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細越麟太郎 MOVIE DIARY



3月26日(木)10-00 六本木<アスミック・エース試写室>

M-034『シグナル』The Signal " (2014) Low Spark Films / I M Gloval 

監督・ウィリアム・ユーバンク 主演・ブレントン・スウェイツ <97分> 配給・ファントム・フィルムズ

インディーズ系の小さなプロダクションで作るサイエンス・フィクションな映画は、メジャーほどの予算がないので、その分、映像的な知恵を絞るから面白い。

この作品は、テーマとしては60年代に流行したような、アメリカ軍部の秘密研究所にあった未確認異生物の隔離施設であった<エリア51>をもじったフィクションだ。

「ソーシャル・ネットワーク」のようなマサチューセッツ工科大学に通うインターネットの天才青年が、大学のインターネットにハッキングしてきた<ノーマッド>という知能犯を割り出す。

つい先日見た「ブラックハット」も偶然そのような違法ハッカーの逆探知追跡サスペンスだったが、こちらの知能犯はもっと手強いのだった。

面白半分に、そのハッカーの発信先を、友人とガールフレンドの学生3人で休暇を利用して逆探知追跡。その謎の発信エリアがネバダ州の砂漠の中なのを追跡して、ロストハイウェイに迷い込む。

おおお、これはデヴィッド・リンチの「ツイン・ピークス」の禁断エリアではないか、と、当方などはお気に入りの展開なのである。しかしそのハッカーの発信先は寂れた廃家でひとけはない。

そして、よせばいいのに、その謎の地下室に踏み込んだ瞬間、何者かにアタマを強打されて失神。で、・・気がつくと明るい手術室のような何もない部屋で、宇宙服のローレンス・フィッシュバーンがいた。

ああ、これは「マトリックス」のようにヤバい展開である。

ブレントン青年はそれでも、自分の置かれた状況や友人とガールフレンドの所在確認をするのだが、ここは原子力研究所なのか、その汚染防止宇宙服のスタッフたちはクールなのだ。

さてここは原子力秘密施設なのか、彼らはロボットなのか、それとも、もしかしてエイリアンなのか、ゾンビなのか。とにかく、この展開は、かなりヤバいのである。

あとは、この秘密の<エリア51>からの脱出は可能なのか。という具合のミステリー・サスペンスなので、ストーリーは書けないが、この作品は密度のある映像で、なかなかリアリティ味の濃い展開。

そしてブレントン青年は、記憶を喪失している間に、なぜか健全な両足が、精密な金属で作られていたことに愕然とする。あとは見てのお楽しみ、だ。

 

■意表をついたサード左を抜ける強打でツーベース。 ★★★☆☆

●5月中旬、TOHOシネマズ新宿ほかでロードショー 



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3月24日(火)京橋<テアトル試写室>

M-033『真夜中のゆりかご』" A Second Chance " (2014) Zentropa  entertainments 34 Aps / Zentropa Sweden AB デンマーク

監督・スザンネ・ビア 主演・ニコライ・コスター=ワルドー <102分> 配給・ロングライド

あの秀作「インソムニア」の系列の、いかにも北欧らしい非常に知的で、恐るべき悪意に満ちた人間感情で彩られた、素晴らしいミステリーだ、

これも一種のフィルム・ノワールだと解釈したのは、ある幼児虐待と妻へのDVを調査している刑事が、思わぬ個人的なトラブルから犯罪に引き込まれるという発想だ。

ニコライは堅実な刑事だが、やっと生まれた自分の幼児が夜泣き症で、妻と交代で寝かしつける毎夜だったが、ある夜にその幼児が死んでいて、妻は絶望で半狂乱となったのだ。

咄嗟の判断で、刑事は息子の遺骸を、調査中のDV家族の家に忍び込んで、彼らが寝静まっている最中に、トイレに放置されていた彼らの赤子と交換してしまった。

この発想が、まず予想外なのだが、ま、刑事も動転していたし捜査の経過から考えられるベターな発想だったのだ。これが原題タイトルの「第ニのチャンス」だったのだろう。

暴力的なDV夫婦は、自分たちの子供が亡くなったことに疑問は持ちつつも、暴行事件として処理されて、夫は投獄され一件落着。と、ここまでは刑事の計算通りだったのだ。・・・が。

真相に気がついた刑事の妻は、自責の念と鬱病から投身自殺をしてしまった。さあ・・・どうするダンナの刑事さんよ。という展開でドラマは思わぬ方向に行くので、それは書けない。

しかし、実に面白いのは、この最悪の展開は、刑事の軽率な判断だったにせよ、彼は彼なりの正義感で事態を収拾しようとする連想が、実に面白いミステリーとしての味わいを深める。

もちろん、「未来を生きる君たちへ」でアカデミー外国語映画賞を受賞した監督と脚本のコンビは、映画的な語り口に問題はないが、やはり撮影と音楽処理には北欧らしい知性を漲らせる。

秀逸なのは、ラストシーンだ。ああ、そうか、こうなるか・・・という、実に人間ドラマの深さと意外性は、この驚くべきラストシーンに象徴されている。

主演の刑事を演じたニコライは、どこか若きロバート・レッドフォードのような陰りの表情を滲ませて好感だ。

 

■完全に投手の配球を読み、見事に左中間フェンスまでの流し打ちで俊足スリーベース。 ★★★☆☆☆

●5月15日より、TOHOシネマズ・シャンテなどでロードショー 



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3月23日(月)13-00 六本木<シネマートB1試写室>

M-032『リベンジ・オブ・ザ・グリーン・ドラゴン/暴走する哀情』" Revenge of the Green Dragons " (2013) AMG entertainment 

監督・アンドリュー・ラウ 制作・マーティン・スコセッシ 主演・ジャスティン・チョン <97分> 配給・AMGエンターテイメント

2006年に、アカデミー作品賞受賞の「デパーテッド」は、マーティン・スコセッシ監督が、香港映画アンドリュー・ラウ監督「インファーナル・アフェア」のリメイクだった。

そのご縁なのか、義理なのか、それとも恩義なのか、とにかく同じような話をニューヨークに移民してきた中国人たちの裏社会での勢力闘争を描いたチャイニーズ・バイオレンス。

まさに名作「ゴッドファーザー」での、イタリア移民たちの勢力争いの歴史を、90年代のニューヨーク、クイーンズ地区を舞台に変更しての中国移民たちの権力闘争を描いている。

という広告までは、かなり興味をそそるのだったが、映画はどうもイタリアン・マフィアの話を、そっくりチャイニーズ・マフィアのテーマに衣替えしただけで、どうもパッとしないのだ。

あのブルース・リーでも絡んでいれば、もう少しは盛り上がったのだろうが、なぜか全体に新人キャスティングにも生彩がない。

これは主演のジャスティンに魅力がないのと、権力争いのパターンが過去に見た、このての作品たちの域をまったく出ていなくて、抗争アサシンのシーンなどにも過去に見た映画そのままでアイデアがない。

ただ人種が東洋人に移っただけで、ひとり強面のレイ・リオッタも警察当局の調査官で、ドラマには絡んでこないのだ。これでは、まったくクラシック映画のレンタル・DVDを借りて来て見ている気分。

たしかに1992年11月16日に、現地新聞に報道された事件の映画化だというのだが、それにしてもドラマにするにあたっての新しい映像の工夫が見られないので、終始退屈してしまった。

ま、陰の中国系の移民集団グリーン・ドラゴンが、クイーンズのチャイニーズ・タウンの縄張りに、台湾人の実力者が入り込んで来ての人種闘争は由々しい事件だろうが、われわれから見ていると大差がない。

それは先日見た傑作「海にかかる霧」のように、南北朝鮮の軋轢のように明快だと、ドラマ性にも明確さがあろうが、この作品での中国と台湾の海外戦争では、とにかく見分けがつかないのだった。

恐らくスコセッシも、その辺りの明快な区分けが出来ていなかったのか、とにかく斬新な演出アイデアも終始見られなかったので、当方としては残念ながら、大いに退屈してしまった。

 

■シュートに詰まらされたショートフライ ★★☆☆

●5月1日より、新宿武蔵野館などでロードショー 



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3月20日(金)13-00 神谷町<ソニー・ピクチャーズ試写室>

M-031『新宿スワン』" Sinjuku Swan " (2015) 制作・山本又一朗(新宿スワン制作委員会)

監督・園 子温 主演・綾野 剛 <149分> 配給・ソニー・ピクチャーズ・エンターテイメント

まさに深夜の極悪風俗街と化したネオン地獄新宿歌舞伎町を舞台に、そこで生き延びる若者たちの姿を描いた和久井 健の大ヒットコミックの激写活劇。

いまやラスベガスを一蹴した享楽地獄の歌舞伎町は、あの鬼才ギャスパー・ノエが惚れ込んでロケーションをしたほど、映像作家にとっては魅力溢れる街なのだ。

千葉から上京して来た野良犬のような綾野は所持金もなくなり、夜の歌舞伎町でガールハントしていて地元の連中にボコボコに殴られたが、偶然に伊勢谷友介の金髪が似合う仕切り屋に救われる。

彼らはこの夜の歌舞伎町で、低俗風俗業界の斡旋をしている裏稼業のベテランで、もちろん素人が客引き等をしてはいけない世界。縄張り争いは「ウェストサイド物語」同様に熾烈なのだ。

キム・ジウンの「甘い人生」や、金城武が主演にた「不夜城」にも共通したシチュエーションだが、さすがに園監督は地元フランチャイズの強みで、フンダンに悪臭の街を舐め回す。

しだいにフットワークが身についた綾野は、まさに「仁義なき戦い」のように夜の歌舞伎町を闊歩しては、若い女性たちをスカウトして、敵のシマの境界線も冒すようになり闘争も激化する。

ま、お話としては、昭和の東映やくざ映画でうんざりするほどに見慣れた裏稼業の紛争なのだが、さすがに「ヒミズ」や「地獄でなぜ悪い」などのアウトロー監督のタッチはケレン味がなくていい。

昨年の映画祭の覇者、綾野も金髪にしてのチンピラ・スタウト役でボコボコに殴られながらも、次第に男らしい根性を磨き、それをコーチする伊勢谷のフォローも「るろうに剣心」のように手堅い。

ほぼ男社会の圧政のもとで、相変わらずに沢尻エリカは新宿歌舞伎町の夜の蝶のキワドい色気も見せ、ライバルの組織の若頭を演じる山田孝之も後に引かない。だから150分の長尺も飽きないのだ。

たしかにコミックならではのバイオレンス誇張もあるが、あのミラノ座の閉館祝か、広々した屋上や裏階段を使っての夜間ロケーションはさすがに迫力がある。これは多くの海外映画人には魅力の映像だろう。

皮肉にも、この映画の舞台になった新宿歌舞伎町の「新宿コマ劇場」の跡地に新規オープンした「TOHOシネマズ新宿」でのこけら落としというのも、皮肉だが都市の隆盛をシンボライズしているようだ。

 

■ファールでかなり粘っての弾丸ライナーがレフトのフェンス上段に直撃。 ★★★☆☆☆

●5月30日より、TOHOシネマズ新宿他でロードショー 



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3月18日(水)13-00 内幸町<ワーナー・ブラザース映画試写室>

M-030『インヒアレント・ヴァイス』" Inherent Vice " (2014) warner brothers / IAC films 

監督・ポール・トーマス・アンダーソン 主演・ホアキン・フェニックス <140分> 配給・ワーナー・ブラザース映画

ノーベル文学賞ノミネートの常連作家トマス・ピンチョンの人気小説を映画化したのは、これもアカデミー賞ノミネート5回というポール・T・アンダーソン。

<物事に内在する欠陥>というタイトルの原作は、伝統的なハードボイルド小説の名作たちを、70年代の風俗をバックにしてカリカチュアライズした、一種、おとなの戯画だ。

という点では、レイモンド・チャンドラーの小説で人生の視界を完全に狂わされた当方としては無視できない。フィリップ・マーロウという探偵は、わたしの究極のヒーローなのだ。 

しかし、そのハードボイルド探偵映画の歴史的な老舗のワーナー・ブラザース映画が、あの「マルタの鷹」や「三つ数えろ」などの伝統的スタイルと名声にカラーペイントをする新作を作った。

これがもし他社の作品ならば、由々しい問題になるところだが、ま、自分の会社の自慢の銘柄に、自虐的な茶化しを入れるのだから、ひとつのブラック・ジョークとして見ればいい、と思った。

70年代といえば、ヒッピーがロック・ジェネレーションを豪語した時代。そこでホアキンが演じる私立探偵は、これまた、もろ、ヒッピー・ルックスだから閉口してしまう。

ストーリーは、一応、伝統的に、失踪した元彼女が事件の依頼に現れて、トラブルで消えた彼氏の行方を探してくれ、という、毎度おなじみの展開は探偵映画の基本パターン。

しかし、どうも私立探偵のダンディズムにこだわる当方としては、このグウタラなピッピー探偵のファッションやルックスはウザいのだ。これは別にいいスーツを着ればいい、という問題じゃない。

依頼された事件を解決すれば、探偵の業務はいいとしても、老舗のワーナー映画は、ボギーの時代から、60年代にはポール・ニューマンがいて、バート・レイノルズ、ロバート・ダウニー・JR・・・・などなど。

いかにもハリウッド・ディテクチィブのダンディなスタイルが継承されたスタイルがあった。B・パーカーのスペンサー探偵もマーロウを継承したのだ。

しかしこのホアキンは困ったものだ。あの「ロング・グッドバイ」のエリオット・グールドも軟体探偵だったが、ラストではマーロウの意地は見せた。が、このホアキン探偵は徹底して変なのだ。

この探偵改革が受けたのか、原作は人気があり、映画はことしのアカデミー賞で、脚色賞と衣装デザイン賞の2部門でノミネートされて、それなりに評価はされているという。

しかし、わたしは、この探偵ものは、もう見たいとは思わない。やっぱりハードボイルドな探偵にはダンディなソフトハットとスーツでコルトをぶっ放して欲しいのだ。

 

■意表をついたドラックバントで出塁したが、オーバーラン。 ★★★

●4月18日より、ヒューマントラストシネマ渋谷などでロードショー 



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3月16日(月)13-00 六本木<シネマートB-1試写室>

M-029『海にかかる霧』”Haemoo" (2014) Next Entertainment World / Fine Cut 韓国

監督・シム・ソンボ 制作・ポン・ジュノ 主演・キム・ユンソク <111分> 配給・ツイン+ザジフィルムス 

とにかく、韓国の巨匠、あのポン・ジュノ監督が、初めてプロデュースをした最新の犯罪映画となると、これまた胸騒ぎがするのだ。だって、「殺人の追憶」のスタッフ再編成だ。

話は、韓国の老朽漁船が、このところの不漁続きで経済的にも行き詰まり、かねて裏の組織から誘いのあった脱北者たちの密航に手を貸す事になった。

ヘミングウェイの「脱出」と同じ話で、ハリウッドでは3度も映画化されたストーリーだが、これが脱北者たちの密航入国問題となると、時代的にはかなりヤバい。

深い霧の夜に、30人ほどの北の密航者たちを洋上で引き渡されて、それを韓国の港に密入国させるという簡単な作業だったのだが、この夜は最悪の展開となったのだ。

いつもの当局による監視船のチェックを逃れて、密航者たちを漁船の大きなイケスの中に一時的に隔離したのだったが、その取り調べの間に、脱北者たちはガスもれのために死亡したのだ。

困った船長のキムとクルーは、密航発覚を葬るために、その死亡者たちの体を切り分けて海に捨ててしまい、遺体は魚の餌食になる筈だった、が、ひとりの娘が生き残っていたのだ。

それは船員のパク・ユチョンが、密かに好意をもって食事を分けて別の船室に隠していた娘なのだったが、彼女が生きていては困るスタッフは、ふたりを殺そうと狭い漁船の中を探す。

という殺人サスペンスだが、その夜は突然に海も荒れ出して、この老朽船は「パーフェクト・ストーム」に巻き込まれ難破。船長他の船員たちも海に投げ出されてしまう。

翌朝、ふたりは近くの海岸に奇跡的に流れ着いて、意識の戻った脱北の少女は姿を消してしまった。かくして密航は失敗に終わったのだが、ドラマは、その数年後のワンシーンで締めくくる。

そうか、ポン・ジュノは、このシーンが描きたかったのか、と思わせる皮肉な運命。このワンカットで、この作品は、ただの密航サスペンスのレベルを脱出したのだ。

 

■右中間を抜けた長打コースで、セカンドを回ったところで好返球。 ★★★☆☆

●4月17日より、TOHOシネマズ新宿で、先行ロードショー 



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3月13日(金)13-00 半蔵門<東宝東和試写室>

M-028『ブラックハット』" Blackhat " (2015) Universal Studio / legendary pictures

監督・マイケル・マン 主演・クリス・ヘムズワース <133分> 配給・東宝東和

なにしろ、あの大好きなマイケル・マン監督の、5年ぶりの新作だから、試写室への坂道も駆け足になる。

今回のテーマは、いま取り沙汰されている企業コンピュータへの違法浸入でプログラムを破壊してしまうという、ネット・テロリストの捜査だ。

冒頭、その巨大なコンピュータ機器の中に、強力なウィールスが入り込み、香港にある原子力発電所のシステムが破壊されて爆発。作業員にも死者が出た。

スパイ・ハッカーの特殊な遠隔操作によっての妨害だが、とくに犯人グループとされる組織からの強迫や要求はないまま中国側としてはサイバー・システムの専門捜査官を任命。

ところが、その直後にシカゴの先物取り引き所の機能もハッキングされて、株価が異常に高騰して市場は混乱。FBIは、このふたつのシステム破壊には関連があると睨んだ。

最近も取り沙汰されているハッカーによるシステム浸入犯罪だが、その追跡には、テロ・グループ以上の頭脳をもったネット捜査官が必要とされて、FBIは混乱。

そこまでの映像は、巨大なコンピュータ機器の内部にウィールスが僣入していく様子を、スピーディなCG処理による至近映像で見せるのが、どうもウザい。これってどうも変。

まるで未来SFのような映像ばかりで、いつものマイケル・マンらしくないなーーーと心配していたのは、最初の40分くらい。やっとハッカー詐欺容疑で逮捕されていたクリスの登場だ。

これは中国側の捜査官の提案で、獄中から一時的に条件つきでFBIが彼を出所させたのだが、彼が事件の背景を追跡捜査しだしてからは、ドラマもやっと、あのマイケル・マンのリズムになる。

学生時代にも知り合っていた中国人捜査官と仮出所したクリスは、当局の動きを察知したハッカー・グループが、マレーシア、ジャカルタに潜伏していると睨んで移動捜査を開始。

ところが、そのネット・テロ・グループの潜伏拠点を割り出した矢先、突然、捜査官の乗った車が爆破され、FBIの捜査官も銃撃の最中に殺されてしまう。その周辺の演出は、さすがはベテラン・マン。

あとは怒濤のクライマックスへの展開となるので、それは見てのお楽しみだが、この後半の畳み込むようなアクションの切れ味は、あの「ヒート」や「ザ・クラッカー」のマン演出の真骨頂となるのが、さすがだ。

『ブラックハット』とは、悪意に組織のコンピュータやネットデータ浸入するハッカーのことだというが、やっぱりラストは実弾の銃撃が炸裂するので、ご心配なく。

 

■フルカウントからの打球はセンターのフェンス上方に当たるスリーベース。 ★★★★

●5月8日より、TOHOシネマズ新宿ほかでロードショー 



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3月6日(金)13-00 <外苑前>・GAGA試写室

M-027『あの日の声を探して』" The Search " (2014) La Petite Reine / La Classe Americaine / France 3 Cinemas

監督・ミシェル・アザナヴィシウス 主演・ベレニス・ペジョ <135分> 配給・ギャガ

だいたいに於いて、邦題タイトルの意味が、よくわからない新作というのはやっかいだ。自分が高齢のせいか、とても憶えられないのだ。

しかも、その意味がよく理解できないと、つい作品を見る前に拒絶反応が生じてしまっていけない。この作品の邦題も、見てもまだ、よくワカラナイ。

先日見た「イマジン」のように、全盲の人間が主人公ならば、このタイトルは理解できる。しかし探偵映画じゃないのに、このタイトルは困ってしまうのだ。

原題は、あのモンゴメリー・クリフトの「地上より永遠に」制作前に、監督のフレッド・ジンネマンがクリフトを起用して映画化した「山河遥かなり」の"The Search"だ。

オリジナルは、第二次世界大戦の後に、親の行方がわからない戦争孤児のために、アメリカの兵隊がポーランドに残って、親探しをするというヒューマニズムの秀作だった。

それを今回は、つい先年に、あの「アーティスト」でアカデミー監督賞も受賞したフランスの監督が、個人的に温めていた企画をリメイクしたのだという。

時代は現代で、1999年、ロシア軍の侵攻戦争で両親を虐殺され、姉と離ればなれになったチェチェンの戦争孤児が、施設を脱出して肉親探しの旅に出る。

EUヨーロッパ連合の人権擁護委員えもあるペレニスは、赤十字の救済委員のアネット・ベニングの協力を得て、この砂浜におちた一本の針を探すような奇跡的な捜索に協力する。

ジョン・ウェインは秀作「捜索者」では、インディアンに掠奪された姉の娘を、単身で先住民族の居留地に捜索にでて、感動的なラストの救出があったが、この作品も本質的には同じだ。

ただ、その人道的な主題と平行してロシア軍兵士の、チェチェン兵士への不必要な残虐な殺戮シーンが多く、しかもかなりにリアルな戦闘と殺害シーンが多いので、テーマが錯乱してしまう。

先日見た「ヒューリー」もどきのリアルな戦闘シーンと、戦場の瓦礫の凄惨なリアルさには閉口するだけに、肝心の人道シーンの暖かみは薄れてしまっている。

ま、監督としては、この戦闘のパワフルな残虐性で、現実の残酷性を描こうとしたのだろうが、これはアクション娯楽映画ではないので、どうも後味が苦くなってしまい、感動が半減。

それにしても、あのアネット・ベニングが、どうしてまたこの作品で、スッピン助演するのか、それも不思議だ。

 

■左中間への痛烈な当たりだが、フェンスからの返球も早く、シングルヒット。 ★★★☆

●4月24日より、全国ロードショー 



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3月5日(木)13-00 <築地>松竹映画本社試写室

M-026『イマジン』" Imagine " (2012) Zjednoczenie Artystow sp. z.o.o. KMBO production/ ポーランド

監督・アンジェイ・ヤキモフスキー 主演・エドワード・ホッグ <105分> 配給・マーメイドフィルムズ

ジョン・レノンの名曲「イマジン」とは全く関係のないポーランドの異色作で、今年のアカデミー外国語部門賞を受賞した「イーダ」同様に、まったくユニークな映像の才能だ。

ポルトガルのリスボンにある、全盲患者のための視覚障害者施設に、教師として赴任してきたエドワードは、自身も全盲だが、白い杖を使わない<反響定位>という方法で移動する。

患者たちは、施設の塀の中だけで行動して、白い杖によって自分の位置や他の施設の状況や位置関係を察知して、同じ盲人たちとの人間関係も正常に保っている。

しかしエドワードは周囲の音を肌で認知したり、手を叩いての反響などで自分の位置を察知しながら、施設の外にも普通に出かけて、カフェでコーヒーをオーダーしたりする。

路面電車が狭い湾曲した石畳の道を走るリスボンの街は、独特の旅情を持っていて人気の高い観光地で、最近もジェレミー・アイアンズ主演の「リスボンに誘われて」で紹介された。

冒頭のタイトルシーンは暗いスクリーンに、犬のハアハアいう呼吸する音だけが聞こえていて、少しずつ周囲が明るく見えて来て、それが老犬なのが判るという演出になっている。

つまり監督の意図は、あくまで盲人の鋭い音感を通じて、周囲の風景や位置関係、そして人間たちの姿が見え出してくるという計算になっているが、あくまで盲人の感覚を先導する。

だから、見ている我々は、その異常な体感にまごつき乍らも、このユニークな映画の鋭い聴覚に先導されて、体感していくという不思議な気分で映画の進行に惑わされる。

エドワードの部屋の近くには自室に閉じこもっている若い女性盲人のエヴァがいるが、窓辺に来る鳥たちのさえずりを心の支えにしているが、エドワードの言動には魅力を感じていた。

そして、まさに<手探り>の接近が始まり、行動力のあるエドワードは彼女を施設から、そとの世界に連れ出す様になる。しかし目の見えないふたりの行動は非常に危険でもある。

映画はその目の見えないふたりの危なっかしいデイトを、思わず注視してしまうのだが、このことが、そのまま目の見えるわれわれと、そうではないふたりを見るという<映画的な関係>となる。

だから、カフェの離れたベンチにいる彼らの恋が、非常に盲目的な脆い関係なのを、ただひたすら注視せざるを得ない、というモドカしい感情に幻惑されていくだけなのだ。

これもまた、映画という、視覚聴覚芸術の表現手段なのである。

 

■投手の投げるボールの音でカーブを察知してセンター前にヒット。 ★★★☆☆

●4月、渋谷、(シアター)イメージフォーラムでロードショー

  


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2月のニコタマ・サンセット傑作座<自宅上映>ベストテン

 

*1・『バンドワゴン』53・DVD・監督ヴィンセント・ミネリ <フレッド・アステア> ★★★★☆☆

   人気の落ちたスターのアステアが、若い連中と新しいブロードウェイのショウに挑む唄と踊り満載の傑作で、MGMミュージカルの最高傑作の1本。

 

*2・『肉体の悪魔』47・VHS・監督クロード・オータン・ララ <ジェラール・フィリップ> ★★★★☆

   戦時中のパリ郊外で、学生のフィリップは夫が出征中の若妻と恋のおちて、妊娠した女性は急死してしまうという、恋の皮肉と現実の残酷さを抉る秀作。

 

*3・『プードルスプリングス』98・VHS・監督ボブ・ラフェルソン <ジェームズ・カーン> ★★★★

   初老の探偵フィリップ・マーロウは富豪の女性と結婚したが遺産相続のトラブルに巻き込まれるという、ロバート・B・パーカーが、チャンドラーをコピーした傑作。

 

*4・『人生劇場・飛車角と吉良常』68・DVD・監督・内田吐夢 <鶴田浩二> ★★★★

   尾崎士郎の原作を新しい解釈で監督がリメイクした任侠の本道。義理と人情、友情とおとしまえ。任侠映画の血潮と責任を、入念な感性と美意識で描いた秀作。 

 

*5・『老兵は死なず』43・DVD・監督マイケル・パウエル <アントン・ウォールブルック> ★★★☆☆☆

   第一次世界大戦で戦った英国兵士と敵の軍人との交流を、ひとりの女性との運命的な因果関係で描いた皮肉な人生。ふたりの軍人に愛されたデボラ・カーの美しさ。

 

*6・『殺人者』46・VHS・監督・ロバート・シオドマク <バート・ランカスター>

*7・『トリコロール・青の愛』93・LD 監督・クシシュトフ・キェシロフスキー <ジュリエット・ビノシュ>

*8・『幽霊紐育を歩く』41・VHS・監督・アレキサンダー・ホール <ロバート・ヤング>

*9・『突然の恐怖』52・DVD 監督・デヴィッド・ミラー <ジョーン・クロフォード>

*10・『ペチコート作戦』59・VHS 監督・ブレイク・エドワーズ <ケイリー・グラント>

 

*その他に上映した傑作は・・・・『WATARIDORI』01・ジャック・ペラン

『眠りなき街』53・ギグ・ヤング

『ブラジルから来た少年』78・グレゴリー・ペック

『甦る熱球』49・ジェームズ・スチュワート

『ザ・バッド』05・モーガン・フリーマン

『マカオ』52・ロバート・ミッチャム

『ボーン・コレクター』99・デンゼル・ワシントン・・・などでした。 



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