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細越麟太郎 MOVIE DIARY



    

5月25日(月)10-00 虎ノ門<ウォルト・ディズニー新試写室>

M-061『トゥモローランド』" Tomorrowland " (2015) Walt Disney / 113 Productions 

監督・ブラッド・バード 主演・ジョージ・クルーニー <130分> 配給・ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン

好調のディズニー映画の試写室が、これまでの目黒から、虎ノ門の新しい高層ビル・エリアに移転。しかし場所がなかなか見つからない。イヤーな予感だ。

さて、この映画。・・・あのウォルト・ディズニーが、生前に持っていた夢のアミューズメントパークは1955年にオープンしたが、実はもっと未来志向の夢を隠し持っていた、という。

彼の夢の遺産は、娯楽テーマパークとして、現在も世界中に様々なスタイルで営利的に維持されているが、「1952」という夢の未来都市<トゥモローランド>計画は資料に埋没。

そのデッサン画など、秘蔵資料はスタジオに保存されていて、スケッチ画や資料をもとにして、この映画を制作するプロジェクトがスタートしたらしく、リアルとフィクションが混沌とする。

要するに、あの『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の白髪の博士がW・ディズニーだと思えばいいが、この作品は1964年のニューヨーク万国博覧会会場からスタート。

当時、少年だったジョージ・クルーニーが描いた未来構想イメージが、ファンタジーとして展開して、それが現在の世界各地に点在している都市などにファンタジーとして転嫁していくのだ。

宇宙計画が中止されたケープ・カナベラルの廃墟の中で見つかった<T>マークのピン・バッジに触れると、そこには突然、<トゥモローランド>の不思議世界が出現する。

で、さっぱり訳の分からないままに、少女とクルーニーおじさんの冒険が展開するのだが、はっきりとした映画的なレトリックのないままに、スクリーンは未知の空間を浮遊するのだ。

おそらく、「ミッション・インポッシブル:ゴースト・プロトコル」で奔放なイメージ映像でアクション・シーンで圧倒した監督が、その手腕をこのファンタジーに持ち込んだから大変。

130分もの間、さっぱり訳のわからない状況でドラマが迷走するので、とてもこのコミック・ファンタジーのレベルに対応できない当方としては、ただただ呆れて眺めているしかない。

いったい誰のために作った作品なのか。もし、この未来のトゥモローランドにも、このような人間達の陰謀と殺戮があるのだとしたら、そのスイッチは早めに処理した方がいいだろう。

最近見た新作のなかで、一番、理解に苦しむコンフューズド・迷作ファンタジーあった。誰か、親切なひとはオセーテー????

 

■高く上がったキャッチャー・フライを、捕手はわざと落としてダブル・プレー ★★☆???

●6月6日より、新宿ピカデリーなどでロードショー



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5月23日(土)11-30 二子玉川<109シネコン・アイマックスー7スクリーン>

M-060『チャッピー』" Chappie " (2015) Columbia Pictures / MRC / Lstar Capital / Kimberg Genre productions.

監督・ニール・ブロムカンプ 主演・ヒュー・ジャックマン <120分> 配給・ソニー・ピクチャーズ・ジャパン

これもまた、試写のスケジュールがダブってしまって、すぐにアイマックスで公開されて見られるというので、ソニー試写室でなく、109ニコタマ・アイマックスでの鑑賞。

やはりSFのCG多用作品は、こうして試写室よりは巨大なスクリーンでゆったりと見た方がいい。しかも、試写の日時から1週間後なのだから、<待てば海路の日和あり・・>という具合。

ニール監督の「第9地区」は、彼の地元の南アフリカ、ヨハネスブルグでの事件だったが、こちらも、あの発想をよりエスカレートさせて、予算も10倍のアップ。

人間には危険な原子力汚染やら、大掛かりなビル破壊工事など、近未来の大都会では、そうした危険作業は軍事ロボットによる処理責務だったが、当然、マシーンにも使用期限がある。

大きな災害処理でダメージを受けた稼働ロボットの<チャッピー>は、廃棄処分の末路だったが、彼の生みの親でもある若い科学者デーヴ・パテルは、再生の手段を研究していた。

というのも、高性能ロボットのチャッピーには、人間の感性に対応できる知性も持っていたのだが、事故処理のダメージで人工頭脳も障害を受けていた。

しかし知能機関の頭脳回路を初期化した結果、チャッピーには人間の感性の幼児的な純粋な感性回路は保存されていたので、デーヴは研究所の片隅で応急再生処理をしていた。

ところが、廃墟工場を拠点にする過激なテロリスト・グループによって、障害ロボットのチャッピーは誘拐されて、危険な戦闘要員として使用されそうになり、デーヴはテロの仲間と接触することになる。

しかし軍事企業の開発リーダーのシガニー・ウィーバーと、元軍人で科学者でもあるヒュー・ジャックマンは、エスカレートしていくロボット代行社会にはアゲインストな作業をしていたのだ。

という次第で、あの傑作「第9地帯」とは比較にならない高額バジェットで制作された作品は、ヒューマンな部分と、テロ集団と軍部の衝突に加えて、そのロボット依存社会に抵抗する男のスクランブル戦争となる。

独特の人工ロボットの巧みなアクションと廃墟ロケは、たしかにニール監督のヴィジュアルとスピード感覚で、多くのディズニー・アニメやマーヴェルの対極にあって、尚も素晴らしい完成度。

恐らくあの「ET」のスピルバーグも、このニールの感覚には羨望の視線で見るだろう。実写のCG処理はもちろん、ロボット演技の繊細なアクションにも、圧倒的な先進性を発揮して呆れてしまう。

マーヴェリックの「アヴェンジャーズ」のような大袈裟なロボットの威圧感はないが、その分、人間の幼児性を皮肉って見せるという、この作品の発想は、かなりシニカルでもあった。

 

■ライナーがセカンドベースに当たって、左中間に転々のツーベース。 ★★★☆☆

●全国ロードショー中 



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5月22日(金)10-40 二子玉川<109シネマズ・N0-5スクリーン>

M-059『ラン・オールナイト』" Run Allnight " (2015) warner brothers pictures / vertigo entertainment

監督・ジャウム・コレット=セラ 主演・リーアム・ニースン <114分> 配給・ワーナー・ブラザース映画

このところ、ジョン・キューザックやキアヌ・リーブス、シルベスターらのハリウッド・エンタメ・メジャー俳優の旧態化で、すっかりトップスターになったリーアムの新作。

どうしても試写のスケジュールに合わなくて見れなかった新作が、おおー、歩いてすぐのニコタマのビッグ・スクリーンに登場するので、初日の初回で見に行った。

ま、とにかく、内幸町のワーナー映画の試写室よりは大きなスクリーンで、より快適なサウンド・アンド・シートの条件で見られるのだから、これは嬉しいし、ラッキーだ。

今回のリーアムは、元エージェントだったが、いまは下請けの殺人業務をして寂しく暮らしている初老のロンリー・ガンマン。珍しくセミ・悪役というか、やくざな役どころ。

不縁だったバカ息子が、マフィアの元締めの若衆を間違えて殺してしまった。そのマフィアが腐れ縁で世話になっている旧友のエド・ハリス。これはかなりヤバい状況。

一応は話し合いは、しゃーないな、と和解したものの、お互いにバカ息子のトラブルなので、下請けのリーアムとしては、落とし前をつけなくてはいけない窮地に立たされる。おいおい、これって任侠映画じゃん。

という訳で、あしたの朝までに、決着をつけるべく奔走するリーアムは、ニューヨークの裏町から、クイーンズの集団アパート、果てはニュージャージーの山奥まで、下請けスナイパーと戦うことになる。

やはり、見どころは、シャープな映像カットと、ドローン撮影まがいの空中夜間移動の、まさに目のまわるアクション・シーンの連続に、こちらもオールナイトで走りまくる感覚に酔わされる。

このところチームを組んで、ヒットを連発している監督のセラとリーアムのコンビは、快調のリズムだが、そこにエド・ハリスとニック・ノルティが絡むとなると、これは一級エンターテイメント。

しかもラストでは高倉健さんの<昭和残侠伝>のように、親分との落とし前をつけることになり、息子の命を守って、何とあああ、リーアムは暁に果てる・・・という、コラテラル状況となる。

まさか、ここで東映やくざ映画の復活ではないが、血潮に染まったリーアムのラストの決戦は、このところのハリウッド・エンタメの中では、久しぶりの<義理と人情>の根性をみせられ、感動。

 

■左中間を抜けたヒットの間に、セカンドからサードに滑り込み、タッチの落球で一瞬セーフ。 ★★★☆☆☆

●新宿ピカデリー他でロードショー中。 



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5月20日(水)13-00 外苑前<GAGA試写室>

M-058『チャイルド44/森に消えた子供たち』" Child 44 " (2015) Summit Entertainment / Scott Free Productions

制作・リドリー・スコット 監督・ダニエル・エスピノーサ 主演・トム・ハーディ <137分> 配給・ギャガ

2009年の「このミステリーがすごい!」の海外編第1位の原作映画化で、わたしとしても、<いま一番見たい映画>第1位の新作。

どうにか鬼門のギャガ試写室の予約がゲットできたので、30分前に行ったら、もういい席はなく、補助椅子での2時間余、これは厳しい状況となった。

こういうケースで試写を見るのはヤバいから、あとでロードショウでで見直そうと迷った瞬間に映画が始まったので、よせばいいのに2時間余の我慢の苦行となったのだ。

それでも面白いのは、さすがあの「デンジャラス・ラン」の鬼才スピノザ監督。重厚で隙のないサスペンスで、こちらの見づらい状況も忘れさせる演出のワザはサスガだ。

あの大戦で、ヒトラーは後継の天才育成の陰謀で、いろいろ異常な人体実験をしていたというが、これはその後のロシアでの事件。1953年というから、まだナチスの残党がいた時代。

その真相は、あまりにも残虐でスターリン政権も脅かすような内容なので、ロシアでは発禁本となったベストセラー小説の、歴史と現地撮影にリアルに拘った映画化だ。

ゲレゴリー・ペックが怪演した「ブラジルから来た少年」は、ヒトラーの遺伝子を受けた少年の捜査だったが、こちらは戦争での虐殺行為が精神的な後遺症を残していたという異常犯罪だ。

当時のロシア、スターリン政権は、この44人にも及ぶ連続少年猟奇殺害事件は、新政権のイメージ戦略のためか、その真相は葬っていたというが、このミステリーでは、その疑問を暴くのだ。

ま、「失われた少年」のテーマは、戦後のミステリーのテーマによくあったが、このロシアでの事件はウィリアム・ハートが好演した「ゴーリキー・パーク」を思い出してしまった。

面白さは、このところ評判の新作「マッドマックス」でも噂のトム・ハーヂィ。謎めいた過去を持つ彼はロシアの国家警察の捜査官として、この謎めいた少年解体の難事件を捜査する。

という「羊たちの沈黙」を思わせるような、重厚な異常犯罪は、さすがスウェーデン出身監督のクールな視線で目が離せなくなるが・・・・、展開はネタバレとなるので、書けない。

いずれにしても「ドラゴン・タトゥの女」を思わせるダークな色調と、トムの徹底したロシア訛りの好演で、久しぶりの本格ミステリー・サスペンスの重い魅力が堪能できる仕掛けはリドリーの力。

できれば、もっと快適な状況で、もう一度見てみたい。

 

■サードベースをかすめたライナーがレフト線に転々のツーベース。 ★★★☆☆

●7月3日より、全国ロードショー 



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5月19日(火)13-00 京橋<テアトル試写室>

M-057『ボヴァリー夫人とパン屋』" Gemma Bovery " (2014) Albertine Productions / Gaumont Cinefrance 1888

監督・アンヌ・フォンテーヌ 主演・ファブリス・ルキーニ <99分> 配給・コムストック・グループ

いかにも、フランス映画らしい、あの古典的な名作「ボヴァリー夫人」を茶化した、ウイットに富んだ、憎めないコじゃれたコメディだ。

ギュスターヴ・フローベールが1856年に書いたといわれる原作小説は、これまでにも4回も映画化された不倫の果ての悲劇の名作。

「チャタレー夫人の恋人」と並んで、フランスの誇る不浄な名作で、恐らくはフランス人で知らないひとはいない話だろうが、この作品は、その名作をヒントにした。

元ネタと同じ、フランス西部のノルマンディの田舎町に住むパン職人、元はパリで出版業をしていたファブリスの家の隣に、ある日、ジェマ・ボヴァリーという美女が引っ越して来たのだ。

当然、中年のオヤジ、ファブリスは「ボヴァリー夫人」の再来だとばかり思い込み、何かと世話をやき接近しては、彼女の周辺を探る・・・のは、ま、彼女も「ボヴァリー夫人」だから。

そしてファブリスは、小説のボヴァリーの再来だと勝手に妄想して、自家製のパンをこ練り、焼きたてのパンをプレゼントする。まさのあのトリュフォーの名作「隣の女」のような展開。

しかし、この映画はコメディのスタンスを守り、「危険なプロット」で好演し、あのジャン・ロシュフォールの後釜ともいえるフランスの中年コメディアンとしては当代筆頭のファブリスがおかしい。

果たして、物語のストーリーは、あのオリジナル名作と同じような展開となり、若い美男との不倫に悩むボヴァリー夫人は、このままだと服毒自殺をしかねない状況となる。

さあ大変。という次第でパン屋のファブリスは、その運命の悲劇を阻止しようと駆け回るのだった。しかし、その努力も虚しく、意外な展開で、ボヴァリー夫人は不慮の死を遂げるのだった。

でも懲りないファブリスは、また隣の家に「アンナ・カレーニナ」という美女が引っ越して来たので、懸命にロシア語の勉強を始める・・・というオチのあるお気軽フレンチ・コメディ。

フォンテーヌ監督は、まさにウディ・アレンの「ミッドナイト・イン・パリ」のような時代錯誤のタイムスリップな切り口で、バゲットの香りのする、おかしくも哀しいコメディにしている。

 

■平凡なセンターフライだが、なぜか野手がバックしすぎてヒット。 ★★★☆

●7月上旬、シネスイッチ銀座などでロードショー 



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5月15日(金)13-00 築地<松竹映画3F試写室>

M-056『愛を積むひと』" The Pearls of The Stone Man " (2015) 松竹映画・WOWOWフィルムズ。アスミックエース

監督・朝原雄三 主演・佐藤浩市 <125分> 配給・松竹映画 

あの高倉健さんの「幸福の黄色いハンカチ」がそうだったように、この夫婦の映画も、エドワード・ムーニーが2002年に書いた舶来小説の映画化。

原題は「石頭の男の真珠の首飾り」という、つまり<無骨な男の真珠>ということで、ストーンマンというのは、家の周囲を石垣で囲む作業をする男というダブル・ミーニング。

だから、不況により東京の中小企業の工場をたたんで、北海道の原野に一軒の小さな家を建てるなんて、かなり無謀でロマンティックすぎる発想が、あちらの作家らしいアイデアなのだ。

ま、多くの現実離れした生活感覚は気にしないで、これはワイオミングの原野の、あの「シェーン」のような家作りの発想なのだ、と、まずは余計な心配はしない方がいい。

東京の病院で精密検査を受けたカミサンの樋口可南子は末期の重病を夫の佐藤浩市に隠しているが、映画の前半であっさりと他界してしまう。

しかしドラマはそこからで、家の要所要所に書き置きしていた遺言の手紙が<泣かせる仕掛け>となって、やっと後半になって、このドラマを盛り上げて行く。

とくに原名タイトルにある<真珠の首飾り>が、この夫婦の愛情表現の鍵になっていて、プレゼントの金がないので、毎年の結婚記念日に1個づつの真珠をプレゼントしていたのだ。

だから、色も大きさもマチマチで、まだ40個にもなっていないが、その素朴でオリジナルなリングが、何と留守のあうだに空き巣に盗まれた。

ひとり娘とは疎遠で、妻の葬式に帰って来ても素っ気ない。というのも、東京で妻帯者の中年男に片思いしている娘を、父親としては不甲斐なく、許せないのだ。

家の周囲に石垣の塀を作るのは妻の希望だったので、閑なダンナは非行少年をヘルパーにして作業していて、その少年が次第に大きくドラマに関わってきてから、映画は引き締まる。

とくに農家の無愛想なオヤジを演じる柄本明が登場してからが、やっとドラマは引き締まって来て、無理な設定も、とくに真珠のイヤリングで、ついホロリとなる。

これが松竹映画伝来の、<お涙頂戴>の新作なのだから、ゴタゴタ現実的なへ理屈など、この際、ごちゃごちゃ言わない方がいい。

 

■平凡なセンターフライが、意外に伸びてフェンス(塀)までのツーベース。 ★★★☆☆☆

●6月20日より、全国松竹系でロードショー

  


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5月15日(金)10-00 築地・松竹3F試写室

M-055『リアル鬼ごっこ』(2015)セディック・ドゥ/アスミック・エース/ユニヴァーサル・エンタテイメント

監督・園 子温 主演・トリンドル玲奈 <85分> 配給・松竹+アスミック・エース

わたしはこれまでも園監督の映画は好きだし、彼の飽くなき映画魂は共感できるが、このところの3作品は、どうもタイプじゃないのが正直な実感だ。

それでも、とにかく面白かった「新宿スワン」から「ラブ&ピース」、そしてこの「リアル鬼ごっこ」が3作共に未公開という、この驚異的な早撮りのタフネスには恐れ入る。

以前に、あの映画評論家の淀川長治さんに、「見てばかりでなく、ご自分で、映画の監督をしたいと思いませんか?」と尋ねたことがあったが、「絶対にダメよ」と即答。

だって、映画の監督って、映画のことを知っているというよりも、100人を超えるスタッフの意思と人生を背負って数ヶ月も運命を左右して制作できる体力と根性なんて、ゼロだもの。

という意味でも、こうしてまだこの年の上半期に3本もの新作待機作を作るという園監督のエネルギーって、一国の首相や大統領のように、自信過剰でも決断する実行力がなくてはならない。

しかも、この3作は、いずれも人気コミック劇画ベストセラーの、恐るべき実写化なのだ。という意味でも「寄生獣」のヒットを継ぐべきコミック・ワールドの実写映画化というのは、おおごとなのだ。

自慢じゃないが、コミック本を触ったこともない昭和初期の旧世代の人間にとっては、昨今、活字原作本の映画化よりもコミック本の映画化が主流になってきたのは、まさに浦島太郎感覚。

ま、それでも映画は面白ければいい。という軽い気持ちで見る事は、一種の自身の老化のための<脳トレ>でもある。というアグレッシブな映画ファン根性は、負けないつもりだ。

が、これには正直、リアル閉口してしまった。昔の大林宣彦監督の少女コミックものは、それなりの感傷とセンチメンタルな夢想のイメージで見ていたが、この鬼ごっこは血染めのマッドネス。

一種のゾンビ映画だと思って見ているのだが、この作品の血しぶきは往年の東映やくざ映画のレベルを超える大量な流血コミックとなっている。そのあまりにもリアルな血しぶきサービスには閉口だ。

所詮は、これも少女コミックの大量流血喜劇なのだ、と思えば、ショーバイとしては理解できるが、これだけ<ドローン撮影>の表現力のある監督には、リアル、マジな映画も撮ってくださいよ、とお願いしたい。

 

■微妙なシュートボールをファールしていたが、フルカウントでデッドボール。 ★★☆☆

●7月11日より、新宿ピカデリーほかで、全国ロードショー

  


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5月14日(木)13-00 築地<松竹本社3F試写室>

M-054『サイの季節』Rhino Season <Fasle Kargadan > (2012) Mijfilm / B K M Films / イラク+トルコ

提供・マーティン・スコセッシ 監督・バフマン・ゴバディ 主演・モニカ・ベルッチ <93分> 配給・コムストック

イランで生まれた監督のバフマンは、内戦を逃れて故郷を離れてテヘランで映像を学び、2009年に「ペルシャ猫を誰も知らない」を撮ったが、国家批判の容疑でイランを追放された。

現在も亡命をしているという背景で、この新作はトルコのイスタンブールで撮影されたが、クルド人であるという過去での、多くの迫害のハンデキャップで複雑な思惑で制作された。

というのも、巨匠スコセッシ監督が多くの国際映画祭の審査委員長を歴任している現状から、亡命中の映画作家の熱意に感銘してバックアップしたという意欲作。

1979年、イランでイスラム革命の政変で地位と私財を奪われた詩人は、反体制的な作風で投獄されて30年もの長い牢獄生活を強いられたが、この背景には陰謀と私的欲望があった。

美しい妻のモニカに横恋慕した、お抱えドライバーの邪な密告により、詩人サへルは獄中死したことになり、10年で出獄した妻への異常で執拗なドライバーの片思いでモニカは追われる。

長い刑期を終えたサへルは刑期中死亡したことになっていたが、妻の行方を追い、その背景を不当に操っていた元ドライバーへの復讐を誓い、その怨念を晴らす為のリベンジが展開する。

という話は、よく西部劇にあったような人間ドラマだが、そこは詩人のイメージをトルコの荒涼とした不毛の原野でのロケーションで描くので、独特の映像美が見られるのが魅力だ。

一面の灰色な原野を追う復讐の男の姿は、実にシンプルでフォトジェニックなイメージなのだが、どうもフラッシュバックの構成と、主人公の二人の男がひげ面で、あまりにも似ているのでややこしい。

荒涼の原野を走る多くのサイのイメージや、復讐にドライブする詩人の車の窓に、一頭の馬がクビを入れて来たり、黒い大きなヒルが囚人たちの背中の血を吸ったり、異様なシーンは強いイメージがある。

長い不当な屈辱による復讐の情念は、詩人の脳裏のなかで増殖されて、それがそのまま監督の作家作業の膿みとして、不気味に映像化されて圧倒するのだ。

恐るべき実話からの映画化。これが<映像こそがメッセージ>なのだ。

死んだ筈の詩人は、こうして妻を探して、運転手の男に30年来の復讐を果たして行くのだが、これも現在の亡命中の監督の癒えぬ怒りのヴィジュアル・メッセージなのだろうか。

 

■ファールで粘ってフルカウントからの痛打はサードの横へ、執念のイレギュラー・ヒット。 ★★★☆☆

●7月11日より、シネマート新宿他でロードショー 



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5月12日(火)13-00 六本木<シネマートB1試写室>

M-053『レフト・ビハインド』" Left Behind " (2014) Stoney Lake Entertainment / The Entertainment One

監督・ヴィク・アームトロング 主演・ニコラス・ケイジ <110分> 配給・クロックワークス

最近どうも不可解なジャンボ旅客機事故が多いが、原因はともかく、インドネシア航空機のインド洋での行方不明などは、まったく理解できないミステリーだ。

この作品も、恐らくそのような人間の英知を超えた、想定外のアクシデントを描いた<エアポート・シリーズ>のようなエアライン・サスペンスだと期待して試写を見た。

ところが、どうもそれはわたしの早とちり。というのか、映画は、たしかにジャンボ・ジェット旅客機のパイロット、ニコラス・ケイジ機長の主演だが、先入感は大きく外れた。

急遽ロンドンへのフライトの任務ができたケイジ機長は、家庭のゴタゴタはあるものの、とにかく満席状態のジャンボ機をJFK空港から離陸させた。

どうやらフライト・アテンダント婦長とは浮気中らしく、久しぶりに学校の夏休みから帰省したという娘との約束もスッポかしてのフライトなのだが、それは些細なトラブル。

雲行きの悪いワイフは、最近とくにキリスト教のバイブルにある、天変地異と人類滅亡の書かれている部分を信じていて、世界各地で起きる大災害なども、その兆候だというのだ。

たしかに今回のネパールからエベレスト山周辺での大地震や、フィリピン諸島でのハリケーン、アメリカ中部の竜巻や、山火事などなど、まさに神のお怒りのような不測の災害ニュースが多い。

つまり、それは神のお怒りであって、人類の貪欲な高慢さへの警鐘なのであって、ひとつの自然現象なのだという。それもホーリー・バイブルを知らないわたしには寝耳に水。

そして大西洋上を飛行中の機内から、突然、数十人の姿が消え、しかも同時に地上でも同様の現象が続発して、多くの人間たちが突然消えてしまい、世界中がパニックになったのだ。

とにかく機長は燃料の少ないジャンボ機を、どこかの空港に不時着させるしかないが、どのエアポートもパニック状態で滑走路も使用できないのだ、さあどうするニコラス・ケイジ機長。

という次第で、こちらの予測とは全く違うストーリー展開は、これって、あああ懐かしい、あの<トワイライト・ゾーン>の<エリア51>への突入なのだった。

 

■レフトフライが、突然、照明に入って消え、気がつけばレフト・ビハインド。 ★★★+☆

●6月27日より、新宿バルト9などでロードショー

 

*前回の「共犯』の★も同様に、★★★☆なのでした。 



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5月7日(木)13-00 京橋<テアトル試写室>

M-052『共犯』" Partners in Crime " (2014) Double Edge Entertainment / 台湾

監督・チャン・ロンジー 主演・ウー・チェンホー <89分> 配給・ザジフィルムズ

非常にシャープな映像とサウンド処理感覚を持ったチャン監督の、台湾の新しいクライム・ムービーで、わが「ソロモンの偽証」の背景とも偶然すぎるほど似ている。

台北市内の路地裏で、血だらけの女子高生の死体が見つかり、たまたま通りかかった3人の男子高校生が警察に届け出るげ、この3人は学校では口を聞いた事もない。

警察は事件性は特になく、冷えきった母子家族に絶望した女子高生の自殺として処理。しかしストーリーはそのあと、この少女の死に惹かれた3人の男子高校生の謎めいた迷走的行動を描いて行く。

死体と3人の少年たち。当然、これはスティーブン・キングの「スタンド・バイ・ミー」のような展開を予測するが、禁じられた山奥の池で、遊泳中にひとりの少年が水死してしまう。

ドラマは警察の捜査とともに少女の死との関係を同時に検証してゆくという、まさに、偶然だろうが、あの宮部みゆきの「ソロモン」の構造に似てくるのが不思議に面白い。

とくに監督の映像処理のシャープな感性が、まるで北欧のミステリーを見る様に冷血で、しかもヴィジュアル・アングルが意表をつくので目が話せない展開となるのだ。

韓国のキム・ギドクやポン・ジュノほどのエンターテイメント性はないが、それにしても緻密なフィルム・カットとサウンド処理は、この監督の映画センスのよさを見せつけて飽きない。

ただ、ミステリーとしては単純な構造なので、これ以上の詳細は<ネタバレ>となるので書けないが、終始コンスタントに見せる映像処理の旨味は、おぬし、なかなかやりおる。

やはり事件はいずれも不透明なのだが、その背景になる教育の場としての学校の実態や、学生たちの無関係さ、そして家族の無関心。・・・この映画の真相は、事件よりも現代社会の歪みなのか。

どうも釈然としない映画の狙いは、殺人ミステリーではなく、あくまで衆目の無関心と、孤独感の重圧なのか。ネット社会の空虚さなのか。その辺の奥深さに重い後味を遺したまま映画は終わってしまう。

 

■シャープな巧打で左中間にヒットだが、好返球でセカンド・タッチ封殺。

●7月25日より、新宿武蔵野館などでロードショー 



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