放菴日記抄(ブログ)

これまでの放菴特集・日記抄から「日記」を独立。
流動的な日常のあれこれを書き綴ります。

アイヌのムックリ

2012年03月11日 00時08分27秒 | あんなこと、こんなこと、やっちゃいました
 先週の話で恐縮だが、仙台市の青年文化センターでアイヌ文化の催しがあった。

 こういう文化交流って結構すきだったりします。
 ユーカラもナマで聴いてみたいし、ムックリ(口琴)とか、謡いとか、剣舞もあるんですね。
 
 基調講演で「白老町」ときいて一つ納得。伊達藩が明治新政府に願い出て入植した地域ではないですか。これもまた震災後の文化交流だったんですね。

 アイヌ語は柔らかくて、けれど乾いたような音が特徴。東北弁とちがい湿った感じがしない。
 比較的、発音が明瞭で濁音も少ない。だから乾いた音に聞こえるのだろう。やっぱり大陸系の言語なのかも。唄を聴いていてもそう思った。女性が独りで歌う子守唄(とはいいつつ恋唄)はすごく情緒があふれていてよかった。

 さらに大陸のおもかげを感じたのはムックリという楽器。

 手のひらサイズの竹の切片に切り込みをいれ、震動するところ、共鳴するところが作ってある。
 
 これを左手でもち、そのまま左のほほに当てる。ちょうど共鳴版のさきっぽが口にとどくように。
 つぎに右手は震動版にくくりつけられた紐を引っ張る。
 これが震動版に伝わり、竹を共鳴させる。
 口内に震動が続くようならばしめたもの。唇の動きで音は変幻自在となる。
 ビューン、ビューン、ビュンビュンビュンとリズムをつけて音をだす。やがてそれは竹に共鳴し、口腔に共鳴し、深みのある別の音が生まれだす。
 それはまるで荒野を吹きすさぶ風のような、金属音にも似た切れ目のない音。この世の音ともしれない不思議な共鳴音。
 この音、どっかで聞いたことがある・・・。

 思い出すのにそれほど時間はかからなかった。
 これは「ホーミィ(オルディンド)」だ。

 モンゴルの歌でよく用いられる表現。高音と低温を同時に出して、高い緊張感のある共鳴音を作り出す。あれも確かゴビを吹き渡る風の音ではなかったか。

 アイヌとモンゴルとの接点は明らかではないが、ないはずはない。むしろ北アジアの文化を共有しているといってもよい。

 
 ふと会場入り口で手渡された袋を覗くと、なんとあのムックリがはいっている。
 司会の人に促されて各自ムックリを手に取る。

 アイヌの民族衣装を着た出演者が会場に廻り、個々に指導をしてくれた。 
 教えられたとおりに口にあてて紐を引いてみる。簡単には音が出ない。なんどか紐を引っ張るうちにブン、ブンとちいさな振動音が出るようになった。

 はあ、難しいんですね。
 子供たちはまるで音が出ず、ぼうぜんとしている(笑) 
 コツがあるんだろうけど、それなりに力も要るかもね。
 
 指導をしてくれた出演者がこのあとユーカラと舞踊を披露してくれた。
 こんなすばらしい文化が北の国にはあるんですね。
 やっぱり大陸と直結している文化に思えてならない。

 当時の和人とくらべて、はるかに視野が広い人たちだったのではないだろうか。
 
 放菴に帰ってから一人でムックリを練習してみる。
 だんだんビョーンビョンという音が出るようにはなってきたが、あの荒野を吹き渡る風のような共鳴音は、なかなか出てくれない。
 
  
 
 
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