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細越麟太郎 MOVIE DIARY



10月24日(金)12-30 六本木<FOX映画試写室>

M-120『ゴーン・ガール』"Gone Girl" (2014) 20th century fox / regency enterprises

監督・デヴィッド・フィンチャー 主演・ベン・アフレック <149分> 配給・20世紀フォックス映画 ★★★☆☆☆

これまた今度のアカデミー賞にはかなりの部門でのノミネートが予測される新作だが、ストーリーの成り行きは全く予測できない2時間半。

基本的には、わたしの精神的なテンションの持続は、サッカーの試合のように90分くらいだ。だから2時間を越える映画は疲れるので遠慮したい。

が、この映画は「フューリー」と同様に、遥かに2時間を越えるラニング・タイムなのに、まったく退屈しないし、エンド・クレジットも気にならない。

もちろん長いからオスカーを狙える豊富な内容を持続できるのだが、それはスタッフの技量の問題で、そこがアカデミーでは論議されて、評価されるが、これはその対象に値する。

たしかにデヴィッド・フィンチャー監督の力量は堅実で、わたしの好みでもあり、しかもサスペンス映画となるとワクワク、とにかく最優先で試写室に向かうのだ。

さて、これはタイトルのように、女性失踪の映画。あのサンドラ・ブロック主演の「失踪」や、最近では「マーサ・メイ・・・」が非常に洗練されていて印象的だった。

3年前に、必殺のオスカー候補だった「ソーシャル・ネットワーク」が受賞を失したあと、フィンチャーは、彼本来の「セブン」のようなサスペンスをテーマに選んだ。・・・と思った。

ところが、この作品は複雑怪奇。その結婚5年目の記念日なのに、べン・アフレック夫妻の奥様が消えた。子供はいないが、リッチな家は荒らされていて、明らかに誘拐事件。

そこでミズーリ州の田舎町では大騒ぎ、ベンがテレビで妻の失踪による捜索願いの生放送で実態を訴える。もちろん地元警察は必死で捜索するが見つからない。それまで映画の前半は事件ものだ。

しかし自宅から、妻のロザムンド・パイクが残したらしい、捜索のヒントになる手紙が発見されてからは、どうやらこの事件、知能的な推理ゲームのような異様な展開となっていく。

だから、これ以上の後半は<ネタバレ>になるので書けないが、ドラマは「氷の微笑」や「危険な情事」のような、とても予測のできない猟奇的な心理ゲームのようになっていくのだ。

実に冴えたカメラによって、消えた妻はドラマの後半で驚くべき逆転劇を展開していく、さすがフィンチャーの映画術は、ここでも多くのアカデミー賞を狙うのだ。

 

■鋭いライナーがライトのフェンス上段に当たり、ファールグラウンドに転々。

●12月12日より、TOHOシネマズ日劇ほかでロードショー 



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10月21日(火)13-00 飯田橋<角川映画試写室>

M-119『フューリー』" FURY " (2014) columbia/ sony pictures / QED international / crave films

監督・デヴィッド・エアー 主演・ブラッド・ピット <135分> 配給・KADOKAWA / ブラッド・カンパニー ★★★★

さて、この季節になると今年のアカデミー賞のノミネート予想の噂される新作が登場してくる。この新作戦闘映画もその前評判の高い作品だ。

第二次世界大戦の末期。1945年4月のヨーロッパ戦線、死にものぐるいで逃走中のドイツ軍を追う連合軍の戦車が、長い戦渦によって孤立。傷だらけのポンコツ戦車だけがこの作品の舞台だ。

タイトルの<フューリー>とは、この古びたシャーマン戦車の砲台に記された名前だが、(激しい怒り)という意味で、むかしカーク・ダグラスの恐怖映画が同名であった。

敗走中のドイツ軍は、それでも巨大な戦力を維持していて、最期の抵抗を死にものぐるいで試みるので、このオンボロ戦車も孤軍奮闘。たった5人の仲間の指揮をとるのはタフなブラッド軍曹だ。

過去にも「バルジ大作戦」や「アンツィオ大作戦」「サハラ戦車隊」のように、戦場での戦車戦を描いた作品は多かったが、これだけ武力を消費しつくした苦労話は見た事がない。

監督は、わたしが昨年の個人的ベストワンに決め込んでいた「エンド・オブ・ウォッチ」のデヴィッド・エア!!!。やはり作品の総指揮プロデューサーでもあるブラピの指名だけに、凄まじい力量だ。

とくに超狭い戦車の中での兵士たちの閉塞感と、戦闘シーンの広大な引きシーンを、見事なコントラストで魅せる激戦の迫力は、「プライベイト・ライアン」のスピルバーグも撃破するド迫力。

厳しいリーダーシップを発揮するブラッド・ピットも、これまでにないオヤジヅラで熱演して、ここまでキレまくると、あのジョン・ウェインの存在感を見せつつあり、ラストは圧巻だった。

中盤の荒廃しきった田舎町の廃家でのラブシーンも、若い新参の部下を演じるローガン・ラーマンに花を譲り、もっぱら鬼軍曹ザック張りの強面で男っぽさを強調。アンジーも自慢の演技だろう。

驚くべきは、重戦車内での爆弾音のリアリティであって、過去の戦車映画では体感できなかった地響きのするような音の迫真力は、アカデミー録音効果賞は決定的だろう。これは怖い。

戦争娯楽映画の定番としてつきものにあるようなヒロイズムは当然なく、ここには勝利も快感もなく、ただただ戦争という地獄に遭遇した男たちの生き様と死に様を描いて行く。

ま、アカデミー賞のノミネートは多くの部門で確実だろうし、ブラッド・ピットの2年連続受賞を阻止する作品も、これから年末にかけて挑戦してくる気配が楽しみだ。

 

■豪快なライナーで、レフトのポールをへし折るホームラン弾。

●11月28日より、全国拡大ロードショー 



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10月20日(月)13-00 半蔵門<東宝東和試写室>

M-118『チェイス!』" Dhoom 3  the Movie " (2013) Yash Raj Films Pvt./ YRF.

監督・ヴィジャイ・クリシュナ・アーチャールヤ 主演・アーミル・カーン <151分> 配給・日活・東和映画 ★★★☆

だいたいインド映画は長いので遠慮がちだが、これはシカゴでのオールロケによるアクション・サスペンスというので、2時間半のおつきあい。

しかも本国では歴代ナンバーワンの大ヒット作品だという。というのも、原名タイトルのように、これはシリーズの第3作という。つまり人気シリーズなのだ。

シカゴを拠点にして興行をはるインド・サーカス団も、1990年には資金ぐりが苦しくて、ウェスターン銀行からの借金が命とりとなって、裏組織によって団長が殺された。

それから現代となり、当時は少年だった団長の息子アーミルも成人して、このサーカスを立て直す人気者になっていたが、裏では銀行の下請け組織との間で抗争が続き、彼は自身の裏技で対抗。

それはサーカスで鍛えた軽業の芸を活かして、巧みなモーターサイクル芸によって、銀行を襲い、金庫の裏金を頂戴しては、警察との派手な逃亡劇を繰り返していた。

まさにあの「ブルース・ブラザース」のシカゴ警察との攻防戦のように、多くのパトカーを煙にまくオートバイでの空中アクションの迫力は、さすがにハリウッドも圧倒する爽快さだ。

しかもインド映画特産の、大掛かりな<ムンバイ・ミュージカル>の颯爽としたライン・ダンスも披露するので、このアンビリーバブルな、アクション・ミュージカルの妙味は飽きさせない。

何でこうなるの????という疑問を嘲笑するように、ド派手なアクションとアップ・ビートのライン・ダンスは、いかにもムンバイ映画。この異様なお祭り光景は、一種の観光的魅力でもある。 

逃走の際に被弾したアーミルは、警察の逮捕調査では、傷痕も見当たらず釈放。実は彼には出生の秘密があった、ということが後半で明らかになるが、これは<ネタバレ>になるので、書けない。

つまり、多くのサーカスでのトリックと同じ隠し味が、このドラマの重要な裏付けになっていて、ラストではお涙頂戴、という寸法で、さすがはインド産の大盛りカレーの美味となる。

騙されたと思って見て楽しむのが、この長尺インド映画の醍醐味だろう。

 

■大きなレフトフライが、ドームの天井に当たって、ツーベース。

●12月5日より、TOHOシネマズ・みゆき座などでロードショー 



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10月17日(金)13-30六本木<シネマートB2試写室>

M-117『デビルズ・ノット』" Devil's Knot" (2013) the weinstein company / worldview entertainment

監督・アトム・エゴヤン 主演・コリン・ファース <114分> 配給・キノフィルムズ ★★★☆☆

1993年5月5日。アーカンソー州ウェスト・メンフィスという山麓の町で、実際に起きた少年3人の殺害事件の不可解な真相に迫ろうとする作品。

このところ日本でも多発している少女の誘拐殺害事件だが、この作品のユニークなポイントは、検挙され裁判で刑が実際に執行された犯人3人は誤認逮捕ではないか。というポイントだ。

今も不透明な事件に対して、ショーン・ペンなどが再調査を懇願しているという不思議な事件。映画は無惨にも殺された3人の少年たちに、実名で捧げられている。

どうしてこんなことになったのか。事件はまるで「スタンド・バイ・ミー」と同じ様に、少年3人の山林への冒険から始まるが、失踪のあと警察の捜索で、山の河底から彼らの裸体死体が発見された。

つい先日見たばかりの「オオカミは嘘をつく」も似たような事件ものだったが、この作品は、緊急に逮捕された不良グループの曖昧な供述から、どうも釈然としないままに終身刑が執行された。

主演のコリン・ヒギンスは、事件とは直接は関係のない私立探偵だが、この裁判の成り行きに疑問を感じて、独自の捜査をしていくが、謎は深まるばかりで、真相不透明のままに映画もフェイドアウト。

過去にも「スイート・ヒアアフター」や「秘密のかけら」などでも、いつも事件の真相を凝視した視線の作品を作るアトム・エゴヤン監督も、またここで地域の持つ慣習や異教への恐怖を臭わせる。

という意味では、あのジョン・ブアマン監督の傑作「脱出」での、謎を秘めたアメリカ山岳地帯の秘められた悪魔的習慣や、地域住民の持つ意固地な習性にも視線をちらつかせていく映像だ。

過去にも多くの魔女狩りや、クルックス・クランの黒人処刑のあった土地柄か、裁判シーンも異様な保守的な空気が流れ、アーサー・ペンの秀作「逃亡地帯」の匂いも感じてしまい複雑だ。

つまり、これは犯罪サスペンスでも、事件追及の探偵ものでもなく、ことの真相は、この作品を見たひとの良識に問う、というスタイルで、あの「アラバマ物語」のような感動ものでもない。

その辺がエゴヤン監督の個性でもあって、当然、釈然としない印象で終わるのは、実際にあった事件に対しての地域住民の移住社会への心のしこりでもあるのだろう。

 

■ライト前のライナーを、地面スレスレで野手が好捕したが、ワン・バウンドとビデオ判定。

●11月14日より、TOHOシネマズ・シャンテなどでロードショー 



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10月17日(金)10-00 渋谷<ショウゲート試写室>

M-116『毛皮のヴィーナス』" Venus in Fur " (2013) R.P. Productions / monolith films / Alan sarde

監督・ロマン・ポランスキー 主演・エマニエル・セニエ <96分> 提供・ショウゲート+ニューセレクト ★★★☆☆

80歳を過ぎても未だに健在な、とても気になる巨匠といえば、クリント・イーストウッドとこのポランスキー。しかも今回は初めて彼の愛妻エマニエルを主演にしての新作。

話は簡単だ。急な土砂降りのパリで、新しい芝居のオーディションに遅刻した女優と、もうスタッフも帰した一人の演出家が、ふたりきりでステージで対決するというシンプルな話だ。

一応、台本は暗記してきたアバズレな女優の気迫に、次の約束のある演出家のマチュー・アマルリックは、時間を気にしながらも、しょうがないので一応オーディションを受ける。

ちょっと、ヘンリー・フォンダの「女優志願」のような設定だが、こちらはパリの中でも場末の古びたテアトル・ルカミエ。そのお化け屋敷のようなステージに、たった二人きりの演技戦。

はじめは軽視して、早々に切り上げようとしたオーディションも、このフッカー丸出しの女傑の勢いで、ドラマは徐々に白熱してくる。この二人芝居の演出の妙は、さすがはポランスキー。

そして、この不運な状況に追い込まれた演出家を演じる哀れな姿は、いかにもポランスキー本人のようで、相変わらずマチューは巧い。

前作の「おとなのけんか」のように、些細な発端から始まる二人の相互関係は、しだいに正体不明の女優のペースになっていく、この絶妙のタイミングは、さすがはベテランの演出だ。

おそらく演劇の演出家の先生ならば、誰だって経験のある展開で、そかもこの状況とタイミングは、きっと5分で済むような話なのが、次第に崩れて行くという人間ドラマの意外性。

まさにあのリタ・ヘイワースが演じた「雨に濡れた欲情」のミス・サディ・トンプソンの登場と、オンナの本性の凄みに、ベテランの男の教養も威厳もドンドンと隅に追いやられてしまうという構図。

まさに一人芝居の恐妻エマニュエルの迫力の好演は、マレーネ・デイトリッヒのような粘りで圧倒。

われわれ男性としては、この不利な状況には、誰だって己の夫婦生活の構図を連想してしまって苦笑してしまうだろう。ある種、男女関係の構図を凝縮して見せている恐怖感もあるのだ。

 

■初球打の凡フライだが、多少フック気味だったのか、サードが落球の間に進塁。

●12月20日より、渋谷Bunkamuraル・シネマ他で、お正月ロードショー 



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10月15日(水)13-00 渋谷<ショウゲート試写室>

M-115『オオカミは嘘をつく』"Big Bad Wolves" (2013) Catch BBW the Film / UCM/ United King Films イスラエル

監督・ナヴォット・ペプシャド+アハロン・ケシャレス 主演・リオール・アシュケナジ <110分> 配給・ショウゲート ★★★★

実に久しぶりに、パワフルな傑作に出会った。しかもこれがイスラエル産の犯罪サスペンス。しかも最近のハリウッド映画を嘲笑するかのような完成度だ。

一種のトラップ・ムービーで、映画には多くの視覚的な罠が仕掛けてあって、ぼんやり見ていると騙される。そのお手並みはハンパじゃないのが、緻密で恐れ入った。

最近よくある、少女誘拐殺人事件。恐らくはテルアビブ辺りの小都市で起きた少女殺人は、非常に猟奇的であって、殺害後に遺体は裸体で残して首から頭部がない。

捜査当局は少女が通学していた中学の独身教師を容疑者として捕獲し、ベテランのリオール刑事が職業的なカンで、彼を実行犯と睨み、尋問を繰り返すがラチがあかない。

徹底した捜索が続いて、どうも挙動やアリバイに不審な点が多いので、かなりパワフルな尋問は続くのだが、隠しカメラでその模様がネットに流れた為に、刑事は担当を外された。

そこにとうとう被害者の父親が現れて、彼の別荘に二人を監禁して、地下室で彼らから真相を追求するべく、いろいろな残虐な手段で脅すのだ。このオヤジがまた、とんでもない凶暴な奴。

ドラマは、この3人の中年男たちの密室ドラマとなり、あのリノ・ヴァンチュラの名作「レイプ殺人事件」のような様相となるが、オヤジのツアヒ・グラッドが凄まじくて迫力がある。

驚くべきは、サラウンド効果を狙った効果音の処理と、カメラアングルの的確さ、そして照明の絵画的なまでのフレーミングの美しさ。イスラエルの映画力が、これほどレベルが高いのに脱帽だ。

この作品に驚嘆したクエンティン・タランティーノ監督が絶賛したというが、いかにも「レザボア・ドッグス」を思わせるドラマの熱気は、彼の好みのタイプなのはよく判るし、同感する。

ラストはネタバレになるので書けないが、えええーーーという決着に、あああ・・そういえば怪しいシーンが前半にチラリとあったなーー。と納得させるワザも凄い。

かなり残虐なシーンも多いが、これは娯楽的なトラップ・ムービーなのだ。という視点で楽しむのが、見る側の礼儀であって、ドキュメンタリーでないことに騙されぬことだろう。

 

■低い弾道でレフトのポールを巻いたので、ビデオ判定の結果ホームラン。

●11月22日より、ヒューマントラストシネマ有楽町などでロードショウ 



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10月14日(火)13-00 西銀座<東映本社7F試写室>

M-114『真夜中の五分前』" Five Minutes to Midnight " (2014) Shanghai Universaljoy Pictures / Super Entertainment・アミューズ 

監督・行定 勲 主演・三浦春馬 <127分> 配給・東映 ★★☆

またしても、このところ連続して<ダブル>の映画だ。しかもカフカとか心霊ではなく、これは一卵性双生児のふたりの女性とのラブストーリー。

原作は同名の本多孝好の小説で、上海とモーリシャスが舞台になっている。だから映像的には外国映画のようだが、印象はアジアンな中国語による無国籍な気分。

ふとヒッチコックの「めまい」を連想したのがいけなかった。これはミステリーでもサスペンスでもなく、何とも得体の知れぬ恋の迷路で、<五分間>がやたらと長い。

上海で古い時計屋の修理工をしている三浦のところに、妹の婚約祝いのプレゼントのためのアンチックな腕時計の修理に、双子の姉だというリウ・シーシーが現れた。

彼女とは近所の水泳プールで見かけたことがあり、その美貌に恋ごころを抱いていた三浦は、自然に謎めいたリウに惹かれて行ったが、女優をしている妹と会ってからドラマは急転する。

それにしては、ひどく思わせぶりで、テンポの鈍い演出に、これが本当に、あの「GO!」の行定監督の演出かいな、と思いつつ、次第にそのテンポの遅さにイライラしてしまった。

というのも、この美しい姉妹に表情や演技のアクセントの差がなく、見ていると、もうどちらでもいいや、という気分になってしまった。これがテーマの狙いだとしたら、わたしはつき合いきれない。

恐らく原作小説には、モーリシャスで水死したという妹や、そのフィアンセの心情なども細かく描かれているのだろうが、これは映画。モーション・ピクチャーなのだ。

その映像の語り口が、かくもダラダラと魅力がなくては、とても5分前とは思えない。これがアジアン・ラブ・ストーリーなのだというなら、わたしはパスしたい。

美人姉妹とのおつきあいはご用心。

 

■ファールで粘っての結果、ボテボテのファースト・ゴロ。

●12月27日より、東映系全国ロードショー 



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10月9日(木)13-00 渋谷<ショウゲート試写室>

M-113『ザ・ゲスト』"The Guest" (2014) Snoot Entertainment / Hanway Films / Adam David Production

監督・アダム・ウィンガード 主演・ダン・スティーブンス <100分> 提供・ハピネット+ショウゲート ★★★☆☆

またも、新しい感覚の犯罪映画の登場だ。<アンノウン・スリラー>という宣伝の売り込みだが、たしかに一種の変質者を描いた、なかなかの切れ者監督登場だ。

話は、よく戦後のノワール映画に多く見られた、ニューロティックな戦傷サスペンス。つい先日見た『NY心霊捜査官』は法の側から描いた心理犯罪ものだったが、こちら犯罪者側。

ちょっと、あの「シェーン」にも似ているが、「とらわれて夏」にも似た設定。つまり見知らぬ男が突然に家の玄関に現れ、「お宅の息子さんの戦友だった・・・」というのだ。

イラクの激戦で息子を亡くした家族は、その善良そうな好青年を家に入れて、しばらく滞在することになる。この青年、見た目もハンサムで実に善良そうなのだ。

いろいろと家事を手伝い、難しい年頃の娘にもやさしく接して、少しずつ家族の和に馴染んで行く。ところが、ある日、CIAの特別捜査官が、身元を偽った元帰還兵の捜索にやって来た。

話によると、その帰還兵はイラクで特殊な作戦の任務についていて、爆死した筈のプラトゥーンにいたが、戦場から消えたらしく、名前の兵士とは別人らしい。要するに不審者だった。

実に好感のもてる青年は、実は殺しのエキスパートで、捜査のテが忍び寄ると必殺のワザで相手を倒してしまい、その裏技はハンパじゃない。まさに<シェーン>なのだ。

演出のアダムも、実に巧妙な映像テクニックでサスペンスが持続して、おっとっとー、これはマイケル・マンか、クリストファー・ノーランの次世代登場か、と思わせる。

その謎の訪問者も、ちょっと亡くなった好漢ポール・ウォーカーの面影があって、これはナカナカの曲者の登場を思わせる。

後半は追いつめられて行く<謎の男>の本当の正体なのだが、当局の包囲網が狭まるにつれて、かなり凶暴になり周囲の関係者も殺しにかかるのは、かなりプロフェショナル。

ま、そこはサスペンス娯楽映画だから・・・という割り切りではシャープな作品だが、ラストのオチなどは、タランティーノ系のブラックな嘲笑も感じるから、好みの問題。

でも、かなりの切れ者の登場ではあった。

 

■シャープなライナーが左中間を抜けて俊足のツーベース 

11月8日より、シネマサンシャイン池袋などでロードショー 



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10月7日(火)13-00 六本木<シネマートB1試写室>

M-0112『嗤う分身』 "The Double " (2013) The British Film Institute / Channel Four + Alcove Double 英

監督・リチャード・アイオアディ 主演・ジェシー・アイゼンバーグ <93分> 提供・エスパース・サロウ ★★☆☆☆

ドストエフスキーの「分身(二重人格)」は、いろいろな映画のモチーフになっていて、ついこの4月にも、『複製された男』という傑作があった。

ジェイク・ギレンホールが演じ<たダブルズ>の心理表現は実に面白かった印象が、まだ残っているので、これは楽しみな新作で期待してしまった。

つまりカフカ的なテーマは、人間の深層心理にある<化身願望>がベースになっていて、誰の心にも潜む劣等感の脱却方法であって、とくに異常な心理ではない共感がある。。

だから、よくサイコロジカルな映画の表現方法としては、ごくイメージの転換として活用されていて、とくに珍しい方法でもない。が、それを<嗤う>、とした邦題には苦心が伺える。

この<嗤う>というのは<嘲笑>のようなもので、かなりシニカルな雰囲気があるので、ただの分身ではなくて、その第二番目の自己を理想化しているよりも、むしろ<逃避している自我>と見ているようだ。

むかしに、『ダニー・ケイの天国と地獄』という傑作があって、それは殺された一卵性双生児の兄の復讐に、そのそっくりな弟が現れるという喜劇で、実にダニー・ケイの二役が笑わせた。

しかし、この新作のジェシーは、己の劣等感や不祥事を、心のなかに潜む<変身願望>で修正していくという、ま、一種のリベンジものなのだが、意外にも演出のもたつきが目立って、面白くならない。

まるで近未来のような陰湿な会社で働くジェシーは、もう7年も働いているのに、いつも上司のイジメに悩まされている。憧れのミア・ワシコウスカのプライバシーを覗き見する、実に情けない男。

ところが、ある日、まったくジェシーと同じ顔と姿の男が配属されてきて、ドンドンと活躍を見せて社内でも認められて行く。そして落ち込むジェシーは、投身自殺した男を目撃してからウツの状態がヒドくなる。

まさにヒッチコックの描くサイコロジカルなテーマの展開となって、これは面白くなる、・・・と予感させるのだが、どうも、演出の手際がもたついていて、せっかくのジェシーのダブル変身が面白くならない。

考えようによっては、「スパイダーマン」や「バットマン」のような変身願望がベースになったテーマなのに、どうにもモドカしい展開で退屈。しかも作品のトーンが陰湿でユーモアなし、というのもマイナス要因。

これは、主人公の衣装や表情を同じにした狙いが、どうも二重人格の個性を明快に区別しにくくなっているという、映画的な表現の軽さなのか、どうも、こちらが<失笑>してしまった。

 

■右寄りに守備していたショートの横のゴロになった<ダブルプレー>

●11月8日より、渋谷シネマライズでロードショー 



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10月3日(金)13-00 外苑前<GAGA試写室>

M-111『天才スピヴェット』"The Young and Prodigious T.S. Spivet " (2013) gaumont / epithete films / tapioca films

監督・ジャン=ピエール・ジュネ 主演・カイル・キャトレット <105分> 配給・GAGA<ギャガ> ★★★☆☆

独特の映像感覚で「デリカテッセン」や「アメリ」で印象の深いジュネ監督の「ミックマック」以来の新作は、またしても、とんでもない10歳天才少年の冒険だ。

もともと初めて3D映画を作る発想で制作した作品なので、やたらと意図的に3D効果を狙った映像が多いが、彼の本来の立体絵本のような仕掛けなので、相変わらずかわいくて愉快だ。

ハリウッドのオファーを頑に断って、いかにもフランス人らしいキッチュな発想を、全編カナダで撮影したという、この映画の天才少年の夢は、貧しい荒野の一軒屋からの発想が基本。

ライフル銃の暴発事故で弟が亡くなってからのスピヴェット少年の家族は、それぞれが自分の世界に入り込んだ屈折した状況だったが、その心情がシュールな映像となって展開する。

とりわけ、ヘレナ・ボナム・カーターが演じる母親は、昆虫学者でもあって、その西部の昆虫をコレクションしては不思議な学説を勝手にしゃべる。それが少年を刺激したのだ。

あきらかに、ここではヘレナの、多くのティム・バートン映画での特異なイメージが移植されていて愉快だ。この母にして、この天才少年が誕生するという構図は正解なのだ。

モンタナの荒野で、まだ前世紀のカウボーイの夢を追う父の名前で、勝手に出品した手作り<磁気車輪>が、なぜかワシントンのスミソニアン博物館に認められて、少年は夜逃げ同然で列車に飛び乗った。

映画はその旅で初めて目にする世界の素晴らしさを、いかにも純粋な少年の目で立体的に映像化して、もちろんジュネ監督の童話的な幻想世界が続々と展開するので、まさにワンダーワールドだ。

とくに少年が目にする絵本や地図や写真などが、すべていきなり立体的に表出するという映像マジックは、まさにピュアーな夢の発想であり、加えて懐古的なウェスターン絵本が味つけになる。

放送終了のテレビ映像を見ている犬。表情を代えるハロウィーンのカボチャ。柵の金網にアタマをぶつけるヤギなど、スピヴェットの周囲の連中はみんなクレイジーで愉快。

しかも、行き着いたスミソニアンの担当おばさんが、何とジュディ・デイビスというのもコーエン・ブラザースっぽい趣味なので笑わせる。「少年よ大志を抱け」ジュネ新式映像戯画であった。

 

■高く上がったセンターフライがスライスしすぎて野手がポロリ。

●11月上旬、シネスイッチ銀座などでロードショー



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