10/31-11/1にかけて、第23回日本山岳耐久レース(ハセツネCUP)に参加してきた。近年ホノマラ内でもハセツネに興味を持つ人が増えている(気がする)ので、一度大会録をまとめてみようと思う。
◯大会概要
東京都あきる野市を発着点として奥多摩の山々を一周するコース。
距離: 71.5km 累積標高差: 4,800m 制限時間: 24時間
特徴1. 長丁場のレースにも関わらず途中で与えられる補給が42km地点の水orポカリ1.5㍑のみ。コース終盤の湧き水を利用することは許可されているが、その他一切の援助を沿道の応援や他のランナーから受け取ることは失格と見なされる。
特徴2. スタートが午後1時と遅いため、トップ選手でさえコースの半分近くを夜間走として過ごすことになる。
これらのルールは大会名に名を冠する故長谷川恒男氏が、このコースを用いて単独登山のトレーニング(当然エイドなし夜間走含む)を行っていたことに由来する。その歴史の古さもあってか、UTMF等の100マイルレースが普及した現在でも、国内トップ選手の多くが照準を合わせる、日本最高峰のトレイルレースのひとつに位置づけられている。また一般のランナーにとっても、ハセツネの持ちタイムはトレイルランナーの実力の指標として(名刺代わりみたいな感じ)よく使われる。
◯参加の経緯
昨年完走した際にまだ脚に余裕があると感じたため、真剣にタイムを狙えばどこまでの記録が出せるのか試してみたくなった。ハセツネはクリック合戦の厳しさでも有名だが、4月に開催されるハセツネ30Kで男子1000位以内or女子100位以内に入れば優先エントリー権がもらえるため、これに参加し500位くらいで完走してエントリー権を得た。ハセツネ30Kはロード区間が多いので、フルでサブ3.5程度の実力があれば余裕で基準クリアできると思う。まあハセツネ30Kのクリック合戦がそもそも厳しいんだけど。
前回大会までの記録
第18回: 腸頸靭帯を痛め、第二関門でリタイア
第19回: 21:46:50 男子1380位
第22回: 15:25:03 男子905位
◯直前期の練習
9月のシルバーウィークに信越五岳トレイル110km→4日インターバルで信州戸隠トレイル45kmという無茶な日程でレースを走ったため、それ以降はほとんどジョグ中心の練習+たまに坂道ダッシュと標高差300m程度のトレラン1回のみ。
月間走行距離
8月: 167km
9月: 248km(レース込み)
10月: 100km
◯装備品
#ウェア
・カペルミュールの長袖サイクルジャージ
ジップの開閉で体温調節ができるサイクルジャージは適当なランシャツよりトレランに向いていると思う。
・アシックス 3/4丈クロップドパンツ
上下ともになるべく体にフィットしたものが好き。
・ソックス: TABIOの五本指ランニング用
・シューズ: Montrail Bajada
ソールの磨り減りとメッシュの穴あきにより、今回のハセツネが引退試合となった。
#その他の持ち物
・バックパック: Salomon S-LAB ADV SKIN 12
ベストタイプでフィット感が良く、小物入れへのアクセスもしやすい。
・サーマルウェア: Patagonia Caplene4
・レインウェア: Mont-bell トレントフライヤーjacket
昨年より時期が遅いため防寒具をやや充実させた。レインウェアは一応必携装備とされている。
・ヘッドライト: BlackDiamond ICON
・ハンドライト: Gentos 閃
・熊鈴
#補給
・iPhone(コース高低図とペースノートの確認に使用)
・水 1,500ml in ハイドレーションパック
・ポカリスエット 500ml in ソフトフラスク
・ハニースティンガー(Asai x2, Ginsting x2, Strawberry&Kiwi x1)
ジェル系はいろいろ試したが、味覚的に受け付けるのはこれだけだった。
・ヤマザキの羊羹(1パック約60g) x3
・おつまみ用サラミ 60g
・ミックスナッツ 30g
これまでの経験上、レース中後半にも胃が受け付けてくれるものを選んだ。サラミとミックスナッツは直ぐにはエネルギーに変換されないが、塩気のあるものをアクセントにしたいので重宝している。
16時間くらい山の中で動ける量を余裕もって選んだつもりだったが、実際には14時間分くらいだった。
○当日~レーススタート
会場から3駅の秋川駅近くのホテルにて8:30起床。朝食におにぎり、総菜、味噌汁をとった後着替えと準備を済ませ、10時に出発。11時前に会場着、受付を済ませスタッフのすみれってぃと軽く話した後で、物販を周り補給用ジェルを追加購入。体育館にエアマットを敷いて軽いストレッチ、軽食(おにぎり、バウムクーヘン、ジュース)、トイレと荷物の最終チェック。
スタート30分前の開会式に合わせてスタート地点に移動。10, 12, 16, 20時間と目標タイムに合わせて並べるようになっており、12時間の列の最前に並んだ。実際の目標は14時間だが、例年の経験から周りもサバを読むことがわかっているので、この位置が妥当と判断した。スタートに実際に並ぶと予想以上に多くのランナーが極端にサバ読んで10時間以内の列に並んでいるように見えてげんなりした。この時点で出走2,400人中真ん中くらいの位置に。
○スタート~浅間峠(第一関門 22.7km)
ゲート付近ですみれってぃ&濱ちゃんに見送ってもらいスタート。トレイルに入るとすぐに渋滞区間になるため、最初の1km程度のロード区間で毎年激しい位置取り争いが起こる。今年は前方にさほど早くないサバ読みランナーがたくさんいたので、多少無理をしてでも順位を上げて早めにトレイルに入った。この時点で順位は1,000番程度か。トレイル最初の渋滞はゆっくり歩ける程度。止まった時間も累計2~3分程度で済ませることができた。集団内での位置によっては累計30分以上の足止めもあり得るので、かなりマシな方か。狭いシングルトラックを少し進んだ後で、再び1km弱のロード区間へ。ここでもなるべく追い上げたが、ロード区間の終わりにトイレに寄ったため順位はおそらく変わらず。今熊山の登りは道幅の広いポイントを見つけては前のランナーを抜き少しずつ順位を稼いだが、大股で段差を越える等やや無駄な動きをしてしまったことが後の疲労につながったらしい。
今熊山を登りきってから19kmの生藤山までは、小刻みな登り下りをひたすら繰り返しながら高度を上げる区間になっている。コース高低図を見るとただのゆるい登りに見えるため、初参加の人は注意すべし。後方の順位だと登り次第で渋滞になるが、今回は常にゆっくり歩ける程度で済んだ。やや急な下りも多いが、いずれも距離は短いのでスピードを出して下ってしまえばとても楽しめる区間だと思う。脇道をうまく見つけて前方のランナーを抜き去る度に狩りをするキツネのような気分で駆け下りた。7km入山峠と15km醍醐丸でタイムを確認したところどちらもサブ13ペースでの通過と分かった。この辺りから、軽くつまずくたびに両足ふくらはぎがつりそうになってきたこともありオーバーペースを危惧したが、気持ち良く走れるペースがベストなペースと信じてしばらくはそのまま進むことに決めた。
醍醐丸通過以降は下り基調の走りやすい区間だが、この辺りで右腸頸靱帯と前太ももに痛みを感じ始めた。下りでスピードを出しづらくなり、順位も少し落とし、ペースコントロールに悩みながら進むことになった。天候が曇りのため4時半頃から視界が悪くなり始め、ハンドライトを使用した。
通過タイム: 3:51:10 消費した補給: 羊羹x1, ハニースティンガーx2, ポカリスエット200ml
○浅間峠~月夜見駐車場(第二関門 42.1km)
関門到着時点でサブ13ペースまで7分の余裕があったので、その分だけ目一杯休むことに決めた。サーマルウェアを重ね着、ヘッドランプ装着、トイレ、右腸頸へのテーピング追加、その後残り時間目一杯ストレッチ(の最中にふくらはぎが攣った)してから再出発。これ以降本格的なナイトランが始まったが、今回は霧が深くたまに小雨もパラつくような天候だったため、ライトの光が散乱し視界が悪く、足場の確認に気を遣った。登りでは問題無いが、下りでは視界が悪いとスピードが出せない。後で聞いた話によれば、黄色のライトは霧で拡散しにくいらしい。買い替えの際には色調切り替えのできるものを選ぶことを検討したい。
浅間峠以降は三頭山まで登り基調で、ここまでに比べれば小刻みな上り下りは少ない。この区間の緩い登りでいかに走れるかどうかがタイムに関わってくるので、スキあらば走ることを常に意識した。浅間峠までで脚にかなりの疲労が溜まっていたはずだが、ナイトラン区間でテンションが上がったためか体もメンタルもかなり楽になり、下りのペースも通常通りまで回復した。
30kmあたりで2本目の羊羹を食べたところで胃が甘いものを受け付けなくなってきたので、おつまみサラミを齧り始めた。レースの補給でサラミを導入したのは初めてだったが、これが大当たりだった。噛むごとに染み渡るジャンクな脂っこさが、気分を束の間の俗世間に引き戻してくれる。その後に飲むポカリスエットも甘さが引き立ち、美味しく感じられる。ミックスナッツに替えてトレラン補給メニューにレギュラー入りさせようと決めた。
中盤の難所三頭山が近づくにつれ、登り基調のコースはガチ登りに変わっていく。段差の大きなガレ場を急斜面を登っていくため、心肺と既にかなり酷使している脚に大きな負担がかかっていくが、周りの選手をペースメーカーにして遅れないように進んだ。途中で雨が強くなってきたためレインウェアを装着したが、暑さで不快だったためすぐに脱ぐことになった。三頭山山頂ではボランティアスタッフが灯りをともしながら登ってくるランナーを鼓舞してくれるので、テンションを上げて登りきった。
三頭山山頂を通り過ぎる頃には雨が上がっていた。ここの下りはは木の根もガレ場も少ないが、土がやや滑りやすく周囲で転倒が続出する。まともに駆け下りるのは諦めて、着地ごとに足を滑らせながら降りていく。ある程度下るとつづら折の駆け下りやすい区間に変わる。その後小さな峠と月夜見の短いロード区間を経て、第二関門へ。
通過タイム: 7:42:25 消費した補給: 羊羹x1, ハニースティンガーx1, サラミ30g, ポカリスエット300ml
○月夜見駐車場~御岳山(第三関門 58.0km)
まずエイドでポカリ500mlと水500mlを補充。補給食の確認の際に、一つ残っていたはずの羊羹をどこかで落としたことに気づく。残りの糖分がハニースティンガーx2 とポカリ500mlしかないため、サラミとミックスナッツを早めに消費しておきハニースティンガーを温存する方針に決めた。
ここまで多少の余裕を持ってサブ13できるペースを維持できていたので、ここでも最低限のストレッチだけして再出発。やや登り基調のコースを進んむと、御前山への急登が始まる。スキーゲレンデのような単調な急傾斜がだらだら続く区間でモチベーションの維持が大変なので、サラミを噛みリラックスしつつ前方のランナーをペースメーカーにした。この頃になってようやく霧が晴れてきて、足元がはっきり見えるようになってきた。これ以降やや危険な下りスピードを出したい区間が続くので、一安心した。山頂の方向に見える月が綺麗だった。
御前山の山頂でペースを確認しようとしたところでiPhoneのバッテリー切れに気づく。山の中で機内モードへの切り替えを忘れていたのが原因らしい。ペースノートが見れなくなったため、これ以降はなんとなくのペースで進むことになった。またゴール地点のすみれってぃ&濱ちゃんへの連絡手段も無くなったため、スタッフとしてゴール地点にいるであろう時間帯(午前2時, ゴールタイム13時間)に確実にゴールしようと決めた。
御前山からの下りは落差の大きな階段、大きな岩ばかりのガレ場、滑りやすい土の急斜面など、下りにくい地形のフルコースになっている。この下りだけで5回くらい転倒しただろうか?シューズのソールが減っているからかグリップも効かない気がしてきたため、後続のランナーに道を譲りつつゆっくり下った。下りきると大ダワをへてゆるやかな登り、その後走りやすいフラットなトレイルを経て、大岳山へ。
大岳山は巨岩だらけのガレ場を急登する区間になっており、地形的にはコース最大の難所とも言えるが、ほとんどのランナーがスピードを出せずくよじよじ登るしかないので、個人的には回復ポイントだと思っている。ただし山頂からの下りも似たようなガレ場なのでこちらはスピードとの兼ね合いが難しい。急な下りを終えれば、第三関門の御岳山まではゆるやかな下り基調の非常に走りやすいコースになっている。
通過タイム: 10:50:20 消費した補給: サラミ30g, ミックスナッツ10g, ポカリスエット500ml
○御岳山~ゴール
御岳山の最終関門は素通り。少し先へ進むと御岳神社の水場あるのでここで小休止にした。手水舎で手を軽く洗い喉を潤し、軽く太もものストレッチをして再出発。御岳神社付近は温泉街になっており、普段は観光客で賑わっている。紅葉屋のくるみうどんがオススメ。しかし時刻はちょうど真夜中なので、近隣の迷惑にならぬようボランティアスタッフが身振り手振りだけで誘導&応援してくれる。ハセツネ最後の山となる日の出山までは概ねフラットで距離も短いので30分程度で着いた。
日の出山から東京方面の夜景をチラリと見て、そのまま山下りへ。急な階段がしばらく続くので焦らず進み、傾斜がゆるやかになってから残り10km程度のロングスパートをかけた。ここからゴールまでは大半がゆるやかな下りなので、ヒャッハー!!してるうちに終わってしまう。前方にランナーが見えるたび声をかけて抜かせてもらい、木の根やガレ場も減速せず飛び越える。練習も合わせれば10回くらい下ったことのある慣れたコースなのに、暗い中でのスパートということもあってか、土で足を滑らせ2回転倒してしまった。しかし楽しいのでスピードは落とさない。金比羅神社からのアスファルト急傾斜(苦手)だけ少し減速して下り、残り数百メートルの住宅地区間へ。時計を確認するとサブ12.5が狙えることが分かったので、そのままラストスパートへ。最終コーナーを曲がったところで、ゴールゲートの向こうにタグを外そうと待ち構えていたすみれってぃスタッフを見つけ、トップスピードのまま突っ込んだ。
ゴールタイム: 12:30:00 男子414位
消費した補給: ハニースティンガーx2, ミックスナッツ10g, 水は全コースを通じて2.5㍑程度
○ゴール後
ゴール時刻は午前1時半。記録証を発行してもらったところで初めて12時間半のタイムをギリギリで達成できたことを知った。振る舞い豚汁→荷物まとめ→シャトルバスで近くの温泉へ→座敷で軽食&仮眠→午前9時から閉会式→しばらくの間ゴールで後続のランナーを応援して会場を出た。夜はすみれってぃ&濱ちゃんと焼肉で打ち上げ。
○雑感
・今回は運営から用意された書類の中に非公式のペースノートがあり、サブ12-17のペースについて、コース中の計12箇所の地点での目安通過タイムが記されておりペースコントロールがしやすかった。他のレースでも、過去のリザルトを元に目安通過タイムを記録しておくと走りやすいのでは。
・トレランではベストなタイムを出すためのペース配分がなかなか難しいが、今回は極めてうまくいったと思う。しかし最後に猛スパートをかける余裕があったことを考えると、あと30分は縮められる?かも。
・美味しい補給を用意するのは大事。レースのたびに新しいものを持っていって試すのも面白い。
・今回は例年より3週間ほど遅く開催されたこともあってか気候が異なり、低体温症が続出したらしい。深夜の三頭山は2℃くらいまで下がったとか。ナイトランを含むレースでは注意が必要。
・スタート~生藤山と大ダワ~ゴールの区間は電車でのアクセスも良いので、トレラン練習におすすめ。
・「ゴールを見届けます!」と激励をもらえたおかげでレース中盤にモチベーションが維持できたし、見届けてもらえる時刻を目標に走れた。「寝てるかもしれねっス!( *`ω´)」だったらこの記録は出せなかった。
・エイド一箇所での水分補給以外で人の手を借りてはいけない(転倒した際に他のランナーに手を貸してもらうことさえ厳密にはルール違反)というストイックなレースだが、ボランティアやスタッフが真夜中にも要所要所で、山中のボランティアはテント泊でシフト交代しながら、それもハイテンションで応援してくれるので孤独感は無い。スタッフ・ボランティアがエイド以上のサポートをくれる大会だと思う。ホノマラからはすみれってぃ、濱ちゃんが(あと昨年は西も)ハードなシフトでスタッフ参加してくれたが、楽しく過ごしてもらえたようで嬉しい。本当にありがとうございました。
・ハセツネはスルメレース。自分は走れば走るほどより深く楽しめるようになってきたし、実際リピーターも多い。フルマラソンサブ4レベルの走力、30km程度のトレイルレースの経験、十分な装備さえあれば完走できるレースだと思うので、関東に住んでる人はもうちょっと気軽に参加して良いと思う。奥多摩のデス・ロードでヒャッハー!!しようぜ。
◯大会概要
東京都あきる野市を発着点として奥多摩の山々を一周するコース。
距離: 71.5km 累積標高差: 4,800m 制限時間: 24時間
特徴1. 長丁場のレースにも関わらず途中で与えられる補給が42km地点の水orポカリ1.5㍑のみ。コース終盤の湧き水を利用することは許可されているが、その他一切の援助を沿道の応援や他のランナーから受け取ることは失格と見なされる。
特徴2. スタートが午後1時と遅いため、トップ選手でさえコースの半分近くを夜間走として過ごすことになる。
これらのルールは大会名に名を冠する故長谷川恒男氏が、このコースを用いて単独登山のトレーニング(当然エイドなし夜間走含む)を行っていたことに由来する。その歴史の古さもあってか、UTMF等の100マイルレースが普及した現在でも、国内トップ選手の多くが照準を合わせる、日本最高峰のトレイルレースのひとつに位置づけられている。また一般のランナーにとっても、ハセツネの持ちタイムはトレイルランナーの実力の指標として(名刺代わりみたいな感じ)よく使われる。
◯参加の経緯
昨年完走した際にまだ脚に余裕があると感じたため、真剣にタイムを狙えばどこまでの記録が出せるのか試してみたくなった。ハセツネはクリック合戦の厳しさでも有名だが、4月に開催されるハセツネ30Kで男子1000位以内or女子100位以内に入れば優先エントリー権がもらえるため、これに参加し500位くらいで完走してエントリー権を得た。ハセツネ30Kはロード区間が多いので、フルでサブ3.5程度の実力があれば余裕で基準クリアできると思う。まあハセツネ30Kのクリック合戦がそもそも厳しいんだけど。
前回大会までの記録
第18回: 腸頸靭帯を痛め、第二関門でリタイア
第19回: 21:46:50 男子1380位
第22回: 15:25:03 男子905位
◯直前期の練習
9月のシルバーウィークに信越五岳トレイル110km→4日インターバルで信州戸隠トレイル45kmという無茶な日程でレースを走ったため、それ以降はほとんどジョグ中心の練習+たまに坂道ダッシュと標高差300m程度のトレラン1回のみ。
月間走行距離
8月: 167km
9月: 248km(レース込み)
10月: 100km
◯装備品
#ウェア
・カペルミュールの長袖サイクルジャージ
ジップの開閉で体温調節ができるサイクルジャージは適当なランシャツよりトレランに向いていると思う。
・アシックス 3/4丈クロップドパンツ
上下ともになるべく体にフィットしたものが好き。
・ソックス: TABIOの五本指ランニング用
・シューズ: Montrail Bajada
ソールの磨り減りとメッシュの穴あきにより、今回のハセツネが引退試合となった。
#その他の持ち物
・バックパック: Salomon S-LAB ADV SKIN 12
ベストタイプでフィット感が良く、小物入れへのアクセスもしやすい。
・サーマルウェア: Patagonia Caplene4
・レインウェア: Mont-bell トレントフライヤーjacket
昨年より時期が遅いため防寒具をやや充実させた。レインウェアは一応必携装備とされている。
・ヘッドライト: BlackDiamond ICON
・ハンドライト: Gentos 閃
・熊鈴
#補給
・iPhone(コース高低図とペースノートの確認に使用)
・水 1,500ml in ハイドレーションパック
・ポカリスエット 500ml in ソフトフラスク
・ハニースティンガー(Asai x2, Ginsting x2, Strawberry&Kiwi x1)
ジェル系はいろいろ試したが、味覚的に受け付けるのはこれだけだった。
・ヤマザキの羊羹(1パック約60g) x3
・おつまみ用サラミ 60g
・ミックスナッツ 30g
これまでの経験上、レース中後半にも胃が受け付けてくれるものを選んだ。サラミとミックスナッツは直ぐにはエネルギーに変換されないが、塩気のあるものをアクセントにしたいので重宝している。
16時間くらい山の中で動ける量を余裕もって選んだつもりだったが、実際には14時間分くらいだった。
○当日~レーススタート
会場から3駅の秋川駅近くのホテルにて8:30起床。朝食におにぎり、総菜、味噌汁をとった後着替えと準備を済ませ、10時に出発。11時前に会場着、受付を済ませスタッフのすみれってぃと軽く話した後で、物販を周り補給用ジェルを追加購入。体育館にエアマットを敷いて軽いストレッチ、軽食(おにぎり、バウムクーヘン、ジュース)、トイレと荷物の最終チェック。
スタート30分前の開会式に合わせてスタート地点に移動。10, 12, 16, 20時間と目標タイムに合わせて並べるようになっており、12時間の列の最前に並んだ。実際の目標は14時間だが、例年の経験から周りもサバを読むことがわかっているので、この位置が妥当と判断した。スタートに実際に並ぶと予想以上に多くのランナーが極端にサバ読んで10時間以内の列に並んでいるように見えてげんなりした。この時点で出走2,400人中真ん中くらいの位置に。
○スタート~浅間峠(第一関門 22.7km)
ゲート付近ですみれってぃ&濱ちゃんに見送ってもらいスタート。トレイルに入るとすぐに渋滞区間になるため、最初の1km程度のロード区間で毎年激しい位置取り争いが起こる。今年は前方にさほど早くないサバ読みランナーがたくさんいたので、多少無理をしてでも順位を上げて早めにトレイルに入った。この時点で順位は1,000番程度か。トレイル最初の渋滞はゆっくり歩ける程度。止まった時間も累計2~3分程度で済ませることができた。集団内での位置によっては累計30分以上の足止めもあり得るので、かなりマシな方か。狭いシングルトラックを少し進んだ後で、再び1km弱のロード区間へ。ここでもなるべく追い上げたが、ロード区間の終わりにトイレに寄ったため順位はおそらく変わらず。今熊山の登りは道幅の広いポイントを見つけては前のランナーを抜き少しずつ順位を稼いだが、大股で段差を越える等やや無駄な動きをしてしまったことが後の疲労につながったらしい。
今熊山を登りきってから19kmの生藤山までは、小刻みな登り下りをひたすら繰り返しながら高度を上げる区間になっている。コース高低図を見るとただのゆるい登りに見えるため、初参加の人は注意すべし。後方の順位だと登り次第で渋滞になるが、今回は常にゆっくり歩ける程度で済んだ。やや急な下りも多いが、いずれも距離は短いのでスピードを出して下ってしまえばとても楽しめる区間だと思う。脇道をうまく見つけて前方のランナーを抜き去る度に狩りをするキツネのような気分で駆け下りた。7km入山峠と15km醍醐丸でタイムを確認したところどちらもサブ13ペースでの通過と分かった。この辺りから、軽くつまずくたびに両足ふくらはぎがつりそうになってきたこともありオーバーペースを危惧したが、気持ち良く走れるペースがベストなペースと信じてしばらくはそのまま進むことに決めた。
醍醐丸通過以降は下り基調の走りやすい区間だが、この辺りで右腸頸靱帯と前太ももに痛みを感じ始めた。下りでスピードを出しづらくなり、順位も少し落とし、ペースコントロールに悩みながら進むことになった。天候が曇りのため4時半頃から視界が悪くなり始め、ハンドライトを使用した。
通過タイム: 3:51:10 消費した補給: 羊羹x1, ハニースティンガーx2, ポカリスエット200ml
○浅間峠~月夜見駐車場(第二関門 42.1km)
関門到着時点でサブ13ペースまで7分の余裕があったので、その分だけ目一杯休むことに決めた。サーマルウェアを重ね着、ヘッドランプ装着、トイレ、右腸頸へのテーピング追加、その後残り時間目一杯ストレッチ(の最中にふくらはぎが攣った)してから再出発。これ以降本格的なナイトランが始まったが、今回は霧が深くたまに小雨もパラつくような天候だったため、ライトの光が散乱し視界が悪く、足場の確認に気を遣った。登りでは問題無いが、下りでは視界が悪いとスピードが出せない。後で聞いた話によれば、黄色のライトは霧で拡散しにくいらしい。買い替えの際には色調切り替えのできるものを選ぶことを検討したい。
浅間峠以降は三頭山まで登り基調で、ここまでに比べれば小刻みな上り下りは少ない。この区間の緩い登りでいかに走れるかどうかがタイムに関わってくるので、スキあらば走ることを常に意識した。浅間峠までで脚にかなりの疲労が溜まっていたはずだが、ナイトラン区間でテンションが上がったためか体もメンタルもかなり楽になり、下りのペースも通常通りまで回復した。
30kmあたりで2本目の羊羹を食べたところで胃が甘いものを受け付けなくなってきたので、おつまみサラミを齧り始めた。レースの補給でサラミを導入したのは初めてだったが、これが大当たりだった。噛むごとに染み渡るジャンクな脂っこさが、気分を束の間の俗世間に引き戻してくれる。その後に飲むポカリスエットも甘さが引き立ち、美味しく感じられる。ミックスナッツに替えてトレラン補給メニューにレギュラー入りさせようと決めた。
中盤の難所三頭山が近づくにつれ、登り基調のコースはガチ登りに変わっていく。段差の大きなガレ場を急斜面を登っていくため、心肺と既にかなり酷使している脚に大きな負担がかかっていくが、周りの選手をペースメーカーにして遅れないように進んだ。途中で雨が強くなってきたためレインウェアを装着したが、暑さで不快だったためすぐに脱ぐことになった。三頭山山頂ではボランティアスタッフが灯りをともしながら登ってくるランナーを鼓舞してくれるので、テンションを上げて登りきった。
三頭山山頂を通り過ぎる頃には雨が上がっていた。ここの下りはは木の根もガレ場も少ないが、土がやや滑りやすく周囲で転倒が続出する。まともに駆け下りるのは諦めて、着地ごとに足を滑らせながら降りていく。ある程度下るとつづら折の駆け下りやすい区間に変わる。その後小さな峠と月夜見の短いロード区間を経て、第二関門へ。
通過タイム: 7:42:25 消費した補給: 羊羹x1, ハニースティンガーx1, サラミ30g, ポカリスエット300ml
○月夜見駐車場~御岳山(第三関門 58.0km)
まずエイドでポカリ500mlと水500mlを補充。補給食の確認の際に、一つ残っていたはずの羊羹をどこかで落としたことに気づく。残りの糖分がハニースティンガーx2 とポカリ500mlしかないため、サラミとミックスナッツを早めに消費しておきハニースティンガーを温存する方針に決めた。
ここまで多少の余裕を持ってサブ13できるペースを維持できていたので、ここでも最低限のストレッチだけして再出発。やや登り基調のコースを進んむと、御前山への急登が始まる。スキーゲレンデのような単調な急傾斜がだらだら続く区間でモチベーションの維持が大変なので、サラミを噛みリラックスしつつ前方のランナーをペースメーカーにした。この頃になってようやく霧が晴れてきて、足元がはっきり見えるようになってきた。これ以降やや危険な下りスピードを出したい区間が続くので、一安心した。山頂の方向に見える月が綺麗だった。
御前山の山頂でペースを確認しようとしたところでiPhoneのバッテリー切れに気づく。山の中で機内モードへの切り替えを忘れていたのが原因らしい。ペースノートが見れなくなったため、これ以降はなんとなくのペースで進むことになった。またゴール地点のすみれってぃ&濱ちゃんへの連絡手段も無くなったため、スタッフとしてゴール地点にいるであろう時間帯(午前2時, ゴールタイム13時間)に確実にゴールしようと決めた。
御前山からの下りは落差の大きな階段、大きな岩ばかりのガレ場、滑りやすい土の急斜面など、下りにくい地形のフルコースになっている。この下りだけで5回くらい転倒しただろうか?シューズのソールが減っているからかグリップも効かない気がしてきたため、後続のランナーに道を譲りつつゆっくり下った。下りきると大ダワをへてゆるやかな登り、その後走りやすいフラットなトレイルを経て、大岳山へ。
大岳山は巨岩だらけのガレ場を急登する区間になっており、地形的にはコース最大の難所とも言えるが、ほとんどのランナーがスピードを出せずくよじよじ登るしかないので、個人的には回復ポイントだと思っている。ただし山頂からの下りも似たようなガレ場なのでこちらはスピードとの兼ね合いが難しい。急な下りを終えれば、第三関門の御岳山まではゆるやかな下り基調の非常に走りやすいコースになっている。
通過タイム: 10:50:20 消費した補給: サラミ30g, ミックスナッツ10g, ポカリスエット500ml
○御岳山~ゴール
御岳山の最終関門は素通り。少し先へ進むと御岳神社の水場あるのでここで小休止にした。手水舎で手を軽く洗い喉を潤し、軽く太もものストレッチをして再出発。御岳神社付近は温泉街になっており、普段は観光客で賑わっている。紅葉屋のくるみうどんがオススメ。しかし時刻はちょうど真夜中なので、近隣の迷惑にならぬようボランティアスタッフが身振り手振りだけで誘導&応援してくれる。ハセツネ最後の山となる日の出山までは概ねフラットで距離も短いので30分程度で着いた。
日の出山から東京方面の夜景をチラリと見て、そのまま山下りへ。急な階段がしばらく続くので焦らず進み、傾斜がゆるやかになってから残り10km程度のロングスパートをかけた。ここからゴールまでは大半がゆるやかな下りなので、ヒャッハー!!してるうちに終わってしまう。前方にランナーが見えるたび声をかけて抜かせてもらい、木の根やガレ場も減速せず飛び越える。練習も合わせれば10回くらい下ったことのある慣れたコースなのに、暗い中でのスパートということもあってか、土で足を滑らせ2回転倒してしまった。しかし楽しいのでスピードは落とさない。金比羅神社からのアスファルト急傾斜(苦手)だけ少し減速して下り、残り数百メートルの住宅地区間へ。時計を確認するとサブ12.5が狙えることが分かったので、そのままラストスパートへ。最終コーナーを曲がったところで、ゴールゲートの向こうにタグを外そうと待ち構えていたすみれってぃスタッフを見つけ、トップスピードのまま突っ込んだ。
ゴールタイム: 12:30:00 男子414位
消費した補給: ハニースティンガーx2, ミックスナッツ10g, 水は全コースを通じて2.5㍑程度
○ゴール後
ゴール時刻は午前1時半。記録証を発行してもらったところで初めて12時間半のタイムをギリギリで達成できたことを知った。振る舞い豚汁→荷物まとめ→シャトルバスで近くの温泉へ→座敷で軽食&仮眠→午前9時から閉会式→しばらくの間ゴールで後続のランナーを応援して会場を出た。夜はすみれってぃ&濱ちゃんと焼肉で打ち上げ。
○雑感
・今回は運営から用意された書類の中に非公式のペースノートがあり、サブ12-17のペースについて、コース中の計12箇所の地点での目安通過タイムが記されておりペースコントロールがしやすかった。他のレースでも、過去のリザルトを元に目安通過タイムを記録しておくと走りやすいのでは。
・トレランではベストなタイムを出すためのペース配分がなかなか難しいが、今回は極めてうまくいったと思う。しかし最後に猛スパートをかける余裕があったことを考えると、あと30分は縮められる?かも。
・美味しい補給を用意するのは大事。レースのたびに新しいものを持っていって試すのも面白い。
・今回は例年より3週間ほど遅く開催されたこともあってか気候が異なり、低体温症が続出したらしい。深夜の三頭山は2℃くらいまで下がったとか。ナイトランを含むレースでは注意が必要。
・スタート~生藤山と大ダワ~ゴールの区間は電車でのアクセスも良いので、トレラン練習におすすめ。
・「ゴールを見届けます!」と激励をもらえたおかげでレース中盤にモチベーションが維持できたし、見届けてもらえる時刻を目標に走れた。「寝てるかもしれねっス!( *`ω´)」だったらこの記録は出せなかった。
・エイド一箇所での水分補給以外で人の手を借りてはいけない(転倒した際に他のランナーに手を貸してもらうことさえ厳密にはルール違反)というストイックなレースだが、ボランティアやスタッフが真夜中にも要所要所で、山中のボランティアはテント泊でシフト交代しながら、それもハイテンションで応援してくれるので孤独感は無い。スタッフ・ボランティアがエイド以上のサポートをくれる大会だと思う。ホノマラからはすみれってぃ、濱ちゃんが(あと昨年は西も)ハードなシフトでスタッフ参加してくれたが、楽しく過ごしてもらえたようで嬉しい。本当にありがとうございました。
・ハセツネはスルメレース。自分は走れば走るほどより深く楽しめるようになってきたし、実際リピーターも多い。フルマラソンサブ4レベルの走力、30km程度のトレイルレースの経験、十分な装備さえあれば完走できるレースだと思うので、関東に住んでる人はもうちょっと気軽に参加して良いと思う。奥多摩のデス・ロードでヒャッハー!!しようぜ。