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細越麟太郎 MOVIE DIARY



●1月30日(水)13−00 六本木<シネマートB1試写室>
M−011『朝食、昼食、そして夕食』18 comidas (2009) スペイン映画
監督/ホルヘ・コイラ 主演/ルイス・トサル <107分>配給/アクション・インク ★★★☆
ポルトガルとの国境に近いスペインの小さな街、サンティアゴ・デ・コンポステラ。
美しい世界遺産の街の、ある1日のスケッチ。
それぞれの家の朝食のシーンで、その食材と一緒に家庭の事情も紹介される。
タイトルは、18の食事、というが、6つのシチュエーションが、微妙に重なりつつ変化する人間達の心も描く。
どこといって主演格の家庭はなく、ストリート・ミュージシャンの歌と共に時間が経過する。
まるでスペインの、ある1日の人情の移り変わりを、カラフルな食材で調理して見せるのだ。
一種の「輪舞」のようなオムニバスだが、それぞれの恋や夫婦愛も微妙な歪みを見せて、その描写が意外にいい。
夫婦の不和。浮気の決別。兄弟のカミングアウト。父親の死。・・・。それでも人間は食事をする。
それぞれのドラマが、スペイン料理の食材と調理のカットをはさみ、展開していく。
まったく関係のないように描かれたエピソードが交錯する。その意外性も、いい味なのだ。
あのショーン・コネリーが出演したオムニバス・ホームドラマ『マイハート、マイラブ』を思い出した。
お料理好きのひとには勉強になるだろうが、意外にいい味の人間ドラマ。
それぞれの食卓の味が違うように、その生活も、見かけと違った味がある。
ちょといい小品に巡り会った気分だ。

■バスター気味のバントが前進守備のサード頭上のヒット。
●4月27日より、新宿K”sシネマなどでロードショウ



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●1月28日(月)13−00 京橋<テアトル試写室>
M−010『キング・オブ・マンハッタン/危険な賭け』Arbitrage (2012)  greenroom films / treehouse pictures
監督/ニコラス・ジャレッキー 主演/リチャード・ギア 配給/プレシディオ <110分> ★★★☆☆
なかなか面白い上質なマンハッタン金融サスペンスだ。
タイトルは「裁定取引」という。ヘッジ・ファンド操作。巨額投資運用の細工が巧妙な資産家がギア。
彼は巧みな先行投資で、自分の会社をマンハッタンでもトップの信託会社にして成功した60歳。
家族団らんの誕生日も、資金ぐりに奔走していたが、ギャラリーのオーナーである若いパリジャンとの浮気も多忙。
深夜のドライブで、恋人と別荘に向かう彼の運転する車が事故ってしまい、彼女は即死して車も大破炎上。

事故った車は、彼女の車。これが不幸中の幸い。
とっさに身元を伏せるために公衆電話で、貸しのある黒人青年にピックアップを依頼して自宅に戻る。

当然、打撲傷と切り傷は、咄嗟に処置して衣服も消却。
映画は、成功者のギアが、どのようにして事故責任を逃れるか。このサスペンスが、意外にいい。

ヤバい、ヤバいシチュエーション。あの「推定無罪」を思い出す。
アラン・J・パクラ、シドニー・ルメットなど都会派サスペンスの巨匠のタッチに迫る映像処理がキレている。
要するに、ひき逃げと同じような犯罪で、ティム・ロスの刑事が、これまたシツコく真相に迫る。
しかし、さすがにアタマのキレる投資家のギアは、捜査の先手をうって、単独の事故死に仕立てるのだ。
ボロが出れば10年は食らい込む事件を、彼は巧妙に逃れるサスペンスは、この最近見た映画では上等のランクだ。
たしかにリチャード・ギアも、最近ではベストの演技。
絶対にラストでは、ボロがでる。という犯罪映画の常識をあざ笑うような決着に、道義的な不具合は感じる。
しかし、このタフな映画は、その正義感も無視する。おお、なかなかのハードボイルドではないか。
妻のスーザン・サランドンが真実を知りつつも、夫を操作する、この強かさにゾッとした。
たしかに、「世界は女で回っている」。

■ショートの頭上をライナーで抜く痛烈なツーベース。
●3月23日より、ヒューマントラストシネマ渋谷などでロードショー



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●1月24日(木)13−00 六本木<FOX映画試写室>
M−009『ヒッチコック』Hitchcock (2012) 20th century fox searchlight picture
監督/サーシャ・ガヴァシ 主演/アンソニー・ホプキンス <99分> 配給/20世紀フォックス映画 ★★★☆☆
サスペンス映画の巨匠アルフレッド・ヒッチコックが、あの『サイコ』を撮ることになった年。
当時1960年は、テレビの「ヒッチコック劇場」の人気もあり、監督は多忙だった。
パラマウント映画との契約で、新作の企画を練っていた時、彼は実際の猟奇殺人犯のエド・ゲインをテーマにしようと企画。
しかし低俗なテーマになりがちな殺人鬼映画に、メジャーなパラマウント社は製作を拒否。
結局、ヒッチコックは、ビバリーヒルズの屋敷とプールを抵当にして、ロバート・ブロックの原作映画化を強行。
この作品は、その苦労の製作プロセスを忠実に再現ドラマにしている。
映画史的には、ホラー映画ナンバーワンの傑作「サイコ」も、当時は非常に試練が多かった。
映画の日本公開プロモーションで来日したヒッチコック夫妻と、帝国ホテルのパーティに同席したわたしは、感慨ひとしお。
それだけのプレッシャーがあったとは思えぬほど、あの夜の監督は陽気にはしゃいでいた。
ともかく、この映画は「サイコ」完成までの、まさにメイキング・フィルムのように、当時のスタジオの混乱を再現。
まだCGの特撮などのない時代。しかもモノクローム撮影で、血の色は映倫の規定でOKが出なかった。
名優のアンソニー・ホプキンスが、さすがに巧妙に化けているが、キングズ・イングリッシュの訛りは、さすがに研究している。
そしていつも影法師のように彼の後ろにいたアルマ・レヴィルを、ヘレン・ミレンが、またもアカデミー・ノミネートのフォロー。
ぜひ、若い、ヒッチコックを知らない映画ファンにも、「サイコ」をレンタルで見てから、この背景を見て欲しい。
サスペンスの巨匠も、実は非常に繊細なコンプレックス肥大症だったことが、よく判って面白い。
明らかに、美しい夫婦愛の映画でもある。

■スライス気味のライナーがサードの頭上を越えて、ラインから転々とブルペンに飛び、ツーベース。
●4月5日より、TOHOシネマズ シャンテなどでロードショー



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●1月22日(火)15−00 神宮前<和田誠事務所>
★『いつか聴いた歌/スタンダード・ラヴ・ソングス』I've Heard That Song Before (2013)
企画、監修、選曲、解説/和田誠 Sony Music Japan International  <2月13日発売予定>
これは新作試写ではなく、ジャズのCDアルバム新発売のインタヴュー企画。
ジャズ雑誌『Jazz Japan』誌上で、シリーズ新発売を記念して、企画制作の当事者である和田誠さんにお会いした。
大学の先輩であるという以上に、同じジャズのお友達として、交友は半世紀以上になるが、久しぶりの対面。
しかも誌上インタヴューというから、いつものように、ただの昔話、という訳にはいかない。
幸い、ソニー・ミュージック社が、コロムビアやRCAビクターなどの音源を維持していて、音質もリマスター。
プラス、ユニヴァーサル・ミュージック、EMIミュージックなどの貴重な音源も獲得。
そこで、天下のポピュラー・ヴォーカルの蘊蓄では日本一の和田さんが、選曲の意図や狙いを語ってくれた。
フランク・シナトラを筆頭にして、ドリス・デイ、トニー・ベネット、ペギー・リー、ディーン・マーティン、
ダイナ・ショア、チェット・ベイカー、ジュリー・ロンドン、ナット・キング・コール、ローズマリー・クルーニーなどなど。
50年代から、現在までのスタンダード曲を、2枚のCDに、全48曲を贅沢に網羅した。
テーマは1枚が「ラヴ・イズ」という恋の曲。もう一枚は「トーチ」という括りで失恋や片思いが唄われる。
以後、土地や歳月や街や天気などなどを、様々なポイントで選んだCD発売が企画されている。
まさに、ポピュラー・ヴォーカル・ファンにとっては、至福のプレゼントとなる。
愉しい昔話から、その魅力の本質と広さを語ったが、内容は後日発売の「Jazz Japan」誌上でご紹介します。
ご期待ください。



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●1月21日(月)13−00 神谷町<ソニー・ピクチャーズ試写室>
M−008『ジャンゴ/繋がれざる者』Django Unchained (2012) columbia pictures / the weinstein company
監督/クエンティン・タランティーノ 主演/ジェイミー・フォックス 配給/ソニー・ピクチャーズ <165分> ★★★☆☆☆
今年のアカデミー賞の作品賞にノミネートされたのはご愛嬌の西部劇。いや、マカロニ・ウェスターンだ。
いかにもB級映画マニアの監督が、お遊びで作ったような、60年代のマカロニ趣味を大盛りした作品。
タイトルもあの時代の大きな血文字なら、音楽もモリコーネで、本物のジャンゴ、あのフランコ・ネロまでが登場する。
だから、非常に懐古的な趣味で大袈裟に作ったセンスの悪さを、好意的に理解しないと、まったく「おバカな」冗談活劇だ。
しかし、映画を長年、沢山見て来た趣味人には、たまらなくおかしな愉しい作品。
南北戦争が始まる直前の1858年、テキサス。
黒人は奴隷として売買されていた時代。奴隷のジェイミーは行商の歯医者に救われる。
ドイツ人の歯科医クリストフ・ヴァルツは、まったく偏見がないので、ジェイミーが知っている悪人の身元を探すために彼を助手にする。
ふたりはバウンティ・ハンターの方が金になるので、「お尋ね者」を殺しまくる賞金稼ぎとなる。それが前半。
ジェイミーには実は妻がいて、彼女はレオナルド・ディカプリオの悪徳大地主の女中になっていた。
映画の後半は、その拉致されている妻の血しぶきの飛び交う、壮絶な奪還ドラマとなる。
このシーンのドラマティックな食事の論争と、意外な展開は見もので、かなりテンションが上がる。
その決着で、映画が終わると思ったら、それからまた奴隷ジェイミーの苦戦が続く。
これが長くて、映画は二本分の大サービス。
まさに、マカロニ2杯分の長尺は、たしかに面白いが、正直、食傷気味だった。
気持ちは判るけど、クエンティン、サービス過剰だよ。

■大きなホームラン級の当たりが高く上がりすぎて、フェンス上部に当たりスリーベース。
●3月1日より、全国ロードショー



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●1月18日(金)13−00 築地<松竹本社3F試写室>
M−007『愛、アムール』Amour (2012) les film de Losange / x films creative pool 仏
監督/ミヒャエル・ハネケ 主演/ジャン=ルイ・トランティニアン 配給。ロングライド ★★★★☆
パリに住む音楽教師の老夫妻は、ある朝、食事中に妻エマニュエル・リヴァの意識が寸断したことに驚く。
医者に診てもらい脳障害が見つかったので、手術を受けて退院した。
しかし車椅子から立てない症状が悪化する。
娘たちや友人も、老人ホームでの介護を薦めるが、夫のジャン=ルイは自宅介護に徹する。
アパートは比較的に裕福に見えるが、車いすで動き回るには不自由だ。
そして映画は、この堕ちて行く老夫婦の日常を、ドキュメンタリーなほど緻密に見せるのだ。
「ああ、もういい加減にして、入院させたら・・・」と娘のいうように、我々も苦悶する。
しかし、ジャン=ルイは、かたくなに介護を続けるのだ。
中庭からハトが部屋に2度も飛び込んでくる。これが老夫婦の意識の化身なのだろう。
そして、夫の意識も、すこしずつ夢うつつになっていく。このスロウダウンが恐ろしい。
これが老人夫婦の実態だし、愛情の姿も壮絶に落下していく。
人間の終焉を見つめた残酷なような視線だが、その向こうに大きな愛情が見える。
ラストで、コートを着た夫婦が外出していくエンディングに、心から讃辞を惜しまない。
一切の背景音楽を廃して、現実音だけで描く監督の人間凝視は、これこそが「アムール」だと言うのだ。
アカデミー作品賞ほか、多くのノミネートを果たしているミヒャエル・ハネケ渾身の秀作。

■渋い当たりだが、意外に伸びてそのままライトスタンド入り。
●3月9日より、Bunkamuraル・シネマほかでロードショー



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●1月15日(火)13−00 六本木<シネマートB1試写室>
M−006『ある海辺の詩人』Shun  Li and the Poet (2011) Jolefilm, S.r.l. / ARTE France Cinema. 伊/仏
監督/アンドレア・セグレ 主演/ラデ・シェルベッジア <98分> 配給/アルシネテラン ★★★☆
ヴェニスの広い潟(ラグーナ)の、一番南の端にある古い漁港町キオッジアが舞台。
20年ほど前に行ったことがあるので、とても懐かしい郷愁があった。
シテ島やリド島のような観光地ではなくて、実に寂れた港町で、老化した独特の風情があった。
そこにあるオステリア(イタリアに多い居酒屋、軽食デリ・カフェ)に出稼ぎで勤めることになった中国女性チャオ・タオ。
故郷に8歳の子供を残して来た彼女は、ローマの中国人工場から派遣されてきた。
老年の漁師たちが、午後になるとたむろする、海辺の店が舞台になる。
ユーゴスラビアからここに住みついた詩人を名乗るラデは、潟の浅瀬に釣り家を持っていて、ある日、チャオをそこに招待した。
お互いに故郷を離れた孤独な異邦人。
その漂白な日々を、言葉少なに語り合う。あの「旅情」の舞台の、すぐにお隣だが、かなり地味な情愛。
しかし、そのピュアな関係でも、その古風な土地柄と中国人への視線は冷たい。
恋というには、あまりにも素朴な語り合いは、このキオッジアの見捨てられたような風土でも無視される。
ドキュメンタリー出身だという監督は、まるで感情を押し殺したようにクールな視線で、ふたりをスケッチする。
カナダと沖縄の「カラカラ」ほど、人間を語らないが、いかにもあの地の果てのような土地柄の映像が哀しい。
壮年のほのかな心の移ろいを静観した一枚の水彩画のようだ。

■ボテボテのゴロの内野安打。
●3月。シネスイッチ銀座でロードショー



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●1月11日(金)13−00 半蔵門<東宝東和試写室>
M−005『野蛮なやつら』Savages )2012) universal pictures / relativity media
監督/オリバー・ストーン 主演/テイラー・キッチュ <129分> 東宝東和配給 ★★★
オスカー監督のオフ・ビートなお遊びアウトレイジス・バイオレンス。
政治色のマジな映画に飽きたのか、また「Uターン」や「ナチュラルボーン・キラー」のようなサベージものだ。
しかしドン・ウィンズローの原作映画化はいいが、彼をシナリオ・ライターにしたせいか、迷走が目立った。
ロスの郊外で、麻薬の栽培と組織販売に成功した若いテイラーと親友のアーロン・テイラーは、絆が強い。
ただの友人ではなく、豪邸に住み、恋人も共有しているのだ。
ま、「明日に向かって撃て」のインスパイアーなのか、「冒険者たち」へのオマージュなのか。
この恋の三角関係が、ついメキシコの麻薬カルテルとブツの交換をした縺れから、恋人が誘拐拉致される。
あとは悪者同士の騙し合いの国境を越えた騙し合いの死闘となる、「ノー・カントリー」のようないつものパターン。
ハゲになったジョン・トラボルタや、べニチオ・デル・トロ、サルマ・ハエックなどの名優達がワキで勝手にキレまくる。
その演り放題のペースに圧倒されて、肝心の主役3人が若すぎて存在感がまるでない。
しかも悪者同士の荒野の大戦争は、奔放なワイルドバンチのような西部劇風になり収拾がつかない。
壮絶な殺し合いで、全員死滅のエンディングは予想通りだったが、実は別のハッピーなエンディングも用意されている。
これは、原作者のサービスらしいが、ああああ、オリバーも老いたり。
もうタランティーノのように毒舌は活きない。
デザートを2種類用意されても、メインディッシュが不味ければ、印象に変わりはないのです。

■強打したフライは高く上がりすぎて、ライト守備位置。
●3月8日より、東宝シネマ みゆき座などでロードショー



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●1月11日(金)10−00 半蔵門<東宝東和試写室>
M−004『テッド』TED (2012) universal picture media rights capital / fuzzy door pro.
監督/テッド(声)/セス・マクファーレン 主演/マーク・ウォールバーグ <107分> ★★★☆☆☆
どうせ、子供のための家族アニメ映画だろうと思って試写は見ないことにしていた。
ところが、試写友たちが、皆が絶賛しているではないか。
そこで最終日の午前10時。どうせガラガラだろうと出かけてビックリ。試写室は満席。
ああ、何という認識不足。これだから映画は見ないとワカラナイ。失礼しました。
ひとりぼっちの少年が、クリスマスのプレゼントにもらったテディベアが、しゃべりだしたのだ。
ははあ、またしても「ハーヴェイ」の再来か。と眺めていたら、展開は予想外。
少年は35歳になっても、ペットのテッドとは親友で、恋人もできない。
そこでテッドは、自分で身を引いて、マークを結婚させようとするのだ。
テッドは「ジョニー・カースン・ショー」にも出る人気クマなのだ、非常に人間関係にも暖かい。
映画は監督がテッドの早口も演じていて、これが鋭くて笑わせる。
とにかく、ことしのアカデミー授賞式の司会もするというから、とんでもない才人の登場。
歯切れはいいし、アクションも007並み。マークと本気で殴り合うシーンは「リアル・スティール」も負けそうだ。
全体に70年代のネタが多く「スターウォーズ」や「サタデイナイト・フィーバー」もパクる始末。
果てはボストンのフェンウェイ・パークで、ダーティ・ハリー気分のアクションも演じる。
実写映画のなかで、これだけ縫いぐるみが同化して活躍すろ。これがいまのハリウッドの夢なのだ。
ああ、ジェームズ・スチュワートにも見せたかった傑作だ。

■軽く打った凡フライが、意外やレフトのポールに当たってしまった。



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●1月10日(木)12−30 汐留<FSホール>試写
M−003『リンカーン』Lincoln (2012) 20th century fox / dreamworks . amblin entertainment
監督/スティーブン・スピルバーグ 主演/ダニエル・デイ=ルイス <150分> サンダンス・カンパニー ★★★★
1865年、第16代アメリカ大統領リンカーンは、長引く南北戦争を集結させるべく黒人奴隷解放法案を議会に提出。
しかし南部の有識者による反対で、なかなか賛同は得られない。
もともと戦争は、奴隷制度の撤廃と、黒人の人権承認の是非でアメリカ南北が対立していた。
これまでのエブラハム・リンカーン映画というのは、彼の劇的な暗殺をドラマの焦点にしていた。
ロバート・レッドフォード監督の近作「声をかくす人」なども、その陰謀を描いた。
しかしこの作品の原作は、あくまで議会政治の中で民主主義を貫こうとした不屈の大統領の苦悩を描く。
でも「スミス氏都へ行く」ほどの楽天性はない。
従って、かなりダークな議論ドラマになっていて、政治好きのペイトリアンには受けるだろう。
たしかに悲惨なゲティスバーグの南北の戦闘シーンは壮絶で、スピルバーグ映画の本領は見せる。
それは勝利へのアクション・シーンではなく、残酷な殺し合いの実態だ。
アカデミー賞のノミネートも多数予想されるが、これは本質的に歴史の残酷な再現ドラマ。
だから娯楽映画でも戦争映画でもなく、不運な決済を迫られた大統領の人間を見つめる人間ドラマなのだ。
ダニエルは、またしても、オスカー当確の名演で、巨人の孤独感が漂い、壮絶だ。
悪妻サリー・フィールズも、頑固な議員トミー・リー・ジョーンズも、ここぞと白熱する。
保守的なアカデミーのメンバーは、オスカーに投票するだろうが、これはいかにも硬派な歴史映画。
ラストの暗殺シーンは、まったく蛇足で、減点材料になったのが惜しまれる。

■左中間の大飛球だが、高く上がりすぎて、フェンスに当たる長打。
●4月19日より、有楽町日劇などでロードショー



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