細越麟太郎 MOVIE DIARY

最新の映画情報や批評を掲載します。

●11月の試写ベスト3

2008年11月30日 | Weblog
●11月に見た試写ベスト3

1/『そして、私たちは愛に帰る』(ファティ・アキン)主演/バーキ・ダヴラク ★★★★☆
   トルコの出稼ぎ青年が出くわした、皮肉なドイツでの家族たちとの人間的な繋がりを描く秀作。

2/『チェ/28歳の革命』『チェ/39歳別れの手紙』(スティーブン・ソダーバーグ)主演/ベニチオ・デル・トロ ★★★★
   2部作で描いたキューバの英雄チェ・ゲバラの戦闘の勝利と、その後の悲劇までを魅せる大作。

3/『ロルナの祈り』(ジャン=ピエール&リュック・ダルデンス)主演/アルタ・ドブロシ ★★★☆☆☆
   アルバニアの女性がベルギーで生きて行く為の悲壮なまでの現実的な問題を問う女性映画。

☆他には『シネマ歌舞伎/連獅子、らくだ』、『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミイ』、『ハイスクール・ミュージカル』などが印象的でした。

●シネマ歌舞伎『連獅子/らくだ』でお正月気分連発。

2008年11月29日 | Weblog
●11月28日(金)13-00 目黒<ソニー・PCL試写室>
M-138 『シネマ歌舞伎・連獅子/らくだ』2008 (松竹/SONY)
監督/山田洋次 主演/中村勘三郎 ★★★☆☆
好評のハイビジョン映像による<シネマ歌舞伎>のお正月用の中編2作。
「らくだ」はフグで急死した仲間の弔いで、傲慢な家主をとっちめる痛快な小話で、前作の「文七元結」と似たような江戸下町の人情小噺。
中村勘三郎と坂東三津五郎の息のあった演技で飽きさせない。
そして「連獅子」は華麗な色彩と音響の素晴らしさで、歌舞伎芸能の魅力を見せつける。
それぞれ50分にまとめられた2作品。
この舞台の迫真力を、非常に鮮明に収録した映像音響の技術には、本当に恐れ入る。
まさにお正月気分を盛り上げる格好の公開だろう。

●12月27日より、東劇などでロードショー

●『チェ/39歳別れの手紙』これは悲運な革命家の犬死なのか。

2008年11月27日 | Weblog
●11月26日(水)13-00 六本木<GAGA試写室>
M-137 『チェ/39歳・別れの手紙』Che - part-2 (2008) guerrilla film 米
監督/スティーブン・ソダーバーグ 主演/ベニチオ・デル・トロ ★★★☆☆
パート・1でのキューバ独立革命までの戦いの10年後。
カストロに別れの手紙を書いて消息を絶ったチェ・ゲバラは、ボリビアの山奥にいた。
搾取の続く圧政から、どうにか農民たちを解放すべく、彼は名前を換えて変装して密入国。
『死ぬ気で生きるのだ』とゲリラを励まして闘う。
朋友のカストロはハバナで豪華なランチをしているのに、どうしてチェは山奥で草の根を食べて喘息に苦しみながら、ふたたび他国のゲリラ活動に没頭したのか。これが革命家の使命なのか。
キューバには妻と5人の子供を残して、新政府の要職もあるのに、なぜ彼は他国の革命のために命を捨てるのか。
その単純な疑問が判らないまま、また激しいゲリラ戦争を見せられた。
そして軍部に破れ、あっけない処刑。それが事実である。
たしかに彼は歴史的な英雄かもしれないが、そこにあの『アラビアのロレンス』との、映画的許容が貧弱に見えてしまったのが惜しまれる。

●1月下旬、日劇などでパート・1と順次公開。

●『エレジー』更けゆく男と病み行く女の哀歌。

2008年11月26日 | Weblog
●11月25日(火)13-00 東銀座<シネマート試写室>
M-136 『エレジー』Elegy (2008) lakeshore entertainment 米
監督/イサベル・コイシェ 主演/ベン・キングズレー ★★★☆☆
大学教授のベンは相変わらずに好色な独身老人。
生徒のペネロペ・クルスの美貌に魅せられて、またしてもシニアの恋をする。
旧友のデニス・ホッパーは忠告をするが、医師のひとり息子も呆れてプレイジジイの行動は無視している。
ある程度の距離をおいた交際だったが、彼女に乳がんが見つかってからドラマは濃くなる。
よくある年齢差恋愛のメロドラマだが、『死ぬまでにしたい10のこと』のイサベル監督は、このお互いに死という時間を真近に控えた男女の恋を、知的な視線でクールの描いて行く。
でも、問題はこの男の心の迷いに、どうも共感が湧かないのは困ったもの。あまりにも人生を身勝手に生きて来た男の姿は、ウディ・アレンの映画のようだが、好きになれなかった。
趣味性はいいとしても、欠点がない。
やはりどうしても女性監督は、父親の嫌らしさを、女性的なイメージとして描くのだろうか。

●1月下旬、日比谷シャンテ・シネなどでロードショー

●『ロシュフォールの恋人たち』がデジタル映像で復活した歓び。

2008年11月22日 | Weblog
●11月21日(金)13-00 京橋<東京テアトル試写室>
M-135 『ロシュフォールの恋人たち』Les Demoiselles de Rochefort (1967) 仏
監督/ジャック・ドゥミ 主演/カトリーヌ・ドヌーブ ★★★☆☆
デジタルリマスター版による40年ぶりの公開となる。
あの『シェルブールの雨傘』の栄光の陰になって、いまいち人気のなかったフレンチ・ミュージカルだが、監督の悲願の情熱はまだ感じられる作品。
ハリウッド・ミュージカルに憧れたドゥミ監督は『踊る大紐育』のロシュフォール版を企画して、街をパステル・カラーに塗り替えて、あのジーン・ケリーや『ウェストサイド物語』のジョージ・チャキリスまで出演させて、このファンタジー音楽作品を作った。
三組のそれぞれのカップルが、運命のいたずらで遠回りしながらもハッピーエンドを迎える。
今回『シェルブールの雨傘』も同時に公開されるが、この美しい時代遅れのミュージカルを、新鮮な目で見て欲しいものだ。若いひとには必ず驚きがあるに違いない。

●2009年1月、シネセゾン渋谷でロードショー

●『チェ/28歳の革命』オールロケーションの迫真力。

2008年11月21日 | Weblog
●11月20日(木)13-00 六本木<GAGA試写室>
M-134 『チェ/28歳の革命』Che - part 1 (2008) guerrilla film 米
監督/スティーブン・ソダーバーグ 主演/ベニチオ・デル・トロ ★★★★
キューバ革命の実力者として讃えられながらも、カストロとの確執などで消えて行った英雄ゲバラ。
彼の28歳での革命戦争と、39歳で処刑されるまでの謎の晩年を、二部構成で作られた超大作だ。
『トラフィック』でアカデミー賞を授賞したソダーバーグ監督が、久しぶりに本領を発揮した政治アクションで、同じく助演男優賞を授賞したベニチオが、この作品ではプロデュースも兼ねている。
このパート・1では、山岳地帯でのゲリラ戦を指揮して、次第に勢力を拡大していくゲバラの人間的な成長を追い、後年の国連でのスピーチ・シーンと巧妙なフラッシュ・バックで見せて、飽きさせない。
とにかくべニチオの熱気ある演技が凄いので、一気に、パート・2も見るべき大作だが、敢えて一度時間を空けることにした。
それほど気合いの入った男性映画であり、強烈な個性を詠った力作でもある。
すぐに39歳の後半も見たくなる見事な展開は、さすがであった。
また多くのアカデミー賞にも、ノミネートされるだろうことは、察しがつく。

●2009年早春、日劇などで一挙ロードショウ

●『ロルナの祈り』はいつになったら届くのか。

2008年11月20日 | Weblog
●11月19日(水)13-00 京橋<映画美学校第一試写室>
M-133 『ロルナの祈り』Le Silence de Lorna (2008) ベルギー
監督/ジャン=ピエール & リュック・ダルデンヌ 主演/アルタ・ドブロシ ★★★☆☆☆
ロルナはアルバニアからベルギーに来ている出稼ぎの不法滞在者だ。
闇商人の紹介でベルギー人の麻薬青年と強制結婚させられ、彼を事故死させて住民権を取得、その後にロシア人と強制結婚して自分との住民権を高額で売ろうとしている。
信じられないような青春だが、いまやヨーロッパでは日常的に起こっている人種格差問題だ。
ダルデンヌ監督は、そんな理不尽な生き方を、とくに説明も同情もなしに、まるでドキュメンタリー映画のように淡々と描いて行く。
まったくドラマティックなシーンも、音楽もなく、ただ生きるだけのために奔走するロルナの青春は過酷だ。しかも彼女は妊娠しているらしい。
人間である前に、ひとりの女性として生きようとするロルナの未来は見えないままだ。
先日見た『そして、私たちは愛に帰る』と似たようなヨーロッパの現状だが、こちらの方が辛口だった。

●来年陽春、恵比寿ガーデンシネマで公開。

●『007/慰めの報酬』はこのリベンジで返済されたのか。

2008年11月18日 | Weblog
●11月17日(月)13-00 神谷町<ソニーピクチャーズ試写室>
M-132 『007/慰めの報酬』Quantum of Solace (2008) MGM/Sony
監督/マーク・フォースター 主演/ダニエル・クレイグ ★★★☆☆☆
前作で新しいボンドを襲名したダニエル・クレイグの007第二作だが、話は前の事件を引き継いでいて、いきなりのカーチェイス。
たしかにこれは、かつてのジェームズ・ボンドではなくて、エージェントになりたての007なのだから、やたら元気があって向こう見ず。
上司のMからも煙たがられている無鉄砲さが、壮快でもあって、あの『ブリット』のスティーブ・マックイーンにそっくりな扮装で暴れ回る。
話もどこかジェーソン・ボーンのような、曖昧な組織との確執があったりして、「悪」の姿も不鮮明にしている。
たしかに初期のボンドなのに、国際的な情勢は現代なので、前の007を思うと不思議になる。
ま、とにかく面白いアクションシーンのスリルは満載なのだから、屁理屈は無用だろう。

●2009年1月、サロンパス・ルーブル丸の内などでロードショウ

●『マンマ・ミーア! 』はまさにマンマのための元気ミュージカルだ。

2008年11月15日 | Weblog
あ●11月14日(金)13-00 半蔵門<東宝東和試写室>
M-131 『マンマ・ミーア!』Mamma Mia ! (2008) universal
監督/フィリダ・ロイド 主演/メリル・ストリープ ★★★☆☆
往年のポップスグループ(ABBA)のヒット曲で構成されたミュージカルだ。
エーゲ海の孤島で小さなホテルを経営している母と娘の、結婚式直前の日。
母ひとりで育てられた娘は、実の父に会いたくて、母の日記帳を盗み見て、それらしい3人の男を呼ぶ。
一応は身に覚えのある3人の男達も、その結婚式にやって来た。
大ヒット・ミュージカルの舞台を、エーゲ海に移してロケされた映像は、まさに女性の夢。
母のメリルの昔仲間もやってきて、陽気な歌と踊りのシーンが展開し、さて、本当の父親はこの3人のうちの誰なのか、ということで、ストーリーは盛り上がる。
ほぼ予想道理の上質なミュージカルではあったが、どうも演出のテイストが、ころころ変わるのが落ち着かない。これが今風のバラエティと解釈すれば、それでもいいが、ちょいとおふざけも過ぎた分マイナスとなった。とくにラストでのABBA風の楽屋落ちは、カーテンコールのつもりだろうが、いただけない。
サービス過剰だ。とはいえ、メリルの歌と踊りでの奮闘ぶりは認めるべきだろう。
元気なおばさまパワーが炸裂する、圧倒的なご婦人用ミュージカルである。

●2009年1月30日より、日劇などでロードショー

●『ハイスクール・ミュージカル/ザ・ムービー』のバスケ・ダンスが元気。

2008年11月13日 | Weblog
●11月12日(水)13-00 六本木<ウォルト・ディズニー試写室>
M-130 『ハイスクール・ミュージカル/ザ・ムービー』High School Musical the Movie (2008) disney
監督/ケニー・オルテガ 主演/ザック・エフロン ★★★☆☆
テレビの人気ミュージカルの映画版だが、映画のサウンドやスクリーンの広がりを活かしたハイテンションで快活な作品。
ハイスクール卒業までのカウントダウンは、プロムとバスケと卒論ミュージカル。
これで将来の大学や、就職や結婚などの人生方向が決まるので、学生は必死である。
とかく問題の多いハイスクール生活は、最近「アメリカン・ティーン」でも紹介されたが、こちらは、いかにもディズニーのブランド・カラーを踏襲した陽気で健全な作品にまとまっていて、屈託がない。
「フェーム」っぽいが、「フットルース」の元気がいい。
バスケのスピード感と、そのチアガールの応援を振り付けに活かしたミュージカルのアイデアが、非常にスピード感がある。
青春の若さと活力を、とにかくビッグスクリーンに炸裂させた快感は楽しい。
みんな、あのように若い時代はあったのだ。

●2009年2月7日より全国ロードショー