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細越麟太郎 MOVIE DIARY



2月23日(月)13-00 半蔵門<東宝東和試写室>

M-022『ジェームズ・ブラウン/最高の魂を持つ男』" Get On Up " (2014) Universal International /Imagine Entertainment

監督・テイト・テイラー 主演・チャドウィック・ボーズマン <139分> 配給・シンカ

<リズム・アンド・ブルース>の最高のビッグ・スターとして60年代から大活躍したレジェンド歌手として、その名声は未だに多くのタレントに影響を与えている。

同時期に大スターだったレイ・チャールズは、同じく黒人だがゴスペル色が強かったのに対して、このジェームズ・ブラウンは派手なブラス・セクションをバックにディスコキング。

誰だって彼の曲とスタイルは知っているし、いまでもファンは多く、この作品も<ローリング・ストーンズ>のミック・ジャガーが名手ブライアン・グレイザーの協力でプロデュースした。

つまりロックの基礎でもあるリズム・アンド・ブルースの誕生とその魅力を叩きつけた、アメリカン・ポピュラー音楽史の、非常に大きなスペースを持続した男の、強烈な個性と人気を見つめた力作だ。

タイトルは、こちらでも<ゲロンパ!>という音感で親しまれたリズムだが、作品は極貧の少年時代から、次第に独特のリズム感覚でレコード界に進出していく経緯を色濃く描いて行く。

マイケル・ジャクソンやモータウン・サウンズのリズム感、そしてあの<ブルース・ブラザース>にも多くの影響を与えた背景も、実に丁寧に描かれていて嬉しい。

しかも年代順の人気開花を描くような従来のミュージシャン伝記ものとは違って、時代差はランダムにつないで、むしろジェームズ・ブラウンのヒット曲を多く聞かせるという構成は嬉しい。

あの70年代からのディスコ・ブームで踊った青春のファンには、これは苦くも熱い青春の烙印であって、この強いリズム感覚は体から抜けてはいまい。それだけこのリズム間は強烈だ。

さすがに、ミック・ジャガーがプロデュースしているだけに、音楽シーンでのチャドウィックのパフォーマンスは忠実に本人のスタイルを再現していて、ジェイミー・フォックスの『レイ』に負けていない。

同時期に活躍した「フォー・シーズンズ」をイーストウッドが昨年「ジャージー・ボーイズ」で見事に描いたが、白人グループの崩壊とは対照的に、この黒人歌手の自信過剰とリズムの迫力は圧倒的だ。

これもアメリカン・ポピュラー音楽の貴重な歴史の1ページを描いた力作として、音楽ファンには見逃せない味わいは濃い。

 

■初球のストレートを狙ってのセンター前ヒット。

●5月30日より、渋谷シネクイント他で全国ロードショー 



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2月19日(木)13-00 六本木<シネマートB-1試写室>

M-021『カフェ・ド・フロール』" Cafe de Flore " (2011) Fine Films / Item 7 / Monkey Pack film カナダ

監督・ジャン=マルク・ヴァレ 主演・ヴァネッサ・パラディ <120分> 配給・ファインフィルムズ

あのパリの、ジョルジュ・サンクとシャンゼリゼの角にある、あの有名な「カフェ・ド・フロール」が舞台のロマンティックな映画かと思って見たら・・・早トチリ。

たしかに原名のタイトルはカフェの名前だが、この映画は、あのカフェとは直接は関係ない。しかも甘いラブ・ストーリーでもない。

おまけに監督が、昨年評判になった「ダラス・バイヤーズクラブ」のJ=M・ヴァレとなると、これは気になる。が、これも私の早トチリで、監督の4年前の未輸入作品。何てこった。

それでも沢山、試写を見てると、いわゆる<拾い物>もある。それならば嬉しいものだが、この作品は手こずった。というか、当方の趣味ではない120分は長過ぎてきついのだ。

やたらと時間差が変わるという、映画的なレトリックはよくあるので、とくに回想シーンの多い作品は、面白ければ愉しい。あのボギーの「渡洋爆撃隊」などは3回も時代が逆転したっけ。

こちらの作品も、負けずとややこしい。カナダのモントリオール。DJのケヴィンは離婚していたが、新しい恋人と恋に落ちていた。彼が好きな曲が<カフェ・ド・フロール>。つまりこの曲が重要なのだった。

しかし別れた前妻は病的にノイローゼになっていた。それは夢に出てくる不思議な少年で、どうもこのモンスターには1969年のパリでの悲劇があとを引いているらしい。

で、その1969年のパリでのオゾマシイ悲劇が回想される。失恋したヴァネッサはひとりでダウン症として生まれた男の子を育てる覚悟をしていたが、その育児の日々は泥沼のような展開となるのだった。

ま、単純な発想とすれば、現実の精神的な病苦には、その過去の悲劇が影響しているという発想であって、よくいう<ご先祖のたたり>というケースなのだろう。

困ったのは、その重複して行く過去のエピソードが、明快な映像とか演出で区別されていれば、こちらのアタマの整理ができるのだが、そんなに単純ではない。

わたしはどうも、この難解な映像のゲームにはフォローできないままに映画は唐突に終わってしまった。

 

■当たりはヒット性の弾道だったが、ショートが回り込んで好捕。 ★★☆☆

●3月28日より、恵比寿ガーデンシネマなどでロードショー 



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2月16日(月)13-00 内幸町<ワーナー・ブラザース映画試写室>

M-020『龍三と七人の子分たち』" Ryuzo a d the 7 Hoods " (2014) warner brothers international / バンダイヴィジュアル

監督・北野 武 主演・藤 竜也 <111分> 配給・ワーナー・ブラザース・ジャパン 北野オフィス

「アウトレイジ」、続編の「アウトレイジ・ビヨンド」などの現代やくざものシリーズの好評を得ての、またしても北野ワールド流の暴力映画だが、今回はリタイアした不良老人たちの話。

シナトラの「七人の愚連隊」のような古参ギャングの抗争にヒントを得た、というよりは「七人の侍」が発端のような、昨今話題になっている高齢者を狙ったオレオレ詐欺に騙されたジジイの叛乱と捉えた方が面白い。

息子の家族の家に居候している元やくざの<鬼の龍三>藤竜也は、電話番をしていて、案の上、<振り込め詐欺>の被害を受けそうになる。金はないので昔の盗品や勝利品などを持って受け取り役の若者に会う。

しかし腰抜けな詐欺師グループの態度に腹を立てた筋金入り元ヤクザは、腹を据えかねて、昔の仲間たちを招集して、高齢者ながら筋の通ったアウトローの気迫で奴らを一蹴しようと相談する。

発想は面白い。たしかにIT企業を装う悪徳訪問販売会社や、振り込め詐欺グループをやっつけるのは、地域警察よりも裏社会に通じた元やくざの方が、はなしは早い。という発端は面白くなりそうだ。

北野武ムービーのアウトローものは、半端者の悲哀を臭わせる『HANA-BI』のような作品や、高倉健さんと演じた「夜叉」のように、道に迷った人間のセンチメントが好きだった。

だから、テレビのバラエティのような駄洒落たギャグ連発のコミックものは、どうも苦手なのだが、この作品でも、従来の北野タッチではなく<ビートたけし>の体臭が強く感じるコミックになった。

たしかに試写室では、このバラエティ的なギャグで笑いは多かったが、口で言うほどに<義理と人情>の味わいは薄くて、頑固ジジイたちの暴走劇になってしまっていたのが残念。

例えば、渡 哲也さんとか、松方弘樹さんのような古参が絡んでいたら、・・・と勝手に想像してしまうが、このプロダクションと北野監督の狙いでは、オチャラケなドタバタも仕方がなかろう。

当のタケシさんは、地元警察の刑事役で登場して、このジジイたちと詐欺グループの抗争を「用心棒」のように傍観しているが、もっとドラマの制裁に立ち入って欲しかったのも、ささやかな不満。

 

■左中間に抜けたヒットだったが、セカンドを欲張ってタッチアウト。 ★★★

●4月25日より、全国ロードショー



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2月13日(金)13-00 六本木<シネマートB-1試写室>

M-019『間奏曲はパリで』" La Ritournelle " (2014) Avenue B et Vito Films / Tous droits reserves / cine+ 仏

監督・マルク・フィトゥシ 主演・イザベル・ユペール <99分> 配給・KADOKAWA

先日同様に、またパリの映画が続いたが、これは戦前実話ではなく、現代のパリでのお話。しかも立派な戯曲の映画化ではなく、ごくありがちな中年夫婦のアヴァンチュール。

ノルマンディ地方で、畜産農業で生活している平凡な中年夫婦の日々を描き、原題は「リフレイン」のことだとか。つまり日常的な繰り返しの意味で、ドラマとしても劇的なものじゃない。

結婚生活も平坦な農作業の時間は、まさに毎年リフレインの日々で、一人っ子の長男は、そんな人生にウンザリしてか、パリでサーカス曲芸師の見習いのような気楽な生活をしている。

当然、父親は不満だが、母親のイザベルは息子の生き方には共感を持っていたが、隣の家でのパーティで知り合った青年に好感を持ち、彼らのいるパリに一拍脱出旅行をすることにした。

胸に湿疹のあるイザベルはパリの病院での治療を口実にしたが、実はそれは外泊のための嘘で、彼女は平板なノルマンディでの家畜を相手にした単調な生活から息抜きしたかったのだ。

わたしなどは、見ていて、てっきり彼女は末期の皮膚がんであって、これが最期のパリ旅行。という勝手にドラマティックな設定をしたが、まったくの早トチリ。

または、そのパリ旅行で、ドラマティックな中年情事にと発展して、あわや「昼下りの情事」の逆バージョンになるか、と期待したのだが、一向にドラマは平板なスケッチの連続で盛り上がらない。

皮膚の湿疹治療などは口実だったと知った夫も、パリへ車を飛ばして、妻の行動を探り、ホテルからも追跡したのだが、どうもただの観光のようで<浮気旅行>の気配はなく、拍子抜けしてしまった。

という次第で、作品はミッシェル・セロー主演の名作「とまどい」のように、ドラマティックな恋の盛り上がりもなく、お目当ての青年はツレナくて、旅のおじさんと観覧車に乗って食事をしたり・・・。

しかし見どころのイザベル・ユペールは、まさにポスト・ジャンヌ・モローの風情で、このつかみ所のない中年主婦の浮き草のようなパリの休日を楽しんでいる。さすがに巧い。

パリの映画館では、午後10時頃からの最終回には、多くの中年夫婦が食後の映画を楽しみにやってくるのが日常で、見ていて、たしかにこの作品は、そのような中老年カップルにはぴったりの風味。

日本の映画鑑賞事情では、まったく考えられないことだが、この作品はまさに、ある種の倦怠中高年夫婦のための、心の和む食後酒のような、軽いナイトキャップの味わいなのだ。

 

■外角のシュートにミートした、セカンド・オーバーの手打ちヒット  ★★★☆

●4月4日より、恵比寿ガーデンシネマ・リニューアル開館ロードショー 



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2月10日(火)13-00 京橋<テアトル試写室>

M-018『パリよ、永遠に』" Diplomatie " (2014) Gaumont / film oblige / canal+ / CNC 仏

監督・フォルカー・シュレンドルフ 主演・アンドレ・デュソリエ <83分> 配給・東京テアトル

1944年8月25日の深夜のパリ。ノルマンディに上陸した連合軍が迫るなか、ドイツのナチス軍の占領下にあった市街は外出禁止令が出されていた。

首都べルリンを連合軍の空爆で焼き払われていた直後だけに、敗色濃厚に焦ったヒトラーはパリの司令官に街の歴史的な拠点を、すべて爆破してしまう指令をコルティッツ将軍に出していた。

ホテル・ル・ムーリッスの最上階で指揮をとる将軍の部屋に、パリの総領事のデュソリエが訪ねて来て、市街の爆破を思いとどまるように説得を開始したが、話は簡単ではない。

この歴史的に有名な二人の首脳の会話は、事実をもとに戯曲化されて、非常にサスペンスのある舞台劇として上演されているという。つまり映画もデュソリエとニエル・アレストリュプの二人芝居。

まさにこの二人の紳士の会話は、戦争と平和を生き抜いた聡明な戦友のように、お互いの立場と世界的な歴史の温存を賭けて語り尽くされるのだ。

同じような対国の軍人の友情を描いた名作「老兵は死なず」を思い起こすが、この一触即発の状況はルネ・クレマンの戦争映画「パリは燃えているか」でも連合軍サイドの大作で描かれたこともあった。

しかし、このように一刻も猶予のなかった事実があったことは、不勉強ながら、この作品で知らされて緊張した。もちろん、パリのエッフェル塔や凱旋門も今もあるので、交渉の結末は判っている。

この歴史的な対談は、結果論ではなくて、戦争破壊による無為な文化的な財産と人名の損失であり、ことの<無駄さ>を語りつくす知性の戦争だろう。このタイトルはズバリ<外交>なのだ。

たしかジャン・ギャバンが主演した『パリ横断』は、その緊迫の戒厳令下のパリの街の端から端迄を、食料を密輸するサスペンスだったが、実際には、このような背景があったことを知った。

同じくリノ・ヴァンチュラ主演でも「レイプ殺人事件」といって、パリの刑事と、レイプ殺人の容疑者だった男が、夜どおし二人きりでトコトン語り合う作品があったが、これもその二人芝居。

誰でも知っている美しいパリは、実はこの二人の独仏の紳士が、歴史と平和のために戦略を度返ししてまで語り合ったお陰だったという、実に感動的な時間を再現した作品として、大いに感動した。

さすが「ブリキの太鼓」「ボイジャー」のシュレンドルフ。・・・お見事。

 

■好球をファールで粘って、粘り勝ちのフォアボール。 ★★★★

●3月7日から、Bunkamuraル・シネマでロードショー 



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2月9日(月)13-00 築地<松竹本社3F試写室>

M-017『ソロモンの偽証・前編/事件』(2015)松竹映画・松竹撮影所

監督・成島 出 主演・藤野涼子 <121分> 配給・松竹映画

宮部みゆきの長編ミステリー学園小説を、<事件>とその<裁判>を二部作に分けて公開されるという、ちょっと異例な興行となるが、見ていてたしかに面白い。

松竹映画としては松本清張の「砂の器」並みの大作だが、無理をしないでニ部作にしたのは興行的にも懸命だったが、たしかにこの内容では一気に見るのはシンドイだろう。

雪の降ったクリスマスの終業式の朝。校庭には中学2年生の同級生の落下死体が雪に埋もれていた。警察は状況から自殺として処理したが、同級生の藤野のところには殺人だという手紙が届いた。

その謎の告発状は校長のもとにも届けられていて、前から同級生同士の暴力沙汰もあって、事件性が浮上しだして、とうとう学生の間でも自殺説には疑問を持つ生徒が多くなり、事件は謎を孕む。

そんな時に事件に疑問を持っていた同級の女生徒が車にはねられて死亡して、校長は辞職。マスコミはこうした校内のトラブルに関心は寄せるものの事件の真相は謎めいて、謎は暗黙のうちに風化されそうになっていく。

刑事を父にもつ藤野は、社会からは無視されつつある事件の状況に、独自の正義感と友人達の謎だらけの死の真相を暴くべく、校内での裁判を思いついて友人たちに協力を求める・・・これが前編。

ま、事件の発端と、その周辺の状況は描かれて、さて、これから、・・・というところで、この前編は終わるのだが、さすが宮部みゆきの原作が緻密に書き込まれているせいか、興味は尽きない。

「八日目の蝉」でも、生き生きとした現代女性たちの動向を巧みに描いていた成島監督は、一万人もの素人の学生たちからキャスティングした人材を巧みに料理していて、まずは無難な演出で飽きさせない。

下手をすると、ただの学園青春ドラマになりがちな部分もあるが、そこは先生たちや生徒の親たちのドロドロした大人たちの悪臭も巧みに取り入れて、分厚い人間ドラマとして描き飽きさせない。信じていた証言の中の<嘘>が、次作で暴かれるのだ。

これだけ沢山の謎をバラまいて、さて、これを学生たちの素人裁判でそれをどう料理するのか、その期待を4月に公開予定の「後編・裁判」で、どう解明してくれるのか、まずはお手並みを楽しみに待とう。

 

■きわどいファールで粘ってのフルカウントで、結局フォアボール出塁。 ★★★☆☆

●3月7日より、前編のみ全国松竹系公開 



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1月23日(金)19-00 赤坂<キネマ旬報4F会議室>

2015年度・第87回アカデミー賞予想座談会

 

恒例の「キネマ旬報」誌の<アカデミー賞予想座談会>も、ことしで何と17回目。

おなじみの渡辺祥子さんと、襟川クロさんと私の3人での放談座談会も、すでに校正が終わり、20日には本誌も店頭に並ぶでしょう。

ハリウッドでの授賞式も、東京時間23日(月)の午前10時と迫りましたので、わたしの個人的受賞予想のみ、ご紹介します。

座談会誌上でも話しましたが、これはあくまでアカデミー・メンバー6000人の投票予想でして、わたしの個人的な受賞希望ではありません。

 

★作品賞『6才のボクが、大人になるまで』・・・・でも『アメリカン・スナイパー』に受賞して欲しい。

★監督賞・リチャード・リンクレイター・・・・・・でもアレハンドロ・G・イニャリトウ(バードマン)の方が好き。

★主演男優賞・マイケル・キートン(バードマン)・・・・これはカタいでしょう。

★主演女優賞・ロザムンド・パイク(ゴーン・ガール)・・・恐らくジュリアン・ムーアが受賞でしょうが、見てない映画なので予想不能。

★助演男優賞・J・K・シモンズ(セッション)・・・・・・これまでのイメージを粉砕する熱演は圧倒的。

★助演女優賞・パトリシア・アークエット・・・・・「6才のボク・・」よりも目立った好演は、むしろ主演賞でしょうが。

 

という次第で、今年は予想された作品には小粒な作品が多くて、世界情勢の機運からもイーストウッドには不利な状況が無念。

でも、サプライズ受賞を期待したいですね。 



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2月5日(木)10-00 目黒<ウォルト・ディズニー映画試写室>

M-016『イントゥ・ザ・ウッズ』" Into The Woods " (2014) Walt Disney Production

監督・ロブ・マーシャル 主演・アナ・ケンドリック <121分> 配給・ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン

あの傑作「シカゴ」のロブ監督のミュージカル新作なので楽しみに早朝に駆けつけたが、どうも<眠りの森の美女>の呪いか、どうもパッとしない印象。

おなじみの「シンデレラ」、「赤ずきんと狼」、「塔の上のラプンツェル」、「ジャックと豆の樹」などのストーリーの後日談を合体したミュージカルという発想は面白い。

舞台は赤ずきんちゃんが迷い込んだ深い森で、ドラマはその森の中にいたオオカミ男のジョニー・デップや、「白雪姫」の魔女のメリル・ストリープたちの多彩な歌で展開していく。

この発想は、たしかに<ハッピー・エンドのそのあとで>という興味で面白く、スクランブルに展開するというアイデアは興味だある。しかし、どうもパッとしないのはなぜなのだろう。

それぞれの主人公かちが抱えるトラブルをメロディにして、その着想はいいのだが、オールスター・ドラマの宿命で、それぞれの関係に無理があり、それでリズムが安定しないのだ。

しかも全編暗い森の中で開放感がなく、それぞれの童話のエピソードを活かしたバランスも均等な配分は、これは礼儀としてわかるものの、結局はメリルの魔女が圧倒的に目立ってしまうのだ。

彼女は、「マンマ・ミーヤ」や「ミュージック・オブ・ハート」でも実はミュージカル向きの才能は多芸であって、この森の中の混乱のなかでも、さすがはアカデミー女優の貫禄で独走する。

しかし、せっかくのブロードウェイのミュージカルも、ステージならポイントが絞れただろうが、CGやサウンド・エフェクトで大サービスするので、この皮肉なアン・ハッピー後日談の苦味が薄い。

監督としても、結局は持ち前のダイナミックなリズム感覚を発揮するシークエンスがなく、まさに<借りて来た猫>のように静まり返った印象。

という意味では、ディズニーのブランド・カラーだったファンタジックなハッピーエンド神話を、わざわざシニカルに視線を変えたという狙いは、かえって不鮮明に重く感じられた印象だった。

この手の<ハッピーエンドの逆絵>は、ニール・サイモンやウディ・アレンのような、いかにも<大人のジョーク>が隠し味になるのだが、それが中途半端なままに感じられたのが残念。

 

■多角的に外野にファールを連発したが、結局はキャッチャー・フライ。 ★★★

●3月14日より、全国春休みロードショー 



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2月3日(火)13-00 六本木<シネマートB-1試写室>

M-015『君が生きた証』" Rudderless " (2014) Samuel Goldwyn Films / Paramount Home Media Production

監督・ウィリアム・H・メイシー 主演・ビリー・クラダップ <105分> 配給・ファントム・フィルム

アメリカの学園都市で、ハイスクールでの学生の発砲事件が起きて、突然、この悲劇でひとり息子を失った中年のビリーは絶望して、広告会社の職を辞して、離婚した。

それから2年後、いまだに放心したように人生行路を変更したビリーは家を売り、自堕落にひとり湖畔でボート暮らしをして、アルコール浸りの日々は無惨に見えた。

息子の遺品には未発表の楽譜や、生前に自室で録音していたデモ・テープなどがあったが、息子の才能を知らない父親は手もつけなかった。

しかし、ある夜、街のカフェで酒を飲んでいたら、そこのステージに無料演奏していた若者が、妙に息子にタイプが似ているので隠し持っていた譜面を見せると、若者はそれを唄い出した。

意気投合した二人は、他の譜面も捨てていた息子の私物から見つけ出して演奏し、これが案外にいい。そこで父親のビリーは暇にまかせて息子の譜面をギター一本で唄ってみた。

ま、こうなると、失われた息子との音楽を通じての追想のメロドラマなのかーーーと、少々その甘さに退屈しだしたのだが、なぜか周囲の反応や、この父親の変貌がうまくいかないのだ。

これは名優でもある、監督メイシーの手腕の限界なのか、と諦めかけていたら、何と映画は終盤にかけて、意外な真実を描き出したのだ。これには眠かったわが瞼も見開くことになったのだ。

つまり、このストーリー・レトリックは、まったく別の視点から描いていたので、あとはガラリと違った作品に変貌するのだった。これはネタバレになるので、その展開は書けない。

それにしても意外なシナリオで、確かに思い起こすと、あの射殺事件からのドラマの視点は冷酷で、どうもわたしの方が常識的で甘かったことに気づかされるのだ。お見それしました。

さすがメイシー監督は、こんな逆アングルのシナリオ・レトリックを隠していたのか、実に恐れ入ったエンディングの着地。まるでフリッツ・ラングのノワールのようなトリックなのだ。

たしかに原題の「方向不明」という<レイダーレス>は、ただのバンドの名前かと思っていたら、実はそこに、大きな落とし穴があった。でも心地よい意外性でもあった。

 

■普通のライト・フライかと思っていたら、グングンと伸びて野手の頭上を抜くツーベース。 ★★★☆☆

●2月21日より、新宿シネマカリテなどでロードショウ 



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1月のニコタマ・サンセット傑作座上映ベストテン

 

★リビングルームのフラットTVとは別に、自室で18年間使用していたアナログTVが、ついに全国的なデジタル放送変更のために、遂にモニターを買い替えました。

二子玉川109アイマックス・シネコンシアターの4月オープンに向けて、わがサンセット傑作座も、新たにAQUOS・LC32H11のワイドスクリーンとなりました。

で、その機能変更に関係して、1月にテスト上映した作品も、いつもとは違った趣味的なセレクションに充実しました。

 

●1・『めまい』58(アルフレッド・ヒッチコック)監督に61年に会ったときに、どうして殺しを中断でバラしたのかを質問したら、"You Will See…."と言われました。

●2・『人生劇場・飛車角と吉良常』68(内田吐夢)てっきり健さんが吉良常だったと思っていたら、「宮川」の間違いでしたが、これが義理と人情、任侠映画の原点。

●3・『フェリーニのローマ』72(フェデリコ・フェリーニ)ローマの地下鉄工事が難航しているのは、古代ローマの遺跡がゴロゴロしている、という皮肉な実状オペラ。

●4・『アメリカから来た男』91(アレクサンドロ・タラトーリ)嫁さん探しにトスカーナにやってきたジョー・ペシは、実はニューヨーク・マフィアの殺し屋だった、とは。

●5・『恐怖の土曜日』55(リチャード・フライシャー)これがシネマスコープのカラーでなくて、モノクロ・スタンダードだったら、あああ、かなりのフィルム・ノワール。

 

●6・『小早川家の秋』61(小津安二郎)

●7・『トップハット』35・フレッド・アステア

●8・『レザボア・ドッグス』92(クウェンティン・タランティーノ)

●9・『生きていた男』57・アン・バクスター

●10・『黒衣の花嫁』68(フランソワ・トリュフォ)

 

+その他に見た作品は

『パリの恋人』56・オードリー・ヘプバーン

『サイコ』98・ガス・ヴァン・サント

『ミスター・ラッキー』48・ケイリー・グラント

『神の左手』55・ハンフリー・ボガート

『奥様は顔が二つ』41・グレタ・ガルボ

『カバーガール』44・ジーン・ケリー

『第一の大罪』80・フランク・シナトラ・・・・などなどでした。



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