緑 島 小 夜 曲

春を愛する人は、心優しい人。

オタマジャクシよ、お母さんは誰

2007年06月09日 14時34分42秒 | 露天映画
上海美術映画制作所1960年製作
監督:唐澄等
芸術指導: 特偉
美術設計:唐澄,邬強,戴鉄郎,阿達,呂晋,厳定憲,嬌野松等
技術指導:銭家駿
撮影:段孝萱,ゆう勇,王世栄
脚本:方恵珍 盛ろ徳
完成時間:1961年7月

中国最初の水墨風美術映画。

本作における魚や蝦など動物らのオリジナルは画伯斉白石の真筆によって得られたものだと言われる。

映画の冒頭部はとても美しい。

中国水墨画集が一冊机上に置かれ、その表紙を開いたら、静寂な小さい蓮池の墨絵である。抑揚のある琴と琵琶の合奏曲に随って、シーンがしだいに墨絵の画面に近づき、観衆を叙情的で美しい墨絵の世界に引きつける。すると、生まれたばかりの小さなオタマジャクシらが水中を泳ぎ始める。池の辺で雌鳥と餌を探しているひよこらを見ると、始めて母親のことを覚える……生まれてから母親の顔つきを見たことのないオタマジャクシらは、金魚、蟹、亀、鯰の魚などを自分の母親だと思い込んでいたが、みんなの拒否を受けた。母を捜すと同時に、オタマジャクシらも成長した。后肢、前肢の発育につれて、尾は消えて、体には奇妙な変化が現れる。最終に、自分の格好を参考しながら、「蛙」という「実母」を見つけることに成功するというあらすじである。物語を通して「志さえあれば必ず成功する」という悟りを教えてくれる。

上世紀五、六十年代に製作された美術映画は中国の芸術珍宝である。画伯斉白石が描かれた魚や蝦などのイメージは、本作の芸術基準を向上させる。一方、墨絵のアニメ設計と古風の琴曲が密接に結び付けられ、作品に強い中国特色を与えていた。そして、毛筆と画仙紙の性格が特別なので、けじめ(輪郭線のような意味)がはっきりしないのは墨絵の一特徴。
  
かすんでいた画面の中に、「蛙なるお母さんがオタマジャクシらをこよなく愛する。祖国なるお母さんが子供らをこよなく愛する」と優しいナレーションを聞きながら、おぼろに子供時代に戻るようかと思っていた……可愛いオタマジャクシらは無邪気な子供のようである。