、直接、ホテルまでやってきて、ぜひ、ぜひ、と迫ってくるので、友人と逃げ回っていたのだ。
一方、老映画監督のハーヴェイも、新作の構想中なのだが、古い友人の女優ジェーン・フォンダの来訪で、ハリウッドへの復帰を考えていたところ。
が、酔ったジェーンのショッキングな激白で、監督のキャリアはボロボロに罵倒されてしまい、彼は咄嗟に、高級ホテルの高いヴェランダから飛び降りた。
友人を失ったマイケル・ケインは、もう残り少ない人生のために、ロンドンのコンサートを承諾してステージに向かう・・・という、まさにジョン・ウェインの「ラスト・シューティスト」!!!
ま、イタリア的な美意識が、全体の流れとかテーマの<死期>を背負っていて、個人的には、あのヴィスコンティ監督の秀作「ベニスに死す』を思い出して、ごくご満悦だ。
しかし監督は、先輩フランチェスコ・ロージ監督に、この作品を捧げ、老女優で凄んだジェーンは、まさにあのノーマ・デスモンドの凄みを見せ、現在、ゴールデン・グローブにノミネートされている。
恐らく、来年になって、ちゃんとした邦題も決まって、マスコミの動きも、アカデミー賞を睨んで展開されるだろうが、死期を迎える男たちの<終り方>については、諸々、考えさせられる。
■右中間への大きなフライが風に流されて、ライン上に落ちて転々。 ★★★☆☆☆
●2016年4月16日より、シネスイッチ銀座他でロードショー
★という訳で、まだ書き込んでいない「スターウォーズ」も残しつつ、ひとまずは、良いお年を、皆様お迎えください。