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不定形な文字が空を這う路地裏

真昼の銃創







常軌の線上を、僅か踏み外した爪先
指の根元からふくらはぎまで
気狂いじみた痙攣が走った
おー、なんということだ
ある程度までは信じることが出来ていたのに、これじゃあまるで出来損ないだったと認めざるを得ない
唇の下は濡れていた、何時の間にか流れた涙が
輪郭を辿って落ちて来ていたのだ
振動の向こうに近くて遠い世界が見える
あれは俺が踏み込むべきではなかった筈のもの、傍観して、適当に区分けしていれば
それだけで
良かった世界
古いミュージカルの台詞、『鳥と魚は結婚出来ない』、だいたいそんな意味
俺はやっちまった鳥か魚なのさ
ズブロッカで調整を試みたが、今度ばかりはどうも効き目が無いらしかった
快楽はだいたい肝心な時には押し戻されてしまう
虫が入り込んでいてさ、羽音が五月蝿い
眠ろうとする意識の高度をずり下げてしまう
俺は舌打ちをしながら
何をすれば許されるのかと、別に誰を怒らせた覚えも無いけれど
何をすれば許されるのかと、そればかり考えていた、それは多分たまたま
表層に浮遊した潜在意識下の何かなのだろう
昼間、僅かな空き時間に
眺めて海のことを思い出す
叩きつけたように晴れた空の下、沖の台風のせいで
波はテトラポッドに喰らいついていた
カロリーメイトとコーヒーを流し込みながら、俺、あん時考えたんだ
いつか海の傍に住もう、いつか海の傍に住んで
何もかも駄目になったと思ったら荒れ狂う波打ち際に足を運び
その波をくぐることが出来るかと自問するんだ、もしも出来ると思ったなら
そのまま歩を進めていけばいい
後には何も残らない
俺が居たという多少社会的な痕跡だけが残る
波がテトラポッドに喰らいついている、夏の波打ち際は
餓え渇いた獰猛な獣みたいだ
柔らかな牙は
どんなものの命をも喰らい尽くすことが出来る
水平線の彼方から吹きつける風には大陸の匂いがあって
人ひとりになど何の意味も無いとむやみに信じさせてくれる
海はピストル、あっという間だぜ


ああ
ある程度までは



信じることが出来ていたのにな

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