放菴日記抄(ブログ)

これまでの放菴特集・日記抄から「日記」を独立。
流動的な日常のあれこれを書き綴ります。

<花巻界隈(風鈴)紀行10>

2014年09月17日 00時59分52秒 | あんなこと、こんなこと、やっちゃいました
 やっと遠野市に入った。
 柳田國男の「遠野物語」で全国的に有名になった。
 三方を聖なる山に囲まれた、民話の宝庫である。

 市街地へ行くには「綾織(あやおり)」というポイントから右折。国道からは外れるが、こっちが釜石街道だという。
 猿ヶ石川を左手に見ながら進む。
 この山あいに「五百羅漢」があるという。
 これは天明の大飢饉の犠牲者を供養する目的で盛岡のエライお坊さんが自然石に羅漢様を線刻したというもの。
 ガイドブックにはちょこっとコラムのように載っているだけだったが、BELAちゃんが興味を示した。
 
 案内に従って坂を上る。のぼって、のぼって、のぼって・・・、この道大丈夫?

 なんだか林道のような細い道。ホントに車一台分の車幅しかない。右は山肌が迫り、左は灌木と奈落が口を開けている。一応舗装はされているが、この雨である。ところどころに小枝や石ころが落ちている。風も出てきているようだ。

 分岐路を左折し、さらに道は寂しくなってきた。
 雨がざんざんと降っている。
 道に不安を感じるのは、この天候のせいもあるか。
 これが晴天で大して暑くない季節だったら気持ちのいいところかもしれない。
 けど今は、進めば進むほど怖い。

 ふと道の向こうに開けた空間が見えた。左手に四阿と駐車場のような広場、右手の鬱蒼とした森に看板が出ている。
 - ここか -
 看板をみると「クマ出没」と書いてある。げっ、違うじゃん。
 でも間違いではなかったようだ。

 鬱蒼とした森に苔むした岩石が点在している。薄暗くてよくわからないが、ずいぶん上の方まで続いている。これが五百羅漢様だ。
 雨のせいか脇に小さな水の流れができている。そばには散策道のようなものがあり、上まで上がって行けるようだ。

 とりあえず車から降りてみたものの、どうにも森に踏み込む勇気が出ない。
 ばらばらばらっと雨粒が落ちてきた。
 びっくりして空を見る。
 風で枝についた雨水が落ちてきている。
 
 冷静に考えればここはまだ居住地のすぐそばなのだが、あまりにも鬱蒼としていて、クマのこと、雨のことなど、不安で気持ちがいっぱいになってしまう。
 こういう状況で、餓死者の供養地に入るってのは、よほど気合を入れないと無理だよ。

 結局あきらめて車にもどった。
 もどってから、次男坊が一言。
 「さっきうしろに真っ黒いなにかがいたよ。」
 - やめろよーそーいうのマジでっ!! -

 ホントになにかいたらしい。
 「クマかも・・・。」
 と次男。

 こっちはもっと別の恐ろしいものを想像しちゃうけどね・・・。 
 
 結局そのまま山道を進むことにした。
 いま考えれば、もと来た道を引き返すべきだった。たとえ対向車と遭遇する危険があっても。
 風がどんどん強くなる。雨もどんどん強くなる。やっぱりこれは台風の影響なのだろうか。
 道は舗装はされているがかなり荒れている。
 こころなしか右側の山肌がすこし膨らんで、道路の方へ寄ってきている。擁壁でさえぎられたところでは、その上から木々が寄りかかるように傾いてきている。明らかに山肌が変容してきている。
 この雨でそうなっているのかわからないが、これって土砂災害の危険があるか? 道にこぼれている石や枝が不安をあおる。そんでもってこの山道。くねくねしてどこへ向かっているのかとんとわからない。

 さっきの黒いのは「行逢い神」ではないか・・・。
 「行逢い神」とは、行き逢った人や家畜に災いをもたらす異形の精霊とされている。山中でとつぜん悪寒を覚えたり、気分が悪くなったり、時には怪我や命を取られることもあるという。
 ははは・・・悪路だからろくでもない想像しか浮かばない。
 突然、山肌に赤い鳥居が見えた。
 こういうタイミングだからびっくりしてしまう。
 
 雨がびしゃびしゃ降っている。はやく平らなところに出たい。
 山を降れそうな道に行き当たった。これで抜けられるか。ところがその先は落石の危険があって取れない旨の警告板があった。必然的にさらに山の中をはしるしかないようだ。

 いま地図をみながら考えても、この通りに走ったような気がしない。もっと遠回りをさせられた気がする。
 このあたりは、遠野のお城「鍋倉城」の搦め手にあたるようだ。だから、簡単に市街地へは下りさせないようにできていたのではないか。

 やっと広い川沿いにでて、ほっと一息。車の往来がある道路をみると安心する。

 では遠野の市街地を目指そう。
 ところが走れど走れど開けた平野に出てこない。しまいには川の上流の遠野ダムまできてしまった。

 この狂いまくっている方向感覚なんとかしてぇー。

 どこへ向かっているのかわからないことほど怖いことはない。このとき、知らず知らずのうちに仙人峠へと引っ張られていた。
 どうにも苦労させられるなぁ。手荒い歓迎ってやつですか?


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