放菴日記抄(ブログ)

これまでの放菴特集・日記抄から「日記」を独立。
流動的な日常のあれこれを書き綴ります。

ゴホン!といえば、「田沢湖ビール」3

2022年09月14日 01時18分07秒 | 観劇日記
 「わらび座 夏の特別公演」はこれまで上演してきた演目からのオムニバスという形で進行されます。劇団の総力が結集された、全力全開のパフォーマンスが次から次へと展開します。まずミュージカル「銀河鉄道の夜」のオーバチュアで始まると、劇場は一気に四次元幻想の世界へ旅立ちます(そういえば、さっきまで列車に乗ってたっけ)。
 旅は東北の各地を皮切りに全国の現在・過去へと時空を超えて繋がってゆきます。
 
 わらび座がすごいのは、劇団であり歌舞団であること。
 歌い、唄い、謡い。踊り、躍り、舞う。
 男踊り、女踊り、手踊り、
 死者の踊り、生者の舞踏、そして神の舞い。
 海の恵みがたっぷり詰まった重い網をひく手。
鋭く突き出した櫂。
 一糸乱れぬ樽太鼓。
 神降らすような波動で空へ伸びる声。
 一個の虎になりきる合せ技。
 全方位の表現力を観せるため、少しも手を抜いていない。その研鑽はとてつもなく深いのです。「藝能」とは、理に叶った美しさとあらゆるものを超えて顕れる驚きと明快さ。簡単に云うと、んー難しい。要するに「すごい」。
 唄は日高見へ、または琉球へ。
 
 究極の技ではないかと思ったのが「盆舞」。
 手のひらにお盆を載せて踊ります。盆を握っているのではありません。手のひらに、載せているだけ。
 次の瞬間、手のひらをくるっと下へ、そのままくるくるっと一回り。
 今度は手を上からぶぅんと下までお盆を載せたまま振ります。何度も何度も。

 ど、どうなってんの?
 普通こんなことすれば、お盆を落としたりどっかに吹っ飛んでいっちゃうような気がするのですが、どういうわけかお盆は手のひらにぴたりと貼りついて離れない。
 今度はお盆を持ったままでんぐり返り。あり得ない!あり得ない、コレはあり得ない!
 もう一度でんぐり返り。両手にお盆を載せたキレイに廻ること・・・。
 つぎの瞬間、ポロッとお盆が手のひらから落ちました。素早く拾い何事もなかったようにお盆を振り回す。
 実はここのところすごく大事。
 もしもここをノーミスで演ったなら、綺麗すぎて、恐らくどれだけ難しいことをやっているのか判らなかったでしょう。
 演者には悪いのですが、このアクシデントには盆芸のリアリティを裏付けた大きな意味があります。
 お盆が手のひらからこぼれたからこそ、これがトリックでもズルでもなく、シンプルに難しい技の披露であることを理解できたのです(あれだけお盆を載せて舞ったのに、お盆が離れたのがあの一瞬だけだったことにも驚きです)。やっぱりすごい。
 
 ずうっと圧倒されたままいつの間にかフィナーレへ。
 身体はすっかり熱くなり、お尻までむずむずです。あまり感情を表に出す習慣のない自分にとって、誰かが爆発的な表現をするのにシンクロして、内面でカタルシスが起きる場合があります。劇場ではそれが罪ではない気がして、こっそり発散しています。

 今日は良かった! すごく楽しかった。
 まだ身体が熱い。劇場はもうすっかり幕が降りているのに、膝がしびれているような気がして、さっと立ち上がれません。
 ありがとう。来てよかった。

 おっと、まだタイトルの謎解きしていないですね。
 それはこの後で。

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