細越麟太郎 MOVIE DIARY

最新の映画情報や批評を掲載します。

●8月の試写ベスト/3

2008年08月30日 | Weblog
●8月に見た試写ベスト/3

1/『ヨコヅナ●マドンナ』(監督/イ・ペヨン)主演/リュ・ドックァン <韓国>★★★★
   女性に性転換したいメタボな男の子は、手術費を稼ぐ為に学生相撲大会に挑戦したのだ。

2/『ウォーリー』(監督/アンドリュー・スタントン)ピクサーアニメ<米>★★★☆☆☆
   地球が壊滅したのは人間の残したゴミによる弊害。ゴミ処理ロボットはそれでも恋をした。

3/『ワイルド・バレット』(監督/ウェイン・クレイマー)ポール・ウオーカー主演<米>★★★☆☆
   マフィアの抗争を描くハイテンション・アクションの連続に、凄まじい映画力の鬱憤が炸裂。

☆他には『リダクテッド』『私がクマにキレた理由』『アメリカン・ティーン』などが印象的だった。

●『リダクテッド』迫真の再現ドラマ。

2008年08月28日 | Weblog
●8月27日(水)13-00 築地<松竹試写室>
M-098 『リダクテッド』Redacted (2007) magnolia pictures 米
監督/ブライアン・デ・パルマ 主演/ロブ・デヴァニー ★★★☆☆☆
イラクのサマワ。
米軍の交通検問所は、往来する一般車両の点検をするが、兵士は緊張感と暑さと倦怠感で放心している。
住民の廃棄物が爆発して軍曹は即死。そして戦友の拉致と脅迫。
この永遠の地獄で、若い兵士はキレた。
デ・パルマ監督は、実際に起こった現地女性強姦殺害に関連した事件の模様を、完璧な「再現ドラマ」にしている。
このことでアメリカ軍部を告発したり、戦争反対をアジテイトしようとはしていない。
あくまで映画作家の公正な観点で、事実を再現して、問題点の複雑さを訴えている。
その冷静なスタンスには評価すべきレベルの高さがある。

●10月、シアターN渋谷などでロードショウ

●『ワイルド・バレット』の強烈な映像テンションについて行けるか。

2008年08月27日 | Weblog
●8月26日(火)13-00 虎ノ門<TOGEN試写室>
M-097 『ワイルド・バレット』Running Scared (2006) media 8 (米)
監督/ウェイン・クラマー 主演/ポール・ウォーカー ★★★☆☆
たしかにタランチィーノが絶賛したように、映像テクニックは凄腕の登場だ。
話はよくあるマフィア同士の抗争だが、その殺し合いに偽装警官がいたために、使用した拳銃を始末すべきだった。しかしポールはその拳銃を盗まれたために、オールナイトの追跡が始まる。
黒沢の「野良犬」のような、一挺の拳銃がドラマの焦点となる。
非常にハイテンションなヴァイオレンスには、少々閉口するが、止まる所を知らないテンポと演出には魅力もある。問題は少年と拳銃の扱いだろう。
いまのアメリカでは少年も拳銃を撃つ。それはわかるが、これは娯楽映画なのだから、もう少しモラルというか、自主規制してほしかった。
ジョン・ウェインが死ぬ「11人のカウボーイ」がテーマの引き合いに出されていたが、これが現代の西部劇だとしたら、どこかに正義感の哀愁が見たかった。惜しい傑作だが。

●10月11日より、銀座シネパトスなどで公開

●『アメリカン・ティーン』のリアルな学園青春が人生を分ける。

2008年08月26日 | Weblog
●8月25日(月)13-00 神谷町<パラマウント映画試写室>
M-096 『アメリカン・ティーン』American Teen (2008) paramount vantage
監督/ナネット・バースタイン 主演/ハンナ・ベイリー ★★★☆☆☆
アメリカ中部インヂィアナ州のハイスクール。
卒業までの一年間を徹底取材したドキュメンタリーだが、その中の5人の男女のドラマティックな青春像を浮き彫りにしていて、見ていると、ついフィクションかと思うほど劇的にまとまっている。
その点で「アメリカン・グラフィティ」のようでもあるが、それがすべて真実だというところが強いインパクトを持っている。格好わるいが美しい。
人生で一番大切な瞬間を、鮮明に捉えたリアルな青春映画として、これは応援したくなる。

●10月11日より、新宿バルト9でロードショウ

●『私がクマにキレた理由』は現代のメリー・ポピンズか。

2008年08月23日 | Weblog
●8月22日(金)13-00 京橋<映画美学校第一試写室>
M-095 『私がクマにキレた理由』The Nanny Diaries (2007) MGM 米
監督/シャリ・スプリンガー・バーマン 主演/スカーレット・ヨハンソン ★★★☆☆☆
大学は卒業したものの、スカーレットは自分が何をしたいのかわからない。
ヒョンなことから富豪の子供の世話をみる「子守り」の仕事を引き受けたものの、超多忙で自分の時間もなく、これではいつまでたっても、自分探しにはならない。
ニューヨークのパークイースト。その高級地で生活するセレブな人種を皮肉るのは、ウディ・アレンの領域だが、この作品もシナリオや、映像処理に工夫が見られて、久しぶりの傑作都会コメディに仕上がっている。
傲慢な富豪夫人を演じたローラ・リニーが巧く、ヨハンソンも「ブリジット・ジョーンズ」ばりに奮闘してラストでは逆ギレしてしまう。
痛快な女性映画だが、メリー・ポピンズのように、彼女は赤い傘でどこに飛んで行くのやら。

●10月11日より、日比谷みゆき座などでロードショウ

●『東南角部屋二階の女』は昭和を清楚に生き抜いた。

2008年08月22日 | Weblog
●8月21日(木)13-00 渋谷<ショウゲート試写室>
M-094 『東南角部屋二階の女』(2008) トランスフォーマー/日
監督/池田千尋 主演/西島秀俊 ★★★☆☆
父親が借金を残して死んだため、西島は会社を辞めて、家の敷地にある木造アパートを解体しようとする。
ボケの進む老祖父は、沈黙。
東南角部屋は、なぜか開かずの部屋だが、昭和の古い木造アパートは老人の後ろ姿に似て寂しい風情だ。
そこに間借りしている若者たちも、どこか時代に取り残されている。
不甲斐ない青春と、よく見えない将来に暗澹としたドラマが流れるが、なぜか東南向きのアパートにも西日が差し込む。
どうも拠り所のない若年寄りたちの青春だが、それを淡々と見つめる若い監督の視線は温かい。
のどかなる佳作ではある。

●9月中旬、ユーロスペースで公開

●『ウォンテッド』のアサシン戦争の果てに。

2008年08月20日 | Weblog
●8月19日(火)13-00 半蔵門<東宝東和試写室>
M-093 『ウォンテッド』WANTED (2008) universal / spy glass 米
監督/ティムール・ベクマンベトフ 主演/アンジェリーナ・ジョリー ★★★
しがないサラリーマンのジェームズ・マカヴォイは、メタボな女性上司から毎日虐めにあっていた。
そこに謎の殺し屋組織から、生まれて会ったこともない父親の死を知らされる。
そして 父はその組織の凄腕の殺し屋だったという。
紡績工場の中に秘密組織を持つリーダーのモーガン・フリーマンの誘いで、彼は殺し屋に転向してアンジェリーナの妖しげな特訓を受けるのだが、実はこれが罠だった。
撃った銃弾の弾道をシュートさせたり、いかにも漫画チックなストーリー展開が、後半は暴走気味。
アクション・シーンの趣向にには工夫があるものの、どうも荒っぽさが横滑りして閉口してしまった。
職場の上司をぶっ殺したい人には、一時の欲求不満を解消するための消化剤になるかも。
でも、保証はしない。

●9月20日より、日劇などでロードショウ

●『ウォーリー』は愛すべき未来の地球ゴミ処理ロボット。

2008年08月19日 | Weblog
●8月18日(月)13-00 六本木<ディズニー試写室>
M-092 『ウォーリー』WALL・E (2008) disney / pixar 米
監督/アンドリュー・スタントン 主演/ウォーリーとイーヴ ★★★☆☆☆
「ファインディング・ニモ」で大ヒットしたスタッフの新作は、未来のゴミ処理ロボットの恋。
われわれの未来、29世紀には地球上はゴミだらけ。
少しの実力者は地球を捨てて、他の惑星に移住して、ゴミ処理ロボットだけが地球に残った。
「アイ・アム・レジェンド」よりも、もっと過酷な発想だが、ロボットは遺棄された廃品を整理して、「ハロー・ドリー」のビデオを見るのが大好き。むかしの地球にはいいものが沢山あった。
そこに他の星から探索シャトルが来て、イーヴという白い異性ロボットが現れた。
どこか「E.T.」を思わせる着想で、この孤独なロボットの廃墟での恋が、実に初々しいのだ。
悲観的なストーリーの中の恋。これも究極の運命の恋なのか。
まるで実写のような墓場の様相が、痛烈な皮肉画になっている。

●12月、日比谷スカラ座などでロードショウ

●『その土曜日、7時58分』からの悪夢の連鎖。

2008年08月16日 | Weblog
●8月15日(金)13-00 神谷町<ソニーピクチャーズ試写室>
M-091 『その土曜日、7時58分』Before the Devil Knows You're Dead (2007) capitol films 米
監督/シドニー・ルメット 主演/フィリップ・シーモア・ホフマン ★★★☆☆☆
84歳の監督にしては鋭い、そして彼らしいニューヨークを舞台にした社会派の犯罪劇。
ある朝に起こった宝石店襲撃が、思わぬ展開で、家族とその関係者を悲劇の連鎖に落とし込む。
という意味では、白日のフィルム・ノワールと言えよう。
アカデミー授賞俳優3人の好演も駆使して、ルメットの老練の演出は若々しい。
むかしの『ファミリー・ビジネス』で描いたファミリーの犯罪美学が、ここでは無惨に崩壊していく。
これも監督の見た現代の犯罪の複雑な残酷性の要因なのだろう。
重いサスペンスの苦い痛みが、あとに残る佳作だ。

●10月、恵比寿ガーデンシネマなどでロードショウ

●『彼が二度愛したS』振り込め詐欺のイージーな結末。

2008年08月13日 | Weblog
●8月12日(火)13-00 渋谷<ショウゲート試写室>
M-090 『彼が二度愛したS』Deception(2007) seed pro/fox
監督/マーセル・ランゲネッガー 主演/ユアン・マクレガー ★★★☆☆
ミステリーなので、ストーリーのオチは明かせない。
古くはフリッツ・ラングの『飾窓の女』から、マイケル・ダグラスの『ザ・ゲーム』のように、真面目なサラリーマンが友人の誘いで、女性の罠にはまって行く展開は、よく描かれている。
この作品のプロデュースも手がけているヒュー・ジャックマンの悪役もいいが、それ以上に魅力的なのが、夜のマンハッタン・ロケの素晴らしさ。
要は派遣監査員のユアンが、大企業の余剰資金を違法にアクセスして他の銀行に振り込む詐欺で、デヴィッド・マメットの秀作『スパニッシュ・プリズナー』の系列だ。
残念なのはラストの処理。このままではハッピーエンドにはならないよ。
せっかくのパーフェクト試合が、最後の一球でパスボールしたような後味だ。

●9月、東宝系スバル座などでロードショー