細越麟太郎 MOVIE DIARY

最新の映画情報や批評を掲載します。

●「プロデューサーズ」は本場ブロードウェイの賑わい。

2006年01月31日 | Weblog
●1月31日(火)13-30 銀座<ヤマハ・ホール試写>
M-013 「プロデューサーズ」The Produsers (2005) Sony & Universal 米
監督・スーザン・ストローマン 主演・ネイサン・レイン ★★★★☆
辛い人生のたった2時間でも、ミュージカルの楽しさで日頃の憂さが忘れられれば・・・。
久しぶりに50年代ミュージカルの楽しさを満喫させる本場ブロードウェイ・ミュージカルの賑わいが楽しい。
とにかく、切符が手に入らない人気ミュージカルの映画化なので、期待と不安があったのだが、これはさすがにメル・ブルックスの陣頭指揮の成果が証明された本格的な舞台の再現。
あくまでブロードウェイのステージでのイメージを、あの街の周辺で映像化した姿勢がいい。
ブロードウェイが持っている呼吸と、その鼓動の高まりがストレートに見られ、ラストのエンディング・ロールをカーテン・コールに見立てた演出。そしてメル・ブルックスが締めのワンカット出演したのが、お見事だった。
ネイサン・レインとマシュー・ブロードリックの評判もこれで証明されたし、伝書鳩のリアクションも笑えた。
この楽しさこそ、ブロードウェイの愉しさだ。

●1月の自宅名画座ベスト・5

2006年01月31日 | Weblog
●1月に自宅で見たDVD,VHS,LDなどのベスト・5を紹介します。

1・「拳銃の罠」1959 監督・ノーマン・パナマ 主演・リチャード・ウィドマーク/VHS ★★★★☆
2・「歩道の終わる所」1950 監督・オットー・プレミンジャー 主演・ダナ・アンドリュース/VHS ★★★☆☆☆
3・「拳銃王」1950 監督・ヘンリー・キング 主演・グレゴリー・ペック /VHS ★★★☆☆☆
4・「ピアノ・ブルース」2003 監督・クリント・イーストウッド 主演・レイ・チャールズ/DVD ★★★☆☆☆
5・「リオ・グランデの砦」1950 監督・ジョン・フォード 主演・ジョン・ウェイン /LD ★★★☆☆
●その他の印象作
「情熱の狂想曲」
「別働隊」
「廃墟の群盗」
「世紀の女王」
「犯罪都市」などのクラシックばかり・・・。

●「かもめ食堂」のおにぎりの味。

2006年01月31日 | Weblog
●1月30日(月)13-00 京橋<映画美学校第1試写室>
M-012 「かもめ食堂」Ruokala Lokki (2005) 日
監督・荻上直子 主演・小林聡美 ★★★☆☆
フィンランドのヘルシンキ市内に「おにぎり」を看板にした食堂を出したひとりの女性の話。
群ようこさんのベストセラー小説の映画化。
すべて現地ロケで、食堂もまったくモダーンな北欧風。その店内を舞台に、旅の途中の訳あり女性がまぎれ込んで、ごくごく普通の三人女性の日常的なドラマがスローに展開する。
どこか変な三人の会話が不思議なドラマを支えていて面白い。
そこにひとりの現地のオバサンと、日本びいきの青年が加わって、「女はみんな生きている」や「OUT」とも違う犯罪無関係コメディとなる。しかし、のどかなフィンランドの空気のせいか終始淡々としている。
ひとつの女性ファンタジーなのだろう。とにかくドロドロした人間関係を避けたメルヘン映画である。
そのスロー・ムードに浸っているのは楽しいが、あまりにも現実味がないのも淡白だ。
みそ汁のつかないおにぎりは、ちょいと味気ない。

●「リバティーン」のデップはデッドマンの本領発揮。

2006年01月27日 | Weblog
●1月27日(金)13-00 京橋<メディアボックス試写室>
M-011 「リバティーン」The Libertine (2005) Stanley 英国
監督・ローレンス・ダンモア 主演・ジョニー・デップ ★★★☆☆☆
1680年。ロンドン郊外。ジョニー・デップは国王とも親交のある放蕩伯爵だ。
国内の政治も外交も演劇の話題が優先していた時代。あの「恋におちたシェークスピア」は華麗な上流社会を描いたが、こちらは同じ世界でも、かなりリアルで低俗な乱世をドロドロとした画調でシャープに見せる。
まさにジョニー・デップの真骨頂で、その形相と演技のトーンは飽きさせない。圧倒的に充実した時間だ。
あの「デッドマン」のように、死を見据えた迫真の演技は圧倒的だが、多分、アカデミーのメンバーは引いてしまうだろう。
「パイレーツ・オブ・カリビアン」「ネバーランド」「チャーリーとチョコレート工場」の彼は自分でないキャラを楽しんで演じていたから、オスカーにノミネートされた。本当のデップは手がつけられない。
このロチェスター伯爵は、まさに久々にジョニー・デップそのものの狂気を叩きつける。
全編ダークなトーンも、演技も照明もステージの一体感が充満して見事だが、映画的ではない。
そこで評価が分かれてしまうだろう。面白かった。しかしへヴィーでもある。

●「The Myth 神話」の中国興行神話。

2006年01月25日 | Weblog
●1月25日(水)13-00 東銀座<U.I.P.試写室>
M-010 「The Myth 神話」2005 中国
監督・スタンリー・トン 主演・ジャッキー・チェン ★★☆
中国歴代映画興行No.1。
本当かな。という興味で見に行ったのだが、どうも信じられない。
中国武侠アクション映画は、このところ多すぎで食傷気味。しかし、この作品は現代の香港から始まる。それがいい、と思ったのだが、結局はジャッキー・チェン映画。
何度も同じ女性の夢を見るのは、過去に疑似体験していたせいだろう。インディ・ジョーンズのように考古学者のジャッキーは夢の女性に会うために2千年過去の始皇帝の時代にタイムスリップする。
冒険また冒険。信じられない戦闘が続いて、ジャッキーは夢の女性と会うのだが、あまりにも現代と過去を行ったり来たりするために、アクション・シーンのリアリティが無くなってしまう。
結局はゲーム・パソコンの世界に終始して、とても感情移入できなかった。
これが中国の大人気映画というのだから、困ってしまう。

●「美しき野獣」は汚れた復讐鬼か。

2006年01月23日 | Weblog
1月23日(月)12-30 渋谷<東芝試写室>
●M-009 「美しき野獣」Running Wild (2006) 韓国showbox
監督・キム・ソンス 主演・クォン・サンウ ★★★☆
法の力で逮捕できない奴は自分がヤルしかない。
一応、刑事と検事が同じ暗黒世界の大物を追いかけるアクションものだが、タイトルのような美しさはない。
やたらキレまくる野獣派デカが、ボルテージいっぱいに暴力沙汰を発揮する。
これだけ体力があるのならサッカー選手になった方がいい。
演出も「仁義なき戦い」を勉強したのか、やたらエキサイティングで疲れてしまう。
せっかく「インファナル・アフェア」のような好例があるのだから、もっと知的な展開が見たかった。
原題のように「暴走」はほどほどにして欲しい。お疲れさまでした。

●「うつせみ」の不思議なラブ・ファンタジー。

2006年01月20日 | Weblog
●1月20日(金)13-00 京橋<メディア・ボックス試写室>
M-008 「うつせみ」空蝉Bin-Jip (2004) 韓国
監督・キム・ギドク 主演・イ・スンヨン ★★★★
不思議なラブ・ストーリーだ。
タイトルの意味からすると、口をきかない青年が蝉の抜け殻なのか、現実の人生が抜け殻なのか。
例によってギドク監督は、見る側の感性にテーマの謎を投げかける。
面白いストーリー設定だから、ミステリアスな展開は飽きさせないが、ここまで恋を運命的に描くのなら賛否は二分する。
前作の「サマリア」は大好きな作品なので、好意的に見たのだが謎は多い。
やっぱりこの青年は天使なのか、悪魔なのか。
洗濯機があるのに、なぜ洗濯物をわざわざ手洗いするのか。他人の家に侵入して何も盗まない彼は、物に興味のない蝉なのか。
とにかくタイトルの意味を理解するには、映画よりも原作を読んでみたい気がしてしまうほど、謎の多い作品。
無視するには、あまりにも映像やリズムが素晴らしいのだ。
3年も地下にいて、さなぎを脱いで生まれた蝉は一日しか生きていない。木を転々と飛び移って鳴いている蝉は、いったい何のために生まれてきたのだろう。それが人間なのだよ、と、ギドクは嘲笑しているようだ。

●「春が来れば」また人生の再スタートだ。

2006年01月19日 | Weblog
●1月19日(木)13-00 新富町<ソニー・ピクチャーズ試写室>
M-007 「春が来れば」Springtime (2004) 韓国
監督・リュ・ジャンハ 主演・チェ・ミンシク ★★★☆☆
中年になりつつある落ちこぼれの音楽教師。何とか親のもとから自立すべく、ソウルを離れてトゲという炭坑の町の高校に行き、吹奏楽団の教授になる。
最近、よくテレビでも紹介される吹奏楽のコンテストに向けて、傷心のダメ先生が挑むことになる。
またしても熱血先生のカムバック映画かと思って見たら、そんなことはなくて、どうしょうもない自分の人生を自分なりに消化していくプロセスが無理なく描かれていて、とても好感が持てる。
雨降りの炭坑で、濡れながら「威風堂々」を演奏するシーンは熱くなった。
結果はどうあれ、また春が来る。
春はどうしてまた来るのか。
それは人間に、またチャンスを与えるからだ、と映画はいう。
いかにも韓国映画の甘さはあるが、これはこれで立派な作品。素直な感性が問われる上質な作品だ。

●「アサルト13要塞警察」は新鋭・西部劇だ。

2006年01月19日 | Weblog
●1月18日(水)13-00 紀尾井町<角川ヘラルド試写室>
M-006 「アサルト13要塞警察」Assault on Precinct 13 (2005)Rogue/米
監督・ジャン=フランソワ・リシェ 主演・イーサン・ホーク ★★★☆☆☆
かつてジョン・カーペンター監督がジョン・ウェインの「リオ・ブラボー」をベースにして映画化した「要塞警察」のリメイクだが、これがなかなか面白い。
現在のデトロイト。大雪の大晦日。
大物ギャングのローレンス・フィッシュバーンが逮捕されたが、大雪のために、一夜だけ辺鄙な13分署に収監された。
年の瀬の夜、夜勤のイーサン・ホークたちはシケたハッピー・ニュー・イヤーを祝っていた。
ところが、そのギャングと癒着関係のあった警察幹部が、証言発覚を危惧して、強力な武力で分署を壊滅しようとする。
「リオ・ブラボー」の4倍に人間と100倍の武力。
「トレーニング・デイ」でアカデミー賞にノミネートされたイーサン・ホーク警官がキレた。
エルモア・レナード原作「決断の3時10分」や、リチャード・ウィドマークの名作「拳銃の罠」のように、悪漢を保護するのは大ごとである。
上等なシナリオを、フランスの新人監督ジャン=フランソワ・リシェは、たった一夜だけの暗黒の攻防を、洗練されたカメラ移動で飽きさせない。最近出色のサスペンス。
ラストには男のロマンを残したりして、これは西部劇魂が重厚な上質シングル・モルトの風味だ。
ぜひ「パート・2」に期待したい。

●「ヒストリー・オブ・バイオレンス」はノワールの匂い。

2006年01月17日 | Weblog
●1月17日(火)13-00 東銀座<シネマート試写室>
M-005 「ヒストリー・オブ・バイオレンス」A History of Violence (newline) カナダ
監督・デビッド・クローネンバーグ 主演・ヴィゴ・モーテンセン ★★★★
いつもシュールでアブノーマルな感性を見せるクローネンバーグの新作は、あの「過去を逃れて」のノワール愁を思わせる周到なホームドラマだった。
「ロード・オブ・パーディション」のように、暴力が家族生活に連鎖する恐怖のパターンを、実にクールに図解して見せて、どこかキューブリックやロバート・アルドリッチの突発型バイオレンスのサスペンスを見せる。
拳銃とコーヒー。
アメリカの生活に日常的に見られる背中合わせの暴力の歴史。
まるで西部劇のような展開で、暴力の連鎖を正当化しようとする作意が、実に恐ろしい。